2023年11月24日、外国人技能実習制度の見直しを議論してきた政府の有識者会議が最終報告書をまとめた。
 現制度通りなのは、
①実習生が「送出機関」と呼ばれる母国の人材派遣業者を介して来日し、日本側の 監理団体 かんりだんたい が就労先へと 斡旋 あっせん
②3年間働けば在留資格を「特定技能」に移行でき、日本で長期にわたって働ける。
  違う点は、就労開始から1年以上経ち、初歩的な日本語能力があれば、同じ仕事で職場を移動できる「転籍」が、認められるようになること。
  実習生は6月末時点で36万人(前年の失踪者は1万人)。転籍緩和は、失踪対策と見られている。
 実習生の過半数(失踪者の7割弱)がベトナム人。10月末、ベトナムの送出業者(A社)から関西の監理団体宛に一通のメールが届いた。書かれていたのは、
 技人国の場合、日本語能力試験で上から3番目の[N3レベルは10万円]、1つ上の[N2レベルは15万円]。特定技能外国人は10万円。
(㊟メール中の「技人国」とは、ホワイトカラー専門職向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」の略称)

 実習生は「受入企業を紹介してもらう場合、紹介者に20万円/名を支払います」
〔実習生以外の斡旋ではA社への紹介料が発生するが、実習生に限っては逆にA社から監理団体に紹介料が支払われる旨〕
 同団体の関係者は、「高度人材などのことも書かれていますが、A社の主なビジネスは実習生の送出。1人につき20万円のキックバックを我々に払っても、多くの実習生を日本へ送りたいんです…キックバックや接待はベトナム業者の多くがやっていて、業界関係者なら誰でも知っている。キックバックは帳簿には載らない 賄賂 わいろ です。金額は口頭でやりとりするもので、堂々とメールに書いてあるのは珍しい」と、教えてくれた。
  キックバックの元は実習生から徴収した手数料。出入国在留管理庁が昨年7月に公表した調査によれば、実習生が来日前に母国の送出業者や仲介者に支払った費用は、ベトナム人が平均70万円、中国人が60万円、フィリピン人が10万円。業者の差も大きく、情報の少ない実習生は、ぼったくられる。受給関係で就労業種による手数料の差も大きく、建設業は安く製造業は高くなっている。実習生は母国でも貧しい層の若者たちなので、手数料は借金して支払う。借金返済の為に不法就労したいと思うのは自然の流れ。
 台湾では、外国人労働者75万人中4万人以上(殆どベトナム人)が失踪。手数料と借金の問題がある限り失踪は減らない。
 日本側から善処を求められたベトナム政府は、送出業者が徴収できる手数料の合理的な上限を法定したが、業者の法令遵守にも、ベトナム政府の本気度にも、期待できる状況ではない。ベトナムでは、日本への実習生送出が特権階級の利権となっていることは、会議に集められるほどの有識者であれば十分理解している筈だが、罪を悪質な送出機関に総て被せて事を済ませようとしているように見える。
  最終報告の提言に「手数料等を受入れ機関と外国人が適切に分担するための仕組みを導入し、外国人の負担の軽減を図る」という一文がある。これはベトナムの現状にお墨付きを与えるに等しい。20万人のベトナム人実習生が各百万円の手数料を支払えば、総額2千億円になる。 莫大 ばくだい な金を送出業者が集め、そこに日本の監理団体やベトナム政府の関係者が群がる。ベトナム人実習生の失踪は、不法就労のみならず凶悪犯罪を誘発しかねず、日本社会にとっても好ましくない。
 韓国ではベトナム北中部4省からの人材の受け入れを一時停止しているが、日本の最終報告では、受入一時停止に関する記述は無い。超党派「日本ベトナム友好議員連盟」会長の二階俊博氏や同連盟幹事長を勤めた岸田文雄氏らへの 忖度 そんたく は、隠しようもない。
 他国の賃金が上昇して日本への出稼ぎ希望者が減っていく傾向を踏まえ、日本政府は、実習制度の看板をかけ替え転籍制限を緩和して出稼ぎ希望者の減少に対処するとともに、国内外からの批判に応えるポーズをとろうとしている。けれども、現制度最大の闇である「ベトナム問題」の解消に取り組む意思は全く窺えない。
問題解決の最大の障壁は、総てを承知しながら事実でなく嘘を流す在⦿マスコミの報道姿勢
inserted by FC2 system