1.化石エネルギー
(1)石油
①資源の分布
世界の石油確認埋蔵量は、2020年末時点で1兆7,324億バレルであり、これを2020年の石油生産量で除した可採年数は53.5年となりました。1970年代の石油危機時には石油資源の枯渇が懸念されましたが、回収率の向上や新たな石油資源の発見・確認により、1980年代以降は、40年程度の可採年数を維持し続けてきました。近年では、米国のシェールオイル、ベネズエラやカナダにおける超重質油の埋蔵量が確認され、可採年数は増加傾向となっています。
2020年末時点では、世界最大の確認埋蔵量を有するのはベネズエラであり、長期間1位であったサウジアラビアは2010年以降2位となっています。ベネズエラの確認埋蔵量は3,038億バレルで世界全体の17.5%のシェアを占めています。サウジアラビアの確認埋蔵量は2,975億バレルで世界シェア17.2%、以下、カナダ(1,681億バレル、シェア9.7%)、イラン(1,578億バレル、シェア9.1%)、イラク(1,450億バレル、シェア8.4%)、ロシア(1,078億バレル、シェア6.2%)、クウェート(1,015億バレル、シェア5.9%)、アラブ首長国連邦(978億バレル、シェア5.6%)と主に中東産油国が続きます。中東諸国だけで、世界全体の原油確認埋蔵量の約半分を占めています(第222-1-1)。

【第222-1-1】世界の原油確認埋蔵量(2020年末)
(xlsx形式28KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
近年では、在来型石油とは異なった生産手法を用いて生産されるシェールオイル(タイトオイル)が注目されています。2015年9月の米国エネルギー情報局(EIA)による発表では、世界のシェールオイル可採資源量は4,189億バレルと推定されており、主なシェールオイル資源保有国は、米国、ロシア、中国、アルゼンチン、リビア等となっています。また2013年にはEIAがシェールオイル・シェールガス資源量評価マップを公開し、2015年に改訂版を公開しています(第222-1-2)。

【第222-1-2】EIAによるシェールオイル・シェールガス資源量評価マップ(2015年)
(注)「可採資源量」とは、技術的に生産することができる石油資源量を表したもので、経済性やその存在の確からしさなどを厳密に考慮していないという点で、「確認埋蔵量」よりは広い範囲の資源量を表す。
資料:EIA「World Shale Resource Assessments」(2015年9月)を基に作成
②原油生産
世界の原油生産量は、石油消費の増加とともに拡大し、1973年の5,855万バレル/日から2020年には8,839万バレル/日と、この47年間で約1.5倍に拡大しました。ただし、2020年世界の原油生産量は、新型コロナウイルス感染症の影響による石油需要の減少で前年比6.9%減少しました。地域別に見ると、2000年以降、欧州で減産が進む一方、アジア大洋州とアフリカ、中南米の生産量はほぼ横ばい、ロシア、中東、北米の生産量は堅調に増加していましたが、2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響による石油需要の減少でほぼ全ての地域で減少しました(第222-1-3)。
(注)1984年までのロシアには、その他旧ソ連邦諸国を含む。

【第222-1-3】世界の原油生産動向(地域別)
(xlsx形式36KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2020」を基に作成
OPEC産油国の生産量は1970年代までの大幅増産後、高油価を背景とする非OPEC産油国の増産や、世界の石油消費の低迷を受け1980年代前半に減少しましたが、1980年代後半から回復しました。この結果、世界の原油生産量に占めるOPECのシェアは、1970年代前半の5割前後から低下して1980年代半ばには3割を割り込んだものの、再び上昇し1993年から2017年までは40%台でした。しかし、2015年以降、OPECのシェアは30%台に低下しています。
非OPEC産油国(旧ソビエト連邦諸国(CIS)、米国、メキシコ、カナダ、英国、ノルウェー、中国、マレーシア等)の生産量は1965年以降、おおむね堅調に増加しており、1965年の1,808万バレル/日から、2020年には5,728万バレル/日に達しています。増加の内訳は、年代によって異なり、1970年代から1980年代にかけては北米とCISやアジア大洋州、欧州が、1990年代は欧州と中南米、また2000年代に入ってからはCISがけん引してきました。その後2010年代以降は、シェールオイル生産の技術革新(シェール革命)により急速に生産量を増加させている米国の動向が注目されています(第222-1-4)。
(注)上図の非OPECにはロシア等の旧ソ連邦諸国を含む。

【第222-1-4】世界の原油生産動向(OPEC、非OPEC別)
(xlsx形式28KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
米国の生産量は、シェールオイル増産により、近年急速に増加しました。特に原油価格が高止まりを続けた2012年から2015年にかけては、毎年50万バレル/日を超えるの生産量の増加が見られました。その後、油価の下落局面では生産量が減少する年もありましたが、シェールオイルの開発・生産コストの低下も進み、生産量は増加を続けています。ただし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響による石油需要減少で原油価格が下落し、新規投資の抑制などで生産量が減少しました(第222-1-5)。

【第222-1-5】米国のシェールオイルの生産量
(xlsx形式19KB)
資料:EIA「Tight oil production estimates」を基に作成
OPEC/非OPECによる協調減産
シェールオイル生産量の増加に対して、当初OPEC産油国は市場シェア確保を重視して増産で対抗し、世界では供給過剰の状態が続き、その後の油価低迷を招くことになりました。OPEC (2)と非OPEC産油国は長引く油価低迷を打開するため、2016年11月から12月の第171回OPEC総会及び第1回OPEC・非OPEC閣僚会議で、15年ぶりの協調減産(180万バレル/日規模)を合意しました。これを契機に協調減産に参加したOPEC・非OPEC産油国(当初、計25ヵ国:) (3)はOPECプラスと呼ばれるようになりました。
その後もOPECプラスは原油価格を一定の範囲内に収めることを目的として、市場環境(原油の需給動向、在庫状況等)に合わせ、参加国間で原油生産量の調整(増減)を続けていました。しかし、世界で新型コロナウイルス感染症のまん延が顕著になりだした2020年3月の第8回OPEC・非OPEC閣僚会議では、協調減産量の拡大について議論されたものの、参加国間での合意に至らず、協調減産は3月末で終了することになりました。会議後すぐに、サウジアラビアやUAEは4月からの増産を打ち出したものの、その後の原油価格の急落を受け、4月に再びOPEC・非OPEC閣僚会議が開催されました。第9回、第10回の2度の会議を経て、新型コロナウイルス感染症の影響による原油需要の大幅な減少への対応のため、OPECプラスで970万バレル/日というかつてない規模の減産を行うことで合意しました。この減産合意は、7月末まで維持され、世界経済が徐々に回復傾向にあるとの見方から8月以降は、協調減産幅を縮小し2020年12月までは770万バレル/日の減産幅となりました。
2020年12月の第12回OPECプラスの協議では、2021年1月以降は現状の減産幅を50万バレル/日縮小し、720万バレル/日の減産となりました。その後の2021年1月の第13回OPECプラス協議では、ロシア、カザフスタンにのみ減産幅の一部縮小を認めた結果、減産幅は2月は712.5万バレル/日、3月以降は705万バレル/日となりました。本合意後にサウジアラビアは自主的に2〜3月に100万バレル/日の追加減産を表明し、石油需要への影響懸念を示しました。2021年3月の第14回OPECプラス協議でも、現行の協調減産を維持するとしましたが、ロシア、カザフスタンにのみ減産幅一部縮小を認め2021年4月の減産幅は690万バレル/日となりました。また、サウジアラビアは自主的な追加減産を4月も続けるとしました。その後、世界経済が回復していくとの見方から、8月からOPECプラスは減産幅を段階的に縮小していきました。2022年3月2日、OPECプラスの第25回閣僚級会合が開催され、2022年4月も2021年8月以降と同じ40万バレル/日の増産(減産幅縮小)を維持することで合意しました。
(注)原則基準量は2018年10月。サウジアラビア、ロシアは11百万/バレルを基準としています。

【第222-1-6】OPEC/非OPECの国別減産目標値推移(ppt/pptx形式:566KB)

資料:OPECプレスリリースをもとに作成
③石油消費
世界の石油消費量は、経済成長とともに増加傾向をたどってきました。1973年に5,558万バレル/日であった世界の石油消費量は2019年には9,760万バレル/日まで増加しました(年平均成長率1.2%)。しかし、2020年世界の石油消費量は、新型コロナウイルス感染症の影響で前年比9.3%減少して8,848万バレル/日になりました。
OECD諸国の石油消費量は、1973年の4,148万バレル/日から、二度の石油危機に起因する世界経済低迷に加え、原子力、天然ガス等の代替エネルギーへの転換を受け、1980年代前半まで減少しました。1980年代後半以降は、経済成長とともに緩やかに増加しましたが、自動車の燃費改善や石油価格高騰を背景に、2005年以降は減少傾向となりました。2015年以降は原油価格の下落に伴い再び増加傾向となり、原油価格が上昇した2018年でも増加は続いて4,637万バレル/日になりました。しかし、2019年は世界的な気候変動対策の高まり等から4,606万バレル/日と再び減少、さらに2020年は新型コロナウイルス感染症の影響が加わり4,028万バレル/日に減少しました。
非OECD諸国では著しく消費が増加しています。堅調な経済成長に伴い、1973年の1,419万バレル/日から、2019年には5,154万バレル/日に増加しました(年平均成長率2.8%)。しかし、2020年は非OECD諸国においても新型コロナウイルス感染症の影響で石油消費量は前年比6.5%減少して4,820万バレル/日になりました。ただし、中国の2020年の石油消費は前年比1.6%増加しました。その結果、世界の石油消費量に占める非OECD諸国のシェアは1973年の25%から2020年には54%となり、逆に同期間内のOECD諸国のシェアは75%から46%まで低下しました(第222-1-7)。

【第222-1-7】世界の石油消費の推移(地域別)
(xlsx形式36KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
石油は様々な用途で消費されますが、輸送用としての消費が大きな割合を占めており、2019年における世界の石油消費量の内、65%が輸送用となっています。輸送用の消費量は自動車保有台数の増加に伴い、1971年の7,260百万石油換算バレルから2019年には21,262百万石油換算バレルに拡大しており、世界の石油消費量増加の主要因となっています。また、石油化学原料用としての消費も堅調に増加しています(第222-1-8)。

【第222-1-8】世界の石油消費の推移(部門別)
(xlsx形式34KB)
資料:IEA「World Energy Balances 2021 Edition」を基に作成
④石油貿易
世界の石油貿易は、石油消費の増加とともに着実に拡大してきました。2020年の世界全体の石油貿易量は6,629万バレル/日であり、そのうち日米欧による輸入量が合計で2,412万バレル/日と全体の36%を占めました。一方の輸出は、中東からの輸出量が2,221万バレル/日と最大で、全体の33%を占めました。以下、北米(1,410万バレル/日)、CIS諸国(964万バレル/日)、西アフリカ(426万バレル/日)、中南米(349万バレル/日)等が主要な石油輸出地域となっています (4)。
仕向地別では中東地域からの石油輸出量のうち、11%(235万バレル/日)が欧州向け、3%(77万バレル/日)が米国向け、77%(1,709万バレル/日)がアジア大洋州地域向けであり、中東地域にとって、アジア大洋州地域が最大の市場となっています(第222-1-9)。

【第222-1-9】世界の石油の主な石油貿易(2020年)
(注)上図の数値は原油および石油製品の貿易量を表す。
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基にBPの換算係数を使用して作成
なお、アジア地域の中東依存度は域内需要の増加に伴い、1990年代以降は常に欧米より高い水準で推移しています。
また、石油が輸送される際の安全確保は、エネルギー安全保障の上でも非常に重要です。世界的に海上輸送ルートとして広く使われる狭い海峡をチョークポイントと呼びます。チョークポイントについては、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が示したレポートにあるチョークポイント8カ所、すなわちホルムズ海峡、マラッカ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡、スエズ運河、トルコ海峡、パナマ運河、デンマーク海峡、喜望峰を使用します。
各国の輸入する原油がこれらのチョークポイントを通過することをリスクと捉え、チョークポイント比率を算出しました。フランスやドイツ、英国などの場合、チョークポイントを通過するのは中東から輸入する原油にほぼ限られるため、比較的チョークポイント比率が低くなります。他方、日本を始め、中国、韓国などの東アジア諸国の場合、輸入原油の大半はマラッカ海峡を通過しますが、中東から輸入する原油の大半は、それに加えホルムズ海峡を通過することになるため、複数のチョークポイントを通過することでリスクが増加し、数値も上昇する傾向にあります(第222-1-10)。
(注1)チョークポイントを通過する各国の輸入原油の数量を合計し、総輸入量に対する割合をチョークポイント比率として計算。チョークポイントを複数回通過する場合は、数量を都度計上するため、チョークポイント比率は100%を超えることもある。
(注2)チョークポイント比率が低いほど、チョークポイント通過せずに輸入できる原油が多いため、リスクが低いという評価になる。

【第222-1-10】チョークポイントリスクの推移(推計)
(xlsx形式59KB)
資料:IEA「Oil information 2021 datebase」、中国輸入統計を基に作成
⑤原油価格
原油価格は、これまでも大きな変動を繰り返してきました。2000年代半ば以降、中国を始めとする非OECD諸国において石油需要が急増したことを受けて上昇し続けた原油価格は、2008年の米国大手証券会社の経営破綻に端を発する経済危機(リーマンショック)に伴って急落しました。その後は、非OECD諸国がけん引する形で世界経済が回復したことや、OPEC産油国が減産しことで、価格は上昇に転じました。2011年から2014年までの年間平均価格は、ブレント原油で1バレル99ドルから112ドル、WTI原油で93ドルから98ドルの範囲で推移しました(第222-1-11)。
(注)図中価格の数字はWTIの数字

【第222-1-11】国際原油価格の推移
(xlsx形式26KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
2014年の夏以降は、米国を筆頭とする非OPEC産油国の供給増加、これに対抗する形でOPECが市場シェアの確保を重視して増産したこと、非OECD諸国の経済成長の減速に伴う石油需要の伸びの鈍化等を受け、原油価格は急速に下落しました。その後、2017年1月からのOPECプラス協調減産も奏功し、価格は回復しました。2018年後半には需給緩和懸念によって価格が急落したこともあり、OPECプラスは2019年1月より減産量を見直し、価格は上昇しました。
2020年に入り、世界で新型コロナウイルス感染症の影響が顕著になる中、徐々にOPECプラス参加国の足並みが揃わなくなり、2020年3月末に協調減産体制は終了しました。協調体制終了に伴いサウジアラビアやUAEは4月から増産を打ち出したものの、新型コロナウイルス感染症による移動制限や経済活動の停滞に伴い、世界の原油需要は大きく落ち込み、原油価格は大幅に急落しました(第222‐1‐11)。それを受け、OPECプラスは再び協議を行い、970万バレル/日というかつてない規模の減産に合意しました。その後、世界経済が徐々に回復傾向にあるとの見方から8月からOPECプラスは協調減産幅を段階的に縮小していきました。2020年秋以降、経済活動が徐々に再開されるなかで、石油需要が増加し、減産の効果もあって価格は上昇していきました。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵略により、原油価格は2022年3月に一時、欧州のブレント原油で1バレル133ドル台、米国のWTI原油で123ドル台まで上昇しました。その後、中国での一部都市におけるロックダウンや消費国の備蓄石油放出などにより、2022年4月中旬時点でブレント原油、WTI原油ともに100〜110ドル台となっています。
(2)ガス体エネルギー
①天然ガス
(ア)資源の分布
世界の天然ガスの確認埋蔵量は、2020年末で約188.1兆m3でした。中東のシェアが約40.3%と高く、欧州・ロシア及びその他旧ソ連邦諸国が約31.8%で続きます(第222-1-12)。石油埋蔵量の分布に比べて、天然ガス埋蔵量の地域的な偏りは比較的小さいと言えます。また、確認埋蔵量を2020年の生産量で除した天然ガスの可採年数は2020年末時点で48.8年でした。
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。

【第222-1-12】地域別天然ガス埋蔵量(2020年末)
(xlsx形式19KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
近年は、シェールガスや炭層メタンガス(CBM)といった非在来型天然ガスの開発が進展しており、特にシェールガスは大きな資源量が見込まれています。2015年9月に更新された米国エネルギー情報局(EIA)の評価調査によると、シェールガスの技術的回収可能資源量は、評価対象国合計で214.4兆m3とされており、在来型天然ガスの確認埋蔵量よりも多いと推計されています。また、地域的な賦存では、北米以外にも、中国、アルゼンチン、アルジェリア等に多くのシェールガス資源が存在すると報告されています(第222-1-13)。

【第222-1-13】EIAによるシェールオイル・シェールガス資源量評価マップ(2015年)【再掲】
資料:EIA「World Shale Resource Assessments」(2015年9月)を基に作成
(イ)天然ガス生産
2020年の天然ガス生産量は約3.9兆m3でした。天然ガスの生産量は2010年から2019年まで増加を続け、この間の年平均伸び率は2.4%となりました。しかし、2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響による天然ガス需要の減少から前年比0.3%の減少となりました。
地域別には、2020年時点では北米が世界の生産量の約29%、欧州・ロシア及び旧ソ連邦諸国が約26%を占めました(第222-1-14)。シェール革命で生産が増加している米国を中心とした北米、国内の天然ガス需要が急増している中国やLNGプロジェクト開発が相次いだ豪州を抱えるアジア大洋州、世界最大級の構造性ガス田を有し、石油に依存した経済からの脱却を図る中東地域で、天然ガス生産量の大きな増加を示しています。
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。

【第222-1-14】地域別天然ガス生産量の推移
(xlsx形式31KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
世界的な天然ガス消費の伸びに対応するため、大規模な天然ガス資源開発が進められています。豪州や米国での相次ぐ新規LNGプロジェクト稼働開始により、LNGの供給が増加しています(第222-1-15)。2020年は油価低下の影響を受け、新規LNGプロジェクトの最終投資決定は低迷しましたが、堅調なLNG需要に対応するため、今後も新規プロジェクト投資が必要であると考えられます。
また、GTL(Gas to Liquids) (5)やDME(Di-Methyl Ether) (6)等、天然ガスの新たな利用可能性を広げる技術について研究開発が進展しており、一部では既に商業生産が行われています。

【第222-1-15】日本企業が参画する近年の主要なLNGプロジェクト
資料:各種資料を基に作成
世界各国でシェールガスやCBM等の非在来型天然ガスの開発計画が立てられており、特に米国におけるシェールガス増産が顕著です。EIAによると、米国のCBM生産量は2003年の53億m3から2008年には572億m3へと10倍以上に増加しましたが、それ以降減産し、2020年は232億m3となっています。それに対して、シェールガスの生産量は2007年から右肩上がりに急増し、2020年には8,046億m3に達しています(第222-1-16)。
(注)在来型ガスはガス層を目指して掘削したガス生産専用井により回収している。

【第222-1-16】米国の在来型ガス、シェールガス及びCBM生産量
(xlsx形式27KB)
資料:EIA「Natural Gas Data」を基に作成
(ウ)天然ガス消費
世界の天然ガス消費量は2010年から2019年の間、年率2.4%で増加しました。天然ガスは石炭や石油等に比べて環境負荷が低いこと、コンバインドサイクル発電 (7)等の技術進歩や競合燃料に対する価格競争力の向上によって近年まで利用が拡大してきています。なお、2020年、新型コロナウイルス感染症の影響から前年比2.1%の減少となりました(第222-1-17)。
(注)端数処理の関係で合計100%にならない場合がある。

【第222-1-17】天然ガスの消費量の推移(地域別)
(xlsx形式32KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
2020年の天然ガス消費量の地域別内訳を見ると、「北米」と「欧州・ロシア及びその他旧ソ連邦諸国」で世界の約55%を占めています。これらの地域で特に消費量が多い背景は、域内で豊富に天然ガスが生産され、産業や暖房用途等に天然ガスの利用が進んでいることや、パイプライン等のインフラが整備されており、天然ガスを気体のまま大量に輸送して安価に利用することが可能であることが挙げられます(第222-1-18)。
世界各国の一次エネルギー総供給量に占める天然ガスの割合を見ると、2019年に米国は34%、OECD欧州は25%であり、日本は22%とOECD欧州と同程度なっています(第222-1-18)。
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。

【第222-1-18】日本・米国・OECD欧州の一次エネルギー構成(2019年)
(xlsx形式18KB)
資料:IEA「World Energy Balances 2021 Edition」を基に作成
天然ガスの用途を見ても日本と欧米とでは大きな差異があります。日本では発電用の割合が全体の69%を占め、産業用は12%、民生・その他用は19%に過ぎません。これに対して、米国、OECD欧州では発電用としての利用の割合がそれぞれ38%、29%と日本よりも低く、その分、民生・その他用や産業用としての利用の割合が高くなっています(第222-1-19)。
日本では、LNG輸入という形態でしか天然ガスを輸入できなかったため、需要が集積しやすい発電用や一定規模以上の大手都市ガス会社による利用を中心に導入されました。この結果、天然ガスの需要がある地域にLNG基地が順次立地し、LNG基地から、需要に応じてパイプラインが徐々に延伸するという日本特有のインフラ発展形態となりました。発電用と比べて需要が地理的に分散している民生用や産業用では、天然ガス利用は相対的に遅れています。
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。

【第222-1-19】日本・米国・OECD欧州における用途別天然ガス利用状況(2019年)
(xlsx形式23KB)
資料:IEA「World Energy Balances 2021 Edition」を基に作成
(エ)天然ガス貿易
2020年の1年間で取引された天然ガスの貿易量1兆2,437億m3のうち、パイプラインにより取引された量は7,558億m3(貿易量全体の61%)、LNGによる取引は4,879億m3(同39%)でした(第222-1-20)。
2020年の世界全体の天然ガス生産量の32.3%が生産国では消費されずに、他国へ輸出されました(第222-1-21)。天然ガスの貿易量は増加しているものの、その割合は生産量の73.6%が輸出される石油ほどではありません。
(注)2008年以前の数値には旧ソ連域内における貿易量を含んでいない。

【第222-1-20】世界の輸送方式別天然ガス貿易量の推移
(xlsx形式36KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy」(各年版)を基に作成

【第222-1-21】石油、天然ガスの貿易比率(2020年)
(xlsx形式22KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy」(各年版)を基に作成
主な輸入地域は欧州、北東アジアの2地域であり、その他は地域内の輸出入が主体でした。輸送手段別には、パイプラインによる主な輸出国はロシア、ノルウェー等であり、同じくパイプラインによる主な輸入国は米国、ドイツ等でした(米国は世界有数のパイプラインガス輸出国でもある)。LNG貿易はアジア向け輸出を中心として拡大し、2020年のLNG貿易量の21%は日本向け(アジア全体で71%)でした。LNGの輸出国はアジア大洋州地域、中東が中心です(第222-1-22、第222-1-23)。
また、シェールガス等、非在来型天然ガスの生産が急激に拡大した結果、米国国内では多くのLNG輸出プロジェクトが計画されており、2016年2月には同国本土から初めてのLNGカーゴが出荷されました。

【第222-1-22】世界の主な天然ガス貿易(2020年)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」

【第222-1-23】世界のLNG輸入(2020年)
(xlsx形式19KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
(オ)価格
日本向けの天然ガス(LNG)価格(CIF)は、1990年代には、3-4ドル/MBTU(百万BTU)で推移しました。2000-2005年は4-6ドル/MBTUで推移しましたが、その後は原油価格に連動して上昇し、2014年の半ばまで高値が続きました。2014年時点では、日本向けのLNG平均価格(CIF)は16.33ドル/MBTUとなっており、米国国内の天然ガス価格4.35ドル/MBTU(Henry Hubスポット価格)や英国内の天然ガス価格8.25ドル/MBTUと比べて割高でした(第222-1-24)。これは、アジア市場の需給がひっ迫していたこと、流動性が低かったこと、日本向けのLNG価格が原油価格の水準を参照して決められるものが多く、原油価格の影響を大きく受けたためです。しかし、原油価格低下及びLNG需給緩和によって、2015年に入ってからは日本と欧米の価格差は縮小しています。そうした中、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略により、英国内の天然ガス価格は3月上旬に約70ドル/MBTUまで急騰しました。その後30ドル台まで下落しましたが、地政学的緊張の中でガス価格は不安定な状態が続いています。一方、日本向けの天然ガス(LNG)価格は原油価格連動型の長期契約が7-8割を占めることから、欧州のような急激な変動はないものの、原油価格が高い状態が続いており、2022年2-3月の日本向けのLNG平均価格(CIF)は14-15ドル/MBTUと2014年以来の高値水準を記録しています。
なお、2020年のLNGのスポット及び短期取引の世界のLNG取引全体に占める割合は40%との報告があります(第222-1-25)。

【第222-1-24】主要価格指標の推移(1991年-2020年)
(xlsx形式27KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
(注)スポット取引は1年未満の取引、短期取引は契約期間が4年未満の取引を指す。

【第222-1-25】世界のLNG取引全体に占めるスポット及び短期取引の割合(2020年)
(xlsx形式17KB)
資料:GIIGNL「The LNG Industry GIIGNL Annual Report 2021」を基に作成
②LPガス
(ア)生産
2020年の世界のLPガス生産量は約3.29億トンでした。2010年から2019年までLPガスの生産量は増加を続け、年平均伸び率は3.5%でした。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響によるLPガス消費量の減少から生産量は前年比1.4%減少しました。2020年の生産量のうち、ガス田及び油田の随伴ガスから約64%、製油所から約36%が生産されました。
地域別に見ると、2020年は北米地域が31.0%と前年に引き続き最大のシェアを占めており、シェールガス由来のLPガス生産量が増えています。続いてアジア大洋州地域が24.9%、中東地域が20.2%の順となっています(第222-1-26)。

【第222-1-26】世界のLPガス地域別生産量
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。
資料:Argus Media Group「Statistical Review of Global LPG 2021」を基に作成
(イ)消費
2020年の世界のLPガス消費は約3.17億トンでした。2010年から2019年までLPガスの消費量は増加を続け、この間の年平均の伸び率は3.2%でした。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でLPガスの消費量は前年比2.5%のマイナスとなりました。
地域別に見ると、最大消費地域であるアジア大洋州地域は2010年の35.1%から、2020年には46.0%とシェアが増加しました(第222-1-27)。

【第222-1-27】世界のLPガス地域別消費量
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある
資料:Argus Media Group「Statistical Review of Global LPG 2021」を基に作成
2020年の消費を用途別に見ると、家庭・業務用が44.3%、化学原料用が27.6%、工業用が9.9%、輸送用が7.7%、精製用が9.5%となりました。さらに、これを地域別に見ると、中東地域、欧州・ロシア・その他旧ソ連邦諸国地域と北米地域は化学原料用のシェアが最も高く(それぞれ72.5%、41.3%、31.8%)、アフリカ地域、中南米地域、アジア大洋州地域では家庭・業務用のシェアが最も高く(それぞれ78.0%、66.3%、53.7%)なりました(第222-1-28)。

【第222-1-28】世界のLPガス用途別消費量(2020年)
(注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある
資料:Argus Media Group「Statistical Review of Global LPG 2021」を基に作成
(ウ)価格
世界のLPガスの価格は、原油価格の動向に大きく影響を受けます。価格形成は、①米州(米国テキサス州のモント・ベルビュー市場を中核にした地域)、②欧州(北海のArgus価格指標 (8)(ANSI:Argus North Sea Index)及びアルジェリア・ソナトラック公定価格をベースにした北西欧・地中海等を中核にした地域)、③スエズ以東(サウジアラビア・アラムコの公定契約価格(CP)をベースにした中東・アジア大洋州地域を中核にした地域)の3つの市場地域に大別されています。それぞれの価格形成市場地域の価格差を埋めるように裁定取引が行われ、需給調整がなされています。
日本のLPガス輸入指標となるサウジアラビアの公定契約価格は、ある程度スポット市場の値動きが反映されていますが、基本的にはサウジ側から一方的に通告される価格であり、日本を含む消費国においては、価格決定プロセスの不透明性が指摘されてきました。ただし、近年では米国からのLPガス輸出が増加しており、サウジアラビア等、既存のLPガス輸出国との競争も激しくなっています。
原油価格の高騰とともに、3つのゾーンとも2000年から2008年7月までLPガス価格は上昇基調を続けてきました。その後、2009年1月には、プロパン価格(FOB (9)価格)が、サウジアラビア産(サウジアラムコCP)で380ドル/トンまで低下しました。原油価格が回復するにつれてLPガス価格も上昇し、2012年3月には1,230ドル/トンまで上昇しましたが、2014年から再び価格低下に転じ、2017年からはおおむね300〜600ドル/トン台で推移していました。2020年4月には一時的に、サウジアラビア等の原油増産に伴うLPガスの供給量増加見込みにより、サウジアラムコCPは前月(同年3月)の約半分となる230ドル/トンに急落しましたが、翌月からは上昇を続け、2021年1月には600ドル/トン台になりました。2021年5月にかけてインドや日本などアジアでの新型コロナウイルス感染症拡大の影響による経済低迷からの需要減とOPECプラスによる協調減産の段階的緩和による供給増加見通しを背景とした原油価格の低下により、サウジアラムコCPは495ドル/トンまで下落しました。その後は、新型コロナウイルス感染症拡大の減速による経済回復からエネルギー需要が回復し、さらに世界的な脱炭素化の潮流や厳冬見通しにより、サウジアラムコCPは2021年11月に約8年ぶりの高値である870ドル/トンに達しました(第222-1-29)。

【第222-1-29】サウジアラビア産(サウジアラムコCP)プロパン価格推移
(xlsx形式29KB)
資料:石油情報センター「LPG価格の動向」を基に作成
(エ)貿易
北米地域の2020年の輸出量は5,506万トンで、前年に引き続き最大のLPガス輸出地域となりました。そのうち米国の輸出量は4,935万トンであり、世界最大の輸出国です。北米地域に続くのは中東地域で、輸出量は3,778万トンでした。中東地域で最大規模の輸出国はカタールとUAE、サウジアラビアで、輸出量はそれぞれ1,047万トン、923万トン、685万トンです。北米、中東地域に続く輸出地域は、欧州・ロシア・その他旧ソ連邦諸国(2,167万トン)となっています。
一方、輸入面ではアジア大洋州地域が最大の輸入地域で、2020年の輸入量は6,996万トンでした。アジア大洋州地域に続く輸入地域は、欧州・ロシア・その他旧ソ連邦諸国で2,738万トンでした。アジア大洋州地域の最大の輸入国は中国で、輸入量は1,960万トン、続いてインド(1,627万トン)、日本(986万トン)、韓国(840万トン)、インドネシア(629万トン)となりました。また、その他の地域では米国の輸入量が430万トンで最大でした(第222-1-30)。

【第222-1-30】世界のLPガス地域別輸入量(2020年)
注)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある
資料:Argus Media Group「Statistical Review of Global LPG 2021」を基に作成
世界のLPガス貿易市場は、(ウ)価格の動向において既述のとおり、大きく3地域(米州地域、欧州地域、アジア地域)に分割されており、従来は、基本的にこの各域内で貿易取引が行われていました。しかし、1999年を境にそれまで供給余剰であったアジア市場が一転して不足状態となり、スエズ以西からLPガスが流入するようになりました。近年では北米地域、特に米国からアジアや欧州への輸出が増加しています。米国シェールガス田由来のLPガスの生産量の増加、2016年のパナマ運河拡張による米国から東アジアへのLPガス輸出増加等も大きな要因となっています。
(3)石炭
①資源の分布
石炭の確認埋蔵量は10,741億トンで、国別には、米国(23.2%)、ロシア(15.1%)、豪州(14.0%)、中国(13.3%)、インド(10.3%)等に多く埋蔵されています(第222-1-31)。炭種別には、瀝青炭と無煙炭が7,536億トン、亜瀝青炭と褐炭で3,205億トンです (10)。
石炭の持つメリットとして、石油、天然ガスに比べ地域的な偏りが少なく、世界に広く賦存していることが挙げられます。また、可採年数が139年(BP統計2021年版)と石油等のエネルギーよりも長いのも特徴です。
(注)四捨五入のため、各国・地域の比率を合計しても100%にならない。

【第222-1-31】世界の石炭確認埋蔵量(2020年末時点)
(xlsx形式21KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
②石炭生産
世界の石炭生産は2000年代に入り、急速な拡大を遂げました。2000年時点の生産量は46億3,805万トンでしたが、2013年には79億7,618万トンに達しました。その後、中国、欧州、北米等での石炭需要の減少に伴い石炭生産は減少し、2016年には72億9,302万トンに落ち込みました。しかし、2017年以降、中国の需要の増加等を背景に増加に転じ、2019年の石炭生産量は79億6,001万トンまで増加、その後2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により需要が落ち込み、生産量は75億7,536万トン(推計値、以下同じ)に減少しました。
2020年の石炭生産量を国別シェアで見ると、中国(49.7%)とインド(10.0%)の2ヵ国で世界の生産量の半分以上となる59.7%を占めました。さらに、インドネシア、豪州、米国までの上位5ヵ国の生産量を合計するとそのシェアは80.1%でした。また、2020年における石炭生産量の上位10ヵ国(上述の5ヵ国に加え、ロシア、南アフリカ、ドイツ、ポーランド、カザフスタン)の生産シェアは92.6%となっています。うち、2000年時点と2020年を比較して石炭生産量が減少しているのは米国、ドイツ、ポーランドの3ヵ国で、ほかの7ヵ国では増加しました(第222-1-32)。米国の生産量の減少は、環境対策や、シェールガスの生産増加により天然ガス価格が低下しガス火力発電の経済性が向上、その結果、電力分野での石炭消費が減少したこと等が要因と考えられ、ドイツ、ポーランドの生産量の減少は、EUの気候変動対策を背景に国内消費が減少傾向にあるためです。
(注1)2020年データは見込み値。
(注2)四捨五入のため、上位5ヵ国の比率と各国の比率の合計には差異がある。

【第222-1-32】世界の石炭生産量の推移(国別)
(xlsx形式29KB)
資料:IEA「Coal Information 2021」を基に作成
石炭生産量が世界第1位の中国は2000年代以降、電力分野を中心に急拡大する国内消費に応えるため、生産量を大幅に伸ばしてきました。2014年から2016年までは主に大気汚染対策等により消費が減少し生産量は減少しましたが、2017年から2020年は増加が続いています。第2位のインドでは、国内需要の拡大に伴い生産量は年々増加していますが、2020年は前年比2.0%の減少でした。石炭輸出国である豪州では、アジア向けを中心とした輸出の拡大に伴い2015年まで生産量が増加してきました。2016年以降は輸出需要の停滞と国内消費の減少から生産量は減少傾向で推移し、2019年は増加に転じましたが、2020年は再び減少しました。インドネシアでは、1980年代初めに政府の外資導入政策により炭鉱開発に外国資本が参入し、1990年代以降アジア向けを中心とした輸出と国内需要の拡大により生産量は増加してきました。2014年から2015年にかけては、中国、インド向けの輸出量の減少により生産量は減少しましたが、2016年から2019年までは増加傾向で推移し、2020年は再び減少しました。このように上位4ヵ国で近年増加していた石炭生産量は2020年には、新型コロナウイルス感染症拡大による石炭需要の減少から低下しました。
2020年の世界の石炭生産量(75億7,536万トン)のうち78.2%に相当する59億2,100万トンは発電用燃料や一般産業で利用される一般炭で、生産量は2000年代に入り急速に増加しました。コークス製造に用いられる原料炭も2000年代に入り生産量が倍増していますが、2020年の原料炭生産量は総生産量の約13.4%に相当する10億1,586万トンでした。熱量が低く、生産地での発電燃料等の用途に限られる褐炭生産量は、2000年以降8億トン台で推移していましたが、2019年以降は減少して2020年の生産量は6億3,849万トンになりました(第222-1-33)。
(注)2020年データは見込み値。

【第222-1-33】世界の石炭生産量の推移(炭種別)
(xlsx形式21KB)
資料:IEA「Coal Information 2021」を基に作成
③石炭消費
2020年の世界の石炭消費量は75億452万トンと推計されており、前年比3.8%減となりました。2020年の石炭消費の国別シェアを見ると、中国の消費量は39億6,623万トンと、中国だけで世界合計の半分を消費しています。中国は2000年代に入り石炭消費量を急激に増加させ、2013年の消費量は40億トンを上回りました。その後2016年までは大気汚染対策等を背景に減少しましたが、2017年以降再び増加しています。また、中国とインド(総消費量の12.9%)の2ヵ国で世界の石炭消費量の65.8%を占め、これらに米国、ロシア、日本を加えた上位5ヵ国で世界の77.0%を消費しました。日本の2020年の石炭消費量は1億8,422万トンで、世界第5位ですが、全体に占める割合は2.5%となっています(第222-1-34)。
(注1)2020年データは見込み値。
(注2)四捨五入のため、上位5ヵ国の比率と各国の比率の合計には差異がある。

【第222-1-34】世界の石炭消費量の推移(国別)
(xlsx形式30KB)
資料:IEA「Coal Information 2021を基に作成
2019年の世界の石炭消費量を用途別に見ると、発電用に66.6%、鉄鋼生産に用いるコークス製造用に12.7%、製紙・パルプや窯業を始めとする産業用に12.6%が消費されました(第222-1-35)。
(注1)その他にはIEAの統計誤差を含む。
(注2)用途別の内訳は2019年が最新の値。
(注3)四捨五入のため、用途別の比率を合計しても100%にならない。

【第222-1-35】世界の石炭消費量の推移(用途別)
(xlsx形式23KB)
資料:IEA「World Energy Statistics 2021」を基に作成
石炭を利用する場合においては、地球温暖化対策の観点から、高効率化の技術開発、またこの技術を電力需要が急増する国々を中心に広く普及させるといった対策が併せて求められています。
④石炭貿易
2020年の世界の石炭輸出量は12億8,496万トンと推計されています。インドネシアが世界最大の輸出量となっており(4億505万トン)、全体の31.5%を占めました。インドネシアは2011年に豪州を抜き世界最大の輸出国になりました。第2位の豪州は世界の輸出量の30.4%を占め、次いでロシアが16.5%と続き、以下、南アフリカ、米国、カナダの順となりました。これら上位6ヵ国で世界の石炭輸出量の90.7%を占めました(第222-1-36)。
(注1)各国・地域の輸出量を積み上げたもので、第222-1-37の輸入量合計と一致しない。
(注2)四捨五入のため、各国の比率を合計しても100%にならない場合がある。

【第222-1-36】世界の石炭輸出量(2020年見込み)
(xlsx形式42KB)
資料:IEA「Coal Information 2021を基に作成
一般炭と原料炭の別に見ると、2020年の一般炭輸出量は9億5,223万トン、原料炭輸出量は3億1,384万トンと推計されています。輸出国別では、一般炭の最大の輸出国はインドネシアで、世界の一般炭輸出量の42.0%を占め、次いで豪州が22.3%、ロシアが17.9%、南アフリカが6.6%、コロンビアが3.0%と続き、これら5ヵ国で全体の91.8%を占めました。一方、原料炭の最大の輸出国は豪州で、世界の原料炭輸出量の56.5%を占め、次いで米国12.2%、ロシア9.3%、カナダ8.9%、モンゴル7.6%と続き、これら5ヵ国で全体の94.4%を占めました。
インドネシアからの輸出が急拡大した理由としては、石炭需要が拡大しているインドや東南アジア諸国、また中国や韓国など東アジアに地理的に近いこと、発熱量は低いものの安価な石炭を多く生産していること等が挙げられます。一方、豪州が多くの石炭を輸出している理由としては、高品質の石炭が豊富に賦存すること、石炭の生産地が積出港の近くにあること、鉄道や石炭ターミナルのインフラがほかの輸出国と比較して整備されていることが挙げられます。
一方、2020年の世界の石炭輸入量は13億3,658万トンと推計されています。中国の輸入量が3億885万トンと世界最大(シェアは23.1%)、次いでインドが2億1,125万トン(同15.8%)と推計されています。日本の輸入量は1億8,343万トン(同13.7%)で、世界第3位の輸入国となっています。以下、韓国1億2,349万トン(9.2%)、台湾6,326万トン(4.7%)と続き、これら5ヵ国で全体の66.6%を占めました(第222-1-37)。
(注1)各国・地域の輸入量を積み上げたもので、第222-1-36の輸出量合計と一致しない。
(注2)四捨五入のため、各国の比率を合計しても100%にならない場合がある。

【第222-1-37】世界の石炭輸入量(2020年見込み)
(xlsx形式39KB)
資料:IEA「Coal Information 2021」を基に作成
長年にわたり世界第1位の石炭輸入国は日本でしたが、中国、インド等アジア諸国では電力需要の増加に伴い石炭火力発電所での石炭消費が増加し、石炭輸入量が増加しています。中国の石炭輸入量は、2009年に1億トンを超え、2011年には2億トン超、2013年には3億トン超と、急激に拡大し、2011年に日本の輸入量を抜いて最大の輸入国になりました。また、2014年にはインドの輸入量が日本の輸入量を上回り、世界第2位の輸入国となりました。
一般炭と原料炭の別に2020年の輸入国を見ると、一般炭は中国が最大の輸入国で、以下、インド、日本、韓国、台湾と続きました。原料炭も中国が最大の輸入国で、以下、インド、日本、韓国、ウクライナの順となりました。
2020年の世界の主な石炭貿易フロー(褐炭を除く)を見ると、石炭貿易の流れは、中国、インド及び日本を中心とするアジア地域と欧州地域の二つに大きく分かれていますが、近年はアジア市場の規模が大きくなっています(第222-1-38)。

【第222-1-38】世界の主な石炭貿易(2020年見込み)
(注)褐炭を除く。300万トン以上のフローを記載。
資料:IEA「Coal Information 2021」及び貿易統計等より推計。
⑤石炭価格の推移
石炭価格は、世界の需給動向を反映し、特に2000年代半ば頃から変動が目立つようになりました。日本の石炭輸入価格は、一般的には長期契約をベースとして、国際的な市場価格(スポット価格)の動向を勘案し決定されます。日本の豪州産一般炭輸入CIF価格(第222-1-39)は、2000年代後半頃からアジアを中心とする新興国の電力需要の伸びや、生産国における気象の影響等による供給障害等の需給バランスを背景に上昇しました。特に中国やインドが輸入を増やす中、2011年には140ドル/トン(以下、単に「ドル」と表示する。)を超える高値を記録しました。その後は輸出国で供給力の拡大が進んできた一方で需要が鈍化したことから供給過剰となり、2016年まで一般炭輸入価格は低下が続きました。2017年に上昇に転じましたが、需給の緩みを背景に2019年に再び低下、2020年は世界的な新型コロナウイルス感染症拡大により経済活動が低迷し、輸入価格は更に低下しました。2020年秋期頃からは経済活動の回復等に伴い石炭需要が増加し、2021年の一般炭輸入価格(速報値)は133ドルに上昇しました。
原料炭も世界的な需要拡大を背景に、2000年代後半以降は急激な変動を見せています。豪州産原料炭(強粘結炭)輸入価格は、2011年には、需要が増加する中、供給側では豪州(クイーンズランド州)を記録的な集中豪雨が襲い生産や出荷が滞ったこと等を背景に282ドルと最高値となりました。その後は、欧州の経済不安、さらに中国、インドでの経済成長の減速等を背景に原料炭も供給過剰となり、2016年まで価格の下落が続きました。しかし2017年には、中国の原料炭輸入の増加を背景に需給がタイト化したこと等から、原料炭輸入価格は200ドルを超える水準まで高騰しました。2020年は一般炭と同様に新型コロナウイルス感染症拡大の影響による鉄鋼需要の低下を背景に138ドルと大幅に低下しました。2021年(速報値)は172ドルまで回復しました(第222-1-39)。
(注)2021年の値は速報値。

【第222-1-39】日本の豪州炭輸入CIF価格の推移
(xlsx形式19KB)
資料:財務省「日本貿易統計」を基に作成
近年、日本の石炭輸入価格に影響を与える国際市場価格は大きく変動しています。一般炭スポット価格(豪州のニューキャッスル港出し一般炭価格(月平均)は2016年初めに50ドルを割り込みましたが、その後上昇し、同年末頃には一時的に100ドル超まで高騰しました。この高騰の主な要因は中国の需要が増加に転じると同時に、中国政府が国内生産を政策的に抑制した(炭鉱の操業日数を減じた)こと等により国内需給がタイトになり、輸入量が増加したためです。一方輸出国では、長引いた価格低迷による不採算炭鉱の閉山や休山が進み供給力の調整が進んでいたことが挙げられます。その後は中国の生産調整が緩和されたこと等から80ドル前後に低下しましたが、2017年下半期に入り、中国やASEANの輸入が堅調な中、インドの輸入量も対前年比で増加し、再び上昇に転じ、2018年7月には120ドルまで高騰しました。しかしその後、主な需要国での輸入が停滞したことから一般炭供給は過剰気味となり、スポット価格は下落し、2019年後半以降60ドル台後半で推移しました。2020年第一四半期頃までは同水準で維持していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による石炭需要の落ち込みから5月には50ドル台前半に下落、8月には近年の底値(2016年1月)に迫る50ドルまで下落しました。そうした中で、供給事業者が生産量を絞る一方で、中国の輸入需要が維持されたこと等から、2020年12月には80ドル台まで持ち直しました。2021年に入って一般炭スポット価格は、石炭輸入国での石炭需要が増加していることから夏期の需要期に向けて上昇し、その後は中国国内市場の動向に大きくけん引されて、上昇しました。しかし、中国政府が国内生産を増加するなどの対策をとったことから、11月の一般炭価格は下落しましたが(第222-1-40)、冬期の需要期であることに加えて、インドネシアが2022年1月に入り自国の電力用石炭が不足していることから一時石炭輸出を禁止したため1月の価格は200ドル近くまで上昇しました。その後は雨の影響で豪州の輸出量が低迷したこともあり、一般炭先物価格は高値で推移しています。そうした中、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略により、一般炭価格は一時400ドルまで急騰し、その後200ドル台半ばまで下落しましたが、EUと日本がロシア炭禁輸を発表したことから再び上昇しています。
豪州高品位原料炭輸出価格(4半期平均価格)を見ると、2015年第4四半期から2016年第1四半期かけて80ドルを割り込みましたが、一般炭と同様の要因により2016年第4四半期には200ドル近くまで上昇しました。2017年第3四半期には160ドル台まで下落しましたが、中国及びインドの輸入増や供給が滞ったこと等から2018年第1四半期には200ドル超まで戻し、その後は170ドルから190ドル台で推移しました。2019年に入り中国を除いて主な需要国の輸入が停滞し、さらに同年後半には中国の輸入も減速したため、一般炭と同様に原料炭も供給過剰気味となり、原料炭輸出価格は2019年第4四半期には140ドルを下回り、さらに2020年第3四半期には100ドル近くまで下落しました。2021年に入り110ドル台まで戻しましたが、原料炭輸出価格も主に中国国内市場の動向にけん引され、第3四半期には170ドルを突破し、その後、第4四半期には300ドル台まで急騰しました(第222-1-40)。原料炭は2021年夏ごろから供給不足気味となっており、原料炭価格も高値で推移しています。そうした中、高品位原料炭価格は、ロシアによるウクライナ侵略により一時600ドルまで急騰し、その後400ドル台前半まで下がりましたが、一般炭と同様に禁輸の発表を受けて再び上昇しています。
(注)豪州一般炭スポット価格:World Bankが公表する豪州ニューキャッスル港出し一般炭スポットFOB価格(月平均)。豪州高品位原料炭輸出価格:豪州DISERが公表する豪州高品位原料炭輸出FOB価格(四半期平均)。

【第222-1-40】豪州一般炭・高品位原料炭価格の推移
(xlsx形式33KB)
資料:World Bank及びDepartment of Industry, Science, Energy and Resources (DISER), Australia Government,「Resources and Energy Quarterly – December 2021}を基に作成
石炭(一般炭)の価格と他の化石エネルギーの価格を同一の発熱量(1,000kcal)当たりのCIF価格で比較すると、石炭の価格が原油やLNGの価格よりも低廉かつ安定的に推移していることが分かります(第222-1-41)。1980年代前半では石炭の価格優位性は非常に高いものでしたが、1986年度以降はその価格差が縮小しました。しかし、1999年度以降再び価格差は増大し、石炭の優位性が増してきました。2004年度以降、原油価格の上昇に合わせて他の化石エネルギーの価格も上昇していますが、発熱量当たりのCIF価格で比較すると、石炭の上昇幅は他の化石エネルギーよりも小さいものでした。2012年度以降は上述したように石炭価格の下落により発熱量当たりのCIF価格も低下しました。2017年度、2018年度にはいずれの化石エネルギー価格も上昇し、2019年度、2020年度に低下しましたが、石炭価格は原油及びLNG価格と比較し、優位性を維持しています。

【第222-1-41】化石エネルギーの単位熱量当たりCIF価格
(xlsx形式23KB)
資料:日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
2.非化石エネルギー
(1)原子力
①世界の原子力発電の推移
1951年、世界初の原子力発電が米国で開始されて以来、二度の石油危機を契機として世界各国で原子力発電の開発が積極的に進められてきましたが、1980年代後半からは世界的に原子力発電設備容量の伸びが低くなりました(第222-2-1)。

【第222-2-1】原子力発電設備容量(運転中)の推移
(xlsx形式26KB)
資料:日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向2021年版」を基に作成
しかし、化石燃料資源の獲得を巡る国際競争の緩和や地球温暖化対策のため、特にアジア地域では、原子力発電設備容量が着実に増加してきました。2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて日本の原子力発電電力量が減ったため、アジア地域の原子力発電電力量は減少しましたが、2014年に再び増加に転じました(第222-2-2)。

【第222-2-2】世界の原子力発電電力量の推移(地域別)
(xlsx形式26KB)
資料:IEA「World Energy Balances 2021 Edition」を基に作成
一方、欧米地域においては、原子力発電所の新規建設が少ないものの、出力増強や設備利用率の向上によって、発電電力量は増加傾向となってきました。設備利用率で見ると、例えば、米国ではスリーマイル島事故後の自主的な安全性向上の取組によって官民による設備利用率向上を進めた結果、近年では設備利用率9割前後で推移しています。一方、日本では東日本大震災後、原子力発電所は長期稼働停止しており、2015年8月に新規制基準施行後初めて再稼働した九州電力川内原子力発電所1号機を始め、2022年3月までに10基が再稼働したものの、設備利用率は低迷したままです(第222-2-3)。また、エネルギー需要が急増する新興国を中心に、原子力発電所の新規導入又は増設の検討が進められています。

【第222-2-3】主要原子力発電国における設備利用率の推移
(xlsx形式28KB)
資料:IAEA「Power Reactor Information System(PRIS)」を基に作成
②各国の原子力発電の現状
ここでは、各国・地域の現状について説明します(第222-2-4)。

【第222-2-4】各国・地域の現状一覧
(注)基数・発電能力は2021年1月1日時点。発電量・設備利用率・発電電力量構成比率は2020年時点(年ベース)。
資料:基数・発電能力は日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向2021年版」を基に作成、発電量・発電電力量構成比率はIEA「World Energy Balance 2021年版」を基に作成、設備利用率はIAEA「Power Reactor Information System(PRIS)」を基に作成
(ア)米国
米国では運転中の原子力発電所の基数が94基(合計出力1億35万kW)あり、その規模は世界一で、原子力発電により発電電力量の19%を賄っています(2020年)。また、平均設備利用率は92%(2020年)と順調な運転を続けてきました。2022年3月時点で85基の原子力発電所について、運転期間(認可)を60年とする延長が認められており、さらに3基が延長を申請する予定であることを表明しています。また2017年7月、原子力規制委員会(NRC)は80年運転に向けたガイダンスを確定し、認可を受けた原子力発電所においては80年運転が可能となりました。これまでにフロリダ・パワー&ライト社のターキーポイント3、4号機、セントルーシー1、2号機、エクセロン社のピーチボトム2、3号機、ドミニオン社のサリー1、2号機、ノースアナ1、2号機、ネクストエラ社のポイントビーチ1、2号機、デュークエナジー社のオコニー1、2、3号機、が80年運転に向けた2回目の運転期間延長申請をしています。このうち、NRCはターキーポイント3、4号機に対して2019年12月に、ピーチボトム2、3号機に対して2020年3月に、サリー1、2号機に対して2021年5月に運転期間延長の認可を発給しました。
2005年8月に成立した、原子力発電所の新規建設を支援するプログラムを含む「2005年エネルギー政策法」に基づき、建設遅延に対する政府保険、発電量に応じた一定の税額控除、政府による債務保証制度が整備されました。こうしたインセンティブ措置の導入を受け、原子力発電所の新規建設に向け、2007年以降19件の建設・運転一体認可(COL)申請がNRCに提出されました(2022年3月時点で認可8件、審査一時停止2件、申請取下げ8件、申請却下1件)。
東京電力福島第一原子力発電所事故直後の2011年3月14日、エネルギー省は、前月に発表した2012年会計年度のエネルギー省予算のうち、原子力発電所新設支援のための融資保証枠360億ドルは変更しないと発表し、原子力政策の維持を表明しました。さらに同年3月30日にオバマ大統領はエネルギー政策に関する演説を行い、そこで原子力の重要性に言及しました。
原子力発電を重視する姿勢は2017年1月20日のトランプ大統領就任後も変更はなく、トランプ大統領が議会に提出した2018年会計年度、2019年会計年度各々の予算教書において、オバマ前政権が打ち切ったユッカマウンテンにおける使用済燃料の深地層処分場建設計画の許認可審査活動の再開及び中間貯蔵プログラムの開始について新たに予算措置を提案したほか、2017年9月29日にはエネルギー省が建設費用の増加が見込まれるボーグル発電所3、4号機に対し、建設継続のために37億ドルの追加融資保障の適用を提案しました。一方、ユッカマウンテンに関連するネバダ州の反対で膠着状態となったことから、2020年2月、トランプ政権はユッカマウンテン計画を進めず、代替の解決策を開発し、実行可能な方策に州を関与させていく方針を表明しました。2021年1月には新たにバイデン政権が発足しましたが、バイデン大統領も気候変動対策の観点から原子力を重視する方針を示しています。
他方で、米国内でシェールガス開発が進み天然ガス価格が下落している等の要因を含む経済性の観点から、原子力発電所の閉鎖も発表されています。2012年から2021年までの10年間に、デュークエナジー社のクリスタルリバー3号機、ドミニオン社のキウォーニー原子力発電所、サザンカリフォルニアエジソン社のサンオノフレ2、3号機、エンタジー社のバーモントヤンキー原子力発電所、ピルグリム1号機、インディアンポイント2、3号機、オマハ電力公社のフォートカルフォーン1号機、エクセロン社のオイスタークリーク原子力発電所、スリーマイルアイランド1号機、ネクストエラ社のデュアンアーノルド1号機が閉鎖されたほか、エンタジー社のパリセード原子力発電所、パシフィックガスアンドエレクトリック社のディアブロキャニオン1、2号機についても、経済性の観点から閉鎖が決定されました。また、新設についても、建設費用の大幅な増加に伴い、2017年3月29日の、ボーグル発電所3号機、4号機及びV.C.サマー発電所2、3号機の建設工事を請け負うウエスチングハウス社による米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続の申立てを受け、同年7月にV.C.サマー発電所の建設中止が決定されました。
原子力発電所の閉鎖が相次いで公表される状況に鑑み、温室効果ガス削減や雇用など地元経済への影響の観点から、複数の州で原子力発電所の運転継続を支援する制度が導入されています。2016年8月、ニューヨーク州で原子力発電所に対する補助金プログラムを盛り込んだ包括的な温暖化防止策「クリーン・エネルギー基準(CES)」が承認されたほか、同年12月にイリノイ州で州内の原子力発電所に対する財政支援措置を盛り込んだ包括的エネルギー法案、2017年10月にコネチカット州内で稼働するミルストン原子力発電所2、3号機への支援措置を可能にする「ゼロ炭素電力の調達に関する法案」が成立、2018年5月にはニュージャージー州で州内の原子力発電所に対する財政支援プログラムである「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を盛り込んだ法案が成立しました。2019年7月には、オハイオ州で同様の法案が成立しています。2021年9月にはイリノイ州で新たな低炭素電源支援法が成立したことにより、経済的な問題から閉鎖が予告されていたエクセロン社のバイロン1、2号機とドレスデン2、3号機が運転を継続できることとなりました。
米国では、エネルギー省が2015年より実施している「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)プログラム」や2020年5月に立ち上げられた「革新炉実証プログラム(ARDP)」を中心に、連邦政府が革新炉開発支援を積極的に行っています。2018年以降、米国議会でも革新炉開発を促進するための立法活動が進められており、2018年9月には「原子力イノベーション能力法」が、2019年1月には「原子力イノベーション改新法」が成立しました。また、2021年11月に成立した「インフラ投資法案」では、ARDPへの予算支援の承認とともに、経済的に困難な既設炉へのクレジット付与(60億ドル)が盛り込まれました。
(イ)欧州
(ⅰ)英国
英国では15基の原子力発電所が運転中で、発電電力量の16%を賄っています(2020年)。2007年7月、英国政府は、新しいエネルギー白書「Energy White Paper: meeting the energy challenge」を発表し、この中で、原子力発電所の新規建設に向けた政策面での支援方針を表明しました。さらに2008年1月には、原子力発電所新規建設に向けた体制整備やスケジュール等を盛り込んだ原子力白書を発表しました。2011年7月には、英国下院において8ヵ所の原子炉新設候補サイトが示された原子力に関する国家政策声明書が承認されました。2013年12月に成立したエネルギー法では、原子力発電への適用を含んだ差額決済方式を用いた低炭素発電電力の固定価格買取制度(FIT-CfD: Feed-in Tariff with Contracts for Difference)を実施することが規定されています。このFIT-CfDについては、EDFエナジー社のヒンクリー・ポイントCにおける原子力発電所新設案件への適用について、欧州委員会よりEUの国家補助(State Aid)規則に違反する可能性につき調査が行われましたが、2014年10月に同規則に違反しないとの判断が下されました。ヒンクリー・ポイントC発電所計画では、2013年10月に英国政府と事業者の間で、具体的な固定買取価格(ストライク・プライス)が発表されており、2015年10月には、フランス電力(EDF)と中国広核集団有限公司(CGN)の間で、同計画に対してEDFが66.5%、CGNが33.5%を出資することで合意に至ったと発表されました。2016年7月にはEDFの取締役会が最終投資決定を行い、同年9月には英国政府、EDF及びCGNが、同計画を実行するための最終的な契約・合意文書に調印、2017年3月、原子炉建屋外施設へのコンクリート打設が開始されました。また、EDFは2018年11月、サイズウェルC発電所の2021年末の建設開始を目指すと発表しました。ムーアサイド発電所での新規建設事業を進めていた東芝は、2018年11月、英国での原子力発電所新規建設事業からの撤退と、100%出資していたニュージェネレーション社の解散を決定しました。次いで、日立製作所が100%出資するホライズン・ニュークリア・パワー社は、ウィルファ・ニューウィッド発電所及びオールドベリーB発電所の新設計画を進めていましたが、2019年1月、日立製作所がホライズンプロジェクトの凍結を発表し、2020年9月には英国での原子力発電所新規建設事業からの撤退を発表しました。2021年3月現在、英国内ではEDFエナジー社のヒンクリー・ポイントC発電所、サイズウェルC発電所、中国広核集団有限公司(CGN)のブラッドウェルB発電所の新設計画が進められています。
2017年11月に発表された「Industrial Strategy」を受け、2018年6月、英国政府は「Nuclear Sector Deal」を公表しました。先進的モジュール炉(AMR)の研究開発、新設、廃炉コストの削減、将来の原子力輸出等への政府の支援策を示し、英国内民生用原子力産業に対し、総額2億ポンドを投じるとしています。2020年11月、英国政府は「グリーン産業革命に向けた10ポイント計画(10 Point Plan)」を発表し、原子力の分野では大型原子炉及び小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)に最大約5億5,000万ポンド投資する方針を明らかにしました。
2021年10月には政府より、「Net Zero Strategy: Build Back Greener」が公表され、新たに1.2億ポンドの「未来の原子力実現基金」を新設することが発表されました。また、同年同月には新たな戦略のみならず、原子力発電所の新設に対する新たな支援制度として、規制資産ベース(RAB)モデルの導入が発表されました。RABモデルは、設備に対する投資コストに見合った適切なリターンを規制機関が評価し、利用料を通じてそれを消費者から回収することを認める仕組みです。従来の支援制度と比較して、この仕組みでは事業の不確実性が低減されるとともに、最終的な消費者負担も軽くすることができると期待されています。
(ⅱ)フランス
フランスは原子力発電所の基数が56基と米国に次ぐ世界第2位の原子力発電規模を有しており、発電電力量の67%を賄っています(2020年)。発電設備が国内需要を上回っているという状況から、新規原子力発電所の建設は行われてきませんでした。しかし、2005年7月に制定された「エネルギー政策指針法」において、2015年頃までに既存原子力発電所の代替となる新規原子力発電所を利用可能とするため、原子力発電オプションの維持が明記されたこともあり、EDFは2006年5月、新規原子力発電所としてフラマンビル3号機(欧州加圧水型原子炉:EPR)を建設することを決定し、2007年12月に着工しました。しかし、同機は建設に大幅な遅延が生じており、2022年3月時点でも運転を開始していません。
東京電力福島第一原子力発電所事故後の2011年3月以降も、フランスは原子力政策堅持の姿勢を崩しませんでしたが、2015年8月、オランド大統領率いる社会党政権が、原子力発電の発電量について、2025年までに50%まで割合を引き下げ、現行の発電容量(63.2GW)を上限とする内容の「グリーン成長のためのエネルギー転換法」を成立させました。2025年までに原子力比率を50%まで引き下げるという目標については、送電系統運用者のRTE社により、計画通り実施した場合、2020年以降の電力供給の不足やCO2の削減目標の未達が生じるとの懸念が示されたほか、2017年5月に就任したマクロン大統領政権下の閣僚からは非現実的であるとの見解が示されました。その結果、2017年11月に原子力比率引下げの目標年次の延期が決定され、2019年11月、2035年までに原子力比率を50%まで引き下げるという内容を盛り込んだ「エネルギー・気候法」が公布されました。「エネルギー転換法」の取決めにより、新たな原子力発電所を完成させる前に古いものを閉鎖しなければならなくなったこともあり、2019年9月に政府とEDFはフェッセンハイム1、2号機の早期閉鎖について合意しました。両機は2020年2月と6月にそれぞれ閉鎖されました。
2021年2月、規制当局ASNは運転開始から40年を迎える90万kW級原子炉について、EDFが計画している安全性向上策とASNが要求する追加措置の実施を条件に50年運転を認める決定を発表しました。1978〜1987年に商業運転開始した原子炉32基が対象とされています。フランスでは規制による運転年数制限は特に設けられておらず、10年ごとに実施される各原子炉の定期安全レビュー(PSR)において合格した場合に、その後の10年間の運転許可が付与されます。今回の決定により、90万kW級原子炉の全般的評価フェーズが完了し、今後、順次個別レビューが行われ、2031年までには全てのPSRが完了する予定です。
2015年7月、EDFは、経営難に陥っていた同国の原子力複合企業アレバ社の再建策として、同社の原子力サービス部門であるアレバNP社の株式の少なくとも51%を取得することでアレバ社と合意したと発表しました。2016年11月、アレバ社は、アレバNP社の原子力サービス部門から、建設が遅延しているオルキルオト3号機関連を除く事業を継承する新会社New NP社の株式の少なくとも51%をEDFが取得することで、正式にEDFと合意しました。最終的な出資比率はEDFが75.5%、三菱重工が19.5%、フランスのエンジニアリング会社のアシステムが5%となり、2018年1月、フラマトムに名称変更しました。同月、燃料サイクル部門のニューアレバも、オラノに名称変更しました。最終的なオラノへの出資比率は、政府45.2%、仏原子力庁(CEA)4.8%、アレバSA(政府100%出資のアレバ本体)40%、日本原燃5%、三菱重工5%となりました。2018年2月の日本企業による増資完了をもって一連の業界再編は完了しました。
(ⅲ)ドイツ
ドイツでは、2002年2月に成立した改正原子力法に基づき、当時運転中であった国内19基の原子炉を、2020年頃までに全廃する予定としていましたが、2009年9月の連邦議会総選挙において、「脱原子力政策」が見直されました。2010年9月、原子力発電所の運転延長を認める法案が閣議決定され、電力会社は経営判断に基づき既設炉の運転延長を判断することができるようになりました。しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故直後の2011年3月27日に行われた州議会選挙で、脱原子力発電を公約とした緑の党が躍進したことや、大都市で原子力発電所の運転停止を求めるデモが相次いだこと等により、連立政権も同年4月には脱原子力を推進する立場へと転換しました。2003年11月にシュターデ発電所が、2005年5月にオブリヒハイム発電所が廃止され、2011年時点で国内17基の原子炉がありましたが、それらを段階的に廃止し、再生可能エネルギーとエネルギー効率改善により代替していくための法案が、同年6月30日に下院で、7月8日に上院で可決し、7月31日の大統領署名を経て、8月1日から施行となりました。この政策変更により、8基の原子炉が即時閉鎖となりました。また、残り9基の原子炉については、2022年までに順次閉鎖されることになり、それに基づき2015年6月にグラーフェンラインフェルト発電所が、2017年12月にグンドレミンゲンB発電所が、2019年12月にフィリップスブルク発電所2号機が、そして2021年12月にブロックドルフ発電所、グローンデ発電所、グンドレミンゲンC発電所が永久停止し、ドイツの運転中原子力発電所は3基となりました。原子力発電による、発電電力量構成比率は11%です(2020年)。
(ⅳ)その他の欧州
スウェーデン6基(発電電力量の30%)、スペイン7基(同23%)、ベルギー7基(同39%)、チェコ6基(同37%)、スイス4基(同35%)、フィンランド4基(同34%)、オランダ1基(同3%)の原子力発電所が運転中です(基数:2021年1月時点。発電電力量シェア:2020年時点)。
このうちスウェーデンでは、1980年の国民投票の結果を踏まえて、原子力発電所を段階的に廃止することとされ、1997年には新設禁止を定めた原子力法が制定されました。それに基づき1999年12月にバーセベック1号機を、2005年5月に同2号機を閉鎖しました。しかしその後、原子力発電所廃止見直しの機運が高まり、2010年6月、新設禁止を定めた原子力法を改正し、国内10基の既設原子炉のリプレースを可能とする法案が議会で可決されました。これにより新規建設は法律上可能となりました。これまでは、電気事業者は既設発電所の出力向上に優先的に注力しており、正式な建設計画は提出されていませんでしたが、2012年7月、電気事業者よりリプレースのための調査を行うとの発表があり、規制当局に対してリプレース計画が申請されました。2014年10月に発足したロヴェーン新首相率いる新政権は、2040年までに電力の全てを再生可能エネルギーで賄うことを目標としていましたが、2016年6月の社会民主党を始めとする5党の枠組合意では、原子力発電所の熱出力に課されている税が2017年から2年間で段階的に廃止されることとなりました。2040年は原子力発電所の全廃の期限ではないことが確認され、低炭素化における原子力発電の重要性を認める形となりました。他方、2019年12月及び2020年12月、バッテンフォール社は経済性の悪化を理由に早期閉鎖を予定していたリングハルス2号機及び1号機を閉鎖しました。
ベルギーでは、2003年1月、脱原子力発電法が成立し、これに基づき、国内7基の原子炉は、建設から40年を経たものから順次閉鎖する予定となりました。一方2008年3月に発足した前・連立政権時には、専門家による検討を踏まえ、2009年10月に原子炉3基の運転期間を10年延長することを決定する等の動きも見られましたが、2011年10月末、新政権設立を目指す政党間で、2003年の脱原子力発電法の基本方針を踏襲すること、運転期間の10年延長は撤回されることで合意されました。2012年7月4日、ベルギー政府は建設から40年を経たものから順次閉鎖との基本方針を踏襲し、ドール1、2号機を2015年に廃炉にすることを決定する一方で、国内最古の原子力発電所の一つであるチアンジュ1号機については10年延長(2025年まで運転)することを決定しました。2014年10月に発足した新政権は、ドール1、2号機についても運転延長を認める方針を表明しました。2015年12月、ベルギー政府とエンジー社は、ドール1、2号機の運転期間の10年延長と、運転に伴う新たな賦課金システムに関する協定に調印したと発表しました。2018年3月にベルギー政府から発表されたエネルギー戦略では2025年までに全ての原子力発電所を停止することとなっていましたが、2022年3月にベルギー政府はドール4号機とチアンジュ3号機の運転を10年間延長することを決定しました。
チェコでは、2011年10月、国営電力CEZ社がテメリン原子力発電所の増設のための入札を開始し、東芝・ウエスチングハウス、ロスアトム、アレバの3社から入札を受けました。2014年4月、CEZ社は現状の制度の下では投資回収が見込めないことを理由に入札を中断しました。2015年5月、チェコ政府は、2040年時点における原子力比率を約49%にまで高めることを含む新たなエネルギー政策を承認しました。政府は原子力発電所の増設のための投資・事業モデルに関する調査を行い、2019年7月、ドコバニ原子力発電所においてリプレース用の原子炉を2基増設する計画について、CEZ社のグループが100%子会社を通じて建設資金を調達するという投資家モデルを政府が承認しました。同年11月には、バビシュ首相が、ドコバニ原子力発電所における新規原子炉を2036年までに完成させる方針を明らかにしました。最初の1基について、供給企業の選定を2022年末までに終え、遅くとも2029年までに建設工事を開始、2036年までに同炉の運転開始を目指すとしています。2021年3月に規制当局がドコバニ原子力発電所の2基増設の立地許可を発行し、2022年3月にはチェコ政府が建設企業を選定する入札を開始ました。入札資格はフランスのEDF、米国のウェスチングハウス、韓国水力・原子力会社(KHNP)にのみ与えられています。
フィンランドでは、2003年12月、TVO社が同国5基目の原子炉となるオルキルオト3号機にアレバ社のEPR(160万kW級PWR)を選定しました。同機は2005年12月の着工から工期が長引きましたが、2021年12月に初臨界を達成し、2022年3月から電力供給を開始しています。2010年7月には、議会がTVO社とフェンノボイマ社の新規建設(各1基)を承認しました。また、フェンノボイマ社は2012年1月にピュハヨキ(ハンヒキビ)1号機建設の入札を行い、2013年12月、ロスアトム社が選ばれました。AES-2006(120万kW級VVWR)の建設が、2023年に開始される予定です。運転中の原子力発電所としては、2017年1月TVO社がオルキルオト1、2号機の2038年末までの運転延長申請をし、2018年9月に承認されました。
リトアニアでは、2011年7月、ビサギナス原子力発電所の建設のために、日立が戦略的投資家(発電所建設の出資者)として優先交渉企業に選定されました。2012年10月には、国政選挙と併せて実施された国民投票で6割強が原子力発電建設に反対し、政権も交代したためプロジェクトは停滞しましたが、2014年3月にはウクライナ情勢を受けてエネルギー安全保障への関心が高まり与野党間で再度プロジェクト推進の合意がなされました。2014年7月には、リトアニア・エネルギー省と日立の間で、事業会社の設立に向けたMOUが署名されました。しかし、2016年11月、政府は費用対効果が高くなるか、エネルギー安全保障上必要となるまで計画を凍結すると発表しました。
(ウ)アジア地域
(ⅰ)中国
中国では、48基の原子力発電所が運転中であり、発電電力量の約5%を原子力発電で賄っています(基数:2021年1月時点。発電電力量シェア:2020年時点)。2007年の原子力発電中長期発展規則では、2020年までに4,000万kWまで拡大する計画とされていました。また、2011年3月に安全確保を前提条件としてより効率的な原子力開発を行う方針を示した「国民経済と社会発展第12次5ヵ年計画」を採択しました。この全体計画に基づき、2013年1月には「エネルギー発展第12次5ヵ年計画」が公表され、2020年の原子力発電所設備容量を5,800万kW(2013年時点では1,500万kW)とする目標が示されました。この目標は、2014年11月に公表された「エネルギー発展戦略行動計画2014-2020」及び2016年11月に公表された「電力発展第13次5ヵ年計画」にも引き継がれています。2018年に陽江5号、海陽1号、三門1、2号、田湾3、4号、台山1号が、営業運転を開始したことにより、日本を抜いて世界第3位の原子力発電大国となりました。2019年には海陽2号、台山2号、陽江6号、2020年には田湾5号、2021年には福清5号、田湾6号機、紅沿河5号機が営業運転を開始しました。
中国は2018年8月に「原子力発電の標準化強化事業に関する指導意見」を公表し、10年後に世界の原子力標準化で中国が主導的な役割を果たすとの目標を示しました。2019年7月には、規制当局が2015年以来初めて、新規原子炉の建設を承認しました(3地点にそれぞれ2基ずつの建設を予定)。2020年9月には中国が開発を進めてきた第3世代原子炉「華龍一号」を採用する4基の建設を承認しました。また、2021年5月には中国においてロシア製第3世代炉4基の建設が開始されました。
(ⅱ)台湾
台湾では、4基の原子力発電所が運転中であり、発電電力量の11%を原子力発電で賄っています(基数:2021年1月時点。発電電力量シェア:2020年時点)。2005年の「全国エネルギー会議」では、既存の3か所のサイトでの原子力発電の運転と現在の建設プロジェクトの継続が確認されましたが、それ以降は原子力発電所の新規建設は行わず、既存炉が40年間運転した後、2018年から2024年の間に廃炉するとの方針が示されました。東京電力福島第一原子力発電所事故後の2011年11月に明らかにされた原子力政策の方向性でも、その方針に変更はありません。2014年4月、野党や住民による原子力発電反対の声が高まったことを受け、台湾当局は、建設中のプロジェクトを凍結し、当該原子力発電所の稼働の可否については、必ず公民投票を通じて決定しなければならないとの与党国民党(当時)立法委員総会の決議を受け入れることを表明しました。2017年1月、立法院(議会)は、2025年までに全ての原子力発電所で運転を停止することを含んだ電気事業法の改正案を可決しました。2018年12月には金山1号機、2019年7月には同2号が40年の営業運転を経て廃止されました。また、2021年7月には國聖1号機も廃止さました。他方で、2017年8月には台湾各地で大規模な停電が発生し、産業界が安定的な電力供給を求めてエネルギー政策の見直しを当局に要請しました。2018年11月には国民投票の結果を受け、「2025年までに全ての原子力発電所で運転を停止する」との条文が削除されました。2021年12月には、凍結されている龍門原子力発電所の建設再開是非を問う国民投票が実施されましたが、これは反対多数で否決されました。
(ⅲ)韓国
韓国では、24基の原子力発電所が運転中であり、発電電力量の27%を原子力発電で賄っています(基数:2021年1月時点。発電電力量シェア:2020年時点)。2014年1月、韓国政府は官民を交えた議論を経て、第2次国家エネルギー基本計画を閣議決定し、2035年の原子力発電比率を29%とすることを決定しました。しかし、2017年5月の大統領選挙により誕生した文政権は、同6月に脱原子力政策への転換を宣言し、同年10月には、原子力発電所の段階的削減と再生可能エネルギーの拡大を中心とするエネルギー転換政策のロードマップを閣議決定しました。同ロードマップでは、建設許可が既に下りていた新古里5、6号機については、建設の是非に関し国民の意見集約を実施するために設置した公論化委員会の勧告に基づき建設準備作業を再開するとした一方、これら2基以降の新設原子力発電所建設計画を全面白紙化することに加え、原子力発電所の運転期間延長を認めないこととしました。同ロードマップに沿って策定された第8次電力供給基本計画は、2017年12月に閣議決定されました。段階的に原子力を縮小し、2030年の発電電力量に対する原子力の割合を23.9%まで削減するとしました。この方針に基づき、2018年6月、月城1号機の早期閉鎖と新ハンウル3、4号機と天地1、2号機の建設計画の中止が決定されました。2019年6月、政府は、第3次国家エネルギー基本計画を閣議決定し、原子力発電を段階的に縮小する方針を示しましたが、数値目標は見送られました。2019年8月、新古里4号機が営業運転を開始し、設備容量は過去最大となりました。2020年12月に発表された第9次電力供給基本計画では、2034年の発電設備容量に対する原子力の割合を10.1%まで削減するとしました。しかし、2022年3月に行われた大統領選挙で勝利した尹錫悦氏は、選挙期間中から中止された新設計画の再開など、原子力利用の推進を主張してきたことから、今後の韓国の原子力政策を大きく転換させる可能性が高いとみられます。
(ⅳ)インド
インドでは、22基の原子力発電所が運転中であり、発電電力量の約3%を原子力発電で賄っています(基数:2021年1月時点。発電電力量シェア:2020年時点)。電力需要が増大する中、原子力に対する期待が高まっています。2005年7月、米印両国政府は民生用原子力協力に関する合意に至り、2007年7月には両国間の民生用原子力協力に関する二国間協定交渉が実質合意に至りました。同協定は、原子力供給国グループ(NSG: Nuclear Suppliers Group)におけるインドへの原子力協力の例外化(インドによる核実験モラトリアム等の「約束と行動」を前提に、核兵器不拡散条約非締約国のインドと例外的に原子力協力を行うこと)の決定や国際原子力機関(IAEA)による保障措置協定の承認、米印両国議会による承認等を経て、2008年10月に発効しました。この原子力供給国グループによる例外化の決定以来、インドは、米国のほか、ロシア、フランス、カザフスタン、ナミビア、アルゼンチン、カナダ、英国、韓国といった国々と民生分野で原子力協力協定を締結しています。2017年7月には、日印原子力協定が発効しました。東京電力福島第一原子力発電所事故以降も、電力需給のひっ迫が続くインドでは原子力発電の利用を拡大するとの方針に変化はなく、2021年6月にはロシア製PWRを採用したクダンクラム5号機の建設が開始されました。ただし、第12次のエネルギー政策では2032年に原子力の設備容量6,300万kWを目標としていましたが、政府は2018年3月、2031年までに2,248万kWとする見通しを示しました。
(エ)ロシア
ロシアでは1986年のチョルノービリ原子力発電所(現在のウクライナに所在)事故以降、新規建設が途絶えていましたが、近年は積極的に推進するようになっています。2021年1月時点で34基を運転中であると同時に、3基が建設中、14基が計画中となっています。2020年時点では、原子力発電によって発電電力量の20%を賄っています。
2011年3月、ロスアトム社キリエンコ総裁及びシュマトコ・エネルギー大臣は、東京電力福島第一原子力発電所事故のいかんにかかわらず、原子力発電開発をスローダウンする意向はないと表明しています。
ロシア政府は、2007年に連邦原子力庁「ロスアトム」を国営公社ロスアトム社へ再編し、同社がロシアの原子力の平和利用と軍事利用を一体的に運営することになりました。この結果、ウラン探鉱・採掘、燃料加工、発電、国内外での原子炉建設等民生原子力利用に関して国が経営権を完全に握っていたアトムエネルゴプロムも、ロスアトム社の傘下に入ることとなりました。2009年11月に政府により承認された「2030年までを対象期間とする長期エネルギー戦略(2030年戦略)」では、原子力の総発電量に占めるシェアが2008年の16%弱から2030年には20%近くまで引き上げられ、発電量は2.2-2.7倍に増大することを想定していました。2019年10月、ロシアは「2035年までのロシア連邦のエネルギー戦略」を公表しました。この戦略では、2035年の原子力による発電電力量が、低位ケースで227TWh、高位ケースで245TWhまで増加するという見通しを示しました。2019年5月、ノボボロネジII-2号機が運転を開始するとともに、同年12月、ロシアの浮体式原子力発電所が初めて系統に接続されました。2020年10月にはレニングラードII-2号機が運転を開始しました。ロシアは国内での原子力発電所の開発のみならず、原子力の輸出も積極的に進めており、2021年11月現在、海外で35の建設プロジェクトが進められています。
③核燃料サイクルの現状
(ア)ウラン資源
ウラン資源は世界に広く分布しており、カナダ、豪州、カザフスタン、ナミビア等が生産量、資源量ともに上位を占めています(生産量:2020年時点、資源量:2019年1月1日時点。第222-2-5、第222-2-6)。

【第222-2-5】世界のウラン生産量(2020年)
(xlsx形式20KB)
資料:世界原子力協会(WNA)ホームページを基に作成
(注1)ウラン既知資源量とは260米ドル/kgU以下のコストで回収可能な埋蔵量(2019年1月1日時点)。
(注2)世界のウラン需要量は5.92万トンU(2018年)。
(注3)端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある。

【第222-2-6】世界のウラン既知資源量(2019年)
(xlsx形式129KB)
資料:OECD/NEA-IAEA「Uranium 2020: Resources, Production and Demand」を基に作成
ウラン価格(スポット価格)は、1970年代、特に第一次石油危機後の原子力発電計画の拡大を受けて上昇しましたが、スリーマイル島事故、チョルノービリ事故を受けて新規原子力発電建設が低迷したことから下落し、低価格で推移してきました。その後、2003年頃から価格が上昇し、2007年には一時136ドル/ポンドU3O8になりました。2008年のリーマンショックの影響で価格は急落しましたが、2011年3月時点でも60ドル/ポンドU3O8を超える高値となりました。これは解体核高濃縮ウランや民間在庫取崩し等の二次供給の減少や、中国等によるウラン精鉱の大量購入等から需給ひっ迫が懸念され、世界的なウラン獲得競争が激化したことと、投機的資金の一部がウランスポット取引市場に流入したことに起因したと考えられています。2011年以降は東京電力福島第一原子力発電所事故等の影響により価格が下落し、最低で約20ドル/ポンドU3O8の水準まで下がりましたが、その後は低炭素な安定電源として原子力が再び注目されるようになったことなどから価格が再び上昇し、40ドル/ポンドU3O8前後にまで達しています(第222-2-7)。 (11)の推移

【第222-2-7】ウラン価格(U3O8
資料:International Monetary Fund「IMF Primary Commodity Prices」を基に作成
(イ)ウラン濃縮
世界のウラン濃縮事業は、2018年時点で、ロシアのロスアトム、フランスのオラノ、米国・英国・オランダ・ドイツの共同事業体URENCOの3社で約89%のシェアを占めています (
12)。
日本のウラン濃縮事業は遠心分離法を採用しており、日本原燃は、1992年3月から年間150トンSWUの規模で操業を開始し、1998年末には年間1,050トンSWU規模に到達しました。その後、一部の新型遠心分離機への置き換えや生産機能停止によって、現在の施設規模は年間450トンSWUになっています。今後は段階的に新型遠心機の更新工事等を行い、最終的には年間1,500トンSWU規模を達成する計画です。
(ウ)再処理
フランス及び英国では、自国内で発生する使用済燃料の再処理を実施するとともに、海外からの委託再処理も実施してきました。フランスのアレバ社再編により誕生した新会社のオラノは、海外からの委託再処理を行うためのUP3(処理能力:1,000トン・ウラン/年、操業開始:1990年)及びフランス国内の使用済燃料の再処理を受け持つUP2-800(処理能力:1,000トン・ウラン/年、操業開始:1994年)の再処理工場をラ・アーグに有しています(ただし、UP3及びUP2-800における処理能力の合計は、1,700トンHM/年に制限されています)。
英国原子力廃止措置機関(NDA)はセラフィールド施設及び海外からの委託再処理を行うためTHORP(処理能力:900トン・ウラン/年、操業開始:1994年)再処理工場をセラフィールドに有していましたが、2018年11月に操業を終了しました。
(エ)プルサーマル
MOX燃料 (13)の使用は、海外では既に相当数の実績があります。1970年代から2020年末までにフランス、ドイツ、スイス、ベルギーなどの9ヵ国で、約50基の発電プラントにおいて、MOX燃料約7,300体が使用されました。例えばフランスでは、3,500体、ドイツでは2,474体のMOX燃料が軽水炉で利用されました(2020年末現在)。また、軽水炉用のMOX燃料加工施設は、フランスで稼働しています。
(オ)高レベル放射性廃棄物の処分
海外の高レベル放射性廃棄物の処分については、各国の政策により、使用済燃料を直接処分する国と、使用済燃料の再処理を実施し、ガラス固化体として処分する国があります。高レベル放射性廃棄物は処分方法を決定している国としては、全て地層処分する方針が採られており、処分の実施主体の設立、処分のための資金確保等の法制度が整備されるとともに、処分地の選定、必要な研究開発が積極的に進められてきました(第222-2-8)。

【第222-2-8】高レベル放射性廃棄物処分に関する状況
(注1)ネバダ州のユッカマウンテンは安全審査段階だが、現在は安全審査が中断している状況。
(注2)2001年5月に処分地として決定。2016年12月に処分場の建設を開始。2021年12月に操業許可を申請。
(注3)2009年6月に処分地として決定。2022年1月に政府が事業許可を発給。
(注4)ビュール地下研究所近傍において法律に基づいた検討プロセスが進んでおり、2022年頃には処分場の設置許可申請が実施される予定。
(注5)処分場のサイト選定は、原子力令に従って策定された特別計画「地層処分場」に基づいて3段階で進められている。その第1段階として、2011年11月末に高レベル放射性廃棄物の処分場の「地質学的候補エリア」3ヵ所が正式に選定された(低中レベル放射性廃棄物を合わせると計6ヵ所)。その後、第2段階として「地質学的候補エリア」の検討が行われた結果、2018年11月、「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」が、サイト選定の第3段階に進む候補エリアに決定された。NAGRA(放射性廃棄物管理共同組合)は各候補エリアにおいてボーリング調査を実施中。
(注6)カンブリア州と同州内の2市がサイト選定プロセスへの関心表明を行っていたが、2013年1月にカンブリア州議会がサイト選定プロセスからの撤退を議決。2市の議会はプロセスへの継続参加に賛成していたが、州と市の両方のレベルでの合意を必要としていたため、1州2市はプロセスから撤退することとなった。2014年7月に、英国政府は地層処分施設の新たなサイト選定プロセス等を示した白書を公表。2018年から新しいサイト選定プロセスを実施中。2020年11月以降、カンブリア州のコープランド市とアラデール市、リンカンシャー州の3自治体が、調査エリアの特定に向けて、ワーキンググループを設置。そのうち、コープランド市の2地域とアラデール市の計3地域でコミュニティーパートナーシップが設置された。
(注7)施設の操業計画によっては再処理しない使用済燃料が残る可能性があり、それらを地層処分する可能性も考慮している。
資料:資源エネルギー庁「諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2022年版)」(2022年2月)を基に作成
(ⅰ)米国
1987年の放射性廃棄物政策修正法により、ネバダ州ユッカマウンテンが唯一の処分候補地として選定されました。米国エネルギー省(DOE)によって、処分場に適しているかどうかを判断するための調査が1988年から実施され、2001年に報告書がまとめられました。2002年には、エネルギー長官が大統領にユッカマウンテンを処分サイトとして推薦。大統領はこれを承認し、連邦議会に推薦しました。ネバダ州知事が連邦議会に不承認通知を提出しましたが、ユッカマウンテンを処分場に指定する立地承認決議案が連邦議会上院・下院で可決され、大統領がこれに署名して法律として成立することにより、ユッカマウンテンが処分地として選定されました。2008年6月にDOEは、2020年の処分場操業開始を目途とし、処分場の建設認可のための許認可申請書を原子力規制委員会(NRC)へ提出しました。
その後、2009年2月にオバマ政権が示した予算方針において、ユッカマウンテン関連予算は許認可手続のみに必要な程度に削減し、高レベル放射性廃棄物処分の新たな戦略を検討する方針が示されました。2010年3月、DOEは許認可申請の取下げ申請書をNRCに提出しましたが、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)は取下げを認めない決定を行いました。その後、NRCはASLBの決定が有効であるとした上で、2011年9月に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続について、一時停止することを指示しました。しかし、2013年8月、連邦控訴裁判所がNRCに対して許認可申請書の審査を再開するよう命じました。この連邦控訴裁判所の判決を受け、2013年11月にNRCは、安全性評価報告(SER)の完成等を優先して行うことを決定し、2015年1月までにSERの全5分冊を公表しました。高レベル放射性廃棄物処分を巡っては、2013年11月に連邦控訴裁判所からDOEに対して、放射性廃棄物基金への拠出金を実質的に徴収しないように命じる判決を下しており、エネルギー長官はこの判決を受けて、2014年1月に、放射性廃棄物基金への拠出金額をゼロに変更する提案を連邦議会に提出し、2014年5月に本提案が有効となりました。
また、DOEは、代替方策を検討するため、ブルーリボン委員会(米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会)を設置(2010年1月)して検討を行いました。本委員会においては、2012年1月に最終報告書が公表され、8つの勧告が示されました。2013年1月には、DOEが「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」を公表し、ブルーリボン委員会の最終報告書で示された基本的な考え方に沿った実施可能な枠組みが示されました。具体的には、2021年までにパイロット規模の使用済燃料の中間貯蔵施設の操業を開始し、2025年までにより大規模な中間貯蔵施設を建設、2048年までに処分場を操業開始できるように処分場のサイト選定とサイト特性調査を進めるというものでした。
トランプ政権は、2018年会計年度、2019年会計年度、2020年会計年度について、ユッカマウンテンの許認可手続の再開に必要となる予算を含めた予算教書を連邦議会に提出しましたが、計画再開のための予算はいずれも認められませんでした。また、2017年4月には、連邦議会下院でユッカマウンテン処分場計画の維持を目的とする放射性廃棄物政策修正法案に関する議論が開始され2018年5月に下院本会議で可決されました。下院本会議で採択された修正案を織り込み、2019年には上下両院でそれぞれ修正法案が審議されるなど、放射性廃棄物管理政策に関連する取組は活発化しました。しかし、ユッカマウンテンに関連するネバダ州の反対で膠着状態となったことから、2020年2月、トランプ政権はユッカマウンテン計画を進めず、代替の解決策を開発する方針を表明し、2021年会計年度について、ユッカマウンテンの許認可手続の再開に必要となる予算は計上しませんでした。また、2021年1月に発足したバイデン政権は、現在でも処分方針を示していませんが、オバマ政権当時に示されたブルーリボン委員会の勧告に基づき、同意に基づくサイト選定計画や中間貯蔵を進める方針としています。
(ⅱ)フィンランド
フィンランドでは、1983年よりサイト選定が開始され、1999年に処分実施主体であるポシヴァ社がオルキルオトを処分予定地として選定し、法律に基づく「原則決定」の申請書を政府に提出しました。2000年に地元が最終処分地の受入れを承認し、その結果を受け、政府がオルキルオトを処分地とする原則決定を行い、翌2001年に国会が承認しました。2012年12月、ポシヴァ社は政府へ最終処分場の建設許可申請書を提出しました。放射線・原子力安全センター(STUK)は、建設許可申請書に係る安全審査を完了し、2015年2月に、キャニスタ封入施設及び地層処分を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出しました。2015年11月、フィンランド政府はポシヴァ社に建設許可を発給し、2016年12月、ポシヴァ社は処分場の建設を開始しました。2021年12月、ポシヴァ社は処分場の操業許可を申請し、政府からの操業許可発給後、2020年代半ばに処分開始予定としています。
(ⅲ)スウェーデン
スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が、1993年から公募及び申入れにより8自治体を対象にフィージビリティ調査を行い、2000年11月にサイト調査の対象として3自治体(エストハンマル、オスカーシャム、ティーエルプ)を選定しました。このうち、サイト調査の実施について、自治体議会の承認が得られたエストハンマル自治体とオスカーシャム自治体でボーリング調査を含むサイト調査が行われました。その結果から、SKB社は、2009年6月に地質条件を主たる理由(①処分場深度の岩盤が乾燥しており亀裂がほとんどないこと、②処分場に必要となる地下空間が小さいことなど)としてエストハンマル自治体のフォルスマルクを最終処分場予定地として選定し、2011年3月に使用済燃料処分場の立地・建設の許可申請を行いました。この許可申請の際に提出された安全評価書「SR-Site」について、スウェーデン政府の要請に基づいて経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)が行った国際ピアレビューの報告書が2012年6月に公表され、SKB社による処分場閉鎖後の安全評価は十分かつ信頼ができるとの見解が示されました。処分場の立地・建設の許可申請については、安全規制当局である放射線安全機関(SSM)が安全審査を行い、2018年1月にSKB社は地層処分を安全に実施できるという評価を下したうえで、処分場建設を許可するよう政府に勧告を行いました。また、環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請に関する審理が土地・環境裁判所で実施され、SKB社に対して廃棄物の長期封じ込め能力に関する追加的な説明書の提出を要求しました。加えて環境法典では、政府による許可発給の判断の前に、地元自治体の受入れ意思を確認することが定められており、2020年10月にエストハンマル自治体議会は使用済燃料処分場の受入れ意思を議決しました。これを受け、政府は2022年1月に事業許可を発給しました。
使用済燃料の集中貯蔵施設「CLAB」がオスカーシャム自治体にあり、SKB社が1985年から操業しています。SKB社は、使用済燃料の処分に向けて新たに建設するキャニスタ封入施設をCLABに併設してCLINKと呼ぶ一体の施設にする計画であり、CLINKと使用済燃料処分場の申請書の安全審査が並行して進められています。SKB社は2015年3月に、CLABにおける使用済燃料の貯蔵容量を、現行の8,000トンから11,000トンへ引き上げる追加の許可申請を行いました。
(ⅳ)フランス
フランスでは、1991年に「放射性廃棄物管理研究法」が制定され、地層処分、核種分離・変換、長期地上貯蔵の3つの高レベル放射性廃棄物に関する管理方法の研究が15年間を期限として実施されました。地層処分については、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が、カロボ・オックスフォーディアン粘土層のあるビュールにおいて、2000年8月から立坑の掘削を開始して地下研究所を建設し、研究を行いました。法律に基づいて設置された国家評価委員会(CNE)は、2006年に3つの管理方法に関する研究成果を総合的に評価しました。これらを基に2006年6月には可逆性のある地層処分の実施に向けて「放射性廃棄物等管理計画法」が制定され、2015年に処分場の設置許可申請、2025年に処分場の操業を開始すること、設置許可申請は地下研究所による研究対象となった地層に限定することが定められました。2016年7月に、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」が成立しました。本法律の制定に伴って、処分場の設置許可申請時期が2015年から2018年に改定されました。また、2006年「放射性廃棄物等管理計画法」での多くの規定が取り込まれている「環境法典」が改正され、ANDRAによる地層処分場の操業は、可逆性と安全性の立証を目的とする「パイロット操業フェーズ」から始まることとなりました。
ANDRAは、ビュール地下研究所周辺の250km2の区域から30km2の候補サイト区域を政府に提案し、2010年3月の政府の了承を経て、同区域の詳細調査を実施しました。2013年5月から2014年2月にかけて地層処分の設置に関する公開討論会及び市民会議が実施され、これらの総括報告書及び市民会議の見解書が、2014年2月に公開されました。この報告書等を受けて、ANDRAは地層処分場プロジェクトの継続に関する方針を決定し、2014年5月に今後のプロジェクト継続計画を公表しました。2020年8月には、工事の許認可に必要となる地層処分場の設置に関する公益宣言が申請されました。
(2)再生可能エネルギー
再生可能エネルギーの利用拡大には、近年多くの国・地域が取り組んでいます。再生可能エネルギーの導入促進策としては、研究開発・実証、設備導入補助のほか、日本でも実施されている固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)や、再生可能エネルギー導入量割当制度(RPS:Renewables Portfolio Standards)が導入されています。一般的に、FITは優遇的な買取価格を設定する施策であり、RPSは政府が義務的な導入量を事業者に割り当てる施策です。2020年時点で、FITは83ヵ国(第222-2-9)、RPSは34ヵ国・地域で導入されています (14)。また、近年では多くの国々が競争入札によって買取価格等を決定する仕組みを取り入れています。

【第222-2-9】主要国の固定価格買取制度の導入状況
(注1)日本においてFITと呼ばれる制度が導入されたのは2012年であるが、本表では太陽光発電の余剰電力買取制度が導入された2009年を日本のFIT導入年としている。
資料:REN21「Renewables 2021 Global Status Report」を基に作成
こうした施策によって、再生可能エネルギーへの投資は2000年代半ば以降飛躍的に増大し、2010年以降は、毎年2,000億米ドルを超える投資が行われています(大型水力発電を除く)。2020年には、約3,035億米ドルと2019年から約1.7%増加しました。新型コロナウイルス感染症により2020年は投資が減少することが予測されていましたが、各国政府による景気刺激策や低炭素エネルギー促進策により増加しました。また、近年、世界の投資額の大部分を占めていた中国の投資額が減少していますが、先進国の投資額は増加しています。再生可能エネルギーへの投資は、原子力発電と石炭・天然ガス火力発電を合わせた投資額の約2.2倍とされています。エネルギー源別に見ると、ほぼ一貫して太陽エネルギー及び風力に投資が集中しています(第222-2-10)。

【第222-2-10】再生可能エネルギーへの投資動向
(xlsx形式20KB)
資料:REN21「Renewables 2021 Global Status Report」を基に作成
①太陽光発電
世界における太陽光発電の導入は2000年代後半から加速し、2020年の累積導入量は約7.7億kWに達しました。導入の拡大には、2000年前後に欧州諸国で導入されたFITによる効果が大きく、太陽光発電の買取価格が高額に設定されたこと等によりドイツ、イタリア、スペイン等で顕著な伸びを示しました。日本でもFITが2012年7月に導入されたことにより、導入が大幅に拡大しました。2020年の累積導入量で見ると、日本(7,187万kW)は中国(25,364万kW)、米国(9,550万kW)に次いで世界第3位となっています。また、太陽光発電市場が大きく拡大したことで、発電設備の導入コストは低下し、近年では新興諸国にも導入が広がっています。特に、中国は2015年にドイツを抜き、導入設備容量が世界第1位となりました(第222-2-11)。

【第222-2-11】世界の太陽光発電の導入状況(累積導入量の推移)
(xlsx形式30KB)
資料:IEA「PVPS TRENDS 2021」を基に作成
こうした太陽光発電の導入拡大の経済的な波及効果として雇用創出等が期待されますが、他方でFITによる買取費用は最終的に賦課金として消費者に転嫁される仕組みとなっていることから、費用負担の増大も懸念されています。例えば、ドイツでは電気料金に加算されるFITの賦課金は、2022年にはkWh当たり3.723ユーロセント (15)となることが発表されており、1ヵ月の電力使用量が260kWhの需要家モデルの月額負担は約9.68ユーロ (16)(約1,200円)になると推計されます。一方、日本では2022年度のFITによる賦課金は3.45円/kWhとなっており、1ヵ月の電力使用量が260kWhの需要家モデルの月額負担は897円 (17)と推計されています。
②風力発電
世界の風力発電設備容量は近年急速に増加し、2020年には約7.4億kWに達しました。導入量が最も多いのは世界のおよそ3分の1を占める中国(28,832万kW)で、これに米国(12,232万kW)、ドイツ(6,285万kW)が続きます。したがって、これら3ヵ国で世界の風力発電設備容量の約6割を占めていることになります(第222-2-12) (18)。
(注1)2004年以前の国別データなし
(注2)四捨五入の関係で項目の和と合計の数値が一致しない場合がある

【第222-2-12】世界の風力発電の導入状況
(xlsx形式23KB)
資料:Global Wind Energy Council(GWEC)「Global Wind Report(各年)」を基に作成
また、近年では洋上風力発電の市場も急速に拡大しており、2021年末の時点で、世界で合計4,818万kWが導入されています。2021年を通じて新たに追加した設備容量が最も多かったのは中国で、1,269万kWの設備が追加されたことで、累計導入量は1,975万kWとなっています。これは、世界の累積導入量の40%を占める値で、英国を抜いて世界第1位となっています。 (19③バイオマス
バイオマスは発電用燃料としての利用のほか、輸送用燃料としても用いられています。また、開発途上国を中心に、薪や炭といった形でのバイオマス利用も行われています。これらの国では、経済の成長に伴って灯油、電気、都市ガスといった商業的に供給されるエネルギーの利用が増え、バイオマスの比率は低下することが考えられます。その一方で、米国や欧州等の先進国では、気候変動問題への対応といった観点からバイオマス導入を政策的に推進する国が多くなってきました。世界全体では、2019年時点で一次エネルギー総供給の9.1%と比較的大きな割合を占め、先進国(OECD諸国)平均では5.7%、開発途上国(非OECD諸国)平均では11.6%となっています(第222-2-13)。

【第222-2-13】世界各地域のバイオマス利用状況(2019年)
(注)中国の値は香港を含む。
資料:IEA「World Energy Balances 2021 Edition」を基に作成
バイオマス利用に関しては、特に運輸部門における石油依存の軽減や、温室効果ガス排出の抑制を目指した政策が打ち出されています。例えばEUでは、2030年までに輸送用燃料のうち少なくとも14%をバイオ燃料(及び再生可能エネルギー利用電気等)とする目標が掲げられました (20)。しかしながら、バイオ燃料の主たる原料は、サトウキビやトウモロコシといった食料であるため、バイオ燃料の利用の急激な増大は、食料価格の高騰など、深刻な影響を与える可能性があると指摘されています。さらに、バイオ燃料生産のために森林を伐採し、耕地とする動きが拡大しかねないとの見方もあります。このため、バイオ燃料の生産・消費による自然環境や食料市場への影響を抑えるための持続可能性基準について、国際会議での検討が進められてきました。また、食料以外の原料(稲わらや木材等のセルロース系原料、藻類や廃棄物等)を用いた次世代型バイオ燃料開発の取組が進められています。
④水力
大規模なものまで含めると、世界の水力発電設備は2020年の時点で約13.3億kWであり、最も導入が進んでいる再生可能エネルギー発電であると言えます。水力による発電設備が最も多い国は中国で、世界の設備容量の約28%を占めています(第222-2-14)。国内の総発電量に対する割合は、中国は約17%、日本は約8%、米国は約7%等となっていますが、ノルウェーのように、約93%(いずれも2019年)と極めて高いシェアを持つ国もあります (21)。

【第222-2-14】世界の水力発電の導入状況
(xlsx形式23KB)
資料:IRENA「Renewable Energy Statistics 2021」を基に作成
先進国においては、大規模ダム開発は頭打ちとなっている一方、中国では水力発電の設備容量は過去10年間で約1.7倍に増大しました。中国の揚子江中流(湖北省)に建設された三峡ダム発電所は2012年に全32基のうち最後の発電ユニットを完成させ、世界最大規模の水力発電所(2,250万kW)となっています。
⑤地熱
地熱発電はこれまでに世界で1,408万kWが導入されてきました(2020年)。設備容量が最も大きいのは米国で、合計約259kWが導入されました。次いで高い設備容量を有するのがインドネシアで、その設備容量は約213万kWになります。インドネシア、ニュージーランド、アイスランド、トルコ、ケニアといった国々では2000年代以降、設備容量が大幅に増大しました(第222-2-15)。特にケニアでは、国内の総発電量に占める地熱発電の割合が約46%となりました(2019年) (22)。日本では約53万kWが導入されましたが、過去10年間以上にわたって設備容量はほとんど変化していません。欧州大陸では地熱発電を利用できる地域が少なく、イタリアやポルトガルの一部等に限られています。
(注)四捨五入の関係で項目の和と合計の数値が一致しない場合がある

【第222-2-15】世界の地熱発電設備
(xlsx形式22KB)
資料:BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
⑥再生可能エネルギーのコスト動向
世界的に再生可能エネルギーの発電コストが低下する傾向がみられます (23)。中には補助金なしでも石炭やガス火力発電と競合できるほどのコスト競争力を持つ再生可能エネルギー発電もみられるようになりました。アジアでは、太陽光や風力に適した風土や安価な労働力を持つ中国やインドがけん引して、全般的に、再生可能エネルギーの平均発電コストは、他の地域よりも低くなっています。
このようなコスト低減は、主に再生可能エネルギーを推進する政策、及び、技術革新によって支えられてきました。日々進歩する技術によって製造コストの削減や保守管理の効率化が図られ、規模の経済が働いたことも要因として考えられます。さらに、多くの国で導入されている入札制度で買取価格が決められることも、競争を促し、発電コストを抑制する方向へと導きました。
なかでも太陽光および陸上風力の発電コストは著しく低下しています(第222-2-16)。2020年に運転開始した太陽光の平均発電コストは0.06ドル/kWhと、2010年の0.38ドル/kWhから約85%低下しました。2009年頃から低下している太陽電池モジュール価格が発電コストを引き下げたと考えられます。陸上風力も同様に、タービン価格の低下に伴い平均発電コストも低下し、2010年0.09ドル/kWhから2020年0.04ドル/kWhへと下がりました。太陽熱は、これまで技術的に確立されたとは言えず、設備容量も限られているため、発電コストは太陽光や風力よりも高く止まっていましたが、総設置コストの削減や継続的な技術改善による設備利用率の向上などにより (24)、2020年の平均発電コストは、2010年と比べると、68%低下しました。
(注)地熱の2011年のデータなし。

【第222-2-16】世界の再生可能エネルギー発電コストの推移
(xlsx形式25KB)
資料:IRENA「Renewable Power Generation Costs in 2020」を基に作成
太陽光や風力の発電コストは今後も低下すると推察されており、コストに関するデータが更新されるたびにそれまでの予想を上回るコスト削減が進んでいます。太陽熱や洋上風力についても、2021年以降、発電コストの競争力は高まるとみられています。
この他の主要な再生可能エネルギーである水力、バイオマス、地熱は、技術的にも成熟しており、資源が豊富な所では太陽光や風力よりも安価な電源ですが、平均発電コストは2010年からあまり変化せずに推移しています。水力発電は、遠隔地での開発のように高度な技術が求められる事業が増えており、コストを押し上げる要因となっています。また、ベースロード電源ともなる地熱発電は、高い初期投資コストや開発リスクが投資の障壁となっています。
  2)OPEC加盟国の内、内戦等の特殊事情により減産状態にあるベネズエラ、リビア、イランは減産の対象外とされました。
  3)2019年1月にカタール、2020年1月にエクアドルがOPECを脱退したことにより、2020年12月時点で計23ヵ国。
  4)BP「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成。
  5)GTL(Gas to Liquid)とは、天然ガスを化学反応によって常温で液体の炭化水素製品に転換したものを指します。主に輸送用の燃料として用いられます。
  6)DME(Di-Methyl Ether)とは、GTL同様、天然ガスを原料として生産される炭化水素製品ですが、常温では気体です。ただし、比較的低い圧力で液化するので液化石油ガス(LPガス)などと同様に扱われます。現在はスプレー用のガスとして用いられることが多いですが、今後輸送用の燃料としても用いられることが期待されています。
  7)コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式です。
  8)2006年までは北海のBP価格指標(BPAP:BP Agreed Price)が使用されていた。
  9)Free On Board価格の略称で積地引渡し価格を指します。
10)石炭の根源植物が石炭に変質する過程を石炭化作用と呼び、この進行度合いを石炭化度と言います。石炭は、石炭化度により無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭に分類されますが、日本では無煙炭から褐炭までを石炭と呼んでいます。
11)U3O8(八酸化三ウラン):ウラン鉱石を精錬したもので、ウラン精鉱やイエローケーキとも呼ばれます。
12)World Nuclear Association「Uranium Enrichment」、(2020年9月更新)より。
13)MOX燃料:使用済燃料から再処理によって分離されたプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物燃料。
14)21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21)「Renewables 2021 Global Status Report」より。
15)ドイツの送配電事業者の発表より。
16)世界エネルギー会議(WEC)が公表した2014年の統計値を用い、一世帯の年間消費電力量を3,079kWhとして推計。
17)資源エネルギー庁の発表より。
18)世界風力会議(GWEC)「Global Wind Report 2021」より。
19)洋上風力世界フォーラム(WFO)「Global Offshore Wind Report 2021」より。
20)USDA「EU Biofuels Annual 2019」より。
21)IEA「World Energy Balances 2021 Edition」より推計。
22)IEA「World Energy Balances 2021 Edition」より推計。
23)ここでの発電コストは均等化発電単価(LCOE)を指す。
24)IRENA「Renewable Power Gneration Costs in 2020」より
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