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文在寅政権が韓国の三権分立を崩壊させた日 「高官不正捜査庁」はゲシュタポか
 韓国の三権分立が完全に壊れた。左派の文在寅政権が検察や裁判所を監視する組織を作ることに成功したからだ。左派は司法を掌握し、永久執権を目指す。
鈴置: 2019年12月30日…。100年後に書かれる韓国政治史では「民主主義が崩壊し始めた日」と記録されるでしょう。国会で「高官不正捜査庁」を設置するための法案が可決されたからです。
 高級公務員の不正を暴くための捜査機関で、韓国語を直訳すると「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)と言います。2020年7月に設置の見込みです。
問 この新たな機関がなぜ、民主主義を破壊するのでしょうか?
鈴置: 青瓦台が完全に検察を牛耳ることになるからです。高官不正捜査庁の長官は大統領が任命します。法曹資格を持った職員も、多くが左派の弁護士から選ばれると見られています。要は左派政権の直轄組織…手足です。
 高官不正捜査庁は政府高官を独占的に捜査する権限を持ちます。今後、検察が高官を捜査する時、高官不正捜査庁に報告する義務が生じます。同庁は検察に対し「自分が担当するから手を引け」と命じることもできます。検察が政権のスキャンダルを暴こうにも、ここで阻止できるようになります。
 例えば現在、検察は曺国前法務部長官を捜査し、一部の容疑は立件しています。曺国氏は文在寅大統領の懐刀ですから、韓国では「大統領の犯罪」にまで広がる可能性が取りざたされていました。
 でも、高官不正捜査庁の発足後は、検察は曺国氏の捜査を高官不正捜査庁に取り上げられてしまう可能性が大きい。
問 すごい防御兵器を手に入れましたね、青瓦台は
鈴置: 高官不正捜査庁は極めて有効な攻撃兵器でもあります。「政府高官」には検事も含まれます。青瓦台は今後、「お前らを起訴するぞ」と検察に脅しをかけ、気にくわない人を訴えさせることもできるわけです。
問 そんな無茶をしても裁判所が有罪にはしないでしょう
鈴置: 「政府高官」には裁判官も含みます。青瓦台は高官不正捜査庁を通じ、裁判所にも圧力をかけられるようになるのです。
 すでに裁判所は左派の強い影響の下にあります。裁判官の多くは「左」です。そのうえ、文在寅政権は最高裁判所の長官に左派として有名な裁判官を任命しました。
 韓国政府も「1965年の日韓請求権協定で解決済み」としてきた戦時の朝鮮人労働者の問題で、2018年10月に韓国の最高裁判所が新日鉄住金に対し「カネを払え」と命じたのも「左傾化」が根にあります。
 今まででも李明博元大統領、朴槿恵前大統領、梁承泰前・最高裁長官ら保守派が相次ぎ起訴、収監されてきたのです。
 裁判所に加え、検察も手中に収めた青瓦台は今後、政権に敵対する人々に対し、思うように罪を着せることができます。三権分立の完全な破壊です。左派の独裁が始まるのです。
問 なぜ韓国は、三権分立を破壊する組織を作ってしまったのでしょうか?
鈴置: 「検察を改革せねばならない」との思いが韓国人に強かったからです。1948年の建国以来、検察は青瓦台の手先でした。大統領は政敵を倒すため、検察を悪用してきました。
 検察は容疑をでっちあげて起訴する。裁判所も政権を忖度して有罪にする。韓国では法律は個人を守るものではなく、個人を貶めるために使われてきたのです。
 もちろん検察は政権の不正を暴くこともありませんから、権力を握った人々はやりたい放題でした。1976年7月に、自民党を支配していた田中角栄氏が逮捕された時には、韓国人から「やはり先進国は違う」との感嘆の声が漏れたものです。
 私がソウル在勤中…1990年前後のことですが「我が国では権力に近くないと、ある日突然に犯罪者にされてしまうのだ」と説明されたものです。
 保守政権の手先を務めてきた検察の改革に、歴代の左派政権は熱心でした。保守の人々からも一定の支持を得ていましたが、それはなかなか進みませんでした。敵対者に睨みを利かす道具「無敵の検察」は権力を握った側にとって、便利この上もないからです。
 2017年5月にスタートした文在寅政権も「検察改革」を掲げました。初めは「起訴権だけでなく捜査指揮権まで独占する検察の権限を縮小する」「日本のように警察にも本格的な捜査権を与える」といった常識的な線に落ち着くかと見られていました。
 それが「検察が諸悪の根源なのだから、検察を監督すべきだ」という主張に変わり、青瓦台の直轄組織として高官不正捜査庁が発足したのです。
 「権力の不正を暴く」ための改革が、いつのまにか「権力の不正を見逃す」方向へと180度変わってしまった。「権力の乱用を防ぐ」はずが、「権力を強化する」ことになってしまったのです。
問 何と無茶苦茶な…反対の声は起きなかったのですか?
鈴置: もちろん、保守は死に物狂いで抵抗しました。第1野党の自由韓国党は代表の断食を含め、街頭闘争も繰り広げました。最大手紙の朝鮮日報は連日のように社説で「公捜処はゲシュタポになるぞ」と警告を発しました。
 ただ、普通の人の広範な共感は得られなかったようです。政権が「検察改革」との大義名分を掲げたからです。
 これまで検察を悪用してきた保守が反対すれば、利権を手放したくないと悪あがきしているように見えて、反感さえ買います。一方、左派の人々は当然、賛成です。保守が独占してきた検察権力を我が手にできるのですから。
問 普通の人が少し考えれば、三権分立の破壊と分かるでしょうに
鈴置: 韓国人は「行政、立法、司法が牽制し合う」という仕組みになじんでいないのです。大統領を出した側が全ての権力を握る、という発想がしみ渡っているのです。
 もちろん、権力を獲得できなかった側は激しく政権を批判します。しかし、自分の権利を守るために三権分立、厳密に言えば「司法に期待する」のではなく「権力側に立つ」ことに注力してしまう。
 1987年の民主化により権威主義的な体制が否定され、三権分立が謳われました。しかし、それは制度的にも意識の上でも根づいていないのです。
問 普通の人はともかく、立法に携わる人々は三権分立の破壊に危機感を持たなかったのでしょうか?
鈴置: 朝鮮日報の「<記者の視覚>非民主的な民主党」によると、与党「共に民主党」内にも「高官不正捜査庁設置法案」に疑問を持つ議員がかなりいたようです。
 自由韓国党が無記名投票での採決を求めたのも、彼らの良心に期待したからでしょう。ただ結局、記名投票となり、与党からの反対票は1票だけしか出ませんでした。
 反対票を投じた議員は党内から袋叩きになったそうです。政治家たちは韓国の国益を忘れ、党派の争いに没頭しているのです。
問 「共に民主党」と自由韓国党のほかにも政党があります
鈴置: 野党第2党で中道右派を標榜する正しい未来党、急進左派の正義党、全羅南北道を基盤とする左派の民主平和党、そこから分かれた代案新党などがあります。
 「共に民主党」は、これら4政党に2020年4月の国会議員選挙で比例代表の度合いを濃くするとの法案を提示。小政党に有利な新しい選挙法を餌に「高官不正捜査庁設置法案」に賛成させたのです。
 「共に民主党」の議席は過半に及びませんから、これら4政党が反対に回れば法案は通らなかった。後世の韓国人は「共に民主党」のあざとさに加え、4政党の身勝手さをも恨むことになると思います。
問 保守はどう対抗するのでしょうか?
鈴置: まず、「高官不正捜査庁は憲法違反である」と憲法裁判所に訴える手があります。憲法にも書かれていないというのに、三権分立を破壊する組織を作るのは違憲だ、との主張です。
 しかし、憲法裁判所がこれを認めるかは疑問です。裁判官の多くが左派であるうえ、憲法裁判所の裁判官自身が高官不正捜査庁の捜査対象だからです。
 保守にはもう1つ、高官不正捜査庁を防ぐ手があります。発足は2020年7月頃の予定ですから、4月の総選挙で過半数の議席を確保して廃止法案を通すのです。実際、保守は総選挙に全力を尽くす構えです。しかしここで、2019年12月27日に可決した新しい選挙法が効いてきます。
 4月の選挙では比例代表の度合いが一気に高くなるため、自由韓国党が過半をとるのは難しくなった。それどころか保守の小政党を合わせても3分の1以下の議席に転落し、左派に憲法改正を許す可能性さえあるのです。
 通信社、ニューシスが直近の支持率を基に、党派別の比例議席を推測しました。「新選挙法で各党の議席数の変化は…正義党が『最大の受益』の見通し」です。
 それによると、地域区と合わせた全300議席のうち、自由韓国党は現在の108議席より3議席減らした105議席に留まる見込みです。
 共に民主党は実にうまく立ち回った。議会で保守を弱体化すると同時に、返す刀で検察を自分の傘下に収めたのです。
 「共に民主党」の李海瓚代表はかねがね「100年執権論」を唱えています。左派がずうっと政権をとり続ける、との意味です。司法と立法を押さえ「永久政権」の基礎を築いたつもりでしょう。
問 100年執権とは大げさな
鈴置: 本気です。韓国では、野に下れば権力を握った側にぼろぼろになるまで叩かれる。一度握った権力は絶対に手放せないのです。「韓国歴代大統領の末路」をご覧下さい。「畳の上で死んだ」…韓国ですから「オンドルの上で死んだ」大統領はいないのです。
 ことに今、韓国の左右対立は極まっています。文在寅政権は保守を積弊…諸悪の根源…と呼び、徹底的に叩いています。牢屋に放り込まれたのは、2人の大統領経験者だけではありません。
 朝鮮日報・楊相勲主筆の「懲役合計100年 『積弊士禍』の陰の理由」によると、2018年3月段階で保守政権時代の官僚ら110人が起訴、60人弱が拘束されました。長官・次官級だけで11人が収監されました。
 もし、次に保守が政権をとれば、徹底的にやり返されるのは目に見えています。政権を渡すわけにはいかない。となれば、三権分立などぶち壊しても権力を握りしめるしかないのです。
問 なぜ今、突然に左右対立が激しくなったのでしょう?
鈴置: 文在寅大統領は盟友、盧武鉉元大統領を保守に殺されたと考えています。李明博政権が検察を使って疑惑を捜査し、その圧力に耐えかねて自殺の道を選んだからです。遺恨試合です。
 それに加え、北朝鮮要因も大きい。保守は米国との同盟を重視する。一方、左派は同じ民族である北朝鮮との和解を必須と考える。北の核武装を巡り緊張が高まる中、親米派の保守と民族派の左派は妥協の余地がなくなったのです。
問 それにしても韓国で、民主主義が後退するとは
鈴置: 日本では驚きを持って迎えられるでしょうね。1980年代以降、経済成長を果たしたアジアの多くの国で、民主化も進んだ。
 このため、民主主義というものは進展するのが当たり前、と多くの人が思っている。それに韓国でもそうですが、日本では左派こそが民主主義の推進役との誤解がある。
 でも、民主化は進む一方ではありません。民主主義が後退することだってあるのです。両大戦間のドイツ、イタリア、日本を思い出して下さい。
 第2次大戦後の中南米でも民主主義が後退し、独裁体制が相次ぎ登場しました。ちなみに、ベネズエラは左派政権によって民主主義が崩壊しました。
 「なぜ、そして、どういうプロセスで民主主義が後退するのか」を研究した本が2018年に出版されました。ハーバード大学のSteven Levitsky教授とDaniel Ziblatt教授が書いた『How Democracies Die』です。『民主主義の死に方』とのタイトルで邦訳も出ています。
 ひと昔のように、軍部がクーデターで民主的な政体を転覆し、強権的な統治を布くケースは減った。一方、選挙を通じ誕生した政権が三権分立を破壊しながら…民主主義を破壊しながら独裁政権に変わるパターンが増えた、と指摘しています。最近ではハンガリー、トルコ、ベネズエラがそれに当たります。
問 どんな時に、どうやって民主主義が後退するのでしょうか?
鈴置: 「激しい国内対立が起きた時」と、この本は指摘しています。「対立する勢力を抹殺しなければ自分がやられる」と判断すれば、それが民主的に選ばれた政権であっても、三権分立を壊していくのです。
問 まさに、今の韓国ですね?
鈴置: 『民主主義の死に方』の第4章は、民主主義を崩壊させる3つの手口を、サッカーの試合を例に説明しています。
 (1)審判を抱き込む=司法を支配するなど
 (2)対戦相手を欠場させる=敵対する政治家の逮捕など
 (3)ルールを変える=選挙区の変更など
 文在寅政権は3つの手口すべてを使っています。第9章では韓国を「民主化後にその体制を維持してきた国」の1つに挙げています。この本の次の版で韓国がそう分類されるかは分かりませんか。
問 韓国は、どうなるのでしょうか?
鈴置: 保守が2020年4月の総選挙で勝てないと、議会で高官不正捜査庁を防ぐ手はなくなります。その後は街頭闘争に打って出るしかありません。しかし、それは蟷螂の斧。検察も裁判所も握った左派政権に蹴散らされるのは確実です。残るはクーデターです。
問 アジアのベネズエラになるのですね?
鈴置: ベネズエラでは左派の独裁体制に軍がクーデターで対抗、混乱を深めました。確かに似てきました。左派が中国を引きこみ、保守が米国を頼りにする点でも、韓国のベネズエラ化は進むでしょう。
 文在寅政権は中韓同盟を唱えるほど、中国への依存を強めています。
 一方、保守は集会で太極旗とともに星条旗を掲げるようになりました。
 朝鮮半島の人々は、政敵を倒すためには外国の力を借りることも躊躇しません。民主主義体制を壊す、といった程度では留まらないのです。
 韓国の内政の混乱は必ず、周辺に波及します。日本も「韓国人のいつもの内輪もめ」などと、突き放して見ているだけでは済まないのです。
野党の拒否権をはく奪
問:韓国の法治を文在寅政権が本格的に壊し始めたのですか?
答:「政府高官の不正を見逃さない」をうたい文句に,大統領の直轄組織「高位公職者犯罪捜査処(略称:公捜処)」が韓国で近く発足します
 独占的な力を誇ってきた検察権力を解体する政策の一環として設立します.が,保守派は左派の新たな権力装置になるとして「文在寅のゲシュタポ」と呼んでいます
 公捜処は大統領や首相を含む上級の国家公務員,国会議員,将官級以上の軍人,地方自治体の首長と,それらの家族に対する捜査権を持ちます.さらに長官,裁判官,検事,警察の上級職員と,家族に対しては捜査権に加え,起訴権も持ちます
 公捜処の設置法は2019年12月30日,左派の与党「共に民主党」による強行採決により国会を通りました.ところが,保守の野党第1党「国民の力」の抵抗で公捜処のトップである「処長」を決められず,組織も動き出せないでいました
 処長を決める推薦委員会は,野党が推す2人を含む7人の委員で構成します.ただ,「6人以上の同意が必要」と設置法は定めていたので,野党が「拒否権」を発動したのです
 そこで与党は「5人の同意があれば良い」とする改定案を提出したうえ12月10日に強行採決,可決しました.近く与党の推す候補者が処長に決まり,公捜処は年明けにも正式発足の見込みです
 公捜処の検事は文在寅政権の息のかかった左派の弁護士らで占められると見られています.検事らの任期は9年間.仮に,2022年の大統領選挙で保守が政権を奪還しても2030年までは「左派の公捜処」が続きます
保守が弾圧される番
問:野党の反対は執拗だった…
答:当然です.公捜処の権限は極めて強大です.保守の政治家を乱訴するなど弾圧が容易になります.大統領選挙直前に保守の候補者を訴えるといった手口を使えば,左派の政権独占に道が開きます
 軍事独裁と非難された1987年までの強権的な政権の時代には,検察や裁判所は手下となって野党や民主化運動を弾圧しました.もちろん選挙でも野党は不利な立場に置かれました.韓国の保守は,今度は自分たちがやられる番だ,と青ざめているわけです
裁判所の査察機関に
問:公務員の監督機関が政権の手先になるというのですか?
答:韓国は日本や欧米の水準から見て法治国家とは呼べません.検察は法律を極めて恣意的に適用し,思うままに訴えることができます
 産経新聞ソウル支局の加藤達也記者が朴槿恵大統領に対する名誉棄損で起訴され,出国停止になった2014年の事件を思い出して下さい.朝鮮日報を引用した記事が訴えられたのに,朝鮮日報はまったくのおとがめなしでした
 当時,中央日報は社説で「加藤記者と産経は普段から度が過ぎる嫌韓報道で批判されていた」と,容疑とは関係のない理由を掲げ,起訴を正当化しました(『 米韓同盟消滅 』第3章第4節「あっさりと法治を否定」参照)
 韓国では検察など権力側だけではなく,メディアを含む社会全体に法治意識が希薄なのです.法律は個人を守るためではなく,権力者が力を振るうために存在する,と韓国人は考えているのです
問:韓国にだって裁判所があるでしょう. 
答:確かに,裁判官の中には先進国のように法律を公平に適用し,まともな法治国家を作りたいと考える人もいます.それだからこそ,与党―文在寅政権は公捜処の捜査・起訴対象に裁判官を入れたのでしょう
 公捜処が反政府的な政治家を起訴した際,どんな無理筋の起訴であっても,政権の報復を恐れる裁判官が有罪判決を出しかねない.実際,1987年まではそうだったのですから.権力を持つ側が保守から左派に代わっただけの違いです
 政府系紙のハンギョレでさえ「公捜処の捜査対象は7千余人…まずは検事の不正に集中か」(12月11日, 韓国語版 )で,「捜査対象7千余人のうち,裁判官が3千余人ということから,公捜処が裁判官の査察機関に転落しうるとの懸念もある」と書いています.記事の最後に,ちらっとですけれど
退任後の防御兵器としても最高
問:公捜処は保守を攻撃する究極兵器になるのですね
答:同時に,権力を防御する兵器としても威力を発揮します.他の捜査機関が捜査に乗り出す際は公捜処に報告する義務があり,その判断次第で公捜処に捜査を移せると設置法は定めています
 今後は,警察や検察が大統領やその側近の不正を暴こうとしても,公捜処に捜査を取り上げられてしまう可能性が大きい
 2019年10月14日,「疑惑のタマネギ男」と評された曺国法務部長官が辞意を表明しました(「 曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター,戒厳令の可能性 」参照)
 その後,検察は同氏の妻を娘の入試不正に関連した文書偽造罪などで逮捕.曺国氏も職権乱用の疑いで在宅起訴しました
 曺国氏は文在寅大統領の後継者とも目された人です.その時から公捜処が存在していたら当然,検察ではなく公捜処が事件を担当することになり,本人も妻も起訴を免れたであろう,というのが韓国での常識です
 曺国氏が法務部長官を辞めることもなかったでしょうし,文在寅政権の動揺も避けられた.公捜処は権力の防御兵器としても万能なのです
 保守系紙,朝鮮日報の12月11日の社説の見出しが「民弁検察の公捜処,政権が代わっても文政権の捜査を防ぐ『歯止め』に」( 韓国語版 )でした
 民弁とは左派の弁護士団体「民主社会のための弁護士の集まり」を指します.この社説は,左派が主導する捜査機関を作り上げた以上,文在寅大統領が退任後に起訴されることはない,と解き明かしたのです
 韓国の大統領の多くが退任後に検察に起訴されました.保守の大統領経験者を2人も監獄に送った文在寅政権も大きな恨みを買っていますから,わが身を守る「歯止め」が必須なのです
指揮権を発動した法相
問:これで文在寅大統領はひと安心?
答:そうでもないのです.靴の中の小石のような,気がかりな問題がひとつ残っています.尹錫悦検事総長の存在です
 尹錫悦総長は曺国氏に限らず,文在寅政権の高官の関与が疑われる事件の捜査に手加減をしない.この硬骨漢を放置すれば,公捜処が発足する前に政権幹部が起訴され,暗部が暴かれる可能性もある
 そこで,曺国氏の後任の秋美愛法務部長官は2020年1月に人事権を発動,政治が絡む事件の捜査を担当する検事を一斉に左遷しました.尹錫悦総長にまったく相談せずに,です(「 独裁へ突き進む文在寅 青瓦台の不正を捜査中の検事を“大虐殺” 」参照)
 それでも尹錫悦総長は怯まず,捜査を続けさせた.業を煮やした秋美愛長官は2020年10月19日,政権幹部の不正につながりそうな事件と尹錫悦総長の親戚に関わる事件に指揮権を発動,尹錫悦氏を捜査ラインから外して検察内で孤立させたのです
 すると,国民の間で尹錫悦総長の孤独な戦いに注目が集まり,次の大統領にふさわしい人として世論調査で1,2位を争うまでになりました
捜査対象第1号は検事総長
 有力な候補者を持たない保守は「しめた」とばかりに大統領選挙に担ぐ姿勢を見せました.尹錫悦総長はリベラルな性向の人であり,だからこそ2019年7月,左派の大統領から任期2年の検事総長職を任されたのです.保守の思惑通りに進むかは極めて怪しいのですが
 それでも2020年11月24日,秋美愛長官は尹錫悦総長の職務を停止したうえ,懲戒を求めると表明しました.大統領選挙への出馬を邪魔する目的もあると見られています.懲戒を決める委員会は2020年12月15日に開かれます
 検事総長の職務停止と懲戒に対し,すべての高等検察庁と地方検察庁に所属する検事が2020年11月30日までに反対を表明しました.聯合ニュースが「全国59の検察庁の平検事が声明に出た…釜山西武支所も最後に」(11月30日, 韓国語版 )で伝えました
 一方,与党側は「公捜処が発足すれば,捜査対象の第1号は尹錫悦だ」と公然と語り始めています.もちろん,総長支持に回った検事も,何らかの罪を着せられる可能性が高い
 先ほど引用した 2020年12月11日のハンギョレの記事 の見出しに「まずは検事の不正に集中か」とあるのも,公捜処の初仕事が保守の牙城である検察の征伐にあることを明白に示しています
再現する李朝の党争
問:要は,保守の息の根を止めるための組織ということですね
答:その通りです.さらに,左右の泥沼の戦いの中で,政治を安定させるためのルールも破壊されたことに注目すべきです
 秋美愛長官は4か月間に3回も指揮権を発動しましたし,検事の人事権にも介入しました.韓国憲政史上,指揮権発動は過去に一度あっただけです.法務部長官が検事総長の懲戒を要求するのは初めてのことです
 韓国の内部対立はこれまでとは異質の次元に入ったのです.「韓国人のいつもの内輪もめ」と見過ごしてはなりません
問:韓国人も「異次元」と見ているのですか?
答:ええ,危険な状況になってきたと見る人が増えています.依然として新聞は政界と同様に保守と左翼に分かれ,相手を非難し合っています.が,冷静に自分の国を見つめる韓国人からは「李朝時代の党争の再現だ」との,ため息が漏れてきます
 李氏朝鮮の指導層は派閥に分かれ,激しく戦いました.韓国では「党争」と呼びます.派閥の間に大きな意見の違いがあったわけではなく,対立が対立を呼ぶ単なる権力闘争でした.李朝はこの党争により疲弊し,国家としての判断を誤ることもしばしばありました
 西洋が東洋を侵略してきた19世紀,日本が上手に対応したのに比べ,朝鮮が失敗して日本の植民地に転落したのも「党争」によるところが大きいと韓国では信じられています
問:その党争が今,始まった…
答:ええ.左右が相手を倒すことに全力を挙げる.検察への人事介入や指揮権発動といった,歯止めのない戦いを防ぐ禁じ手が安易に使われるようになった.これでは李朝時代と変わらない―と識者は嘆きます
 韓国人が「党争」を比喩に使い始めたら,状況が相当に深刻と考えるべきです.なにせ,国を滅ぼした主因が再現した,という認識なのですから
新型肺炎,初の千人超え
問:左右に妥協の余地はない?
答:ないと思います.2022年5月の大統領選挙まで1年半を切りました.韓国は「生きるか死ぬか」の政治の季節に入ります.今後,あらゆることが争いの種となって衝突が日常化するでしょう
 韓国も日本同様,新型肺炎の第3波に襲われています.2020年12月12日午前零時現在の1日の新型肺炎の感染確認者数は950人と過去最高を記録
 翌13日にはそれが千人を超えて1030人にのぼりました.14日は718人でしたが,日曜日明けの発表なので少なめに出ている可能性が高い
 文在寅大統領は状況を完全に見誤っていました.12月9日,「政府の防疫能力を信じて欲しい」「長いトンネルの出口が見える」と国民に楽観論を語っていたのです
 感染者数が史上最高を記録した12月12日,朝鮮日報は「文は3日前にはトンネルの出口が見えると言ったが,今や『コロナ非常事態』」( 韓国語版 )と政権攻撃に出ました
 決定的にこの政権の足をすくうことになりそうな失態が,ワクチンをちゃんと手当てしなかったことです
 韓国政府は2020年12月8日,「国際機構経由の1千万人分のほかに,海外の製薬会社と直接契約し3400万人分のワクチンを確保した」と発表しました.韓国の全人口は5千万人強ですから,約85%の国民にワクチンを接種できると約束したのです
 しかし,ファイザー製(1千万人分)とモデルナ製(同),それにヤンセンファーマ製(4百万人分)はいつまでに輸入できるか,約束を取り付けていません.専門家は「世界中の国がメーカーに殺到し在庫が不足する今,時期不明では意味がない」と酷評しています
 アストラゼネカ製(1千万人分)だけは2021年第1四半期に輸入できる契約ですが,同社の臨床試験が思うように進まないため,実用化が予定よりも遅れるとの見方が増えています
 中央日報は「<ユン・ソクマンのニュースの嘘>K防疫を自画自賛する政府が語らぬ秘密」(12月12日, 韓国語版 )で,こうした事実を指摘したうえ「世界から称賛されていると文在寅政権が誇る韓国の防疫体制は日本にも劣る」と嘲笑しました
日本にも流れ弾
問:日本よりも劣る,と言われては…
答:韓国式防疫―K防疫で日本に勝った,と快哉を叫んでいた韓国人にとって,さぞ腹立たしい指摘でしょう.今後の流行次第では,政府への不信感が燃え上がるでしょう
 新型肺炎だけではありません.韓国の社会構造はどんどん不安定になっています.1987年の民主化でいったんは図られた左右の間の妥協が,貧富格差の拡大で崩れたからです
 左派が「1987年の不完全な民主化」という言葉を常用するようになっています.まだ,革命が足りない,との主張です
 外交面でも米国との同盟をとるのか,中国側に行くのか,あるいは北朝鮮という同民族国家との融和に賭けるのか―の選択が浮上しており,国内対立を加速すると思われます
 繰り返しになりますが注意すべきは,これまでとはケタ違いの激しい内紛が韓国で起きる可能性が出てきたことです.流れ弾が日本にも飛んでくることも覚悟した方がよさそうです
「無法時代」到来を告げた総長への懲戒
鈴置: 驚きました.文在寅大統領をヒトラーと見なす記事が韓国の保守系紙に載りました.大統領側が報復に出るかもしれません.載せた中央日報は政権と全面対決する覚悟を固めたのでしょう
 筆者は同社コラムニストのチョン・ヨンギ氏.政治部長,編集局長を歴任した韓国を代表する記者の1人です
 12月16日早朝,法務部の懲戒委員会は尹錫悦検事総長への停職2か月の懲戒処分を決め,大統領も直ちにそれを認めました.翌17日,尹錫悦総長は懲戒処分の執行停止申請と,処分の取り消し訴訟を起こしました
 問題の記事「 <チョン・ヨンギのパースペクティヴ>尹錫悦への迫害に加勢…『宗教が権力に仕えてはいけない』 」(12月17日,韓国語版)はこの事件を論じたものです.第1段落のポイントを訳します
・昨日の法務部による尹錫悦検事総長の懲戒は,無法時代の開幕を告げるものだ
・「共に民主党」政権の人々は尹錫悦を切って捨てたうえ,監獄に送ることまで可能にする高位公職者犯罪捜査処(公捜処)改正案も通過させたと祝杯を上げているようだ.さて,本当にそうなるのか
・権力が無法時代を創り出せば,その被害は権力こそが被る.最後に悲惨な横死を遂げるのは支配者だ.まず,民心が離れる.その抵抗により力を使い尽くす
・国内の分裂と憎悪が,敵に対する時以上に激しくなる.外国から侵略されても壬辰倭乱の時のように助けてくれる国民が出てこない
 チョン・ヨンギ氏は「無法時代の開幕」と断じました.懲戒委員会の決定は法理上からも手続き上からも無理筋と,韓国の保守は主張します.そもそも法務部長官が検事総長を懲戒委員会にかけること自体が検察の中立性を損なうと彼らは強調しています
ヒトラーと握手する神学者
…見出しの「宗教」とは?
鈴置: このくだりの後に「宗教」が出てきます.それがこの記事の個性的なところです.第2段落は旧約聖書の引用です
・戦争をしたくてしかたない王に気に入られようと,400人もの偽預言者が「進軍なさい.勝利は王さまのものです.神もその城を王に手渡すでしょう」と告げた
・戦争に反対したのはたった1人の真の預言者だけで,怒った王により牢につながれてしまった.結局,王は戦いに敗れ,自身も戦死した
 チョン・ヨンギ氏は韓国でも同じことが起きた,と嘆きます.文在寅政権が,その中枢への捜査をやめない尹錫悦総長を排除しようと検察改革に乗り出した.すると,韓国のカトリックの司祭らが一斉に検察改革を叫んだからです
 チョン・ヨンギ氏の筆はナチス時代のドイツに及びます.ヒトラーが政権を握ると,3年前まで全体主義的なナチ党への入党を信者に禁じていたドイツのカトリック教会は180度,態度を変え,禁止令を撤回したうえ「正当な権威への服従」を呼びかけたと言うのです
 ヒトラーに忠誠を誓ったドイツのカトリックと,文在寅大統領にゴマをする韓国のカトリック….ヒトラーと文在寅氏を重ねて描いたのです.写真も「ヒトラーと握手するドイツの神学者」を使っています
ナチス型の全体主義と通底
 さらに,文在寅政権の民主主義破壊はヒトラーの全体主義と通底する,とも指摘しました.宗教者の言葉を借りてですが.以下です
・カトリックとプロテスタントの人々が行動を共にする.文在寅政権になって始まった民主主義の破壊現象が,ヒトラーのドイツ型全体主義やチャベスとマドゥロのベネズエラ型動員社会主義の要素を一部に持っていると見る何人かの信者により,連帯が始まった.人権と法治,個人の自由と三権分立など,民主主義の基本的な価値を守ろうとの精神を共有する
・12月10日にgoogleのリンクを通じ「検察改革に名を借りて権力の侍女に転落した偽りの宗教人を糾弾する」声明書の草案が回覧されるや否や,3日間で1485人が実名と所属教会を明らかにして署名に参加するという爆発力を見せた
民主化を主導した韓国紙
…チョン・ヨンギ氏は宗教者への批判を隠れ蓑に「文在寅=ヒトラー」と訴えたのですね
鈴置: 「隠れ蓑」とまでは言い切れません.韓国では日本とは比べものにならないほどキリスト教の勢力が強く,宗教の弊害を説く人も多い
 チョン・ヨンギ氏は見出し通り「宗教は権力にゴマをするな」とも主張したかったのだと思います.ただ,「文在寅=ヒトラー」と指摘したのも事実です
これは政権を相当に怒らせる記事です.韓国紙の政府批判は厳しいけれど,大統領をヒトラーと決め付けることはまずない
 私が驚いたのは,中央日報が文在寅政権と闘う姿勢を明確に打ち出したことです.韓国は1987年に民主化したことになっています
ただ,その後も政権は様々な経路を通じ,メディアに圧力をかけてきました.この記事も中央日報社が覚悟を固めて載せたと思います
 1987年の民主化運動の最後のひと押しとなったのは,警察による大学生の拷問死事件を中央日報と東亜日報がすっぱ抜いたことです.これにより国民の怒りは頂点に達し,政府も民主化に向け譲歩を迫られました
 当時の全斗煥政権は現在とは比べものにならないほどの強権を振るっていました.両社とも潰されることを覚悟しての特ダネでした
文在寅の危険性をただ1人指摘
 その頃の韓国紙の記者には「我が国はこのままではだめになる」との痛切な思いがあった.その思いと権力と向き合う気合いを傍で見て,自然と頭が下がったものです
 当時の韓国記者が今の,ネットでの読者数を稼ぐために政府から配られるネタを適当に書き散らす記者を見たら,どう思うのだろうかと時々,考えます
 チョン・ヨンギ氏は文在寅氏の危険さをいち早く指摘した記者です.2017年の大統領選挙戦の最中,「米国が北朝鮮を先制攻撃する際,どう対応するか」と聞かれた文在寅氏は,北朝鮮にそれを知らせる,と答えました
 この発言を批判的に報じた韓国メディアがほぼ,皆無だったことには驚かされました.その中で,チョン・ヨンギ氏だけが「米国にとって韓国は戦争の機密を敵国に渡す国になる」と指摘しました( 『米韓同盟消滅』 第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)
政府系紙も「中立性毀損」に言及
…今の韓国も「このままではいけない」のですか?
鈴置: チョン・ヨンギ氏が記事の冒頭で書いたように「無法国家に転落した」のです.検事総長への懲戒処分は「無法」と批判されても弁解できません
 秋美愛法務部長官は11月24日,メディアとの癒着や政界への転身希望表明などを理由に,尹錫悦総長に職務停止処分を下したうえ,同氏への懲戒を請求すると発表しました.これに対し尹錫悦総長は裁判所に職務停止処分の執行停止を申請しました
 法務部の監査委員会も裁判所も職務停止処分を認めませんでした.前者は手続き上の瑕疵,後者は「尹錫悦総長の勝訴の場合にも,職務停止による損害を回復できない」との理由からです.その後,法務部の懲戒委員会が2か月の停職という懲戒処分を下したのです
 政府系紙,ハンギョレは社説「 初の検察総長懲戒,大統領が率直な説明を 」(12月17日,日本語版)で,今回の懲戒委員会の停職処分を「検察に対する民主的統制」と評価しました
 それでも「検察の中立性の毀損という一部の懸念に大統領は答えよ」と書かざるを得ませんでした.政府系紙とはいえ,「法治の破壊」との批判を無視できなかったのです
「無法」国家になれば,ただでさえ激しい左右の対立に歯止めが効かなくなります.デイリー新潮の「 『公捜処』という秘密兵器で身を守る文在寅 法治破壊の韓国は李朝以来の党争に 」でも指摘したように,指導層の内部抗争で滅んだ李朝の再現です
握りつぶされるコップ
…チョン・ヨンギ氏の警告は韓国人の耳に届くでしょうか?
鈴置: 届かないと思います.世論調査機関,リアルメーターが12月16日, 今回の懲戒に関する評価 を聞きました.「重すぎる」と答えた人が49・8%,「軽すぎる」が34・0%,「適切だ」が6・9%でした
 「軽すぎる」と「適切」を足すと40・9%.「重すぎる」の49・8%とさほど変わらない.左派の人々には「民衆を弾圧してきた検察のトップ」への懲罰は痛快な出来事と映っているのです
 保守系紙が「法治が崩壊する」と警鐘を鳴らしても,左派の耳には「保守の悲鳴」としか聞こえない.そこでチョン・ヨンギ氏は先に引用したように,政権が支持を失い国民が離反すれば外国の侵略に耐えられなくなる,との論理で説得を試みたと思われます
 「コップの中の嵐」をやっていると,外の大きな手でコップごと握りつぶされるぞ,との警告です.左右対立で周りが見えなくなっている韓国人の目を覚まそうとしたのでしょう
 韓国は今,国際的に孤立しました(「 蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに 」参照)
 そのうえ,内輪もめに明け暮れれば,周辺国から手を突っ込まれ,国の自主性を保てなくなります
王宮を略奪・放火した朝鮮の民
…記事は「文禄・慶長の役」に言及しました
鈴置: ええ,チョン・ヨンギ氏は「文禄・慶長の役の時のように政権は国民に見捨てられるぞ」と述べました.それ以上は言及していませんが,以下の史実を念頭に置いて語っていると思います
・日本軍の侵攻当初,朝鮮の普通の人々はそれを見守るだけだった.それどころか王が逃げ出した王宮を略奪,放火するなど日ごろのうっぷんを晴らした.派閥争いに血道をあげ,民の安寧を顧みない指導層に多くの国民が愛想を尽かしていたからだ
…なるほど!当時と似てきましたね.でも今回は,日本が攻めて行くわけでもない
鈴置: 軍事的に攻める時代ではありませんが,外交的には今が「攻め時」なのです.例えば,韓国政府が駐日大使に内定した姜昌一氏の問題
 産経新聞は社説「 韓国次期駐日大使 改善にふさわしい人物か 」(12月12日)で「『日王』と天皇陛下を格下げして呼ぶ人物は日韓関係の改善に寄与しない」と主張しました
 日本政府が姜昌一氏の駐日大使就任にアグレマンを出さなくても,韓国政府は反撃しにくい状況です.韓国の保守系紙もこの人事に疑問を呈することで,政権批判に拍車をかけているからです.(「 韓国は『アグレマン』前に駐日大使を発表した 『北朝鮮一点買い』で延命図る文在寅 」参照)
 それに2019年,米政府も駐米大使に内定した文正仁大統領統一外交安保特別補佐官へのアグレマンを拒否しています.理由は明かしていませんが,文正仁氏の反米的な姿勢を嫌ったと見られています.韓国の孤立を物語る事件でした
ベネズエラにも似てきた
…では,日本はアグレマンを出さない?
鈴置: 日本はカンが鈍い国になりましたから,この「チャンス」を見逃す可能性が高い.でも,中国や米国は韓国の内紛につけ込んで自分の勢力を拡大しようとするはずです
 韓国との同盟に重きを置かないトランプ政権から一転,バイデン次期政権は同盟国重視の姿勢に転換します.韓国への「介入」が本格化するのは間違いありません
 激しい左右対立で混乱するベネズエラには今,米中両国が介入しています.チョン・ヨンギ氏が記事の中で,文在寅大統領をヒトラーに加え,チャベス氏らベネズエラの左翼政権のリーダーに例えているのが何やら象徴的なのです

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