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保守派口封じ
 トランプ大統領のTwitter公式アカウントが「さらなる暴動の発生を煽っている」として永久凍結された(トランプ大統領が,凍結の直前,支持者に落ち着くよう呼びかけ,議会での暴動に制止を求める発信をしていたにも拘わらず…)
  それをきっかけとして,トランプ大統領のみならず,政権に支持的・親和的であった保守系アカウントまでもが,TwitterをはじめfacebookやInstagramなど他のソーシャル・ウェブサービスからも「締め出し」を受けているとのニュースが伝えられた
 今回の「締め出し」には少なからず著名人も含まれている.Twitterでは,トランプ大統領のアカウント凍結に続いて,トランプ政権最初の国家安全保障担当補佐官マイケル・フリン氏や,トランプ大統領の選挙陣営の弁護士シドニー・パウエル氏などのアカウントも相次いで凍結されることになった.トランプ政権からバイデン政権への移行を目前とした今,「レッド・パージ」ならぬ「保守派パージ」が展開されているのである
 また,これらのSNSから「締め出し」を受けた人々の「移転先」と目されていたSNS「パーラー(Parler)」に対しても,先んじてGoogleのアプリストアから削除され,さらにはAppleのアプリストアからも削除された.「私企業による特定の党派(保守派)の人々への言論・表現活動の制限」が,もはや咋になってきた
  今この「特定の党派性に対する言論・表現の場からの締め出し」の流れに賛同しているのは,驚くべきことに,平時には自由や人権を擁護していたはずのリベラルな人々である.とりわけラディカル・レフトと称される急進的な左派グループを中心にして,トランプ政権の支持者や保守派の「締め出し」に賞賛の声が挙がっている
 20世紀には,こうした「締め出し」に賛同するのはどちらかといえば保守派や国粋主義者であったはずだが,現在では左派・リベラル派こそがこうした流れをつくりだしている.政治的ただしさ(
ポリティカル・コレクトネス )に反する言動をとる人々を社会的に抹殺しようとする「キャンセル・カルチャー」は,2010年代末にSNSを通して最盛期を迎えたが,今回の「締め出し」は,まさしく決定打となる総攻撃だった
「言論」というインフラの危機
 今,インターネットやSNS上で続いている,保守派の「締め出し」について,この流れを危惧していない人があまりにも多い.しかしながら,これは実際にはあまりにも危険な代償を含む流れである
 元々,新聞,雑誌,ラジオ,テレビ,映画等のマスメディアで一方的に発信される情報は, ポリコレ革命戦士 の専有物だった
 トランプ大統領は,保守派の情報発信ツールとして Twitter を使ってマスメディアの偏向報道に対抗した
 ポリコレ革命戦士達は, コミンテルン第6回大会で説かれた戦略 に基づき,大手SNS社内に潜入して社の体質を変質させ,保守派の情報発信手段を奪うことに成功した.そして,ここぞというときに,乾坤一擲,総攻撃をかけたのだ
 表現/言論インフラを民間企業が支配してしまえば,その企業には社会の規範体系や政治思想の動向に絶大な影響をもたらす圧倒的な権力が付与される.今TwitterやGoogleが,ネット上の表現/言論の生殺与奪権を「事実上」握っていることは否定できない.そして現在,彼らが進めようとしているのは,コンテンツの規制ではなくコンテクスト(政治的文脈)の制限なのである
  今観測されている「保守派の排除」は,市民社会の表現や言論がどのようなものであるべきかを操作・誘導できる権限を恣にする私企業による,コンテクストの制限によって生じた結果のひとつでしかない
 通常であれば,規制はコンテンツに対して行われる.ある人物の言論・表現が公序良俗に反していたり,なんらかの誤りを含んだりしていたからといって,その人物の著作物すべてが絶版とされることはないし,各社のサービスを横断的に禁止されるなどということもありえない.しかし今回行われているのは,まさにそれなのだ.特定の党派性が表現/言論インフラから横断的に排除され,禁止されてしまうことである.結果的に,特定のコンテクストしか存在が認められない空間として,これからウェブサービスやソーシャル・ネットワークが大きく変貌を遂げていくことを示唆している
 このコンテクストの制限によって被害を受けるのは,現時点ではどうせ保守派だけだ,と安心している人もいるだろう.しかしだからといって,これを容認することは,今後ありとあらゆるコンテンツが,そしてそれを支持する人々の発言の場が,TwitterやGoogleなどビッグテック企業によって理由の説明も予告もなく削除されうるのを認めることと同じだ.そうなれば,人々は自らの投稿をリリースする前に,表現/言論インフラの支配者である私企業の顔色を窺って自主規制をかけることを余儀なくされるだろう
 今,市民社会が長い歴史的な苦闘の末に国家権力から獲得してきた自由が,私企業(巨大資本)によって再び支配下におかれようとしている.それは本来ならば,リベラル派が声を大にして反対するべき潮流だろう.しかし今回の「締め出し」についての反応を観測するかぎり,リベラル派は反対するどころか,自分たちの敵対する陣営が損失を被っていることに浮かれ,これを肯定している始末である.「トランプ,保守派,ざまあみろ」の爽快感に酔いしれるあまりに,問題の深刻さに気付けないまま素通ししてしまっている
 繰り返すが,これは本来ならば友敵理論や党派性を超えた問題である.憲法で保護されているはずの市民社会の権利や自由が,実質的には民間企業によっていかようにでも方向づけられたり制限されたりしうる時代の到来…その是非を問うものであるからだ.「私企業によるコンテクストの制限」は,敵対陣営が被害を受けて「メシウマ」の感情に浸れるという一時の快感を得るために肯定するには,支払う代償があまりに大きいものだ
これは「表現の自由」の問題ではない
 ただし留意しなければならないこともある
 この「締め出し」は,厳密にいえば,憲法上に掲げられた「表現の自由」の問題ではない.人権としての「表現の自由」とは,国や政府などの公権力による検閲や規制からの自由を規定するものであるからだ.これはあくまで,私企業対個人,あるいは個人対個人など,市民社会レベルにおいて表現が自由であり,健全性や実質性が保たれているかどうか,いうなれば「表現の自由市場」にかかわる問題である.したがって,TwitterやGoogleが保守派のアカウントやコミュニティを排除したからといって,「これは『表現の自由』への弾圧だ」…という理論には直結できない
 ゆえにこの「締め出し」にはなんの問題もないのだ,などと言いたいわけではもちろんない.むしろ,憲法上の「表現の自由」の問題に直結しないからこそ,事態はより深刻なのである
 市民社会における「表現の自由市場」の健全性や実質性が,そのプラットフォームを提供する私企業によるコンテクストの制限によってコントロールされ損なわれてしまった場合,それは人権として保障されているはずの「表現の自由」が損なわれ,有名無実化していることとなんの違いもない.だが,このままでは《表現の自由が損なわれているのに「表現の自由」の問題にはならない》という,文章にすると頭が混乱してしまいそうになる,きわめて歪な状況が現実のものとなってしまう
 ソーシャル・プラットフォームを運営する特定の私企業が「表現の自由市場」の大部分を担うようになってしまえば,その私企業の意向ひとつで市民社会の「表現の自由市場」は,政治的・人権的な「表現の自由」の問題の俎上に載ることを巧妙に回避しながら,しかし実質的には表現の自由に特定の制約や禁則を課すことが可能になってしまう.これは現代社会におけるバグのひとつである
「公権力による弾圧」だけが危険なのか
 繰り返しになるが,「表現の自由」とは公権力からの言論弾圧や表現規制にかかわる問題である
 この「表現の自由」の問題についてアンテナが鋭く,政治家へのロビイングや啓発活動に熱心な人は非常に多い.だが,基本的にそうした彼らの多くは古典的・伝統的な自由主義者でもあり,「表現の自由」と同じくらいには「経済活動の自由」を肯定する者である.ゆえに,私企業の経済活動によって結果的に「表現の自由市場」の健全性や実質性が損なわれている場合であっても,これを「表現の自由」の問題ほど手厳しく批判することができないというジレンマをしばしば抱えている
 市民社会の自由な言論や表現を守るための議論には今,古典的な「表現の自由」だけでなく「表現の自由市場」という問題系が加わり,ステージが明らかに変化している.むしろ近年頻発・顕在化しているのは,キャンセル・カルチャーの隆盛や,社会学者,フェミニストの暴走などを見ればわかるように,後者にかかわる問題だ
 それにもかかわらず,「表現の自由」を擁護する人々の多くは,私企業の活動に(批判的に)介入することはポリシーに反するし,また社会主義者や全体主義者のレッテルを貼られることを嫌うあまり,「規制はあくまで企業の経済活動の自由の範囲内だから問題はない」などと主張することさえある.私企業による「表現の自由市場」の健全性や実質性への棄損行為を,非難するどころか追認してしまっているのだ
 現在,私企業による「表現の自由市場」の棄損行為を批判するのがリベラル派ではなく,もっぱら保守派の領分となっているのはこのためでもある
「無政府資本主義」への道が開かれる
 たしかに左派・リベラル派,ラディカル・レフトたちにとって,「締め出し」の対象が保守派に向けられている今の状況は,実に好都合かもしれない.4年間,自分たちを苦しめてきた「敵」が次々に悲鳴をあげて,社会や言論空間から強制的に退場させられる光景が,あまりに愉快,痛快であるというのはなるほど理解できる
 だが,今後も永続的に,自分の都合の良い対象にだけその「締め出し」の力が向けられるという確証はどこにもない.自分たちの敵対者(あるいは,とくに擁護したい動機のわいてこない無関心な対象)を焼いた炎が,明日には自分に延焼しない保障がいったいどこにあるのだろうか.世界的なシェアと巨大な資本を持つ私企業に「締め出す力」を一度でも付与してしまえば,今後はありとあらゆる言論・表現・党派性に対して,同じ権力が向けられうる
 今回の「締め出し」は,「トランプ派の粛清,アメリカ版文化大革命,保守パージ」という物語で完結するわけではない
 企業が政府からの干渉や監視を避け,なおかつ法的・憲法上の問題の俎上に載ることも回避しながら,社会を実質的に支配・統治する無政府主義的資本主義への筋道を拓くものである
〔参考:言論支配勢力の戦績〕
1904年 日露開戦
1905年 日露講和
1905年 日比谷焼打ち暴動(朝日新聞社に依る日露講和妨害)
1917年 ロシア革命勃発
1918年 ロマノフ王家全員殺害
1925年 日ソ基本条約締結
1925年 NHK初放送
1932年 米国政権交代(共和党→民主党)
1941年04月 日ソ中立条約締結
1941年06月 独ソ開戦
1941年12月 真珠湾攻撃
1941年12月 対米戦意高揚NHK放送開始
1944年03月 アサヒグラフ「撃て!この鬼畜米国!」発刊
1945年05月 伊独降伏
1945年08月 広島長崎原爆投下
1945年08月9日 ソ連対日攻撃開始
1945年08月14日 日本ポツダム宣言受諾
1945年08月15日 昭和天皇玉音放送「敗戦受諾の詔書」

1945年08月20日 ソ連軍樺太住民数十万人虐殺
1945年08月25日 ソ連軍樺太全土占領
1945年10月 国際連合発足
1949年 中共成立宣言
1949年 国民党台北遷都
1956年 米国政権交代(民主党→共和党)
1960年 米国政権交代(共和党→民主党)
1968年 米国政権交代(民主党→共和党)
1976年 米国政権交代(共和党→民主党)
1980年 米国政権交代(民主党→共和党)
1992年 米国政権交代(共和党→民主党)
2000年 米国政権交代(民主党→共和党)
2008年 米国政権交代(共和党→民主党)
2016年 米国政権交代(民主党→共和党).このとき「テレビメディアの偏向」に対抗する為,トランプ候補は直接米国民に発信する手段としてTwitterを使用した
2020年 米国政権交代(民主党→共和党).このときまでに,革命勢力は,テレビメディアに加えてSNS各社を侵食し,共和党支持者達の口封じと捏造虚報情宣の威力を発揮する機会を窺っていた
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