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ゴーン被告人の海外逃亡を肯定する朝日社説
 「検察官に『自白しなければもっとひどいことになる。家族も追及する』と言われた…絶望的な気持ちになった…日本の刑事司法は公平ではなく、私は逮捕、勾留されるべきではなかった…私の家族も想像を絶する苦しみを味わった」
 逃亡した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告人(65)が1月8日午後10時(日本時間)過ぎ、レバノンの首都ベイルートで記者会見し、日本の司法制度を批判しながら自らの正当性を訴えた。
 記者会見によって国際世論を味方に付けようとしたのだろうが、歪んだ主張である。日本は独裁者が統治する 北朝鮮 や一党独裁の 中国 などとは違う。民主主義の法治国家である。「日本の司法が不公平だ」というならゴーン被告人はその証拠を出すべきである。
 「自白しなければもっとひどいことになる」と検事が脅したのだろうか。密室での取り調べが社会問題となったことなどから、2019年6月からは取り調べの可視化が始まった。対象は、裁判員裁判対象事件・検察官独自捜査事件に限られているが、今回は特捜案件なので対象になる。
 東京地検は取り調べの録音・録画を保存が義務付けられている。時期が来れば、それらを裁判所に証拠として提出し、ゴーン被告人の主張の信憑性を確かめるべきである。
 記者会見に招待されたメディアは、レバノンやフランスのテレビ局などだった。日本の報道機関は、 朝日新聞 、テレビ東京、小学館の3社を除いて、「攻撃的な記事を書いている」と出席を拒否された。
 報道によると、ゴーン被告人は各メディアの過去の報道内容をチェックして出席の可否を決めたという。メディアの選別は大きな問題だ。無実ならば、どんなメディアのどんな質問にも正々堂々と答えればいい。
 ゴーン被告人は2018年11月19日、役員報酬の過少記載事件で東京地検特捜部に逮捕され、その後、サウジアラビアやオマーンを舞台にした特別背任事件などでも逮捕、起訴され、拘留は長期化した。最初の保釈は2019年3月6日だった。この保釈まで勾留は108日間に及んだ。
 ゴーン被告人はその後、4月4日に4度目の逮捕となり、4月25日に保釈されていた。このときの保釈条件で海外渡航などが禁じられた。妻のキャロル・ナハスさん(53。東京地検が今年1月7日に虚偽容疑で逮捕状を取る)とも会うことができなくなっていた。
 ゴーン被告人の事件で日本の司法制度は、自供するまで勾留を続ける「人質司法」として海外のメディアから批判されている。ゴーン被告人が国籍を持つフランスのメディアはこれまで「拘置所でクリスマスを過ごすことになる…日本の捜査当局は尊敬されていた経営者を逮捕し、3週間後に起訴した」などと伝えてきた。
 日本とフランスの司法制度はどう違うのか。前述したようにゴーン被告人の最初の逮捕は11月19日だった。東京地検の久木元伸次席検事は29日の記者会見で、こう反論した。
 「国によって制度は異なる。自分の国と違うからといって批判するのはいかがなものか」
 実際、日本とフランスでは司法制度が異なる。日本では検察官が容疑者を逮捕した場合、48時間以内に裁判所に勾留を求め、認められれば起訴まで最長で20日間、容疑者を勾留できる。再逮捕すれば、再び勾留請求が可能となる。さらに否認を続ければ続けるほど、裁判所が逃亡や証拠隠滅の恐れを理由にして起訴後も保釈を認めないケースが多い。
 ところがフランスでは、捜査の初期は裁判官の令状なしに原則1日の「警察勾留」が可能だ。検察官が「さらなる拘束が必要だ」と判断すると、「予審」という公判前の手続きと勾留を同時に求める。これが認められれば、捜査の担当は検察官を指揮する「予審判事」に引き継がれ、原則1年以内、最長で4年8カ月間も勾留できる。
 要はフランスのメディアは、日本の勾留とフランスの警察勾留(原則1日)とを混同しているところがある。ただフランスでは無罪推定の考えが強く、勾留は最後の手段であり、経済事件では在宅捜査が一般的だ。さらにアメリカやヨーロッパの国々では取り調べに弁護士の立ち会いが認められているが、日本では認められていない。
 司法制度は国によって違う。だが、逮捕・起訴された当人が「公正でない」と批判するのはおかしい。しかも法を破り、海外逃亡してから批判するとは姑息だ。人質司法の問題とゴーン被告人の事件は分けて考えるべきだ。
 1月8日午後10時過ぎ、ベイルート市内の記者会見場に現れたゴーン被告人は黒っぽいスーツに赤いネクタイを着け、「私にとって重要な日だ。この日を楽しみにしていた」と力強い表情で話し出し、持論を大きな身ぶり手ぶりでまくし立てた。
 この会見をテレビで見たが、刑事被告人とは思えない態度で、いまだ仏ルノーや日産の会長のつもりでいるように見えた。
 日本政府はすぐに法務省と検察が強く反論した。森雅子法相は9日午前0時40分から緊急記者会見を開き、「主張すべきことがあるのなら、わが国の公正な刑事司法手続きの中で主張を尽くし、正々堂々と公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む」と語った。
 東京地検の斎藤隆博・次席検事も9日午前0時過ぎに次のようなコメントを出した。
 「犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したもので、会見内容も自らの行為を不当に正当化するものに過ぎない…妻との接触の禁止は、妻を通じて証拠隠滅を行ってきたことを原因としている。被告人自身の責任によるものだ。我が国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる」
 ゴーン被告人は記者会見で、妻のキャロル・ナハスさんとの接触が禁止された保釈条件に強い不満を示していた。
 日本政府の反論の早さとその内容は妥当だ。ただ国際社会へのアピールは足りない。欧米のメディアに対し、英語同時通訳を用意した記者会見をあらためて開くべきだろう。まだその機会はある。日本政府の今後に期待する。
 全国紙でゴーン被告人の海外逃亡を最初に社説に書いたのは産経新聞(3日付)と日経新聞(3日付)だった。それから遅れること4日。1月7日付の 朝日新聞 が「ゴーン被告逃亡 身柄引き渡しに全力を」との見出しで取り上げている。
  朝日社説 は「法秩序を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない」と当然のように主張するが、もっと早く取り上げてほしかった。なにか特段の事情があったのだろうか。
 そう考えて読み進むと、案の定である。 朝日社説 はこう指摘する。
 「日本では容疑を認めない人を長く拘束する悪弊が続き、国内外の批判を招いていた。それが裁判員制度の導入などを機に見直しが進み、保釈が認められるケースが増えてきている。ゴーン被告の処遇は象徴的な事例の一つであり、運用をさらに良い方向に変えていくステップになるべきものだった。その意味でも衝撃は大きいが、だからといって時計の針を戻すことはあってはならない」
 ゴーン被告人の事件と「人質司法」と批判される日本の司法制度の問題を混ぜて論じ、「保釈を早期に認めるようとする流れを止めてはならない」と訴えている。
 これではゴーン被告人の思うつぼである。「日本の司法制度が公平でないから逃走した」という彼の言い分を肯定することになってしまう。
 最後に 朝日社説 は「捜査・公判の遂行と人権の保障。両者のバランスがとれた保釈のあり方を模索する営みを続けるためにも、今回の逃走の徹底した検証を求める」と「 人権の保障 」をクローズアップする。
 ゴーン被告人の海外逃亡は、カネの力にものを言わせ、訓練を積んだプロに頼んだ疑いが強い。そうだとすれば「 人権の保障 」という次元の話ではない。 朝日新聞 の論説委員はなにを考えているのだろうか。

(社説)ゴーン被告逃亡 身柄引き渡しに全力を 2020年1月7日 5時00分

 世界を驚かせた逃走劇から1週間が過ぎた。情報が交錯し、経緯にはいまだ不明な点が多いが、保釈中の日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が、国籍をもつレバノンに違法に出国したことは間違いない。法秩序を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない。
 森雅子法相はきのう記者会見し、国際機関などと連携して、日本での刑事手続きが適正に行われるよう、できる限りの措置を講じる考えを示した。
 会社法違反などの罪に問われたゴーン被告は無罪を主張し、東京地検が日産関係者と交わした司法取引についても違法だと訴えていた。被告が不在のままでは裁判は開かれず、事件は宙に浮くことになりかねない。
 レバノン政府とねばり強く交渉するのはもちろん、日本の司法制度について丁寧に情報を発信するなど、あらゆる外交努力を尽くし、ゴーン被告の身柄の引き渡しを実現させる。それが政府の責務だ。
 あわせて、前代未聞の逃走を許してしまった原因は何か、究明を急ぐ必要がある。
 ゴーン被告はプライベートジェット機を使って関西空港から出国した可能性が高いとみられる。一連の審査手続きに不備や緩みはなかったか。国民に対する説明と適切な改革が求められるのは言うまでもない。
 ゴーン被告は起訴・保釈・再逮捕などの曲折を経て、昨年4月末から身体拘束を解かれていた。住居玄関への監視カメラ設置、パソコンや携帯電話の利用制限など、弁護側が示した条件を裁判所が認めた。にもかかわらず、結果として今回の事態を防げなかったことを、関係者は重く受け止めねばならない。
 15億円という保釈保証金は、富豪であるゴーン被告に対するものとして適切だったか。弁護士にすべて預けるはずだった複数の旅券を、途中から1冊に限ってとはいえ、被告が携帯することを認めたことに問題はなかったか――。他にも点検すべき事項はあるはずだ。
 日本では容疑を認めない人を長く拘束する悪弊が続き、国内外の批判を招いていた。それが裁判員制度の導入などを機に見直しが進み、保釈が認められるケースが増えてきている。ゴーン被告の処遇は象徴的な事例の一つであり、運用をさらに良い方向に変えていくステップになるべきものだった。その意味でも衝撃は大きいが、だからといって時計の針を戻すことはあってはならない。
 捜査・公判の遂行と人権の保障。両者のバランスがとれた保釈のあり方を模索する営みを続けるためにも、今回の逃走の徹底した検証を求める。

他人の言葉を紹介する態を装って情宣(密出国者擁護&本邦司法制度誹謗中傷)の悪意を隠すNHKの卑怯な手口っ

ゴーン被告の弁護士がブログで心境「暴挙と全否定できない」

 日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告の弁護を担当する高野隆弁護士は4日、みずからのブログを更新し「レバノンへの密出国を知ったとき激しい怒りの感情が込み上げたが、日本の司法とそれを取り巻く環境を考えると『暴挙』『裏切り』『犯罪』と言って全否定することはできない」などと記しています。
 高野弁護士は4日、「彼が見たもの」というタイトルでブログを更新し、ゴーン元会長が中東のレバノンに出国したことについての心境をつづっています。
 ブログの内容は弁護団としての意見ではなく個人的な意見だとしたうえで、「大みそかの朝、私はニュースで彼がレバノンに向けて密出国したと知り、まず裏切られたという激しい怒りの感情が込み上げた」と記しています。
 そのうえで「実際のところ、私の中では何一つ整理できていないが、1つだけ言えるのは彼がこの1年余りの間に見てきた日本の司法とそれを取り巻く環境を考えると、この密出国を『暴挙』『裏切り』『犯罪』と言って全否定することはできない」としています。
 またブログでは、ゴーン元会長が「公正な裁判は期待できるのか」と何度も同じ質問をしてきたのに対し、高野弁護士が「それは期待できないが無罪判決の可能性は大いにある。われわれは、ほかの弁護士の何倍もの数の無罪を獲得しているので信頼してほしい。必ず結果を出してみせる」と伝えたことを明らかにしています。
 そして、保釈の条件になっていた妻のキャロルさんと接触禁止について、ゴーン元会長が「これは刑罰じゃないか。一体いつになったらノーマルな家族生活を送ることができるんだ」などと不満を述べていたとしたうえで、出国の5日前のクリスマス・イブの日に、元会長が裁判所の許可を得て、ビデオ会議システムを使ってキャロルさんと面談した際には、パソコン画面に向かって「君との関係は子どもや友人では置き換えることはできない。君はかけがえのない存在だ。愛してるよ」と語りかけていたことも明らかにしています。
 このとき高野弁護士はゴーン元会長に対して「とても申し訳ない。一刻も早くこの状況を改善するために全力を尽くす」と声を掛けましたが、元会長から返事はなく「弁護士の存在などないかのように次の予定を秘書と確認していた」と当時の状況をつづっています。
 最後に高野弁護士は「寂しく残念な結論である。もっと違う結論があるべきだ。確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない」と締めくくっています。

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