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「日本人の写真は外せ!」韓国3.1独立運動百周年で盛り上がる”反日”の機運。悪化する日韓関係の行方

(2019.02.28 安達夕)
レーダー照射問題や徴用工裁判、国会議長による天皇謝罪発言等、日本と韓国の政治的摩擦が極度の緊張感に達しているなか、韓国では、「3.1独立運動」百周年を迎える。「3.1独立運動」とは、日本による植民地統治時代であった1919年3月1日に、日本からの独立を叫んだ国民たちの一斉蜂起のことであり、文在寅大統領も 昨年7月韓国大統領直属の「三・一運動および大韓民国臨時政府樹立百周年記念事業推進委員会」を設立、国をあげて大いに記念する事を高らかに宣言している。
韓国では毎年この「3.1独立運動記念日」(祝日)にはときの大統領が演説を行い、日本と韓国との過去史についての言及をする。当時の「加害者」と「被害者」であるという日韓の立場は変わる事はないが、その時々の日韓関係の在り様や関係性について、この時の韓国大統領の発言は常に注目されている。
2013年の3月1日には、朴槿恵大統領(当時)が「加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わることはない」と発言し、これが韓国の国民世論に火をつけ、日韓関係に暗い影を落とした。
2019年の3月1日に文大統領はどのような発言をするのかも注目されるところではあるが、この「3.1独立運動」百周年を前に、韓国の様々な分野において「対日」、「反日」的な動きは加速化している。
韓国・中央日報の報道によれば、忠清南道の教育庁が、道内の学校内に掲示されている歴代校長の写真の中から「日本人の校長の写真は外せ」という指針を出したという。教育庁が道内713個の学校を調査した結果、29校で「日本人校長」や「日章旗・軍刀を腰に差した教師の写真」が、廊下や壁面に掛けられていることが分った。
これは、日本による朝鮮統治時代のもの。
忠清南道のキム・ジチョル教育監は「日帝統治期の校長も『学校の歴史』という主張もあるが、学校に写真を掲げるということは、一種の象徴であり、日本人の校長が象徴には成りえない」と話した。
この日本人校長の写真の撤去のほか、新日派韓国人として糾弾されている作曲家らが創作した校歌も、いまだ31校で歌われており、これを作り変えるよう指示した。
ちなみに忠清南道においては、植民地時代のものだけではなく、古くは朴正熙・全斗煥大統領時代、また李明博・朴槿恵大統領らの保守政権時に、学校生活規則等に明記されている「反国家的」、「不穏」、「利敵行為」等の言葉も改正するよう指導している。
他方、韓国全土の公立学校で使用されている「教監」(日本の「教頭」にあたる)という言葉も、植民地時代の名残であり、権威主義の象徴であるとの理由で、以後「副校長」にすべきとの法律案が国会に発議されている。この発議には、学校教員らによる国内最大規模の団体である韓国教員団体総連合会もすぐさま声明を発表し歓迎の意を示した。
韓国の教育現場における、対日感情は日増しに高まっており、「3.1独立運動」百周年を迎える日には最高潮を迎えるだろう。
今、韓国で話題となっているのが、2010年バンクーバー五輪のフィギアスケートで金メダルを獲得したキム・ヨナ氏と、韓国の人気バンドGuckkastenのボーカルである、ハ・ヒョヌ氏が歌う、「3.1独立運動」百周年を記念した「3456」という曲だ。
この「3456」という不思議なタイトルに込められた意味とは、
3:1919年 3.1独立運動
4:1960年 4月革命
5:1980年 5月光州事件
6:1987年 6月民主抗争
の、韓国近現代史における重要な事件が起こった月を並べたものである。
ちなみに1980年5月の光州事件と1987年6月民主抗争については、文政権になって以降、それぞれ「タクシー運転手」、「1987」という映画に描かれ、韓国国内で空前のヒットとなった。
この「3456」という政治的プロバガンダとも受け取れる歌を、韓国の「QUEEN」(名字の「金」と「QUEEN」の発音が似ている)と呼ばれるキム・ヨナが歌うという事が国内で話題になり、曲も大きな広がりを見せている。これは韓国が、今回の「3.1独立運動」百周年を大事に見ているかの証左に他ならない。
しかし韓国の文政権は、なぜこれほどまでに日韓関係を悪化へと突き進めるのか。
支持率が落ち始めた政権が、韓国世論の琴線にふれる「対日感情」を刺激することで支持率の回復を狙っている云々との報道もあるが、筆者はそれだけではないと思っている。
第2回米朝会談の実施により、激動する朝鮮半島情勢の中で、文在寅大統領は強かにタイミングを見ているのではないだろうか。
今、日本や韓国を含む東アジアの情勢は、大きな地殻変動を起こし始めている。
平昌冬季五輪の南北融和から始まり、2度に渡る南北首脳会談、米朝会談と、北朝鮮の核の廃絶と朝鮮半島の恒久的平和の構築に向けた動きが活発化している。
勿論、日本も東アジアの一員として、この変化に対応していかなくてはならない。その「変化」の一番の例は、今年1月28日、国会での施政方針演説で安倍総理が語った言葉だろう。「北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動いたします。北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化を目指します」 北朝鮮との国交正常化、とはっきり口にしたのだ。
北朝鮮との国交正常化となれば、拉致問題の解決は勿論であるが、一方で、過去史の清算という問題の解決もしなければならない。総理自信が「不幸な過去を清算」すると言っているのだ。その際には、北朝鮮側から、「徴用工」や「慰安婦」の問題が提議されるだろう。日本はその時も、「なかったこと」、「解決済み」であると突っ張る事が出来るのか。
日韓の歴史問題は、高度な外交問題でもある。強かなのは、日本と韓国の果たしてどちらなのか。
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