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「ドナルド・トランプ大統領の弾劾調査公聴会」は「紅白歌合戦」のようなもの?
 個人的な印象を言えば,年末恒例の紅白歌合戦を一足先に見ている感覚に近い.紅白も興味がある人と,ない人の温度差が激しいが,今こちらの主要メディアは弾劾報道一色の一方で,筆者が住んでいるシカゴまで来ると,弾劾報道にさほど興味がなく日常を送っている人も多い.そして,紅白出場歌手がどれだけ真剣に勝負をしても,その結果が翌年の日本の社会に影響を与えることはまずないように,この弾劾騒動も,終わってみればその程度の影響だろう
 もう少し突っ込むと,下院情報委員会による前半戦の焦点は次の2点だった
1点目は,トランプ大統領が,自分の選挙のためにジョー・バイデン候補の息子の疑惑調査を,直接ウクライナ大統領に頼んだかどうか
2点目は,その際にアメリカからウクライナへの軍事援助を人質にしたかどうかだ
 便宜的にここからは民主党を「紅組」,共和党を「白組」とするなら,2部構成の前半戦は,どうやら白組のリードで終わった.もし下院が弾劾を採決しても,共和党が過半数を占める上院で3分の2以上の賛成を得るのは不可能だ.よって勝敗は一連のパフォーマンスが有権者に与えたインパクトで計るしかない.結果として,直近の調査で,トランプ大統領は無党派層の支持を増やした.ならば前半戦は白組のリードで終わったということだ.中立的に考察すると「匿名の密告者の2次的な情報で議会の時間を費やし,他の重要法案への審議がストップしている」という白組の主張は,紅組の熱演やパフォーマンスより効果的だったということなのだろう
 これを受け,今はCNNでコメンテーターを務めるダン・ラザー氏は「なぜ無党派層はトランプ大統領に怒らないのか」と,本人としては意外だったようなコメントした.さらに,同じCNNでは,トランプ大統領のコアな支持者のアメリカ人を「カルト集団」と言い放った
 どうやら主要メディアと民主党関係者は苛立っているようだが,個人的にはこの苛立ちの方が民主党にとってリスクだと思う.トランプ支持者(約6300万人)を「カルト」呼ばわりするのは,2016年,優位だったヒラリー・クリントン候補が「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」の赤い帽子をかぶったトランプ支持者を「Deplorable」(粗野で下品)と呼んでしまったことを彷彿させる.2016年,筆者はここでのコラムを,トランプ勝利を前提に書いていたが,トランプ勝利を確信したのは,実はこの時だった.どうやら民主党は基本的には何も変わっていない
 そんな中,弾劾審査は今週以降,下院司法委員会へとバトンが渡る.同院の情報特別委員会をリードしたアダム・シフ委員長に比べ,司法委員会をリードするジェロルド・ナドラー委員長は共和党には組みやすい相手だ.トランプ政権側からはすでにヤマ場は過ぎたような余裕がうかがえる
 だが,女性とリベラルの権利を守る最後の守護神のような立場にされてしまったルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事の再入院のニュースなども流れており,危機感から,人種や老若男女を問わずリベラルが結束する可能性も十分ある
もし英国の総選挙で保守党が負けたらどうなるか
 つまり,戦いの本番はこれからだろう.筆者の個人的な関心はアメリカ国内ではなく,むしろ12月12日の英国の総選挙にある.現在保守党が有利ということだが,本当に保守党が勝つのか.もし保守党が負けて BREXIT(英国の欧州離脱)がとん挫するようなことになれば,その影響は2020年のアメリカの大統領選にも影響する
 つまり,グローバリストが勢いを取り戻し,トランプ大統領は苦しくなるだろう.そうなれば,好調な今の株価の前提となっているトランプ大統領の再選確実の思惑は消える.だからこそ,あのスティーブ・バノン氏は,今英国から独立党のナイジェル・ファラージ党首を支えた参謀をアメリカに招き,共同で弾劾プロセスと戦うトランプ大統領を援護する新メディア戦略を展開しているわけだ
 ちなみに再選まであと1年となった段階での過去の共和党の大統領の「3年間の株価の位置」は以下のとおりだ(高パフォーマンス順)
 1)41代ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(父):+58.2%,
 2)ドナルド・トランプ大統領 +53.2%
 3)ロナルド・レーガン大統領 +43.8%
 4)リチャード・ニクソン大統領 +1.5%
 5)43代ジョージ・W・ブッシュ大統領(息子) -22%

 これをみると,トランプ大統領とほぼ同じ株のパフォーマンスだったパパブッシュは再選に失敗している
 再選するために株を早めに上げるのは必ずしも成功しない.むしろ,モメンタム(勢い)の管理がより重要ということだ.一方で反作用のリスクを承知で,なぜナンシー・ペロシ下院議長は弾劾を決断したのか
ディープステートの起源は?
 恐らく,日本からアメリカを眺める多くの人が疑問に感じるのは,いろんな案件で破天荒なトランプ大統領だが,「なぜ民主党はここまでウクライナ問題に固執したのか」だろう.実はここを押さえることは日米関係にも重要で,そのためには,最近耳にするようになった「ディープステート」という言葉の解説が必要になる
 まず,ディープステートという言葉は,民主党関係者や主要メディアは使わない.使うのはトランプ大統領を支持する側のFOXか,ネット系メディアの人たちだ
 筆者がこの言葉を最初に知ったのは,2016年,トランプ大統領が「Drain The Swamp(ワシントンDCのどぶ池の水を抜こう)」というスローガンを掲げ勝利した直後,「ワシントンDCのディープステートが,合衆国憲法25条を使い,民主主義の結果としてのトランプ大統領誕生を否定しようとしている」というウェスタンジャーナルのレポートだった
 初耳だったので調べてみると,語源は百年以上前に遡る.当時はまだ覇権国家だった英国が,英国から覇権を奪うことが確実なアメリカに対し影響力を残すため,まずローズ奨学金を使って優秀な若者をオックスフォード大学へ招く.そして,その若者がハーバード大学へ帰り,次世代のエリートを育むシステムを構築し,そこから巣立った関係者とシステムをディープステートという,との解説があった
 なるほど,確かに冷戦期に活躍したヘンリー・キッシンジャー氏やズビグネフ・ブレジンスキー氏などはこのシステムのなかでアングロ・アメリカンの世界支配を確立した立役者だ
 だが,今トランプ関係者が使うディープステートの意味は全く違う.彼らが指すのは,冷戦終了後のクリントン政権からワシントンの国務省やNSC(国家安全保障会議)傘下のCIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)などの国家機関で活躍してきた高級官僚のことだ
 冷戦終了は世界史上初めて,アメリカ一国による世界支配が始まったことを意味した.この時代の特徴は,ソ連という敵が消えても,アメリカの高級官僚は「アメリカ特別主義(American Exceptionalism)」という理想を掲げ,さらなる高みを目指していたことだろう.その象徴のようなクリントン政権で国務長官を務めたマデレーン・オルブライト氏の有名な言葉,「If we go higher, We can see further」 (より崇高な理想で自由民主主義を世界の隅々まで.ジョン・ミアシャイマ―教授の講演から)には,1極時代を迎えたアメリカのエリートの意気込みがある
 その結果,この頃からグローバリズムが強化され,EUや国連,そしてWTO(世界貿易機関)などの国際機関の役割が増した.だがその後の子ブッシュ政権のイラク侵攻.そしてクリントン時代の外交を引き継いだオバマ政権では,復活したウラジミール・プーチンのロシアとの間で,ウクライナとジョージアをEUとNATOへ加入させる駆け引きが繰り広げられた
 それを完了させるはずだったヒラリー氏が大統領選で負けてしまったことで,アメリカ特別主義を信仰するディープステートたちの野望はとん挫した.さらに悪いことに,アメリカ特別主義の理想ではなく,真逆な「アメリカファースト」という利己主義を掲げるトランプ大統領は,外交に彼らとは異質の人材を登用した.選挙では選ばれていないが,歴代の政権を支え,外交は自分たち専門家が担うべきとのプライドがある官僚からすれば,トランプ政権は,どん手段を使っても早く終わらせる必要がある
 筆者からすると,選挙を控え,民主党を束ねるペロシ下院議長は,このディープステートの思惑に便乗したのだと思う.その背中を押したのが,小委員会委員長で,国家機密や情報分野で実績を積んできた前出のシフ議員だ.ただ,国民の興味という点で少し計算違いがあった.それが今の結果につながっている
 ところで,このディープステートに国際金融のエリートを入れる人がいるが,それは間違っていると断言しよう.なぜなら,国際金融が支配する市場力学は「ディープ」な存在ではない.むしろ,今の時代,外交上も軍事力の脅しの前にかならず経済政策で使われるフロントフェイスの前提条件だ
今のアメリカは本来とは全く違った様相を呈している
 その頂点に立つアメリカの中央銀行のFEDは,事実上立法・行政・司法に匹敵する4つ目の国家形態の根幹をなす.だが日本の報道では,「アメリカの中央銀行はFRB」という間違った報道を続けている.言うまでもなく,アメリカの中央銀行はFRB(federal reserve board)でなく,FED(Federal reserve system)だ
 正確に言えば,連邦国家のアメリカには,日本銀行に当たる組織はなく,その役割は,元々は民間組織の地区連銀(実質NY連銀)と彼らを統括するワシントンの国家機関のFRB(連邦準備理事会)で構成されている.そして政策金利の決定するFOMC(米公開市場委員会)は,FED法とは別のFOMC法で運営されおり,議長はFRB議長が兼任するが,副議長は民間組織のNY連銀総裁が担当する.政策決議はFRB理事と連銀総裁の5人のメンバーによる決議なので,FOMCがオバマ政権からトランプ政権へ移行期のようなFRBから4人,連銀から5人の状態では,FRB理事が議長の下で統一しても,連銀5人が反対すれば,理論上はFRB議長を覆せる
 だが,FED成立は日銀設立よりもずっと後の1913年であることは重要だ.GDPでアメリカが英国を抜いたのは1902年という試算があるが,概ねそのあたりなら,アメリカは中央銀行なしで世界最大の産業大国になったことになる.個人的には,これこそが本来のアメリカの資本主義の偉大さと考えているが,昨今は違った様相になっている
 ある意味,それが今の株高を支えているのだが,最近のNHKでの麻薬所持を扱ったニュースで「段々と効かなくなる,するともっと量を増やす.それでもだめなら別のモノに進む.どんな予期せぬ副作用があるかは全くわからない・・・」という解説が流れたのを聞いて,個人的にはそのニュースの主人公の女優の話ではなく,全く別の人の顔を思い浮かべてしまった
 いずれにしても ディープステートにせよ,中央銀行にせよ,エリートが高邁な理想で突き進んだ結果が常に万民にとって良いことになるとは限らない
  1776年の7月4日,北アメリカ大陸の東側に位置した13の植民地の州は,本国に対し,独立を宣言した.その日から244回目となる今年の7月4日.最新の調査では,なんと アメリカ人の大人の25%が,その13州が誰から独立したのかを知らない という
7月4日は「依存記念日」か「救済記念日」になった
 もし自分がアメリカ人なら,「オバマ前政権は大変なことをしてくれた」と嘆くところだ.同政権の8年間はちょうどアメリカで育った筆者の子供たちが,中学から高校の時期と重なった
 周りのアメリカ人の父親と比べ,子供の教育に熱心だったわけではないが,当時オバマ政権が数学などの理系重視へ舵を切り,彼らが通う公立学校では,歴史の時間を減らす指針を出したことは,一抹の不安として頭の片隅に残っていた(ちなみにその公立校とは,ヒラリー・クリントン氏が通った学校である)
 不安は的中した.今年の7月4日は,白人警官によって殺されたジョージ・フロイド氏の顔は街のいたるところに描かれ,一方最も有名な建国の父,ジョージ・ワシントンの銅像が無惨な姿になったことは,日本でも報道されたとおりだ
 このように,コロナ禍に追い打ち掛けるように,人種差別への反動の嵐に見舞われているアメリカでは,トマス・ジェファーソンの独立宣言の最も重要な一文 「Pursuit of happiness」(幸福の追求)も形骸化している
 建国の父たちの,独立の最大の目的は,Liberty(勝ち取った自由)とFreedom(元来からの自由)だ.そこでは幸福は誰かに与えられるのではなく,自分の力で目的を達成する自由があること.それ自身が幸福であり,アメリカは,誰にも邪魔されず,その環境を提供する国として独立しなければならない.それが独立宣言の骨子だった.だが,どうだろう.今のアメリカ人の多くはフリーダム(Freedom)など求めてはいない.多くはフリー・スタッフ(無償の施し)を求めて行列をつくっている
 この現実にトランプ政権も呼応.ナンシー・ペロシ下院議長が2兆円規模の新規の経済対策を準備したなら,選挙戦の巻き返しを狙うトランプ政権は,秋までにそれを上回る救済策を準備しているという
 こうなると,今年の7月4日は,独立記念日というより,「依存記念日」か「救済記念日」とするのが相応しい.その象徴が,本来は資本主義の牙城でなければならないはずの株式市場.そこでは株債券もすべての商品をFED(アメリカの中央銀行)がサポートし,参加者はそれを前提にして自分達のポジションを持っているだけだ
 では,ここから先,アメリカはどうなってしまうのか.政治では,ドナルド・トランプ大統領支持者と反トランプであるリベラル勢力の分断を最も代弁しているのは,マスクだ.マスクはコミュニティ重視か,自分の人権重視かの物差しになっている
今がアメリカの建国時と極めてよく似ているワケ
 言い換えると,トランプ大統領支持者は,警察や軍隊の統制力(オーダー)を重視するが,コミュニティーを重視せず,マスクをしない個人の権利を主張する.一方積極的にマスクをする都会のリベラル系と若者は,コミュニティー重視を主張するが,権力やオーダーを重視しない(警察の解体要求等).筆者には,どちらもワーク(機能)しないように思える.ただこの対立は,国家としてのアメリカが生まれた直後の脆弱さを彷彿させる
 まず,建国の父が目指したのは,民主主義ではなく共和制(君主を持たない政治体制)だ.独立宣言には民主主義(デモクラシー)という言葉は,一切出てこない
 ただ共和制の試みは,古代ローマ以降幾度か試されたが,結局は新しいキングが現れるか,それまでの王政が復古するか,あるいは他国によって滅ぼされるかのいずれかで挫折している.結局,古代ローマ以降,それに匹敵する共和制を建国から維持できたのは,今のアメリカだけだ
 ただ,そのアメリカの誕生における最大の試練は,独立戦争(1775~1783)そのものではない.それよりも,英国の敗北が決まった1781年のヨークタウンの戦いから,憲法が制定され,ジョージ・ワシントンが大統領に就任する年(1789年)までの「空白」の8年だったことは,複数の歴史家が指摘している.そしてこの期間が,まさに今のアメリカと同じような状態だった
 この時の建国の父たちの動向を振り返ると,独立戦争の英雄のジョージ・ワシントンは,役目が終わると故郷に引っ込んでしまった.また独立宣言に至るまでのリーダー達,ジョン・ハンコックやサミュエル・アダムスはボストンに戻り,ジョン・アダムスやトマス・ジェファーソンは,交渉相手だった英仏に滞在していた.彼らが不在の中,戦争には勝ったが,生まれたばかりのアメリカをどんな国にするのか.目標を達成した13州は,収拾がつかなくなってしまった
 多くの共和制の試みは,このタイミングで挫折している.フランスも英国も国王を殺して革命を起こしたが,結局は混乱の後で王制に戻した.そしてこの時のアメリカも,個人の権利を主張する年長の自由主義者(パトリック・ヘンリーなど)と,アメリカを強い国家にするには,各州が結びついた連邦国家が必要という若い世代(アレキサンダー・ハミルトンや,ジェームズ・マディソンなど)が分裂した
 そしてこの対立が5年以上長引き,国民の中には,英国のジョージ3世にもう一度統治を戻した方がいいという機運さえ生まれたという.だが,建国の父は諦めなかった.最後は憲法に,人権についての修正条項を入れることで妥協点を見つけた(権利章典の修正条項).そして,いつ分裂してもおかしくない「よちよち国家」の要として,初代大統領にはジョージ・ワシントンが選ばれた
 筆者には,この状況は,1992年に宿敵のソ連共産主義を倒し,目標を達成,その後クリントン政権時代のユーフォリア(熱狂的な陶酔状態)を経て,現在の分裂の危機に至った今のアメリカと同じに思える.だが,新しい国家が生まれた直後の分裂の危機と,240年後,その国が世界史上初めての単独覇権国家という頂点を極めた後の分裂の危機は同じ結果をもたらすだろうか
 前回の 「コロナショック後のアメリカに訪れる暗い結末」 では,「4thターニング理論」の概略(世の中は4つの小さな周期からなる約80年サイクルで回り,そのサイクルに各世代が大きく影響を受けること)を説明した.アメリカでは「最初の80年サイクルの4thターニング(4つめのサイクルにおける転換期)は,この独立時の混乱を指す
 2度目は,奴隷制度を巡って国内が血みどろの戦いとなった南北戦争(1861~1865,この時のアメリカは,独立戦争からイラク戦争まで,対外戦争でのすべての戦死者に匹敵する70万人もの戦死者を出している).3度目は大恐慌から第2世界大戦.そして,今回が4度目だ
 この理論を考えたニール・ハウ氏自身は,この4thターニングの後,「アメリカは再び栄光の時代を迎える」と予想している.だが,個人的には明るい未来のイメージは全くない.すくなくとも建国の父が残したアメリカ,日本が戦争で負けたアメリカは確実に終わっていくだろう.それが本当に明るい未来なのだろうか
 結論は次の世代が決めるとして,だからこそ,過去の「4thターニング」で迎えた大統領選挙は,その後の50年を決めてきたという前例は重大だ
 皮肉なのは,この事実に先に覚悟を決めたのは,この理論の信奉者であるスティーブ・バノンが支えるトランプ大統領ではなく,むしろ,この理論を否定していた民主党とリベラルメディアの方だったことだ.その準備の違いがここまでの選挙戦の様相だ
産経新聞 【宮家邦彦のWorld Watch】(2017年6月22日)に掲載
 この原稿は夜明け前のワシントンの定宿で書いている。今回は筆者が所属するキヤノングローバル戦略研究所と米シンクタンク「スティムソン・センター」共催によるシンポジウムでパネリストを務めた。日米の研究者・論客が「日米関係以外の問題」を議論するこのシリーズ。今回のテーマは「ユーラシア戦略」だった。なぜ「日米関係以外」にこだわるのか?
 筆者は冒頭、「日米関係者の、日米関係者による、日米関係者のための会合にはあまり関心がない」と述べた。今の関心は日米関係ではなく、国内分裂が進む米国の新政権が欧州・中東・アジアに対し、戦略的で地政学的に意味のある外交政策を適切かつ効果的に立案・実施できるか否かだからだ。筆者発言のポイントのみ紹介しよう。
 ユーラシアは欧州、中東、東アジアの3つから成り、そこにロシア、イラン、中国という現状変更勢力がいる。
 日本の国益は、自由な国際秩序を維持するため、これら3国の各地域での覇権国家化を阻止することだ。
 イランや中国の覇権国化は原油輸入の大半を依存する湾岸地域とのシーレーン維持という日本の国益を害する。
 欧州の独立・繁栄維持は、対露牽制だけでなく、中東地域の安定にも資するため日本の利益となる云々。
 アジア専門家の多い聴衆がどの程度理解したかは不明だ。
 それにしても、米国内の混乱は予想以上に深刻だった。筆者の空港到着数時間前、これを象徴する事件が起きている。ワシントン郊外の野球場で早朝、共和党議員などを狙って反トランプの民主党支持者の男が銃を乱射、銃撃戦の末、下院院内幹事ら5人が負傷したのだ。翌日彼らは恒例の議会民主・共和両党対抗チャリティー野球試合を控えていた。射殺された犯人は保守系共和党議員6人のリストを持っていた。明らかに政治目的の暗殺未遂事件だ。
 いくらトランプ嫌いとはいえ、民主党支持の白人老人がこんな事件を起こすとは誰も予想しなかった。その日と翌日だけは民主・共和両党とも「暴力に屈しない」と団結を誓っていたが、その後直ちに泥仕合が再開された。ロシアゲートをめぐる親トランプ・反トランプの溝が簡単に埋まるとは到底思えない。
 ホテルにいる間、テレビで親トランプのFOXニュースと反トランプのCNNを10分おきに見比べた。驚いたのは保守系のFOXニュースが「ディープ・ステートの報復、トランプ政権崩壊を望む」といった扇情的見出しの報道番組を終日繰り返し流していたことだ。ディープ・ステートとは「闇の国家」などと訳され、政府内の一部機関や組織が時の政治指導者の文民統制に従わず、勝手な行動をとる状況を指す。
 FOXテレビの有名なニュース・ホストによれば、「先月トランプ大統領に解任された前FBI長官も、司法省の副長官や特別検察官も、全ては『ディープ・ステート』の一員であり、選挙で選ばれたトランプ氏に対するクーデターをたくらんでいる」のだそうだ。
 面白いと筆者も書き始めたが、さすが産経新聞、ワシントン特派員が既に「ポトマック通信」で紹介していたことが判明した。彼の言う通り、一見信じ難い「陰謀論」なのだが、FOXのようなメディアが終日繰り返し報じれば、FOXしか見ない普通の視聴者はそれを信じるだろう。筆者ですら、保守系議員や知事などの、そうした発言に「なるほどね、そうだったのか」と洗脳されそうになるから結構恐ろしい。
 こう考えると、荒唐無稽と思えるトランプ氏の戦術も、意外に効果的なのだ。民主制度がポピュリズムや偽情報による洗脳に対していかに脆弱か、今回よく分かった。日本も例外ではない。
 17日 10月 2022ディープステート(または影の政府)とは、 有権者に選ばれた者ではなく、政府と選挙で選ばれていない官僚やキャリアによって運営されている組織
 ディープステートは、政府機関や軍隊の官僚、政府機関の外にいる意思を持った仲間(主流メディア、政党、ロビイスト、コンサルティング会社、大企業など)が連携して、政府の政策の決定、統制、操作に関与している。
 ディープステートは一般に、 リベラルでグローバリスト 、そして 反生命的な世界観 を持っており、最終的には 一つの世界政府のユートピア を確立することを目的としている。
 ディープ・ステートは、自分たちが手を伸ばしている権力を保護したり拡大したりするために、不必要に戦争を煽る。現在のウクライナ・ロシア戦争はまさにディープ・ステートが煽っているといえる。
 ディープステートは「行政国家」と似ており、巨大なFDAのような凝り固まったあらゆる連邦政府機関を含んでいる。
 また、ミッチ・マコーネル、ナンシー・ペロシ、チャック・シューマーなど、権力を維持することに固執する既成政治家は、時間とともにディープステートの協力者となりがちである。
  情報機関をはじめとする国家安全保障関連機関がディープステートの大部分 を占めると考えられているが、ディープステートはあらゆる政府機関に対して非常に強い統制力を発揮しているとみなされている。
 上級管理職はその顕著な例であり、 軍隊の現・元将軍の一部 もその例となる。
  外交問題評議会、ビルダーバーグ・グループ、三極委員会などの非政府組織 も、ディープ・ステートの一翼を担い、政府の政策に大きな影響力を持っている。
 また、多くの人が信じていることとは逆に、 少数の人々が世界経済をほぼ完全に支配 しており、ウォール街の利益と少数の裕福な左翼のグローバリストの寄付者がディープステートを構成している。
 ディープ・ステートが行った仕事の例としては、ドナルド・トランプ候補の元選挙顧問であるカーター・ペイジを盗聴するために、FISAを悪用して4種類の盗聴器を入手し、偽情報や暗示的な情報をまいたことがあげられる。ディープ・ステートはイギリスなどにも存在する。
 2017年2月、ドナルド・トランプ米大統領は、ロシアのスパイネットワークがトランプ政権獲得に貢献したという疑惑をめぐり、情報機関との戦いを公にし、ワシントンDCの既成政府を表す「ディープステート」という言葉が盛んに用いられるようになった。
 ディープ・ステートはトランプ政権を妨害し、解体することを望んでおり、NSAの情報アナリストであるジョン・シンドラーは、情報機関の友人から、トランプは「刑務所で死ぬだろう」と言われたという。
 世論調査のデータによると、公務員は社会主義の支持や憲法修正第2条の廃止など左派的な考えを持つ傾向がかなり強いことが分かっている。ディープステートの 真の目的は、民主主義を排除すること である。
 ヨーロッパでは、人々がまだ何らかの権利を有していると思わせるために、議会議員に投票することができるが、 EUのリーダーは選挙で選ばれていない。他の国家の長達が指名する 。投票によって政府を打倒する民衆の権利を、うまく排除する仕組みを作り上げている。
 その中心人物3名が、 ソロス、ゲイツ、シュワブ である。それぞれが、異なるものを提供している。
 シュワブは、より経済面においてです。彼はいわば『マルクス主義の万能薬』を本当に信じている。
 ソロスは、そのオープン・ソサエティ財団をもって、『統一世界政府』を信じている。彼の考えは、国連が世界の圧倒的な支配者と化すことである。
 ゲイツの父親は『プランド・ペアレントフッド』のリーダーでした。これは、マイノリティの領域で人口を減らすべく、設立された。
 シュワブは、若い指導者集団を形成し、未来の国家元首となる人々を養成しています。ニュージーランドの国家元首 アーダーン は、その卒業生である。
 クラウス・シュワブの『洗脳作戦』を卒業した多くの他の者たちについて知るなら、驚くことだろう。ドナルド・トランプ大統領は、保守的なアメリカ・ファーストの政策を推進・支持したため、 政府官僚やエスタブリッシュメント内部を含む左翼からの大きな反発に直面 した。
 オバマの残党たちは、トランプ大統領のアジェンダを阻止し、リベラルな政策を継続するために行動した。その1つが リーク・陰謀論攻撃 である。
 トランプ政権は、ディープステートから多数の陰謀論の吹聴や情報漏えいの被害に遭った。その多くが米国の国家安全保障を脅かすものだった。2017年7月には、平均して1日1回リークが発生し、それはオバマ大統領やブッシュ2世の7倍ものリークに直面していた。
 特別顧問で元FBI長官のロバート・ミューラーが率いる ロシア疑惑陰謀論 に関しては、トランプ大統領に極端に偏った思考の捜査官を雇っていたことが発覚した。結局、トランプとロシアに関係はなかった。
 2017年5月、民主党のデニス・クシニッチ元米国下院議員は、FOXニュースのインタビューにおいて、「官僚機構内のディープステートが、トランプを大統領職から引きずり降ろそうとしている」と発言した。
 彼はさらに、次のように詳しく述べた。「アメリカ合衆国の政治プロセスは、情報機関やその機関に属する個人によって攻撃を受けている。(中略)政府機関の政治問題化が進み、大統領の失脚を意図した匿名で身元不明の人々からのリークにつながっている。(中略)これはアメリカにとって非常に危険なことだ。
 これは共和国に対する脅威であり、我々の生活様式に対する明白な現在進行系の危機を生み出している。そのため、我々は『この人々の動機は何なのか』と問わねばならない。誰がこのようなリークを流しているのか?
 なぜ誰も、自らの立場を明かさずにメディアを通じて攻撃する代わりに、自らの名前と評判を背景に名乗り出て告発を行わないのだろうか?」
 保守派の元国家安全保障会議職員リッチ・ヒギンズは、 「グローバリスト、銀行家、イスラム教徒、共和党の既成政党」 がドナルド・トランプ大統領の地位を弱め、最終的には破壊しようとしているとメモで述べ、ディープステートについて警告した。
 トランプ大統領の国家安全保障顧問を務めた保守派のセバスチャン・ゴルカは、トランプ大統領の保守的で民族主義的なアジェンダを損なおうとするディープステートが働いている例をいくつか明らかにした。
 トランプ政権関係者は、ディープ・ステートが自分たちと大統領のアジェンダを傷つけるためにセキュリティ・クリアランスを開始するプロセスを「武器化」したと主張している。
 一党独裁の情報機関は、トランプ大統領が反トランプの論客であるジョン・ブレナンの機密アクセス許可を取り消したことに反対し、複数の元CIA長官がこの決定に反対する書簡に署名した。
 国務省はウクライナ共謀罪のスキャンダルをめぐって、トランプ大統領に政治的ダメージを与えるために動いた。ディープステートは一般に、 リベラルでグローバリスト、そして反生命的な世界観 を持っており、 最終的には一つの世界政府のユートピアを確立することを目的 としている。ディープ・ステートは、自分たちが手を伸ばしている権力を保護したり拡大したりするために、不必要に戦争を煽る。現在のウクライナ・ロシア戦争はまさにディープ・ステートが煽っているといえる。
  ディープステート : deep state 、略称: DS)、または 闇の政府 地底政府 とは、 アメリカ合衆国 連邦政府 金融機関 ・産業界の関係者が秘密の ネットワーク を組織しており、 選挙 で選ばれた正当な米国政府と一緒に、あるいはその内部で 権力 を行使する隠れた 政府 として機能しているとする 陰謀論 である。「 影の政府 」( shadow government )や「 国家の内部における国家 」と重複する概念でもある。
 一般的に、このような「ディープステート」が存在するという主張は陰謀論の一種とみなされ、ディープステートが存在するかもしれないという主張は複数の 学者 作家 によって否定されている。 政治学者 ジョセフ・ウシンスキー 英語版 )は、「この概念は常に陰謀論者の間で非常に人気がある」と指摘している。 2017年 2018年 に行われた 世論調査 では、 アメリカ国民 全体の約半数がディープステートの存在を信じていることが示唆されている。第45代大統領 ドナルド・トランプ とその 政権 のさまざまな高官らは、在任中にいわゆる「ディープステート」についての言及を繰り返し、この存在がトランプと彼の計画の足を引っ張っていると公式に主張した。
  2017年
  ドナルド・トランプ の支持者らは、情報高官や行政府職員がリークやその他の内的手段で政策を誘導しているという疑惑を指してこの言葉を使用した。2017年7月の 米国上院国土安全保障・政府問題委員会 英語版 )の報告書によると、「トランプ政権は、以前の政権よりもはるかに高頻度で、国家安全保障に関するリークに『ほぼ毎日』襲われていた」という。 タイム 誌に引用された デビッド・ガーゲン 英語版 )の発言によれば、この言葉は スティーブ・バノン ブライトバート・ニュース などのトランプ政権支持者によって、トランプの大統領職を批判する人々を非正当化するために採用されたものだという。
 2017年5月、 民主党 デニス・クシニッチ 元米国下院議員は、 FOXニュース のインタビューにおいて、「官僚機構内のディープステートが、トランプを大統領職から引きずり降ろそうとしている」と発言した。彼はさらに、次のように詳しく述べた。「アメリカ合衆国の政治プロセスは、情報機関やその機関に属する個人によって攻撃を受けている。(中略)政府機関の政治問題化が進み、大統領の失脚を意図した匿名で身元不明の人々からのリークにつながっている。(中略)これはアメリカにとって非常に危険なことだ。これは共和国に対する脅威であり、我々の生活様式に対する明白な現在進行系の危機を生み出している。そのため、我々は『この人々の動機は何なのか』と問わねばならない。誰がこのようなリークを流しているのか?なぜ誰も、自らの立場を明かさずにメディアを通じて攻撃する代わりに、自らの名前と評判を背景に名乗り出て告発を行わないのだろうか?」。数ヶ月前のインタビューにおいて、クシニッチは次のようにも語っている。「この問題の核心にあるのは、米露の良好な関係を根底から覆そうとする情報機関の一部による取り組みだ。(中略)この軍産情報複合体が儲かるように、アメリカとロシアを切り離そうとしている人々がいる」。
 トランプと彼の元政治戦略家の スティーブ・バノン は、大統領の計画を妨害しているとされるディープステートについて、ともに疑惑を投げかけてきた。2018年、ディープステートを「凝り固まった官僚機構」と表現したトランプは、 フーマ・アベディン の訴追を主張する声明の中で、 米国司法省 を「ディープステートの一部である」として非難した。トランプ陣営や右派メディアの中には、 バラク・オバマ 元大統領がトランプに対してディープステートの抵抗勢力を組織していると主張する者もいる。ディープステートの存在を信じることはトランプ支持者の間で人気があるが、批評家は、トランプ政権を苛立たせているリーク元には、他国におけるディープステートに見られるような組織的な深さがないとして、現実的な根拠がないと指摘している。また、米国内でこの用語を使用することは、重要な社会制度(公共機関)に対する信用の毀損につながり、反対意見の弾圧を正当化するために使用される可能性があるとの警告も発している。
  2020年
 2020年2月、トランプ政権の閣僚で 大統領首席補佐官 を務めた ミック・マルバニー は、トランプを妨害するディープステートは存在するのかと聞かれ、「絶対に、100%存在する」と答えた。 マイケル・トマスキー 英語版 )は、『 ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 英語版 )』の記事において、2018年7月に元米国下院議長の ニュート・ギングリッチ が、 ロバート・モラー 捜査の文脈でこの言葉を使用したとして、彼の発言を引用している。「(前略)トランプの失脚、あるいは最低でも弱体化、機能停止を狙ったディープステートの穂先だ」。さらにギングリッチは、「モラーの職務を厚かましく再定義したことは、ディープステートがいかに傲慢で、何でもやり過ごせるという自信があるかを物語っている」と付け加えている。
  ハーバード大学 教授の スティーヴン・ウォルト は、「米国の外交政策を動かしている秘密の陰謀やディープステートは存在しない。超党派の外交政策エリートが存在する程度で、それはありふれた風景の中に隠れている」と述べた。
 この言葉は、トランプ政権において、 ハーバート・マクマスター ジョン・フランシス・ケリー ジェームズ・マティス などのキャリア軍人が行使しているとされる、ディープステート的な影響力に関するコメントにも使用されている。人類学者のC・オーガスト・エリオットは、このような状態を「シャロー・ステート(shallow state、浅瀬国家)」、すなわち「今や公務員が、大統領の非常に水漏れしやすい船を浅瀬に導き、難破する可能性から遠ざけるタグボートとして機能するアメリカ」の出現であると表現した。
 2018年9月5日、 ニューヨーク・タイムズ 紙は、「トランプ政権の高官」が書いたとされる『 I Am Part of the Resistance Inside the Trump Administration 英語版 )』と題された匿名の論説を掲載した。論説の中で、同高官はトランプを批判し、「トランプ自身の政権の高官の多くが、彼の計画の一部と彼の最悪の性向を妨げるために、内部から熱心に働きかけている」と主張した。米国下院少数党院内総務の ケビン・マッカーシー は、これをディープステートが活動している証拠であると評し、 デイビット・ボッシー 英語版 )は、これはディープステートが「アメリカ国民の意思に反して活動している」ものだと主張する論説を FOXニュース に寄稿している。しかし、匿名の著者の信憑性については疑問の声もあり、「高官」とみなされる可能性のある役職は数百から数千に及ぶと推定する声や、そうした集団の存在を暴露することに内在するパラドックスを指摘する声もあった。
  世論調査
 2017年4月に米国人を対象に行われた世論調査によると、「政府を密かに操ろうとしている軍・情報機関・政府関係者」と定義される「ディープステート」について、約半数(48%)が存在すると考えており、全体の約3分の1(35%)は陰謀論であると考え、残り(17%)は特に意見を持っていなかった。「ディープステート」が存在すると考えている人のうち、半数以上(58%)が「大きな問題である」と回答した。
 2018年3月の世論調査では、ほとんどの回答者(63%)が「ディープステート」という言葉を知らなかったが、「国家政策を密かに操作したり指示したりする、選挙で選ばれた訳ではない政府や軍関係者のグループ」と表現した場合、過半数の人が米国にディープステートが存在する可能性が高いと信じていることが判明した。回答者の4分の3(74%)は、この種のグループが連邦政府に恐らく(47%)または間違いなく(27%)存在すると考えていると回答した。
 2019年10月、 エコノミスト 誌と YouGov 英語版 )が回答者に「ディープステート」の定義を示さずに実施した世論調査では、共和党員の70%、無党派層の38%、民主党員の13%が、「ディープステートはトランプの失脚を図っている」ことに同意した。
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