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米国二大政党の異なる対日関係史  2014年06月03日
 過去の歴史を鑑みるとABCD包囲網・石油禁輸・真珠湾謀略・原爆投下・東京裁判・占領憲法押しつけなど、これらは全て民主党政権下で行われている。一九三二年の大統領選挙で共和党のハーバート・C・フーバー大統領が民主党候補フランクリン・D・ルーズベルトに破れて以来、一九五三年にアイゼンハワーが共和党大統領に当選するまでの実に二十年間に渡り、民主党が政権を握り続け共和党は野党となっていた。そして開戦を目的とする日本への圧力も、日米戦争も日本占領政策も、全てこの二十年間の内に行われた。
 反共主義者であるフーバーはソ連の国家承認を拒み「日本はアジアにおける防共の砦」と常々口にしていたが、政権が交代すると一九三三年一月に発足間もないルーズベルト政権は共和党の反対を押しきってソ連を国家承認した。ルーズベルトが掲げた看板政策ニューディールとは「新しい巻き返し」の意味で、通貨管理や価格統制、労働者の最低賃金や最長労働時間の法的保証、労働組合の拡大促進、高所得者層への大幅増税(所得税最高税率七十五%、相続税最高税率八十%への引き上げ)、その他様々なマルクス主義的要素を採り入れたもので、当然ながら共和党は猛反発していた。米最高裁も価格統制や高所得者懲罰税制を違憲と判決したが、当時大不況下の米国ではニューディール政策をめぐって世論が二分化されていったのだ。そして「ニューディール支持=親ソ容共=民主党」と「ニューディール反対=反ソ反共=共和党」という二大勢力が対立する中で、前者は日本を敵視し後者は日本に理解を示すのだが、それはすなわちアジアの「防共の砦」に対する認識差に他ならなかった。
 日本占領時代については、朝鮮戦線をきっかけとして一九五〇年頃からGHQ内部における両党の影響力逆転が起こったが、民主党が主導する占領前半期の間に東京裁判や憲法制定その他の「日本弱体化」占領政策が実行されてしまったのだ。GHQの民政局や民間情報教育局はニューディーラー(ルーズベルトのニューディール容共政策の支持者)と呼ばれる民主党左派で占められており、マルクス主義に憧れるニューディーラーたちは、階級闘争史観に基づいて「日本悪玉史観」を喧伝するウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムを実施し、ニューディーラーのスミス民間情報教育局長らの執筆による『太平洋戦争史』の新聞連載や『真相はこうだ』『真相箱』なるラジオのプロパガンダ放送で日本国民の洗脳を図った。さらに財閥解体・農地解放・共産党員釈放・共産党系労組の結成促進などマルクス主義的政策を続々と行い、例えばGHQ民政局が「労働組合組織をつくるための準備委員会」の委員に選任した十五人の日本人の内の実に十三人が日本共産党員であったくらいで、これはもう容共というよりも正に共産主義化そのものであった。一九八八年に竹前栄治東京経済大教授の取材に対して元GHQ民政局次長C・ケーディスは、「共産党議長の野坂参三さんとは、よく話をしました。彼は私のオフィスにやってきて、党の方針を話してくれましたし、私も彼らがどのような考えや政策を持っているかを知って 大変ためになりました 」と語り、野坂を首相にしたらどうかという会話があったことも告白している。
 米本国では反共の共和党の目が光っているためにアメリカを共産主義化できずフラストレーションを溜めてきたマルクス主義者たちは、こうして日本で念願の「マルクス主義の実験」を存分に始めたのである。マルクス主義では君主制を完全否定する。そこでワシントンの民主党親ソ派の指示で、ニューディーラーたちは君主制打倒を目的に天皇陛下を東京裁判に引きずり出そうとも画策した。このニューディーラーによる天皇訴追の画策に対してストップをかけたのが共和党であり、共和党員マッカーサーに対してそれを阻止するように指示したのだ。またマッカーサー自身も、「自分が戦争の全責任を負い、身はどうなってもいいから国民に食糧を配給してほしい」と言われた昭和天皇に感銘を受けており、側近に対して「天皇を処刑することは、イエス・キリストを十字架にかけることと同じだ」と述べたことが記録に残っている。伝統的保守主義者のマッカーサーもまた、英王室や日本の皇室を敬うメンタリティが根底にあったのであろう。それは歴代米大統領を見下すほどに尊大な性格のマッカーサーが、一九五七年に園田直代議士及び加瀬英明氏との会見で、「私が世界で最も尊敬する人物は(昭和)天皇陛下だ」と述べていることからも伺える。
 そもそもマッカーサーは当初は、真珠湾攻撃における宣戦布告の問題だけを取り上げる簡易軍事裁判を想定していた。もしそのような裁判であれば、怠務から日本政府の指示した宣戦布告手交時間を遅延させた当時の在米外交官だけが裁かれ、逆にいえば「不意打ち」という国際的な誤解もなくなっていたことであろう。なお共和党は「平和に対する罪というものは存在せず、捕虜虐待などの国際法違反のみに限定するべきだ」と主張していたが、「平和に対する罪」で日本という国家全体を断罪するように命じたのは当時の民主党政権であり、GHQの占領政策においてはニューディーラーである民政局のC・ホイットニー局長やケーディス次長らが、政治経済に疎いマッカーサーを巧妙にコントロールしていたのだ。従って共和党は今でも日本を「侵略国」とは考えず「先制攻撃をした国」だと捉えており、さすがに公言はしないものの東京裁判には懐疑的な立場を取っている。
 なお、このGHQニューディーラーの多くは、「日本で共産党の政権奪取の計画を米国政府職員として積極的に援助した」として、一九五〇年代前半に米下院の非米活動調査委員会(HUAC)で査問にかけられ公職追放されている。一例だけ挙げると、戦犯のリストアップや共産党員の釈放を担当したGHQ調査情報部調査分析課長E・H・ノーマンは、「日本軍国主義の根絶」を呼号して日本軍人を片っ端から戦犯に指定していった人物だが、FBIから「ソ連のスパイ」として追求され、米上院司法委員会の再査問を控えた一九五七年四月に自殺している。つまり五千人以上の共産党員を釈放する一方で、反共の軍人・政治家・官僚・教師・その他合計二十万九千九百人をことごとく公職追放したのはソ連の意図であったということだ。
 日本の現憲法は、一九四六年一月七日に米国の国務及び陸海軍の三省調整委員会(SWNCC)が作成しGHQに通達した「第二二八文書」(通称「改憲訓令」)によって制定が指示されたものであるが、SWNCCの中心であった当時の米国務省は親ソ派マルクス主義者の巣であり、憲法執筆者にはマルキストばかりを選んでいる。GHQ憲法の執筆者の一人である親ソ派ニューディーラーのゴードン女史は、憲法草案を作成するためにソ連憲法や社会主義的なワイマール憲法を参考にしたことを認め、自伝の中で「一九一八年に制定されたソビエト憲法は私を夢中にさせた。社会主義で目指すあらゆる理想が組み込まれていた」とマルクス主義への憧れを吐露してもいる。例えば日本国憲法の第二十五条(生存権)や第二十七条(勤労の権利及び義務)は、ソ連のスターリン憲法を丸写しにした文面であり、資本主義国の憲法でこれほどマルクス主義的な要素を取り入れた内容のものは他に一つもない。さらにGHQ憲法原案に設けられていた第三十六条は「土地及び資源などを全て国有化し、不動産の私的所有は認めず、個人の現有不動産は国からの貸借とする」という趣旨の完全な共産主義条項となっており、これはさすがに日本側も「アカ条項」と呼んで抵抗し、マッカーサーも削除を命じたぐらいであった。このように現憲法は「日本弱体化」のみならず、ソ連に憧れたニューディーラーによって「日本の社会主義化(ソビエト化)を目的にして執筆されたものであり、前述のごとく日本が疑似社会主義国になってしまったのもこの憲法の下では当然の結果である。
 一方、GHQ内部でこの民主党ニューディーラーと激しく対立していたのが、反共主義者の共和党員であったチャールズ・A・ウィロビー情報部長であった。当時GHQの内部には二つの路線対立があり、国務省系のGS(民政局)は占領内政担当で民主党左派すなわちニューディーラーによって構成されており、国防総省系のGⅡ(情報治安局)は軍務担当で共和党員が中心になっていた。このGSとGⅡが激しく対立していたのである。民主党の影響下にあるGS(民政局)は日本をマルクス主義化する実験と併行して「ウィークジャパン(弱い日本)をつくる」と主張しており、一方GⅡのウィロビー少将はニューディーラーたちが日本を左傾国家へ改造しようとする「実験」に強く反対し、「不必要なまでの日本弱体化は国際共産主義を利する」と考えてストロングジャパン政策を主張していた。対ソ戦略のためには「強い日本」を維持させねばならないというのが、ウィロビーら共和党反ソ派の持論だったのだ。
 ウィロビーは「共産主義分子の総司令部への浸透」という調査報告書を作成し、前出ゴードン女史を始めコーエン、ハドレー、ビッソンその他多くのGHQ民政局・民間情報教育局・労働課等の職員が後に査問を受けることになる証拠を収集した。またウィロビーは、民政局員のグランダンツェフとキーニーの二人については「KGBのメンバーであることが確認された」と国防総省に報告して逮捕を要求してさえいる。つまり米本国同様にGHQの中でも、反共と容共(及び共産主義者)との戦いが展開されていたのだ。ちなみにこの民主党のウィークジャパン戦略と共和党のストロングジャパン戦略は、日本の主権回復以後もアメリカ本国で伝統的に継続し、前章で述べたように今もなお両党のその姿勢は変わっていない。
 GHQ内でウィークジャパン政策の急先鋒となったのがマルクス主義者のケーディス民政局次長であり、ウィロビーら情報治安局の唱えるストロングジャパン政策を抑えこんで憲法制定や諸々の日本弱体化政策を強行し、一方ウィロビーは「GSはアカの巣だ」と公然と批判を続けた。このGHQ内部のGSとGⅡの対立はさながら民主党と共和党の代理抗争の様相にあったが、政権与党の民主党系GSが実権を握る状況が続いていた。しかしソ連の脅威が増すにつれてトルーマンがルーズベルト流容共路線からソ連対抗路線へと転向していき、ニューディーラーたちは疎んじられて段々と実権を失い始め、共和党は日本国内のレッドパージをGHQに要求して一部を実行させることに成功した。やがて一九五〇年六月に朝鮮戦争が勃発し、米軍が中ソ軍と衝突したことを契機にさしものマッカーサーも目が醒めたのか、GHQの実権はGS民政局ニューディーラーたちからGⅡ情報治安局の反共軍人グループへと全面的に移行することになった。
 マッカーサーが戦争放棄を盛り込んだ憲法をつくらせたり、その一方で自らその憲法を否定する存在たる自衛隊(当時は警察予備隊)を創設させたり、また共産党員を釈放させたりレッドパージをしてみたりと、どう見ても一貫性のない矛盾する占領政策を行ってきたのは、ケーディスら民主党とウィロビーら共和党との綱引きがGHQ内部に存在していたことが、その理由の全てである。(なおマッカーサーは一九五〇年五月に幣原衆院議長に対しヌケヌケと「日本は一切の武力を放棄すると言われたが、今日の世界情勢から見ると、それは何とも早すぎたような感じがする」と述べている。)
 ちなみにこのウィロビー(退役後は共和党系キリスト教団体を主宰)と親しかったのが、反共主義者のローマ教皇使節代理であり靖國神社焼却に反対したビッテル神父だ。ビッテル神父の「靖國神社を焼いてはいけない」という主張をウィロビーらGⅡは支持し、自らも軍人であるマッカーサーもその意味を理解したのか、「焼却せよ」と主張していたケーディスら民政局に焼却禁止を命じた。靖國神社を守ってくれたのはビッテル一人ではなく、それを支持したウィロビーら共和党系の軍人たちのおかげでもあるのだ。
 東京裁判オランダ代表判事レーリンクは自著の中で、ウィロビーとの会話として「ウィロビーは私に、この裁判は史上最悪の偽善だと言いました。彼は私に、こういう種類の裁判が開かれたことで自分は息子に軍人になることを禁じるだろうとも言いました。彼は、日本が置かれたような状況下では、日本が戦ったようにアメリカも戦うだろうと述べました。(小略)日本には二つの選択肢しか有りませんでした。戦争をせずに石油備蓄が底をつくのを座視し、他国の情けにすがるだけの身分に甘んじるか、あるいは戦うかです。そんなふうに生存のための権利が脅かされれば、どんな国でも戦うだろうと彼(ウィロビー)は言いました」と記している。また同盟通信元編集局長の松本重治氏は、当時にマッカーサーの高等副官フェラーズ准将(共和党員)に「戦争を始めたのは日米どちらか」と質問したところ、フェラーズが「ルーズベルトが戦争を仕組んだのだ」と怒号したことを紹介しておられる。このようにGHQ内部でも共和党系と民主党系は日本に対する方針や認識を異にしており、ときのアメリカの政権が民主党であったために、結果としてGHQの占領政策の大半はニューディーラーに主導されていったということである。私は前章で「アメリカは二つ存在している」と述べたが、本章では「GHQは二つ存在していた」ということも強調しておきたい。
 日米開戦に先立つ前の時期、共和党は日本よりもソ連を警戒しシナの共産化を怖れており、日米開戦には否定的な主張をしていた。当時、共和党のフーバー元大統領は「ソ連を助けて参戦することは、共産主義を世界に捲き広げることになる」と主張し、真珠湾攻撃に至るまでは共和党議員のほぼ全員が対日戦争に強く反対しており、「対日圧力を中止せよ」と民主党のルーズベルト大統領を批判していたのだ。大統領時代にフーバーは、満州事変に対して「日本に経済制裁を加えよ」という民主党やヘンリー・L・スチムソン国務長官(共和党員ながら容共・親中反日であったために、後のルーズベルト政権でも陸軍長官に起用)の主張を一蹴している。また一九三二年十月の閣議においてフーバーは、ソ連によるシナ赤化工作を警戒して「アメリカは日本と久しく深い友好関係にあったし、日本の立場をも友好的に見なければならない」という覚書を提出し、満州事変は日本の正当な治安維持措置であり日本は共産主義の防波堤だと力説している。共和党大統領予備選をフーバーと争ったロバート・A・タフトやA・バンデンバーグなども「不参戦」「対日圧力反対」を訴えており、従ってもし一九三二年の大統領選挙で共和党が勝利してフーバーが大統領であったならば、対日圧力もなく日米開戦に至らなかったことは確実だ。
 しかし残念なことに満州事変の翌年、一九三二年十一月にルーズベルトが大統領選挙に当選し、一九三三年三月の就任以降、一九四五年にルーズベルトが病死するまで三期連続して大統領を努めることになり、民主党政権の親ソ反日傾向は日を追うごとに加速していった。正しい対日観を持っていた共和党の唯一の失敗は、ルーズベルト「不参戦」公約を信用した為に、ルーズベルト三選を賭けた大統領選挙において、共和党候補者W・ウィスキーが「参戦か不参戦か」を争点にしなかったことにある。もしルーズベルトが国民に嘘の公約をすることに抵抗を感じる人物であって「参戦」を公約していたならば、共和党候補が勝利していたことは確実であった。
 日米開戦前の米世論を代表する発言を幾つか紹介してみると、例えば大西洋無着陸横断飛行で国民的人気のあったC・リンドバーグは、一九四一年九月十六日の共和党の演説大会で「もし世界大戦が起こるのならば、その責任はルーズベルトとチャーチルと国際ユダヤ資本にある。米国は英独講和を仲介し、日英独と組んでソ連と戦うべきである」とまで主張していた。また当時共和党に対して影響力の有った有名な保守系ジャーナリストのジョーン・B・レイは、シナに三十二年間も在住してシナ情勢をワシントンへ発信していた人物だが、このレイは「〝軍国主義日本が世界平和の脅威になる〟というのは、ソ連の宣伝であり、本当の軍国主義はソ連である。これまでアジアで果たしてきた日本の役割を忘れてはならない。シナやソ連に同情するあまり、日本を孤立化させて発展を阻害してはならない。日本こそはアジア安定の礎であり、共産主義の防波堤だ」とベストセラーとなった自著で述べている。
 熱心な反共主義者にして反ルーズベルトを呼号していた新聞王W・ハーストも、一九四一年十月に自紙のニューヨーク・ジャーナル紙に「ワシントンはアジアで戦争が起こるか否かは日本にかかっていると言っているが、これは真実ではない。米国の政策如何によるものである。支那事変の発生以来、米国は負け犬に対する同情でシナを援護してきた。日本が米国に戦いを挑んでいると見るのは誤りである。世界で三番目の上顧客である日本との貿易を断絶したのはルーズベルト政権ではないか。日本は米国に何ら差し出がましいことをせず脅威を与えていない。米国が日支両国との通商を正常に戻し、シナと日本のことは両国にまかせておけば、明日にも平和が来る」と自ら執筆し、ハースト系の各紙は同様の主張を何度も掲載していた。ルーズベルト政権が行ってきた排日政策や対日禁輸などの対日圧力は、米国世論の総意では決してなく、共和党支持層はそれに猛反対していたというのが当時の米国の国情だったのである。
 一九四一年における米ギャラップ社の米国世論調査では、「英国に味方して参戦せよ」が二・五%、「英国の配色が濃くなれば支援せよ」が十四・七%で、この両方を合わせても「中立で英独双方に武器を売れ」の三十七・五%を下回っている。そして「絶対中立で武器も売るな」が二十九・九%、中には「ドイツに味方して参戦せよ」という回答さえも一定数存在していた。つまり明確に参戦を望んでいた米国民は実に二・五%しか存在しておらず、従ってフーバー以降も共和党候補は「不参戦」を公約し、本心では参戦したくてたまらなかったルーズベルトも表向きは「不参戦」を公約せざるを得なかったのだ。共和党のバンデンバーグ上院議員は「不参戦を議会で正式に議決せよ」とルーズベルトに要求し、アメリカの参戦を警戒するドイツもルーズベルトの様々な挑発に絶対乗ってこなかった。そこでルーズベルトはドイツの同盟国であり満州権益でも目障りであった日本がアメリカを攻撃すれば、米国民を納得させる形で参戦できると考え、いわゆる「裏口参戦」の計画を進めたのである。アメリカから宣戦布告する「表口」ではなく「裏口」から戦争に入ろうという訳で、そのため日本から最初の一発を撃たせるべく様々な対日圧力を重ねる謀略をもって追い詰めたのだ。ルーズベルトは大統領就任後の初閣議で「対日戦争は一つの可能性だ」と発言していたぐらいであり、側近たちと連日「どうやれば日本側から開戦させられるか」を討議していた。
 二十万部以上の膨大な公文書を調べた米ジャーナリストのロバート・B・スティネットは、「ルーズベルトが側近たちと示し合わせて(小略)アメリカを戦争に介入させ真珠湾及び太平洋地域の諸部隊を戦闘に叩きこむべく、明らかな戦闘行為を誘発する為に計画実施された権謀術数の限りを尽くした措置」を進め、「日本を挑発するためにルーズベルトには八つの手段が提案され、彼はこれらの手段を検討してすぐに実行に移し、八番目の手段が実行されると日本は反応してきた」と述べている。この八つの手段とは、米海軍情報部極東課長アーサー・マッカラムが作成した「対日戦争挑発項目A~H」のことであり、例えば項目Cは「蒋介石政権への可能なかぎりのあらゆる援助提供」であり、項目Gは「オランダを含め、日本に対する石油の禁輸措置」といった具合であった。このAからGまでの七項目が実行されても「(日本は)戦争を避け米国と外交的解決をはかるため、なおもあらゆる手を尽くした」(R・B・スティネット)のであり、日本は七番目の挑発まで耐えに耐えたのである。戦時中の一九四四年六月二十日に、英リットルトン生産相が「米国が世界大戦に巻きこまれたというのは歴史の歪曲である。米国があまりにひどく日本を挑発したので、日本軍は真珠湾攻撃のやむなきに至ったのだ」と述べ、米国の抗議を受けて下院で陳謝しているが、米国の同盟国の閣僚が同情するぐらい日本への圧力は不当なものであった。
 米国の通信傍受責任者であったJ・ロシュフォート無線監視局長は一九四一年七月に「我々は彼ら(日本)の資金も燃料も貿易も断ち、日本をどんどん締めあげている。彼らには、この苦境から抜け出すには、もう戦争しか残されていないのが分かるだろう」と同局のミーティングで述べている。「日本の連合艦隊がハワイへ向けて発進」との報告を受けたルーズベルトは同年十一月二十五日には「真空海域命令」(太平洋を横断する船舶の航路となる北太平洋から米国及び連合国の全船舶を引きあげを命じるもの)を発しており、この命令は日本の連合艦隊の南雲機動部隊が単冠湾を出航した一時間後に早くも発令されたものである。かくて同年十一月二十七~二十八日にかけて、ルーズベルトはついに「米国は日本が先に明らかな戦争行為に訴えることを望んでいる」という直令を米軍首脳部に発し、一切の情報をハワイの指揮官キンメル大将に伏せるよう指示した。参戦したいあまりに自国将兵をわざと見殺しにしたルーズベルトの冷酷な策謀も、そして「対日戦争挑発項目A~H」の存在も、さらにはハルノートさえも、実は共和党側には一切秘密にされており、その秘密を知っているものは政権トップと民主党要人・軍情報部などごく一部だけでしかなかった。こうして日本はルーズベルトの謀略に導かれるままに、十二月八日(米時間七日)に真珠湾に先制攻撃を加えることになる。
 このルーズベルトの真珠湾謀略に関して、戦後すぐに議会で追求したのは共和党である。共和党は、ルーズベルト政権の対日謀略について査問するために調査委員会の設置を要求し、八つの調査員会を設けさせた。そして共和党系の調査委員は全て「ルーズベルトが開戦目的で不必要に日本に圧力をかけて追い詰めた。明らかに公約違反である」という結論を出し、逆に民主党系の調査委員は当然ながら全てルーズベルトを擁護する結論を出した。結果、日本にとっては残念なことながら当時の米議会は民主党が多数派であった為に、ルーズベルトは査問を免れた。さらにルーズベルトは「対日戦争挑発項目A~H」の存在を共和党に隠し通すために、腹心の部下五名からなるロバーツ調査員会を設けて「全責任は真珠湾防衛の任務を怠ったキンメル太平洋艦隊司令長官とショート陸軍司令官にある」と公表させ、この欺瞞にはリチャードソン元太平洋艦隊司令官が「これほど不当で不公平で嘘で塗り固められた文書を私はこれまで見たことがない」と抗議声明を出したぐらいである。
 共和党側の調査は政府によって徹底的に妨害された為に、上下院合同調査委員会で共和党のO・ブルースター上院議員は「証拠文書が大量に破棄されたり提出が阻害され、政府が選んだ証人はまったくインチキの証言ばかりしている。ルーズベルトは国家に対して詐欺を行った犯罪者だ」と怒号しているが、これは後の一九九三年に米国立公文書館真珠湾課担当官R・デーンホフの「一九四五年~一九四六年の調査の前の段階で、海軍公文書記録から真珠湾攻撃に関する大量の記録が抜き取られ消失している」との証言で裏付けられた。ルーズベルト死去の報を受けたマッカーサーが「嘘が通ると見てとれば、絶対に本当のことを言わない男が死んだ」と述べたように、嘘と陰謀に明け暮れたルーズベルトのあまりの卑劣さに、たとえ対日戦争の直後といえども共和党は憤慨してその謀略を強く追求したのである。なお、この共和党の主張は、C・A・ビーアドやJ・トーランド、C・タンシル等々といった米国レビジョニスト(歴史修正派)とその系譜を継ぐ歴史学者たちによって「ルーズベルトの真珠湾謀略」として今なお歴史の見直しが提起され続けている。
 ルーズベルトがここまで日本との戦争を望んだ理由は一体何のためであったのだろうか。「英国を助けるため」「満州から日本を追い出して権益を横取りするため」といった要素も確かにあるが、日本人があまりに気付いていない最大要素として「ソ連(共産主義)を助けるため」というものが存在している。ハルノートを執筆したハリー・D・ホワイト特別補佐官がソ連KGBの工作員であったことは前章で述べたが、元々左派的体質にあった民主党はルーズベルトの登場によって完全なる「ソ連の傀儡政権」と化していたのである。ルーズベルト政権以前の二十世紀前半における米国では、ウィルソン政権を除けば全て共和党が政権与党となっており、マッキンレー、セオドア・ルーズベルト、タフト、ハーディング、クーリッジ、フーバーら共和党の歴代大統領は反共を政治的信条としていた。従って共和党政権下で鳴をひそめていたマルクス主義者は、マルクス主義的なニューディール政策を掲げるルーズベルトの大統領就任によってこぞって民主党に流れ込んだのだ。その中にはソ連を「心の祖国」と信じるようなソ連の工作員や協力者が多数混在していた。
 一九二八年に民主党大統領候補に指名されたこともあるアル・スミスは、ルーズベルトの前任のニューヨーク州知事であり、ルーズベルトを政界復帰させた立役者でもある。しかしこの民主党の大物スミスは、一九三六年一月に「ニューディールとはマルクスとレーニンのことである。問題は、ワシントンか、モスクワかの選択だ。我々はルーズベルトが民主党候補に再指名された場合、民主党を離脱する」という有名な演説を行い、結局ルーズベルトが再指名されると民主党内の反共(反ソ)の面々はスミスと共に離党するに至った。さらに民主党を支えてきたデュポンを始めレミントンやシンガーミシン、GMやモーガンなどの大企業・財閥もスミスを支持して反ルーズベルトに回ることとなった。かくして一九三六年以後の民主党内には、ルーズベルトを支持する共産主義者と容共主義者しか残っていないという状況になってしまったのである。
 ルーズベルト政権下においては、公言をはばからない共産主義者であったヘンリー・ウォレス副大統領(後にトルーマンの対ソ対抗政策を批判して辞任し、極左ミニ政党「進歩党」を結成し大統領選に出馬するも落選)や「スターリンの友人」として知られたハリー・ホプキンス商務長官(ルーズベルトとチャーチルの極秘会談内容をソ連に伝えていたことが後に発覚)、開戦前に国民党軍に爆撃機を提供していた大統領特別補佐官ロークリン・カリー(後に対ソ協力スパイの容疑告発を受けて南米に逃亡)など、その他ルーズベルトの周囲に集結していたマルクス主義者はあまりの多さにとても枚挙しきれないが、特筆するべきはアルジャー・ヒスの存在である。
 ルーズベルトの側近であった国務省高官アルジャー・ヒスは、ヤルタ協定の草案を作成し国連憲章を起草した人物だが、ソ連のスパイでマルクス主義者であることが一九四九年に発覚し、スパイ及び偽証の罪で逮捕・起訴されている。結局スパイ罪は十年の時効が成立していたため、偽証罪で一九五〇年に懲役五年の実刑判決を受けた。このヒスはルーズベルトやトルーマンの民主党政権における極秘書類のコピーをソ連GRU(ソ連軍参謀本部情報部)やMGB(KGBの前身)に流しており、ヒスの暗号名は「アリス」なるものであった。またヒスがモロトフらソ連指導者に対して「国連常備軍を創設して、その長官をソ連共産党の指名するロシア人にする」と密約していた事実は、当時全米のニュースでも報道されている。一九四五年にスパイ容疑でFBIに逮捕された元米国共産党幹部E・ベントレーは、民主党政権の中にソ連のスパイネットワークが二つ存在していることを供述しているが、つまりヒスやH・D・ホワイトはその中のメンバーであったのだ。
 一九九五年四月に米エモリー大学のH・クリア教授らがロシア公文書館でコミンテルンの膨大なファイルの中から民主党の対ソ協力者に関する重要文書を多数発見した。さらに翌年一九九六年三月に米NSA(国家安全保障局)が機密指定を解除したKGB暗号解読文「VENONA」ファイルによって、民主党ルーズベルト政権の中枢、ホワイトハウス、国務省、司法省、財務省、陸軍省、OSS(現CIA)等に三百人以上のソ連のスパイ(共産主義者)が浸透していたことが明らかになった。ちなみに共和党内にソ連のスパイはほぼ皆無であった。なお、この「VENONA」ファイルにより、左翼お気に入りの〝冤罪被害者〟ローゼンバーグ夫妻が冤罪ではなく本当にソ連のスパイであり、原爆技術などをソ連NKVD(人民内務委員会秘密警察)工作員に渡していたことも立証されている。
 マッカーシズムと呼ばれたジョセフ・マッカーシー共和党上院議員によるレッドパージは、一九五〇年から約四年間続いたが、あまりにも攻撃的であったために、反発した民主党や米リベラル層から激しく非難されてその影響力を失い、マッカーシーは一九五七年に四十八歳の若さで失意のうちに憤死している。しかしマッカーシーが正しかったことは「VENONA」ファイル等で完全に裏付けられた。対ソ封じ込め戦略を構築した米外交界の巨人ジョージ・ケナンは、その回想録の中で「一九三〇年代末期に、米国の共産党員又はその手先が政府機関に浸透していたとの事実は、やがて登場する右派(マッカーシーなど)によるでっちあげなどではなかった」と述べ、当時の駐ソ大使館や共和党首脳が再三警告したのにルーズベルトは「まったく聞く耳を持たなかった」と嘆いている。ルーズベルトによる対日挑発は実はソ連による国際共産主義謀略の一環であったのだ。
 ルーズベルトからトルーマンへと至る当時の民主党がいかに多くの親ソ派マルクス主義者に支配されていたかについては、ルーズベルトの娘婿であるカーチス・B・ドールが『FDR:THE OTHER SIDE OF THE COIN』『EXPLOITED PRESIDENT』という二冊の著書で内部告発している。同書では、家族の食卓の場でルーズベルトが「私は決して宣戦なんかしない。私は戦争を創りだすのだ」と述べていた事実を明かし、「ルーズベルトは国際共産主義者のロボットだった。日本を開戦へと追い込んだのは全てソ連のためである」と断じている。ルーズベルトと民主党がその容共体質のために、ソ連に操られて日本へ謀略を仕向けたことも、こうしてルーズベルトの娘婿の告発や『VENONA』ファイルによって完全に立証されたのである。
 ルーズベルト政権で司法長官を努めていたF・マーフィー(後に最高裁判事)は、非米活動調査委員会で「共産主義者がルーズベルトとその夫人を操っていた」と証言しており、対日戦争はソ連のシナリオであったと認める報告書を提出している。米国保守の論客として高名なミシガン大学法学博士アン・コールターは、自著『リベラルたちの背信~アメリカを誤らせた民主党の六十年』で「ルーズベルト政権はモスクワに金で雇われたスパイだらけだった。ホワイトハウス、国務省、戦争省(後の陸軍省)、戦略事務局(OSS)、財務省の戦略的に重要な地位をスターリンの手下が占めていた。(小略)この謀略のスケールの大きさと言ったら前代未聞だった。一九四〇年代から五〇年代にかけて政府には何百人ものソ連のスパイが潜入していた。敵国に忠誠を尽くす民間人の軍勢にアメリカは侵略された。それは否定の余地がない事実だった」と述べ、「この国が必要としていたのは、ジョー・マッカーシーだった」と断じた。また一九九六年四月、民主党寄りでリベラル系メディアの代表格であるワシントン・ポスト紙でさえも「マッカーシーは正しかった。リベラルが目をそらせている間に共産主義者は浸透していった」という見出しで、「VENONA」ファイルを指して「反共主義の人々が批判したとおり、ルーズベルト、トルーマン両政権には、ソ連に直接又は間接に通謀していたおびただしい数の共産スパイと政治工作員がいた証拠である」と報じている。
 共和党の下院議員であったハミルトン・フィッシュは自著の中で、「ルーズベルトは民主主義者から民主主義左派・過激民主主義者を経て、社会主義者、そして共産主義支持者へと変貌していった」と述べており、真珠湾攻撃における米上下院議会の対日開戦支持について「我々はその時の支持全てを否定しなければならない。なぜならば、真珠湾攻撃の直前にルーズベルトが日本に対し戦争最後通牒(ハルノート)を送りつけていたことを、当時の国会議員は誰一人知らなかったからである」とも述べている。
 またハミルトン・フィッシュは、同著で当時の共和党下院議員の九十%が日本との戦争に反対していた事実を明らかにしており、ハルノートを指して「これによって日本には、自殺するか、降伏するか、さもなくば戦うかの選択しか残されなかった」と強く批判し、「日本は天然資源はほとんど保有せず、また冷酷な隣国であるソビエトの脅威に常に直面していた。天皇は名誉と平和を重んじる人物で、戦争を避けようと努力していた。日本との間の悲惨な戦争は不必要であった。それは、お互い同士よりも共産主義の脅威を怖れていた日米両国にとって悲劇的だった。我々は戦争から何も得るところがなかったばかりか、中国を共産主義者の手に奪われることになった」とも述べている。ちなみにフィッシュは戦時中も「米国の敵は日独ではなくソ連だ」と主張し続けていた為に、アメリカに潜入していた英国の対米プロパガンダ工作機関「イントレピッド」による中傷工作を受けて一九四四年に落選に至っているが、アメリカにとっての真の敵は日本ではなく共産主義であって対日開戦支持は否定されるべきであることを、共和党下院の大物が公に認めていたことを忘れてはならない。
 ルーズベルトの後継者である民主党のトルーマン大統領が日本へ計十八発もの原爆投下を承認していた事実はワシントン・ポスト紙にスクープされているが、この決定を最初に下したのもルーズベルトである。小心かつ実務経験に乏しかったトルーマンは、ルーズベルトが決定していた方針に一切手を加えずに単にそのまま実行したのだ。ちなみに京都が空襲から除外されたのは「文化財の保護」なんかではなく、原爆投下の第一候補地であった為に、破壊力データを正確に取るために温存されたに過ぎない。この原爆の日本への使用については、後に共和党大統領となるアイゼンハワーなどが猛反対しており、共和党支持者の米陸海軍の将軍たち(マッカーサーも含む)は全員が反対意見を具申している。アイゼンハワーに至ってはスチムソン陸軍長官に対し「米国が世界で最初にそんなにも恐ろしく破壊的な新兵器を使用する国になるのを、私は見たくない」(一九六三年の回想録)と何度も激しく抗議していた。
 こうしてかねてより共和党の大物の面々が日本への原爆使用に反対していたこともあって、トルーマンは投下決定を共和党側には伏せたまま、一九四五年七月に先にスターリンに知らせた。共和党や共和党系と見なされていた将軍たちに原爆投下決定が伝えられたのは投下の二日前であり、これは「反対を怖れるあまり自国の議員よりも先にソ連に知らせた」と共和党側をさらに激怒させた。原爆投下についても米国の総意ではなく、賛否両論の二つの考え方がこの両党間で対立していたのだ。つまり、もし当時の大統領がトルーマンではなく共和党の大統領であったなら、おそらく原爆投下もなかったであろうということである。アイゼンハワーは、大統領在任中の一九五五年一月にルーズベルトを強く批判して「私は非常に大きな間違いをしたある大統領の名前を挙げることができる」と述べ、ルーズベルトが対日謀略を重ねて日米開戦を導いたこと、日本へ不必要な原爆投下の決定を行ったこと、ヤルタ協定で東欧をソ連に売り飛ばしたことなどを挙げて非難している。
 ソ連のスパイであったアルジャー・ヒスが草案を作成したヤルタ協定は「ソ連の主張は日本の降伏後、異論なく完全に達成されることで合意した」と定めているが、一九五六年に共和党アイゼンハワー政権は「(ソ連による日本北方領土占有を含む)ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書であり、米国政府の公式文書ではなく無効である」との米国務省公式声明を発出した。ヤルタ協定が共和党政権によって完全に否定され無効とされたことで、ソ連の北方領土占有(ソ連はヤルタ協定を根拠に正当性を主張)は、一切の根拠を失った不法占拠であることが公式に確認されたのである。
 また日本の敗戦時に、ソ連はヤルタ協定を口実にして北海道まで占有しようと欲し、トルーマンも一旦はそれを内諾したものの共和党の猛烈な反対を受けて考え直し、渋々ソ連に断ったという記録が残っている。一般に「蒋介石が日本分割に反対した」というデマが流布されているが、蒋介石はカイロ会議で「九州がほしい」と要望しており、またアメリカに対してそれだけの影響力も持っていなかった。日本が米ソ中に分断統治されなかったのは、ひとえに共和党の反ソ派や知日派が「ソ連の日本占領は許さない」と強固に反対したおかげなのだ。それどころかフーバー元大統領に至っては、「日本はアジア防共の安定勢力であり、戦後も朝鮮と台湾の日本領有を認めるべきだ」と主張していたぐらいなのである。
 共和党大統領候補への野心を持っていたマッカーサーは、朝鮮戦争において中朝共産主義連合軍に対しての原爆使用を主張し、トルーマンと激しく対立して解任されたが、一九五一年の米上院議会外交委員会において「日本の戦争は安全保障のためであった」と証言したのも共和党の基本認識に沿ってのものである。マッカーサー証言の内容は、前述のハミルトン・フィッシュの著した歴史観と完全に一致している。また、朝鮮戦争時には共和党議員の多くが「日本への原爆投下は誤りであり、朝鮮戦争でコミュニストに対して使用するべきである。さらに中朝軍を撃退して中国本土まで国連軍を侵攻させ、中共政権を打倒して国民党政権を復帰させるべきである」との主旨を主張していた。共和党をバックにしてマッカーサーも同意見を声明しており、これもまた中共との和平を希求するトルーマンを激怒させ、解任理由の一つとなったのである。従ってもし当時アメリカが共和党政権であったならば、今頃は中国共産党政権は存在していないかも知れない。
 共和党の歴史認識、つまり共和党史観を代表する一例として、先の大戦のアメリカ中国線戦総司令官A・C・ウェディマイヤー大将の回想録を以下に引用しよう。「ルーズベルトは中立の公約に背き、日独伊同盟を逆手にとり、日本に無理難題を強要して追い詰め、真珠湾の米艦隊をオトリにして米国を欧州戦争へ裏口から参加させた。(小略)米英は戦闘には勝ったが、戦争目的において勝利者ではない。英国は広大な植民地を失って二流国に転落し、米国は膨大な戦死者を出しただけである。真の勝利者はソ連であり、戦争の混乱を利用して領土を拡大し、東欧を中心に衛生共産主義国を量産した。米国は敵を間違えたのだ。ドイツを倒したことで、ナチスドイツ以上に凶悪かつ好戦的なソ連の力を増大させ、その力は米国を苦しめている。また日本を倒したことで、中国全土を共産党の手に渡してしまった。やがて巨大な人口を抱える共産主義国家がアジアでも米国の新たな敵として立ちふさがるであろう」。ロバート・A・タフト共和党上院議員の親友でもあったこのウェディマイヤー大将は、日本開戦に反対していた人物で、原爆投下にも反対し、戦後は『第二次大戦に勝者なし』と主張する回想録を発表している。そして実にこの見解こそが共和党史観のベースに存在しているのだ。
 ちなみにフーバー以前の時代に遡って鑑みるも、一八九五年に日本がいわゆる「三国干渉」を受け屈従を呑まされた時、民主党のクリーブランド大統領はそれに一切関わろうとはしなかったが、一方しかし共和党は「三国は日本のシナに対する勝利がもたらした合法的果実を否定する干渉を行った。日本は特権を求めず全ての国に平等な権利と機会を保証しようと試みた。一方、欧州列強は自国の利益のためだけにシナの領土を取り上げ、他の全ての国々に対する排他的権利を得る条約と(日本の)譲歩を獲得した」との声明を出し、とりわけロシアとドイツを強く非難している。
 また日露戦争の最中、一九〇四年三月二十六日にホワイトハウスを訪れた金子堅太郎特使に対して共和党のセオドア・ルーズベルト大統領(F・D・ルーズベルトの叔父)は、中立表明をした筈のフランスがロシアに軍需品供与をしていることについて米国が抗議したことを伝え、重ねて「実はこの戦いが始まって以来、米国の陸海軍武官の中には日本に同情を寄せる者が多く、甚だしきに至っては官を辞して日本軍に身を投じようという者さえいる。かく言うルーズベルトは日本の盟友である。今度の戦争で君の国を負けさせたくない。ぜひ君の国を勝たせたい、いや必ず君の国は勝つ」と語っている。そして金子特使から贈られた新渡戸稲造の『武士道(英文訳)』に深く感銘を受けたセオドア・ルーズベルトは、同書を三十冊取り寄せ、五冊を五人の息子たちに与えて「この武士道をもって心得とせよ」と命じ、残り二十五部を主要閣僚や共和党幹部に配っている。(ちなみにブッシュはこのセオドア・ルーズベルトを尊敬し、その伝記を愛読している。)
 日露戦争後から共和党セオドア・ルーズベルト政権は世界各国との戦争を想定したプランを立案し、その中には対日戦争計画オレンジプランもふくまれていた。しかしこれは英国まで含めた主要国全てを対象(各国ごとに別のカラー名)にして立案された安保上のものであり、日本だけを特定して狙ったものではなかった。このオレンジプランを指して「アメリカは半世紀も前から対日戦争を計画していた」と評する意見もあるが、私はその説には賛同できない。同プランは議会で立法化されたり閣議で正式決定されたものではなく、安全保障として軍部が研究を命じられたものであり、日本一国だけを対象にしてはおらず、いわば世界主要国と「米国がもし戦わば」といった防衛シュミレーションであることから、これは戦争が日常的であった当時の独立国としては自然な安保対策である。アメリカが対日戦争を計画したのはF・D・ルーズベルトの大統領就任以降であり、セオドア・ルーズベルトからフーバーへと至る時期にはそんな謀略は一切存在していない。
 それどころかセオドア・ルーズベルトの前任であったウィリアム・マッキンレー共和党大統領は「米英日が同盟して露独仏に対抗する」という構想を描いており、マッキンレーのブレインといわれたW・ラフィーバーは一八九八年三月にニューヨーク・トリビューン紙上で「(シナにおける)露独仏の支配は専制・無知・反動を意味するのに対し、日本の支配は自由・啓発・進歩を意味する」と述べて米英日の連携を訴えている。しかしキューバ及びフィリピンでの紛争の対処に追われたマッキンレーは、結局この米英日三国同盟構想に着手することなく一九〇一年九月にアナーキストの凶弾に倒れ、この三国同盟は幻の構想に終わった。このマッキンレー構想は日本人にもあまり知られていないが、共和党が当時日英両国をパートナーとする三国同盟を考えていたこと、そして今日ブッシュ政権が「米英日三ヵ国で世界新秩序をつくる」と明言していること、この事実は共和党の国際戦略が一環した発想の下に一世紀以上継続されていることを裏付けている。
 このようにマッキンレーやセオドア・ルーズベルトなど共和党政権が続いている期間は、日米間の軋轢はほとんど生じなかったのであるが、理想主義リベラルと言われる民主党ウィルソン大統領あたりから日米間の不和が表面化し始めた。ウィルソンはかの悪名高き禁酒法や組合保護法・労働時間制限法を導入した左派であり、国際連盟創設を主唱した人物だが、実は強烈な黒人差別主義者でもあり、日本が提議した人種差別撤廃決議案を強引に却下した張本人である。それまで比較的友好的であった日米の歯車が逆回転し、深刻な日米関係の歪みと日本の孤立化を生んだのは一九二一年十一月のワシントン会議ではないだろうか。ワシントン会議を主宰したのは「米国史上最も無能な大統領」と言われるハーディング共和党政権だが、同会議開催方針とその主目的である日英同盟破棄は、ハーディングの大統領就任(一九二一年三月)のその前にウィルソン民主党政権によって決められており、英国への根回しも完了していた。ポリシーのない金権政治家であったハーディングには、その既定路線を変更する意志も思想もなく、いくら共和党でもダメな人物も存在しているということだ。
 このワシントン会議において日本は、日英同盟を破棄させられ、軍艦比を米国五に対して日本三にさせられ、青島や膠州湾のシナへの返還、満州の日本権益を認めた「石井・ランシング協定」の破棄、その他屈辱的な条件を呑まされるに至った。ウィルソン政権が狙ったワシントン会議の主要な目的の一つは、中国や満州から日本を追い出してアメリカの権益を拡大することであり、一方、米国立公文書館の公文書ナンバー「JB三五五」には、民主党ルーズベルト政権が開戦を欲して日本を挑発し続けた目的の一つは「中国から日本を追い出して、将来の巨大な中国市場を独占的に確保するため」でもあると明記されている。何のことはない、クリントンを見ればよく分かるように、昔も今も民主党のアジア戦略はまったく変わっておらず、何の進歩もしていないのだ。
 一方おそらく確実であろうと推測できることは、もし大戦前の当時のアメリカが共和党政権であったら、シナの赤化やソ連の台頭を防ぐために日本の率直な対話は可能であり、石油禁輸もハルノートもなく従って日米開戦には至らなかったであろうということである。共和党が日本とは戦いたくないと願っていたことは確かなことだ。しかし現実にはルーズベルトの謀略で日本が真珠湾を攻撃してしまったために、共和党も戦争以外の手段はなくなってしまったのだ。自国領を攻撃された以上はもはや是非もない。「共和党員と民主党員、他国への不干渉主義と干渉主義の激しい論争も、今となっては無意味なものになった」(J・トーランド)のである。我々日本人はこの歴史的事実からどれだけの教訓を得たのか、いやそれ以前に、共和党が対日戦争に反対し続けた事実自体をどれだけの日本人が知っているのだろうか。我々は「アメリカは日本を戦争へと追い詰め、原爆を投下し、日本に対して幾つもの罪を犯した」というメンタリティを、「民主党は日本に対して幾つもの罪を犯した」という定義に置き換えるべきなのである。
 共和党系シンクタンクのフーバー研究所は、フーバー元大統領がその最晩年の一九六〇年に「米国を共産主義から守るための研究所」として私財を投じて創設した機関である。一九九二年にこのフーバー研究所は、外交官J・マクマリーが一九三五年に記した「マクマリー・メモランダム」を出版している。このメモランダムはいわば「アメリカ(ルーズベルト政権)の対日対中政策への批判」といった内容で、例えば「日本人は、天然資源の乏しい小さな島にぎっしり密集して住んでいる。日本は、東アジアを除く全ての市場からかなり遠く離れているし、狭い海の向こうから二つの国、中国とロシアから過去に威嚇を受けてきた。日本人は、それを彼らの生存そのものの脅威だと、いつもみなさなければならないのである。日本にとって、原材料輸入と輸出市場としての中国が、産業構造を維持し、国民の生計を支えるために不可欠なのである」と述べて日本へ対して寛容であるように説き、一方で「我々の対中政策は、何年もの間、中国にゴマをする実験をやったあげく、突然に行き詰まってしまった。この事実は、日本と正常な関係を保つよう願っている善意のアメリカ国民たちの忠告に十分耳を傾けるべきだという、警告として立派に役立つであろう」とも述べ、結論として「日本には媚びもせず挑発もせず、公正と共感を持って対処しよう」と主張している。
 日米開戦に反対した共和党元大統領の名を冠したフーバー研究所が、六十年近くも前の一外交官の手記を出版した真意は何であろうか。それはアメリカにとって、対日・対中戦略において二度と同じ失敗は繰り返さないという、共和党の意志が示されているものと私は考えている。この手記の出版に際してフーバー研究所は、その解説文として当時の国際状況を「中国はボルシェビキ(共産主義)と幼いナショナリズムの影響を受けて、狂乱のヒステリックな自己主張に駆り立てられていた」「仲間同士(日米)が傷つけ合ったのが実態」と付記しており、それは明らかに現在の中共を暗喩している。前出のジョージ・ケナンも、この「マクマリー・メモランダム」を絶賛しており、その講演の中で「これらの地域(シナ・朝鮮半島)から日本を駆逐した結果は、まさに賢明にして現実的な人々が終始我々に警告した通りの結果となった。今日我々はほとんど半世紀に渡って朝鮮及び満州方面で日本が直面し担ってきた問題を引き継いだのである」と述べ、防共と安全保障に基く当時の日本の立場はそのまま現在の米国の立場となったことを認めている。共和党の対日方針とは昔も今も、まさにこの六十年前の「マクマリー・メモランダム」が提唱するごとく、「日本には媚びもせず挑発もせず、公正と共感を持って対処しよう」なのだ。
 前述のように、民主党F・D・ルーズベルトの叔父ではあっても共和党の大統領であったセオドア・ルーズベルトは、日露戦争で日本を支援して講和を斡旋し、東郷元帥を尊敬し、教育勅語や武士道精神を高く評価するなど、親日的なスタンスを示していた。そのセオドアの政治的遺伝子は、以降も共和党歴代大統領に受け継がれている。日系人強制収容に初めて公式謝罪したフォードも賠償したレーガンも共和党であり、占領憲法制定を初めて公式に日本の国会で謝罪したニクソンも当時アイゼンハワー共和党政権下の副大統領であった。この事実は、もしアメリカが原爆投下や東京裁判を謝罪するとすれば、それは共和党政権であるというジンクスを示唆している。ちなみに一九八三年五月二十七日、日本海海戦の戦勝記念日であるこの日に訪米した中曽根首相を、レーガン大統領は「軍艦行進曲」の演奏で迎えたが、ホワイトハウスで日本の軍歌が演奏されたのはこれが最初である。米大統領がドイツの首相をナチスの軍歌で迎えることは決してあり得ない。共和党の対日史観とは、「大東亜戦争肯定史観」とまではいかなくても、日本の自衛による立場を理解したる「大東亜戦争容認史観」といったところなのだ。
 二十世紀の百年間、日米英三国同盟を夢見たマッキンレーに始まり、日露戦争講和を仲介したセオドア・ルーズベルトを経て、「日本はアジア防共の砦だ」と終生主張していたフーバー、そして「強い日本の復活」を待望する現ブッシュ政権に至るまで、共和党はいつも日本の立場に理解と共感を持って接してきた。その一方、ワシントン会議のレールを敷いたウィルソンに始まり、ソ連に操られて日本を追い詰めたルーズベルト、原爆を投下し東京裁判を強行したトルーマン、中共と結び対日経済戦争に狂奔したクリントンに至るまで、民主党は常に日本を敵視し警戒し抑えつけようとしてきた。これらの歴史が物語る真実は、この二大政党の対日観や共産主義に対する姿勢がまったく正反対であるということなのだ。そして、かつてGHQ内部で熾烈な路線対立を繰り広げたストロングジャパン派(共和党)とウィークジャパン派(民主党)が、今なおアメリカを二分して存在しているという現実を日本人は決して忘れてはならない。
 日米開戦前における日本政府の最大の失敗は、ルーズベルト政権の与党たる民主党だけを相手として共和党との交渉を考えもせず、つまりアメリカという国を一括りに見て「アメリカは二つ存在する」という視点を持たなかったことにある。私は小室直樹博士とお会いした時に、日米開戦に至る日本外交の最大の失敗は何かと質問したことがあるが、小室博士の答えは一言明確に「アメリカのもう一つの世論を研究せず、ルーズベルトやハルだけを対手としたこと」であった。まさしくその通りである。
 そして現在においても、反米か親米かの二元論でアメリカに相対する人々は、この「歴史が教える教訓」に全く学んでいないのだ。右だろうが左だろうが、今も大半の日本人が「二つのアメリカ」の存在をおそらく知らない。反米か親米かの立場でしかアメリカを見ようとしない日本人は、現実の目ではなく、観念の目を通してアメリカを見ているのだ。それは日本が再び同じ過ちを繰り返す最大の要因でもある。
 元来、米民主党は伝統的に反日親中の傾向がある。それはこの百年来変わっていない。それに対して共和党は伝統的に日本への理解が深く、共産党独裁の中国に対する警戒感が強い。オバマと競った共和党大統領候補をみても、マケインは「中朝に対抗するためにも日本は核武装するべきだ」と公言しており、ロムニーは「私が大統領に就任すればその日のうちに中国を為替操作国に認定する」と公約していた。為替操作国に認定するということは「経済制裁を加えて中国経済を潰してやる」と宣言するにも等しい。
 歴史認識においても共和党と民主党には大きな開きがある。マッカーサー元帥が「日本の戦争は安全保障目的であった」という主旨の議会証言を行ったのも、マッカーサーが共和党系の人物であったからだ。交戦当事国である以上、たとえ共和党であってもさすがに日本を全面擁護することはできないが、少なくとも日本の立場に対して一定の理解を示してきたことは事実である。共和党歴代大統領の中でも屈指の親日派であったブッシュにいたっては、小泉総理の援護のために一緒に靖国参拝しようと打診していたぐらいなのだ。
 私と爾来交流がある共和党関係者たちも、私の主張する大東亜戦争肯定論までは同意しなくとも「東京裁判のパール判決が最も公正な判決だ」という点では完全に意見が一致している。パール史観であれば、共和党を中心とする米国保守勢力との歴史観の共有は可能であると私が信じる所以である。
 一方、対日戦争を実行したルーズベルトおよびトルーマンの両政権が民主党であったことも影響して、米民主党にははるかに中国寄りの歴史認識を持つ人物が多い。つまり米民主党を中心とする米リベラル勢力にとっては「日本は一方的に悪の侵略国であった」という歴史観が主軸となっている。
 安倍政権誕生後、中国のロビー工作によって米民主党議員を通じてもたらされたネガティブイメージにより、オバマとその周辺は「安倍は右翼的な危険人物だ」という先入観を持っていた。共和党議員からは私のもとへ「鳩山のせいでオバマはすっかり日本嫌いになっている。ケリーは筋金入りの親中派だ。安倍は非常に苦労するだろう」と警告するメールも届いていた。ケリーは2010年12月7日の米中関係演説において「中国の経済力増大はアメリカの国益に適っている。アメリカはこれまで以上に中国と親密になり、新しい経済協力関係を築くことがアジア発展につながる」と述べている。まさに米国の親中派の代表格の一人がケリーなのだ。
 ヒラリー・クリントンも上院議員時代にたっぷりと中国筋からの献金を受け取っていたが、在米華僑から直接受け取るなど脇が甘く、また夫のクリントン大統領も中国から秘密献金を受けていたことを共和党にリークされ、夫妻揃って共和党系メディアに批判された過去があった。そのような状況もあって一種のアリバイ作りのためにヒラリーは、国務長官在任中はあえて対中強固姿勢を示していたのであろう。しかし中国のケリーへの献金はもっと巧妙に、人民解放軍系企業から米国企業を経由させた迂回ルートで行われてきた。それゆえケリーは金銭的な面での中国とのつながりを批判される心配がヒラリーよりも少ない。第二次オバマ政権の外交を担うケリーは、日中関係の問題においては中国のエージェントと言ってもおかしくないほど中国寄りの人物なのである。
 このような要素も災いして安倍総理が最初の外国訪問に米国を希望しても、オバマ政権はその希望を受け入れようとはしなかった。ところが実際に安倍総理と会談したオバマは、安倍氏の誠実な人間性や優れた国際戦略観に感銘を受け、安倍氏に対して「あなたの在任中、(自分という)力強いパートナーがついている。安心してもらっていい」と明言した。安倍氏本人と会ったことでオバマの安倍氏への先入観は覆されたのである。
 安倍総理の志向する憲法改正による国防軍創設、集団的自衛権の行使、防衛予算の拡大などは、財政難のアメリカにとっても好都合である。歓迎こそすれども反対する理由はない。オバマはこれまで相対してきた日本の民主党政権の総理たちとは違って安倍氏は信頼できると感じたのだろう。オバマが安倍氏を信頼し日米同盟が強化されることは、中国の覇権拡大の野望を妨げることにつながる。しかし米国の国益にも資する日本の国防軍創設(憲法改正)や集団的自衛権の行使は、米国において安倍政権を攻撃するロビー工作のネタにはならない。そこで中韓が狙いを定めたのが歴史認識問題なのである。
 - 中韓のロビー工作はそれぞれ狙いが異なる -
 米国内で行われている反日ロビー活動の量的なウエイトとしては、私の見るところでは、中国が8割、韓国が2割といったところだ。この両国はどちらも慰安婦問題など歴史認識をネタに安倍政権攻撃のロビー工作を行いつつも、実はその目的はまったく異なっている。
 中国の目的はオバマが安倍政権を信用しないように仕向け、日米の溝を大きくして離反を進め、日米同盟を骨抜きにして尖閣強奪や沖縄独立工作をスムーズに進めることにある。従って中国が何もせずとも勝手に日米離反を進めていた鳩山政権の時期には、このような政権バッシングの米国内ロビー工作は一切行われていなかった。野田政権の時期になって少しは行われたものの現在の安倍政権に対する工作量の比ではない。
 現代における国際覇権とは海洋覇権のことである。中国が太平洋へ侵出しようとする時、その出入り口を遮断しているのが離島も含めた日本列島であり、沖縄・尖閣・台湾のラインを手中に収めて太平洋への出入り口を確保しなければ中国は海洋覇権大国たりえない。地政学的に古来より日本はシナを大陸に封じ込める「海からの包囲陣」であり続けてきた。これは地政学的な宿命であり、従って日中は永久に共栄不可能な不倶戴天の敵なのである。両国の国力に大きな差があれば衝突は生じないが、同等の国力を持つようになった場合、ランドパワーとシーパワーの衝突は不可避であることは歴史が証明している。日本を屈服させて海への出入り口を手中に収めないかぎり中国の野望である世界覇権は実現しないのだ。国力を増した中国にとって日本ほど邪魔な国は他には存在しないのである。
 世界覇権を得るために日本を必ず潰すという意思を固めた中国は、日本に冷戦を仕掛けてきている。尖閣海域での軍事衝突も将来必ず起こりうると私は確信しているが、冷戦とは軍事面での競争だけではない。対外プロパガンダ戦・世論工作戦・外交戦・経済戦などあらゆる戦術を用いて中国は日本を弱体化させようとしている。そして中国のその日本潰し戦略の一環として行われているのが、米国におけるプロパガンダ戦なのである。
 一方、韓国が安倍政権バッシングの米国ロビー工作を急に加速させているのは、もっと単純な目先の理由である。一言でいえば安倍政権を潰すことでアベノミクスを頓挫させたいのである。朴槿惠大統領は対北朝鮮における安全保障での日本の役割は理解しており、過去に親しく面談したこともある安倍氏に対して個人的な敵意はない。安倍氏が対中牽制のために韓国に気配りした政策を採っていることも朴槿惠はよく理解している。そもそも韓国は中国のように日本をその覇権下に組み込もうとする意思もなければ、それだけの国力もない。
 しかし日本経済と韓国経済はウィンウィンの関係にはなく、どちらかが上がればどちらかが沈む構造になっている。アベノミクスが成功して強い日本経済が甦れば、韓国経済は沈んでしまうのだ。米国がアベノミクスを支持すると公言した以上、韓国がそれに反対しても米国は相手にしない。そこで歴史認識を材料にして安倍政権に言いがかりをつけ、米国でロビー工作を行ってオバマが安倍政権を見離すように仕向けようとしているのである。安倍総理自身が靖国参拝を控えたのに、韓国外相派遣の中止など韓国が過剰にヒステリックな対応を行うのは、そこしか攻めるところがないからなのだ。韓国の反日ロビー工作は、大局的な国家戦略によるものではなく自国経済を守るために苦し紛れに必死になっているにすぎない。
 アベノミクスが成功して日本経済が蘇り韓国経済がガタガタになれば、日本からの支援欲しさに韓国は尻尾を振ってくる。米国の同盟国である韓国を中国が助けることはなく、韓国を助けてくれる国は結局日本しか存在しないからだ。近年韓国が日本に対して急に居丈高になりだしたのは、日本のGDPが中国に抜かれたことがその大きな要因である。日本の国力が甦れば、韓国は半島国家の習性である事大主義が必ず頭をもたげてくる。従って日本を呑み込む意図を持つ中国とは異なり、日和見的な存在であることを理解しておく必要がある。
 米国における議員相手のロビー工作とは、端的に言って金か利権誘導である。米国人ロビイストを通じて話を持ち掛け、(表か迂回かはケースによって異なるが)相手の望むだけの献金を行い、またはその議員の選挙区に雇用を生む工場等を建設するなど、さまざまな手法を用いての利益が供与される。例えば執拗に反日法案を提出し続けるマイク・ホンダ民主党下院議員などは中韓からの献金をたっぷり受け取っている。そして中国の経済力拡大を背景に人民解放軍系の企業の米国進出も急増しており、これらは迂回献金の格好の隠れ蓑になっているのだ。
 汚職が日常茶飯事である中韓は米議員に金や利権を供与することに何ら抵抗はないが、日本人は奇妙な潔癖症があって正攻法で反論しようとする傾向が強い。しかし中国や韓国からたっぷり献金をもらって慰安婦非難決議案を議会提出している議員に対して、外務省職員が面会して淡々と「強制連行の証拠はないのです」と説明したところで一体何の役に立つであろうか。金には金、利権には利権で対抗しなければ勝負にならない。外交を担う者は国益を守るには泥水に浸かるべきなのだ。そのためには日本は諜報機関を持たねばならない。先進国で諜報機関を持たない唯一の国が日本である。
 - 対米プロパガンダ戦に敗北し続ける日本 -
 日本は米国内におけるロビー工作やプロパガンダ工作において、中国・韓国に完全に遅れをとっている。とりわけ中国には完敗している。それは戦前の国家体制を全て悪とする「戦後体制」のせいで、日本にはCIAや中国国家安全部のような諜報工作機関が存在していないことが大きい。さらに日本は米ソ冷戦下の甘えがいまだ抜けず、「アメリカは日本の味方だ」と無邪気に思い込んで楽観視している人々も多く、米国内でのプロパガンダの重要性に気付いていない時期が長かった。確かにソ連が存在した時期はアメリカは無条件で日本を庇護した。日本を対ソ包囲網の主軸に置くことがアメリカの国益であったからだ。
 しかし時代は変わった。日本の主敵は中国であり、中国はソ連のような米国敵視ではなく米国懐柔を対米戦略の要にしている。米国にも民主党を中心とする親中派の呼応勢力があり、この政治勢力は経済的利益を目的に対中融和政策を進めようとする傾向にある。米ソ間には経済的な結びつきがほぼ皆無であったが、米中間の経済的な結びつきは非常に大きくなっており、米ソ冷戦とは異なる「新しいタイプの冷戦」が生じているということだ。その新冷戦の当事国となる一方は米国ではなくむしろ日本なのである。それは言い換えれば、現在の覇権国であるアメリカを含めて、日中いずれがより多くの「味方」を得るかの競争でもある。
 中国の工作は米政界相手のロビー活動だけではない。中国は米国で年間500万ドル以上の予算を割いて衛星放送のテレビを4チャンネル運営し親中反日番組を放送し、中国共産党国務院直轄の中国語学校「孔子学院」を全米80箇所以上設け(児童向けの「孔子教室」は300箇所以上)、さらには主に「日本軍の戦争犯罪」なるものを宣伝するイベント・演劇・パネル展・シンポジウムなどを全米で開催し、その他アメリカ国民を「親中反日」へと仕向けるための世論工作は大小無数に展開されており枚挙するにキリがない。
 対外プロパガンダ工作を重視する中国は「対外広報予算」として年間およそ一兆円をプロパガンダ工作やロビー工作につぎ込んでいるが、一方の日本の予算はわずか二百億円足らずである。これではとても勝負にならない。日中間はまだそれほど大きな国力の差はないのにこの対外広報予算のあまりにも大きな開きは、プロパガンダの重要性に対する認識差であるとしか考えられない。
 中国はアメリカの世論を味方につけて日本への潜在的反感をかきたてさせ、日本との溝を深めさせて、いずれ将来は日米同盟の破棄に持ち込もうと狙っている。実際、朝鮮半島有事が起こった際に日本が集団的自衛権を行使できず米軍が戦うのを漫然と傍観していれば、激怒した米国世論に押されて日米同盟は破棄される可能性も十分にあるのだ。まさに宋美齢の対米プロパガンダによって米国が中国に同情し日本敵視に至った戦前の歴史が繰り返されようとしているのだ。
 - 日本を侵食する中国工作機関・中国人スパイ・潜入帰化人 -
 日本が対外プロパガンダ戦で一方的にやられっ放しなのは、プロパガンダ予算や諜報機関の有無の問題だけではない。日本国内に中国の対日戦略に加担する一大勢力があることもその大きな一因だ。中国が靖国参拝をネタにして反日的国際プロパガンダを起こすと、それに呼応する動きで自国政権をバッシングする日本国内の媚中勢力および媚中左翼メディアの存在がある。中国の国内には日本の主張に呼応する勢力など存在していないが、日本には存在する。有力な利敵勢力が存在するか否かの差は大きい。そしてそれらの国内媚中勢力は中国の工作機関と結びついているケースが極めて多いのだ。
 例えば朝日新聞は人民日報と提携しており社内に人民日報の支局があるが、中国国営紙である人民日報の関係者が日本支局に派遣される場合は、言うまでもなく中国の対日工作機関に関係する人物が派遣されてくる。さらに朝日新聞は同時に米リベラル系のニューヨーク・タイムズとも提携しており、同タイムズ紙の東京支局は朝日新聞社内にある。つまり中国が靖国参拝を批判すればすぐに、国内では朝日新聞が、米国ではニューヨーク・タイムズがそれに呼応するという反日親中ネットワークの仕組みができあがっているのだ。問題はメディアだけではない。詳しくは機会を改めて述べることにするが、現在沖縄で起きている主権回復記念式典やオスプレイ追加配備などをめぐる反対の動きにも、実は中国の工作機関が深く関与している。
 日本国内における中国の工作機関関係者は、一般の日本人が想像するよりもはるかに多くの膨大な人数がすでに各界に浸透している。在日中国人は外国人登録されているだけでも70万人、不法入国や不法滞在も含めれば100万人を超えており、さらに日本国籍に帰化した中国人は12万人を超える。在日韓国・朝鮮人の人口をはるかに上回る数の中国人がすでに日本に入り込み住み着いているのだ。ちなみに2007年の時点で東京の人口の百人に一人は中国人である。中国共産党は百万人を超えた在日中国人による情報収集や対日工作を一元的統括するシステムを作り上げている。職域や階級に応じた多くの組織(私が把握しているだけでも50団体以上)が作られているが、それらを統合するポジションにある大手6団体が「日本華僑華人連合総会」「日本新華僑華人会」「全国日籍華僑総会」「日本中華総商会」「在日中国企業協会」「日籍華人連誼会」であり、これらの団体の上部に存在しているのは人民解放軍情報部である。人民解放軍情報部直轄ともいえるこの6団体に所属する人数を合わせると実に60万人以上。すなわち60万人を超える在日中国人が大なり小なり情報収集や対日工作などに何らかの関与を行っているということだ。李春光事件など氷山の一角のそのまた一角にすぎない。
 これら日本国内の中国人(帰化人多数を含む)の多くは、情報収集(スパイ行為)のみならず、駐日中国大使館および中国共産党から派遣されている対日工作機関員の指示に沿って様々な対日工作にも励んでいる。政治家や財界人に対するハニートラップや献金買収・利権提供など日常茶飯事であり、帰化人からの献金であれば政治資金規正法にも問われない。
 さらに近年は中国籍からの帰化人を純粋な日本人のように装わせて、日本の各界中枢に送り込む潜入工作も顕著である。中央か地方かを問わず役人・政治家秘書・マスコミ関係者には驚くほど多数の中国帰化人が入り込んでいる。政界潜入工作は議員秘書だけが対象ではない。「全国日籍華僑総会」という組織が中心となって日本の政界に帰化人を送り込む戦略を推進している。ここでは実名は伏せるが中国帰化人の国会議員はすでに両手の指を折っても足りない。ちなみに民主党政権で準閣僚ポストにあった某氏、地政学的に重要な位置にある某県の知事なども中国籍からの帰化人である。
 読者諸氏は「仏光会」という宗教団体をご存知だろうか。近年、日本と韓国において怒涛の勢いで信徒数を増やしている台湾の宗教団体だ。東京にも東京仏光寺という寺院があり、その寺院で開かれる会合などには現役国会議員も多数出席している。台湾の宗教団体ということで保守派もあまり警戒していないようだが、「仏光会」の教祖である星雲大師なる人物は台湾出身ではなく南京出身であり江沢民の懐刀といわれている人物なのだ。江沢民政権時代にその全面的な後押しを得て「仏光会」は台湾仏教界をほぼ制圧して牛耳るようになり、票目当ての国民党と密接な政治的関係を築いて今や「台湾の創価学会」とでもいうべき大きな政治的影響力を持つに至っている。台湾本国での「仏光会」の総会には副総統・行政院長まで出席しているのだ。星雲大師は中国共産党に直結する政治的工作員であり、日韓台において南京虐殺などを喧伝する反日プロパガンダや日韓離反・日台離反の世論工作を仕掛けている。帰化人を政界に送り込む工作を進めている「全国日籍華僑総会」の会長も何かにつけて東京仏光寺を訪れているという情報があるが、おそらく中国本国から来た情報部員を交えての対日工作の会議でも開いているのだろう。れっきとした日本人であっても「仏光会」の信徒になってしまえば、徹底した反日親中思想の洗脳を施されて事実上の中国の工作員に育てられていく。オウムを見ればわかるように宗教的洗脳を受けた信者は何でもやるのだ。政界潜入工作のために議員に立候補することなどお安いご用だ。中国共産党直系の政治工作員が教祖をつとめる宗教の信者数が日本国内でも凄い勢いで急増しつつある今、もはや創価学会の媚中姿勢を批判しているだけでは済まない大変な事態が進行中なのだ。
 CIAを上回る世界最大数の諜報工作員をかかえるといわれる中国のその工作対象は、スパイ防止法すらない無防備な日本においては、まさかと思うほど広範囲の津々浦々にまで及んでいる。実は私のような在野の一作家のところにまで某県立大学教授を務める中国人が「ご著書に感銘を受けました」などと言って接近してきたことがある。国際政治学を専門にする教授で「中国の民主化運動の活動家」という触れ込みでの接近であったが、私が中国共産党を激しく批判しても曖昧な返答しかしないため不審に思い、公安筋に調べてもらったところ案の定「中国共産党が組織させた日本華人教授会議のメンバーであり、間違いなく中国情報機関のヒモ付き。民主化運動に関わった形跡は一切ない」とのことであった。私がハニートラップには引っかからないとでも思って学者を寄越したのであろうが、オッサンの中国人工作員に接近してこられても嬉しくもなんともない。私のところへ工作員を寄越す場合は次回はジョイ・ウォンみたいな美人をお願いしたい。しかし私の反中的主張に目をつけたのか田中正明氏の弟子であるからかは知らないが、私のような無名作家のところにまで懐柔工作の手が伸びたということは、もはや工作対象は政治家・財界人・マスコミにとどまらず、何らかの影響力を持つ日本国民は全てが工作対象になりうるのだと考えておかねばならない。
 政治家や財界トップが中国滞在中に飲んで食って抱いて籠絡されていたのはもはや過去の話。今は日本国内で買収・ハニートラップ・利権供与・脅迫などあらゆる手段を駆使しての籠絡工作が推進されている。反中的な有力者が失踪(おそらく拉致され殺されている可能性が高い)したという話も近年たびたび耳にしているので、殺人や拉致などを行う非合法工作員までもが相当数潜入しているのだろう。
 最近中国の工作機関が力を入れているのは保守派・民族派など右側への懐柔や潜入だ。ちなみに某大手右翼団体のトップが中国に招待され国賓級の歓待を受け、飲んで食って女工作員を抱いて裏金を握らされてすっかり懐柔されてしまったという話すらある。この右翼団体はそれを境にぱったりと中国批判をやめて専ら韓国・北朝鮮への批判に軸を移している。このような事例は氷山の一角どころか、砂浜の中の一粒の砂粒にすぎない。中国の最大仮想敵国にしてスパイ防止法すらない日本は、中国の工作機関や中国人スパイの手でまるで玩具のように弄ばれているのだ。
 - 国際政治学から見た「ネットと愛国」 -
 この中国による対日工作の件に関して日本の保守派が大いに警戒しておくべきことがある。これは保守を自認する全ての人に対する重要な警鐘なので、読者の方はぜひとも念頭に留め置いてもらいたい。
 ご存知のように、在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチが社会問題視されている自称「保守系市民運動」なる一派がある。「行動する保守」などとも自称しているようだ。ネット上の一部の保守系ブログなどにも彼らとまったく同様の主張を行っているケースが多くみられる。
 保守派のイメージを貶める、日本の対外イメージを貶める、社会的秩序を乱す、民族平等を唱えて大東亜戦争を戦った英霊を貶める、靖国に祀られる朝鮮半島出身の英霊への侮蔑に等しいなど、私の目から見ても非常に問題が多いことは確かだ。だが本稿ではそれらの問題とその悪影響についてはあえて述べない。それらについては現在執筆中の次著で採り上げることにする。また私は「レイシズムはいけない」という人道やヒューマニズムの観点で論じることも敢えてしない。それは社会学者や人権問題の専門家がやればいいことだ。私は私の分をわきまえて国際政治学の観点で、私の得た情報およびそれに基く中国の狙いについて指摘・分析する。
 私のもとには米国の共和党筋・情報機関筋・保守系シンクタンクなどから連日様々な情報メールが届く。それらは私が国際情勢を分析する上で重要な情報源となっている。米国の情報機関が私に接触してきたのは拙著「二つのアメリカの世界戦略」がヒットした直後だった。俗にフィクサーと呼ばれている東京の某人物を通じて私に面会依頼があったのだ。情報機関員が言うには「アメリカ関係の戦略論(拙著)がamazon.co.jpのランキング上位になっていたので入手して読んだ。その結果、アメリカはこの著者とパイプを持っておくべきだと判断した」とのこと。米国情報機関の情報網羅力はさすがに凄いと感心したものだ。私はその情報機関員に「私は日本の国益に不利になる情報は一切教えない。ブッシュ政権が日本を後押ししてくれている間は協力するが、米民主党政権になって再びクリントンのような対日戦略をとれば私は米国批判するがそれでも構わないか」と尋ねたところ、それでOKとのことであった。
 爾来、定期的にその情報機関は何かリークしたい情報があるときは私のもとにメール送信ないし電話をしてくるようになった。その情報の一端を垣間見ても、東京や大阪などの大都市を舞台に米国と中国の諜報工作員の熾烈な諜報戦が繰り広げられている実態が伝わってくる。残念ながら諜報機関のない日本は蚊帳の外だ。ちなみにその情報機関はエシュロンを利用できるセクションでもあり、これまで私のもとに届いた情報内容に間違いがあったことは一度もない。私はその情報内容に応じて、国益に資するかどうかを判断基準にして、ある情報は公表し、ある情報はマスコミに流し、ある情報は然るべき立場の人物に伝達し、ある情報は私の手で握りつぶしてきた。
 この米国情報機関から入った情報によると、ヘイトスピーチが問題視されている自称「保守系市民運動」なる一派の中心に、中国の工作機関の関係者が相当多く入り込んでいるとのことである。中国工作機関筋から金をもらって指示通りに動いている人間もいれば、中国国籍から日本国籍に帰化した人物も相当数いるという。米国情報機関からの情報には実は中国の帰化人である数名の人物の実名も記されていた。中国の工作機関がそのようなヘイト活動をコントロールしようとする意図は、日韓対立を進めるマッチポンプにあるというのがその米国情報機関の分析である。
 実際にその類いのヘイト運動においては中国批判の言及は極めて少なく、稀にアリバイ作りのような無難な範囲の中国批判が為される程度だ。ヘイトはもっぱら韓国と在日韓国人を標的にしている。韓流ドラマやKポップまで目の仇にしており、とにかく韓国と在日韓国人しか目に入らないようだ。彼らの主張を見ると、まるで中国ではなく韓国が日本の主敵であるかのようにみえる。もちろんネットや街頭活動で韓国や在日韓国人を罵っている人たち全員が中国の工作機関とつながっているわけではない。中国の対日工作機関の意図に従って動いている人物はその中心にいる一部ではあるが、残りのほとんどの人々も無知ゆえにその煽動に踊らされているのだから実質的には対中協力者と同じである。
 中国の工作機関の意図するところは、まず韓国および在日韓国人への憎悪を煽りたてることによって、真の敵である中国へ向けられるべき日本人の怒りの矛先を韓国へとすり替えようとすることだ。そのためには名前や身元を明かさずに虚偽情報を流布できるネット言論を操ることが最も手っ取り早い。例えば上述の中国帰化人である元準閣僚もネット上では何故か「在日韓国人からの帰化人」と決め付けられている。同様に中国国籍からの帰化人であることを私が把握している他の著名人や政治家も、ネットではことごとく「在日韓国人からの帰化」だという虚偽情報が流布されている。ネットでの彼らの主張ではあたかもマスコミから政治から何から何まで日本がまるで在日韓国人に支配されているかのようで、「中国」を「韓国」に、「中国人」を「韓国人」に、「在日中国人」を「在日韓国人」にことごとくすり替えが行われている。そして日本の国家戦略にとってはどうでもいい韓流ドラマだのパチンコだの何でもかんでもが、強引に韓国および在日韓国人への憎悪へと誘導されている。
 中国はサイバー工作の先進国であり、本国には人民解放軍のサイバー部隊が5万人以上いる。共産党政権批判の書き込みを検閲するインターネットポリスは3万人以上。さらに中国共産党に雇われている「五毛」と呼ばれるネット世論工作員が約30万人いる。これだけサイバー戦を重視してインターネット工作に力を入れている中国が、日本のネット世論には工作の手を伸ばさずにいると思うほうがどうかしている。日本国内に百万人以上いる在日中国人の一部、仮にその1%であっても1万人だが、それらの在日中国人が対日世論操作を目的にして、中国へ矛先が向かないようにわざと韓国や在日韓国人へ敵意が向くように仕向けるネット喧伝工作に励んでいても不思議はないだろう。
 私はいわゆるネトウヨ(ネットで保守的言論を行っている人のことではなく、私が言うネトウヨとは韓国および在日韓国人を標的に執拗に攻撃している人物を指す)の中には相当多数の中国人の対日ネット世論工作員が蠢いていると確信している。米国情報機関筋も私と同じ見解だ。さらに件のヘイト運動は偽名とメールアドレスだけで参加でき、住所や素性を明らかにせずともよい。メールアドレス1つあれば偽名で潜入して日韓対立を煽ることができる格好の「材料」が目の前に転がっているのだから、「百年先の戦略まで考えて動く」といわれる中国の工作機関が手をこまねいて傍観している筈がない。日韓を対立させるために中国があらゆる工作を進めるのは当たり前のことなのだ。
 ネットでの対韓憎悪への世論誘導だけではなく、現実行動におけるマッチポンプも行われている。彼らのヘイト運動の街頭デモ活動が動画投稿サイトで公開されることで、そのヘイトスピーチを韓国メディアが大きく報じる。それを見た韓国国民の反日感情はさらに高まることになる。韓国人が反日感情をエスカレートさせると、それによってさらに日本人の反韓感情を煽ることができる。日韓は民主主義ゆえに政権も国民感情は無視できず、ますます両国の溝は深まっていく。もちろん言うまでもなく韓国国内でも中国のネット世論工作員が大量に活動していて対日憎悪をひたすら煽っているのだ。このマッチポンプによって、日本にとって地政学的に重要な韓国との間に民心の感情的対立を導き、本来は日本の主敵であるはずの中国から目を逸らさせることができる。
 「地政学的に重要な韓国」という意味を簡単に説明しよう。大陸国家と海洋国家の国力が均衡して衝突するとき、その中間にある半島国家の動向が勝敗の行方の大きな鍵を握る。これは地政学のイロハのイ、国際政治学を学ぶ者の常識である。日清・日露の両戦争は朝鮮半島をいずれの勢力圏下に置くかの戦いであった。大東亜戦争で日本軍がシナ戦線で敗れなかったのも朝鮮半島が日本領土であったからだ。もし仮に日韓が断交して韓国が完全に中国陣営に組み込まれてしまえば、対馬沖が日本にとっての38度線になる。ほんの目と鼻の先の位置に先進国級の軍事力を持つ敵対国が生じれば日本は本土防御に追われ、とても中国と対峙する余力はなくなる。その結果、尖閣は間違いなく中国に奪われてしまうだろう。国の存する位置だけは動かしようがない。引っ越すわけにはいかないのだ。好むか好まざるかに関係なく、韓国の地政学的なポジションは日中冷戦の帰趨を左右する重要なファクターになっているのだ。
 そして中国が世界覇権を得るには太平洋へ侵出する「海への出入り口」が不可欠だが、世界地図を広げればわかるように、その出入り口となるのは東シナ海・南シナ海・黄海の3海域しか存在しない。南シナ海ではフィリピンやベトナムと紛争を起こしているが、これは小さな島が欲しいのではなく「出入り口」となる領海を確保したいのだ。東シナ海は沖縄・尖閣・台湾のラインだ。尖閣侵略・沖縄独立工作・台湾懐柔工作などは全て「海への出入り口」を確保することが狙いである。残る1箇所である黄海は朝鮮半島がせり出している。中国海軍は北朝鮮の海域までは出られても、南半分にある韓国はアメリカの同盟国であり米海軍もウヨウヨしていて中国が勝手に出入りできない。中国はいずれこの黄海もなんとかして手中に収めたい。そのためには韓国を中国側に一段と引き寄せる必要がある。そこで韓国の反日教育の産物である反日史観を利用して焚きつけ、中国の反日包囲網の中に引き込んでいきたいのだ。韓国は案の定その戦略に踊らされ、さらに日本国内で中国のその戦略を実質的に援護しているのが反韓・在日差別運動という位置づけになる。
 韓国は米国の同盟国であり、とりわけ北朝鮮の核保有問題が深刻さを増す中での日韓の対立は、米国の東アジア戦略上においても大きなマイナス要因となる。米国の同盟国同士を分断することは、東アジアにおける米国のヘゲモニーを弱めることになる。国際力学においては1つのパワーの衰退があれば、その「力の空白」を埋める新たなパワーが台頭する。その新たなパワーが中国であることは言うまでもない。日韓対立の深刻化は国際政治の観点では日本も韓国も米国も大きな損をするが、それによって最大の利益を得るのが中国と北朝鮮なのである。日韓対立が進めば進むほど、国際力学のパワーバランスは中国に有利に傾く。こんなことは子供でもわかる国際政治の基礎知識である。
 従って中国の工作機関は日本のみならず韓国内においても盛んに反日世論を煽り立てる工作を推進している。中国が韓国内で行っている反日世論醸成工作については詳細な情報を得ているので、詳しいことは次著において記すつもりだ。日韓両国内における中国の世論誘導工作の実態を見るにつけ私は絶望感に襲われる。中国の手のひらの上で踊らされて罵り合っている愚かな日韓両国民がいかに多いことか。全ては「真の敵」を見誤ったことが原因であろう。
 たとえ慰安婦問題や竹島問題はあっても、対中戦略において韓国は絶対に日本側の陣営に確保しておかなければならない国である。そして両国は民主主義ゆえに国民感情に変化が起これば政権の対応も軟化する。従って近年の日本の韓流ブームは日韓の民間融和を進める意味で、国際政治の観点からみても大いに歓迎すべきことだと私は考えていた。日本にも韓国に親近感を持つ国民が増え、また韓国にしても自国のドラマや歌手が日本で人気を得るのは嬉しいことに違いない。国際政治オンチの李明博が馬鹿な人気取りパフォーマンスをしたせいで、せっかくの韓流ブームが下火になったことは残念である。
 そしてさらに厄介なことにこの問題は日韓両国内だけにはとどまらなくなっている。現在、米国ロビー工作において中韓の依頼を受けたロビイストたちは、そのヘイトスピーチ動画を焼いた英語字幕付きDVDをロビー活動に持ち込み、「日本が右傾化している証拠。安倍政権を支持しているのはこのような在日韓国人蔑視のレイシストたちである」と主張しているのだ。
 欧米においてはレイシズムは絶対悪とされる。とりわけ黒人差別問題を超克した米国はレイシズムに敏感であり、議員がレイシズムを公言することは政治生命の終わりを意味する。そのような国で「朝鮮人を叩き殺せ」などと白昼公然と連呼する動画を見せられた米国議員の反応は想像するに易い。「このような勢力が安倍政権を熱狂的に支持しているのか。やはり安倍政権は危険な右翼政権だ」という方向へと感情誘導することは簡単であろう。
 安倍政権をいかに「危険なナショナリスト政権」だと思わせるか、これは 中国が対米ロビー工作で最も重点をおいているポイント であり、そのためにはありとあらゆる材料を利用するのが中国のやり方だ。日本の反韓・在日差別のヘイトスピーチ活動は、安倍政権を潰したい中国の対米ロビー工作の材料の一つとして大いに活用されているのである。
 また慰安婦問題においても、米国では歴史認識問題としてではなく人権問題だと認識されている。米国は世界で最も人権問題にうるさい国だ。そんなところへ在日韓国人の人権を無視するがごときヘイトスピーチ動画を持ち込まれて、「このように日本人は韓国人を差別しているからこそ、戦時中も韓国人をSEX SLAVEにしたのだ」と主張されれば、慰安婦問題では米国議員はますます韓国の肩を持つようになる。つまり自称「保守系市民運動」の在日差別のヘイトスピーチ活動は、実質的には米国内における慰安婦問題についての韓国側の主張を援護しているに等しい。これによって河野談話の修正はますます困難になった。
 米国情報機関が日本国内のヘイト運動一派の背景を調べたきっかけは、中国による米国ロビー活動にそのヘイトスピーチ動画が持ち込まれたからである。米国情報機関はこのヘイト運動が中国の一種の自作自演による日韓離反工作であることを疑ったのだ。その結果、反韓や在日差別を煽る活動の中心には中国の工作機関関係者や中国からの帰化人が多数入り込んでいる事実が判明したということだ。この事実はおそらく既に日本政府の情報関係当局にも伝えられているものと思う。(なお中国工作機関が日本のどのような組織にどのような形で潜入・浸透しているのか、この問題については現在執筆中の次著にて詳しい情報を徹底暴露するつもりでいる。)
 現在いわゆるネトウヨと呼ばれる層の間では、反韓および在日韓国人差別が花盛りである。それに反論すれば「在日韓国人」だのと根拠なく決め付けられることが多い。ネットで「愛国者」だのともてはやされたいなら韓国の悪口を書いておけばいいのだろう。そして本稿で指摘したような米国情報機関筋からの情報は、反韓と在日韓国人差別に固執するネトウヨにとっては都合が悪いことだろう。しかしたとえ反発する人が多かろうが、私は日本を愛する政治学者の端くれとして、日本のために本当に正しい国家戦略のみを提言する。中国工作機関の思惑に踊らされて日本の国益を阻害する言動を取るべきではない。戦略も持たずに感情だけでむやみに日韓対立を煽ることは中国の覇権拡大に加勢するに等しいのだ。
 この世のものごとは全て何かに連鎖していく。それ単独で存在するものはない。必ずそれを原因として派生する「次」の現象を導くのである。物理学でいう因果律だ。国際政治学の観点において、反韓および在日韓国人差別の運動がどのような「次」の現象につながっていくのかはすでに述べた。もし「韓国と在日を叩いて憂さ晴らしできれば日本の未来などどうなってもいい。中国の利益になる利敵行為になってもいい」と思うのなら自由にすればいい。しかし「日本のために」と思ってやっているのであれば、過ちては改むるに憚ることなかれだ。
 - そこに真実があれば孤立を恐れるなかれ -
 イラク戦争の頃、左翼は言うまでもなく保守陣営においても西部邁氏や小林よしのり氏を筆頭に反米的言論が盛んに唱えられていた。なにしろ少しでもアメリカを擁護しようものなら「親米ポチ」と罵られたものだ。現在韓国を少しでも擁護すれば「在日」と決め付けられるのとよく似た状況であった。
 その中であえて私はブッシュ政権を全面的に支持した。拙著に「保守陣営の反米主義者に問う」という章を設け、米国を一括りに見る反米主義を批判し、共和党政権下における反米は日本の国益に反することを主張した。ブッシュ共和党政権は日本の再生を後押ししてくれる存在であることを訴えたのだ。「戦後体制」打破の必要性も訴え、媚中派を徹底的に断罪した。
 その当時は反米論の本がよく売れていた。私の「二つのアメリカの世界戦略」の最初の原稿は1500ページを超えており、上・下巻に分けないと無理に製本すると本が割けるといわれた。出版社も「あまり売れないであろう本を2冊に分けるとさらに売れないだろう」と考え、500ページ以上の原稿を削除し、さらに文中の小見出しも全てはずし、文字フォントも小さくして1ページの行数も増やし、1000ページ分ぐらいの原稿をむりやり600ページにして1冊に詰め込んで発行することになった。読者にとってはさぞや目の疲れる読みにくい体裁であったろうと思う。
 物書き専業で飯を食うとなると、本の売れ行きを気にして筆を抑えねばならないこともある。だから印税など一切アテにせず誰に遠慮することもなく歯に衣を着せぬ指摘を書けるように、会社を経営して生活費を得つつ、日本の国益のために、そして中国との冷戦に打ち勝つために、自分が正しいと信じる国家戦略論を執筆したつもりだ。出版直後はむしろ批判や反論のほうが多かった。新左翼のイデオローグであった太田竜は自身のブログで拙著をとりあげて「白痴のたわごと」と罵倒した。反米ブームのような様相にあった保守派の中でも「イラク侵略したブッシュを褒めるなどとんでもない」という声が多かったのも事実だ。挙句には拙著で猛批判した親中派の某大物元代議士の怒りをかい、その元代議士の意を受けた某公的機関から刑事・民事の両方で名誉毀損で訴えられもした。(幸いにして情報提供者である公安関係者の証言のおかげで記述が真実であると証明されて刑事は不起訴となった。)
 反米ブームの中で孤立覚悟で書いた拙著であったが、ありがたいことに、勝岡寛次先生がSAPIOに、入江隆則先生が産経新聞に書評を書いてくださったおかげで、拙著は私や出版社の予想をはるかに上回るヒットになった。次第に私の見解を支持してくださる読者が増えていき、多くの読者カードやFAXが届くようになった。その読者カードは私の宝物である。さらに拙著を読んでいただいた方々がネットなどで紹介してくださったおかげで、共和党と民主党の対日スタンスの相違も少しは日本国内において認識が広まったようだ。そしてその後に登場した第一次安倍政権によって戦後初めて高らかに「戦後レジームからの脱却」が唱えられるに至った。実は安倍氏も小泉政権当時に拙著をお読みいただいていたらしく、拙著を参考にされたなどと不遜な思い上がりをのたまう気は毛頭ないが、拙著で提言したことの多くが第一次・第二次安倍政権の手で現実の政策として進められていることに感慨は尽きない。そこに真実があれば、必ずや心ある人に通じるものと私は信じている。
 イラク戦争当時は反米ブームの様相であったが、現在は反韓ブームのようである。しかしたとえ保守派の中に反韓派が多かろうとも、私は迎合して筆を曲げることはしない。拙著をお読みいただいた読者ならご存知だろうが、私は韓国の捏造史観を誰よりも厳しく批判してきた。何があっても歴史観だけは譲ってはならないという持論は変わらない。日本の戦後体制とは中国や韓国の主張する反日史観(日本人からすれば自虐史観)の上に成り立っているからだ。これを譲ってしまえば日本は立ち直れない。しかし韓国に腹が立つからといって感情的になって「真の敵」を見誤ることも許されないのである。戦うべき「敵」を間違っていては勝てるはずがないではないか。私の唯一の判断基準はそれが国益に適うかどうかだけである。日本に生まれ、日本で生き、日本で死んでいく者にとって、かけがえのない祖国日本の国益より大事なものなど有ろう筈がない。私はそう思うのだ。
 ネットなどで保守言論活動をしている方々に申し上げたい。自分の真意を曲げて多数派に迎合してはいけない。たとえ少数派であっても孤立しても、真実は必ずいつか世に理解されるときがくる。反韓ブームだからといって多数派に迎合して韓国や在日韓国人の悪口を書いて「愛国者」気分に浸っても、所詮は無意味な自己満足にすぎない。自分が多数派の一員であることに安心してしまうのは愚民のすることだ。往々にして真実の多くはむしろ少数派意見の中にこそあるものだ。
 ネットだけではなく多くの本を読んでみてほしい。著者が本名で書いている本では安易にデタラメは書けないものだ。どこの誰が書いたかも定かではない匿名のネット情報を鵜呑みにしてはいけない。確かにネットの中にも真実はあるだろう。しかしデタラメの虚偽情報も多いのだ。ネットではよく「在日特権」などという言葉が流布されているが、朝鮮総連の圧力による朝鮮商工会の脱税が容認されなくなった現在、とりたてて問題視するほどの在日特権などどこにも存在していない。マスコミも在日韓国・朝鮮人に支配されているわけではない。近年マスコミ関係者の多くは中国に招待されて歓待され買収や便宜供与を受けている。左派マスコミと手を組んでいるのは在日韓国人ではなく中国の工作機関なのだ。外国人に参政権や生活保護を与えるべきではないというのは当然の「区別」だ。だが「ゴキブリ在日朝鮮人を叩きだせ」というのは「差別」である。かつては左翼が「区別」を「差別」にすり替えてきた。私はそれを拙著や講演で厳しく批判してきた。しかし今は保守派の一部が「差別」を「区別」だと強弁している。そこに真実はない。
 日本のために役立ちたいという思いが本物なら、まず多くの本を読んで知識を身につけ、その上で自分が責任を持てる真実のみを発信してもらいたい。せっかくの愛国心が間違った方向に向いては意味がない。ましてや中国の対日工作に踊らされることなど絶対有ってはならない。日本のためにこそ惜しむのである。
 - 日本人よ、真の敵は中国である -
 日本は今、国家の盛衰を分けるターニングポイントにある。日本人は本当の敵を見誤ってはならない。敵は韓国ではない。いわんやロシアでもない。北朝鮮は安全保障的には敵であるが国際戦略上の敵と呼ぶには小さすぎる。日本の敵は中国である。中国だけが日本を滅ぼす意思と国力を持っている唯一の国である。
 上述のように最早アメリカに多くを当てにはできない。4月13日、北京を訪れたケリー国務長官は「(米中という)世界最強の2ヵ国、世界最強の2大経済国、2大エネルギー消費国、国連安保理の2大国が、国際社会の隅々まで目配りすることで相乗作用が生じる」と述べた。まるで米中2ヵ国が世界覇権を分け合おうと言わんばかりの発言である。ケリーの視界にはもはや日本など入っていないのだ。伝統的親中反日の米民主党要人の本領発揮である。小泉総理がプレスリーの物真似をしてブッシュを笑わせていた頃の緊密な日米関係はもう昔話になった。ケリーあたりが主導して日本の頭越しに米中がG2を唱えて手を結ぶことすら十分有り得る。民主党政権下の米国を信用してはならない。
 この冷戦は日本自らが中国と対決しなければならない冷戦である。それは地政学上の日本の宿命だ。米国に頼っても米国は代わりに戦ってはくれない。対中包囲網にせよ、中国を抑えこむに足る均衡軍事力にせよ、対中経済戦争にせよ、国際プロパガンダ戦にせよ、全て日本自身が先頭に立って推進するしか途はないのである。米国への甘えを捨てて日本が自らの足で立ち、国家として自立して熾烈な時代を乗り越えていかねばならない。
 幸いにして安倍政権は正確な対中認識と正しい方向性の国家戦略観を有している。安倍総理は「あと2年で日中の軍事バランスが崩れる」と述べられた。軍事バランスが崩れ中国が優位に立ったとき、間違いなく中国による対日攻撃の戦端は近づいてくる。もうあまり時間はないのだ。日本国民は一丸となって、全ての国力を中国との対決に一極集中しなければならない。中国もその態勢で日本に挑んでいるからだ。日本はあらゆる戦略戦術を駆使して中国と対決しなければならないが、そのためには迅速なる「戦後体制」からの脱却が不可欠である。国内のメディアや政治家による媚中の動きも看過してはならない。国に害を為す者を国賊というならば、中国に媚びた言説を為す者は国賊であり、中国以外の国(韓国)に矛先を逸らそうと画策する者も国賊であり、中国と対峙する安倍政権の足を引っ張ろうとする勢力も国賊である。
 私たちのかけがえのない祖国がこれからも大国として繁栄を続けられるのか、中国の事実上の属国にされ沖縄まで奪われて亡国へと追い詰められていくのか、その全ては日中冷戦の勝敗如何、中国の封じ込め如何にかかっている。ターニングポイントとなるこの重要な時期に安倍政権が再び登場したことは、まさしく天佑というより他はない。
 元寇弘安の役で軍船4千隻14万人の軍勢で博多湾を埋め尽くした蒙古軍は、神風によって一夜にして壊滅し、海軍力の3分の2以上を失った元はその敗北をきっかけに内乱が相次いでやがて滅亡に至った。日本が危機に見舞われたとき、必ずや救国の神風が吹く。安倍政権こそが平成の世の神風になると私は信じている。
 同胞よ、後世の日本人に恥じることのなきよう、真の敵をその目に見据え、ひるむことなく果敢に戦おう。大和民族の気概を世界に示そうではないか。敵は中国である。
 (平成25年5月5日記)
 『反中的な有力者が失踪(おそらく拉致され殺されている可能性が高い)したという話も近年たびたび耳にしているので』… これってちょっと前の「留学先の米国から韓国に入国していた内閣府の男性職員(30)が1月、北九州市沖でゴムボートとともに遺体で見つかった」この事件もでしょうか? ありえます。
 『米国の情報機関が私に接触してきたのは拙著「二つのアメリカの世界戦略」がヒットした直後だった。』次著が待ち遠しいです。
 『私の唯一の判断基準はそれが国益に適うかどうかだけである。日本に生まれ、日本で生き、日本で死んでいく者にとって、かけがえのない祖国日本の国益より大事なものなど有ろう筈がない。私はそう思うのだ。』この部分は、「日本に生まれた者。日本で生きた者。日本で死んでいく者にとって、かけがえのない国となった日本の国益」と、区切るべきではないでしょうか? 日本で日本に生まれ海外で生活したり、海外で生まれ日本で生活したり、海外で生まれ日本で終わりを迎えたりする者の中にも、日本を大切にする人物はいると思うので。如何でしょう。
 嫌韓について、『ネットではよく「在日特権」などという言葉が流布されているが、朝鮮総連の圧力による朝鮮商工会の脱税が容認されなくなった現在、とりたてて問題視するほどの在日特権などどこにも存在していない。マスコミも在日韓国・朝鮮人に支配されているわけではない。近年マスコミ関係者の多くは中国に招待されて歓待され買収や便宜供与を受けている。左派マスコミと手を組んでいるのは在日韓国人ではなく中国の工作機関なのだ。』終了した「いいとも」で、好きな鍋一位が全ての年代でキムチ鍋と、露骨な結果が出たのも中共の仕業だったのかも知れませんね。ワザとらしいですし。通名についても、本名を見て朝鮮人か支那人かなんて、ハッキリ言ってわからないです。
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