この記事 を書いた人    松田 隆 @東京 Tokyo
青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。
退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
 総務省の文書をめぐり高市早苗氏を追及する小西洋之参院議員(立憲民主党)は今や時の人であるが、一方で、自身に謎の政治資金が存在する。文具の売買の形をとった資金の流れから、敵対する政党の政治家との接点が浮かび上がる。小西氏の政治資金の謎を追う連載の第1回は、事案の概略と、河野太郎内閣府特命担当大臣との繋がりに関してお伝えする。
■3年間で69万円余の流れ
  小西ひろゆき後援会のアスクル文具代金
  小西氏に関する政治団体は2つあり、1つは小西ひろゆき後援会、もう1つは立憲民主党千葉県参議院選挙区第2総支部で、前者が同氏の政治資金管理団体として指定されている。前者の政治資金収支報告書は総務省に提出されており、過去3年分を見ることができる。
 注目していただきたい支出項目は、例えば2021年(令和3)12月27日、備品・消耗品費での記載である。一例を挙げる。
 「アスクル文具 43,426 R3/12/27 麻布食品(株) 東京都港区麻布台●ー●ー●(以下略)」
 2021年の政治資金収支報告書には麻布食品(株)に対する支出が10項目あり、合計で32万1722円となっている。同様に見ていくと、2020年(令和2)は20万1335円、2019年(令和元)16万7896円で、遡れる3年間で小西ひろゆき後援会から合計69万953円が麻布食品に支払われている。一覧表にしたのでご覧になっていただきたいが、1か月の支出は最大でも4万3000円余で、5万円を超えていない。この事実は後々、意味を持ってくるので頭の片隅に留めておいていただきたい。
 「アスクル文具」という表記は報告書の年によって微妙に異なるが、ほぼ同一である。文具に3年で70万円支出するのは一般人には理解し難い部分はある。コピー使用料、コピーリース料は別途支出、また、消耗品費、備品消耗品費という名目でビッグカメラ、イオンマーケット、ヨドバシカメラなども支出を受けており、麻布食品への支出はそれ以外の備品・消耗品のためと思われる。
■アスクル文具とは何か
  アスクルをめぐる資金の流れは?
 一体、このアスクル文具とは何か。その点を説明しよう。アスクル文具とは、アスクル㈱(本社・東京都江東区豊洲)が提供する商品。同社のホームページによると、1963年にプラス㈱のステープル製造子会社として設立されたプラス工業㈱を源流としており、1993年にプラス㈱アスクル事業部として事業開始、2000年にJASDAQ市場に上場されている。
 主な事業は、顧客からファックスやインターネットで注文を受けて文具などの商品を配送する、要はオフィス用品等の通販サービスである。ただし、ここで代理店(アスクルエージェント)が絡んでくる。膨大な数の商品代金の請求、代金回収を自前でやるのは限界があるのか、代理店を使うシステムができている。麻布食品はそのアスクルの代理店の1つという位置付けである。その仕組みを、アスクル統合報告書2022の図をもとに示すと、写真のようになる。
 このようなシステムをアスクル(株)では「全国に営業所を配置する代わりに、全国の文具店などの販売店が『アスクルエージェント』として参加し、お客様の開拓や、与信・債権管理、お客様サポート業務を担い、アスクルと一体となってサービスを提供しています。」と説明する(アスクル統合報告書2022、P10)。
 政治資金収支報告書が示しているのは、麻布食品が小西ひろゆき後援会に商品代金を請求し、その支払いを受けたという事実。そして、麻布食品はアスクルエージェントであるのが事実なら、時期は分からないがマージンを抜いて、アスクルに受け取った代金の支払いをすることになる。
 麻布食品という法人名から文具を扱うことには違和感はあるが、同社の登記を見ると法人の目的に「文房具、事務用機器、家具、日用雑貨品、食料品等の販売」「前各号に附帯する一切の業務」とあり、文房具の販売に伴う代金の請求と料金の回収を行うことは業務の一環と言い得る。この部分の登記は2009年(平成17)に変更(追加)されており、その頃からアスクルに関する業務と同様の業務を行っていたのかもしれない。
■HPなし役員構成も不明
 この麻布食品はホームページもなく、本社はどこか、どのような業務をしているのか、どの程度の売り上げがあるのか全く分からず、役員の構成すらも分からない。幸いにも小西ひろゆき後援会の政治資金収支報告書に本社の住所が記載されているため、法人登記は簡単に取れる。
 法務局で法人登記を取り、その役員構成を見ると意外な名前が出てきた。代表取締役として登記されている名前は以下である。
 「 河野二郎
 河野太郎内閣府特命担当大臣の実弟で、コネクタなどを主力製品とする日本端子㈱の代表取締役として知られている人物である。麻布食品の取締役は河野二郎氏を含め3人。そのうち1人は河野典子氏で、河野二郎氏夫人と思われる(同姓同名)。要は河野一族のファミリー企業である。
 顧客から代金を受け取るアスクルエージェントは、基本的にはアスクルが指定する。同社に問い合わせると「アスクルのWEBサイトからの新規登録の場合は、所定のルールに基づき、エージェントが決定されます。(1件ごとに人が内容を見て判断するということではなく事前に設定されたルールに基づいてシステム上自動処理されるようなイメージ)。また、アスクルエージェントの営業活動によって新規のお客様にご登録いただくに至った場合など、担当販売店、またはお客様からのご指定で特定のエージェントに紐づくケースももちろんございます。」(同社コーポレート本部コーポレートコミュニケーション)とのことであった。
 そうなると、小西ひろゆき後援会が麻布食品をアスクルエージェントとしたパターンは3通り考えられる。
 ①小西ひろゆき後援会がアスクルに登録し、所定のルールで自動処理されたエージェントが麻布食品であった。
 ②アスクルエージェントの麻布食品が小西ひろゆき後援会に営業活動をかけて、アスクルに登録させた。
 ③小西ひろゆき後援会がアスクルに登録し、麻布食品をエージェントに指定した。
 ①のようなことは起こり得ないとは言わないが、偶然というより奇跡的な邂逅。また、そういう事情が分かれば「エージェントを代えてくれ」と申し出るのが普通であろう。②、③は政治的な背景を考えれば、ほとんど考えられない。
 小西ひろゆき後援会と麻布食品の組み合わせは不可解と言う以外にない。
■小西ひろゆき後援会は本当に購買したのか
 本当に小西ひろゆき後援会はアスクルから文具を購入したのか。何を買ったか分かれば、例えば、ボールペンを100本、替え芯を200本のように明細が分かれば、実際に購入したのであろうと推認できるかもしれない。
 資金管理団体の場合、備品・消耗品費は1件5万円以上のものについては、当該支出の目的を政治資金収支報告書に記載しなければならない(政治資金規正法12条2項、19条の5の2)。
 ここで思い出していただきたいのは、小西ひろゆき後援会による麻布食品への支出は1件につき最高で4万3000円余で、5万円を上回ったことは1度もないという事実。そのため、当該支出の目的、購入した商品の明細は提出されておらず、我々は小西ひろゆき後援会が、アスクルから何を買ったのか知ることはできない。
■麻布食品の取締役の寄付金60万円
 小西ひろゆき後援会が買ってもいない文具の相当額を麻布食品へ、3年間で69万円余交付するなど、通常ではあり得ない。もし、そのようなあり得ないことがあるとすれば、69万円余はアスクルに行く以外、どこに行くというのか。
 実はここで、おかしな金の動きを観察することができる。麻布食品の取締役は3人で、河野二郎氏、河野典子氏以外にもう1人いることは前述の通り。それは「武川清志」という名で、2011年(平成23)に取締役に就任し、以後、重任を続け、2021年(令和3)5月に重任され、同年6月に登記されているため、現在も取締役とみられる。
 この武川清志氏と同姓同名の人物が、2019年から2021年にかけて、毎年20万円を河野太郎氏の資金管理団体「河野太郎事務所」に寄付している。河野氏の政治資金収支報告書に記載されているもので、3年とも10月末に寄付され、3年間で合計60万円。ちなみに肩書は取締役であれば「会社役員」とするところであるが、「会社員」となっている。武川氏が同一人物であるとすれば、政治資金収支報告書を見た者には、同氏が会社の取締役であるということは分からない仕組みになっている。
■偶然の連続は奇跡的な出来事なのか
  小西ひろゆき後援会の政治資金収支報告書には麻布食品の名前が並ぶ
 3年間で69万円余のアスクル文具代金は、政治資金収支報告書の通りに流れたとすると、以下のようになる。
小西ひろゆき後援会→(69万円余)→麻布食品(株)→アスクル(株)
 しかし、上述の事実を考えると、あくまでも可能性の話に過ぎないが、以下のような資金の流れを考えることができる。あくまでも考え得るということであるので、ご注意いただきたい。
小西ひろゆき後援会→(69万円余)→麻布食品(株)→武川清志取締役→(60万円)→河野太郎事務所
 もし、このような資金の流れがあるとすれば、政治資金収支報告書の虚偽記載で、政治資金規正法24条1号に抵触し、3年以下の禁錮または50万円以下の罰金が科されるのではないか。小西ひろゆき後援会が3年間で69万円余の金員を麻布食品に交付し、そのうち60万円を同社取締役が、河野太郎事務所に寄付ーー。この荒唐無稽とも思える資金の流れを推認させる材料はある。その1つは河野太郎事務所もアスクル文具を大量に購入しているという事実である。
 もし、麻布食品がアスクルエージェントとして機能しているなら、河野太郎事務所は実弟が代表取締役の会社を代理店として指名するはず。「お客様からのご指定で特定のエージェントに紐づくケースももちろんございます。」というアスクルの説明からも当然の選択であろう。
 それがなぜ、麻布食品は河野太郎事務所の代理店にならず、よりによって対立する政党の代議士の後援会の代理店になっているのか。
 もちろんそうしなければならない特別な事情があったのかもしれないが、普通に考えれば、麻布食品がアスクルエージェントではない、仮にアスクルエージェントになっていたとしても、事業の実態、実績がないからではないか。もしそうなら、実兄の所属政党と対立する政党の代議士(小西氏は無所属の時期あり)の資金管理団体の代理店になっているのは、アスクルエージェントとしての事業という本来の目的以外の目的があったのではと、誰しもが考えるであろう。
 そうなると、まず調べなければならないは、麻布食品はどういう会社でアスクルとの契約関係は存在するのか、という点である。 小西洋之参院議員(立憲民主党)が23日、当サイト代表(松田隆)に架電してきた。記事の削除を求める一方で、当サイトが出した質問にも答えたため、今回は予定を変更して架電の内容をお伝えする。同議員の政治資金の謎はより深まる結果となった。
■架電してきた小西氏 
 当サイトでは3月22日に小西氏に質問状を送付し、文書による回答を求めていた。設定した期限より早い3月23日午後2時30分過ぎ、秘書と思われる人物から電話があり、一言二言、言葉を交わした後、小西氏と直接話をする機会を得られた。
 まず、当サイトが小西氏に提出した質問を以下に示す。
Q01 :小西ひろゆき後援会の政治資金収支報告書(令和元年~同3年)には、麻布食品㈱よりアスクル文具を3年間で69万953円分購入したことが記載されていますが、月々の請求がある際に、購入した商品の明細は受け取っているのでしょうか
Q02 :麻布食品㈱に支払った金額、約69万円分の文具を実際に購入されたのでしょうか、また、購入されたとして、どのような商品を購入されたのでしょうか
Q03 :麻布食品㈱の代表取締役は河野二郎氏であることはご存知でしょうか
Q04 :小西様、もしくは小西ひろゆき後援会の方は、麻布食品㈱の取締役である武川清志氏とご面識がありますでしょうか
 この4つの質問に対する回答を、本人が言ったまま記することにする。
A01 :明細を受け取ってる。
A02 :購入品なんていわゆる文房具品ですよ。アスクルのカタログに載っているものを買ってるわけですよ。アスクルの代理店なんだから。
A03・A04 :河野さんなり、武川さんなりは知らない。名前も知らないし、今回のあなたの記事で初めて知りました。
 A03、A04はどうでもいい。問題はA01とA02である。その点を説明しよう。
■領収証に書かれた文言
  麻布食品発行とされる領収証
 第1回でも書いたが、資金管理団体の場合、備品・消耗品費は1件5万円以上のものについては、当該支出の目的を政治資金収支報告書に記載しなければならない(政治資金規正法12条2項、19条の5の2)が、5万円未満の場合は必要ない。小西ひろゆき後援会はすべて5万円未満なので明細を提出する必要はない。
 そうすると明細なしで麻布食品が請求をしていたとは思えず、小西氏も「請求書を受けて支払ってるんだから。そこの明細がなかったら、丼で金額だけ請求されたら、ウチも困るじゃないですか。」と話した。これは当然、予想された答えである。
 政治資金収支報告書には領収証の添付が必要で、これは行政文書開示請求をすれば見ることができる(開示決定に30日必要)。実際に取り寄せた領収証は写真に示したとおりで、赤い矢印の先に何が書かれてあるか注目していただきたい。
<商品明細は「請求書等」をご参照ください。>
 もし、小西氏がこの領収証を事前に見てQ01への回答をするとしたら、「当然、商品明細はある」と答える。それを見ずに「政治資金規正法では5万円未満は明細は必要ないから、ない」と答えたら「doubt」である。流石にそんな見え見えの陥穽にハマる小西氏ではない。
 実際に明細があるのか筆者(松田)は分からないが、いずれにせよ小西氏は領収証を見ただけで明細書があることを確信できる。そのため、 松田 「明細はあるのか」、 小西 「あるよ」、 松田 「提出されていないじゃないか」、 小西 「よく見ろ、この領収証を。『商品明細は請求書等』と書いてあるだろう。そもそも5万円未満は明細を出さなくていいのを知らないのか」と、胸を張ることを考えていたのかもしれない。
 実はQ01の狙いは、そのように言ってもらうことである。つまり、「商品明細はすべての領収証に対応して、存在する」と言わせたら、「それを見せろ」と言えるのである。
■なぜ商品明細を見せない
 小西氏は自身のツイッターで当サイトの記事を捏造などと言っているようである。実は捏造と断定することができる手段がある。それは商品明細を全て見せることである。「アスクルからこれを買ったんだ」と商品明細と、残っている実物を叩きつければ、こちらとしては、その真贋を争うぐらいしか手がない。
 商品明細の存在は決定的な証拠で、それを持っていると言ったのなら、「あなたが私の記事を捏造と言うのなら、商品明細を見せてください。それが本物なら、あなたの言うとおりかもしれません」と言うだけである。その点に関する実際のやり取りを以下に再現する。
松田 :…先生(小西氏)、もうちょっとよろしいですか? 明細っていうのは今、お手元にあるんですか?
小西 :あります。請求書を受けて支払ってるんだから。そこの明細がなかったら、丼で金額だけ請求されたら、ウチも困るじゃないですか。
松田 :たとえば、それを私のところにメールで送っていただくってことはでき・
小西 :お断りします。
松田 :あ、そうですか。
小西 :まず、あなたがやってる違法、明らかな私に対する名誉毀損だと申し上げてるんだから、そこを誠心誠意、対応することが先だと、あの悪いけど、民事だけじゃないですからね。
 小西氏は一発で勝てる究極の兵器を持っていると言っているのであるから、それを使えばいいだけの話である。 「法的措置」「 優秀な顧問弁護士 」「結婚されてますか? ご家族いますか?」 など、誤解を招くようなことをあれこれ言うよりも商品明細を見せれば終わる話。
 こちらとしては、商品明細の提出があるまで、こう言い続けるだけである。
 「小西先生、なぜ、商品明細が出せないのですか? 出せばこのクソ生意気な記者に『参りました』と言わせることができるのに、ツイッター上の人々も黙らせることができるのに、なぜですか? 本当は持っていないのではないですか?」
 領収証に関してはもう1つ触れておこう。矢印の部分を再度、見ていただきたい。
<商品明細は「請求書等」をご参照ください。>
 これが印字されているのがポイント。つまり、この領収証は5万円未満であることを前提にしているのである。もしかすると、5万円以上の領収証はあるのかもしれないが、それは総務省に提出されていない。そうすると、最初から麻布食品は交付する領収証は5万円未満と知っていたのではないかという推測も成り立つ。
 これも簡単な話で、小西氏が麻布食品に行って「5万円以上の時の領収証をください」と言ってもらってくればいい。事業を終えたどうこうの部分は、次回に触れるとして、そうすれば、とりあえず5万円以上の場合も想定されていたという証拠にはなるであろう。
■「アスクルと直接」の意味
  アスクルをめぐる資金はどう流れた?
 続いてA02を見てみよう。
 A02 :購入品なんていわゆる文房具品ですよ。アスクルのカタログに載っているものを買ってるわけですよ。アスクルの代理店なんだから。
 これを見て、何かおかしいと感じるのではないか。小西氏はアスクルの代理店、すなわち麻布食品から商品が届けられると思っているのではないか。第1回でアスクルのシステムを説明したので、もう1度、その図を使用して説明しよう。
 これを見れば一目瞭然、顧客はアスクルに直接商品を申し込み、アスクルから商品が配送されるシステムである。「アスクルの代理店なんだから」ということは、小西氏は麻布食品から商品を買うと勘違いをしていると思われる。
 実はもう1つ、このようなやり取りがあった。
小西 :…ご存知なんだと思いますけど、麻布食品、昨年(2022年)の8月に事業を終えて、直接、うち、アスクルとやってるので。
松田 :直接ですか?
小西 :ああ。
松田 :代理店通さないとできないでしょ、あそこ。
小西 :いや、今アスクル直接やってるって秘書からも報告受けてますから。
松田 :いや、それは多分、先生、違うと思います。
小西 :いや、ただ、いいけど…
 つまり、このやり取りも加えて聞くと、麻布食品が事業を終えたので、今はアスクルと直接やっていると考えていることが分かる。それはすなわち、麻布食品が事業を終えたので、これまで麻布食品から買っていたものが、アスクルから直接買うことになったと言っているのである。
 これは前述したように事実と異なる。アスクルは直接、顧客から注文を受け、商品を届けるシステムで、代理店は債権回収などを行う。つまり、小西ひろゆき後援会は麻布食品がアスクルエージェントであった時期もアスクルに商品を注文し、アスクルから商品が届いていたはずである…実際に利用していたら。それを麻布食品の事業が終了云々で直接やりとりと言い出したということは、実は麻布食品の時代にアスクルから買ったことがなかったのではという推認が働く。
 いいですか? 小西先生、 麻布食品から商品は買えません。商品は常にアスクルから届きます。
■小西先生答えを聞いていませんでしたか?
 小西氏の反論には実はこれ以外も再反論したい部分があり、当連載の信憑性にも関わるため、申し訳ないが次回第3回もそれを続けようと思う。
 読者サービスではないが、昨今、何かと話題になっている高市早苗氏に関して小西氏が言及した部分があったので、その点を示す。それによって会話(取材)の雰囲気を感じていただければと思う。
小西 :でしょ? だから、もう、削除をしなさい。することを求めます。
松田 :しなさい、ですか?
小西 :ああ、しなさい、名誉毀損ですから、削除することを求めます。
松田 :「しなさい」って言いましたよね、今ね。
小西 :削除をしてください、ですよ。
松田 :ああ、そうですか。
小西 :削除しなさいとは言ってませんから。言ったと聞こえたなら撤回します。高市と違って私は撤回しますから、高市大臣と違って。
 最後に、小西氏の ツイッターでの警告 に答えておこう。「記者に誠意ある対応がなければ法的措置を取ると警告しました。」と書いてあったが、これは会話の中ではっきりと回答を伝えたが、伝わらなかったのであれば残念である。
 正直なところ、わざわざ本人が架電し、当サイトの質問に答えてくれた小西氏のご厚情には筆者なりに感謝している。そこで筆者からのお返しとして、答えた部分を、もう一度、示そうではないか。三度目はないので、よくご覧になっていただきたい。
小西 :厳しい法的措置をとりますから。
松田 :ああ、そうですか。
小西 :きちんと対応してください。誠心誠意の対応があるんであれば、それはしませんから。
松田 :誠心誠意? 正義に則って行動します。
 参議院議員の小西洋之氏の政治資金の謎は、引き続き同議員への反論に対する再反論を行う。今回は麻布食品の廃業にまつわる部分を中心にお伝えする。
■麻布食品は「廃業」
 小西氏は当サイトが連載(1)を公開した当日夜、以下のようなツイートをした。 
  アスクルから選択の余地なく私の政治団体が代理店指名を受けた麻布食品(昨年廃業)は他の多くの政治家の代理店でもありました。
 さらに、筆者(松田)に対する電話で以下のように述べた。
  なおですね、ご存知なんだと思いますけど、麻布食品、昨年の8月に事業を終えて、直接、うち、アスクルとやってるので。
  麻布食品は、他の国会議員、他の政治家、代理店でみんな使ってるんですよ。だから、何で私の方だけ、こんなこと書く、何で60万円、私だけに結びつけるんだっていうことを、訴えで出されたら、あなたもたないですよ。
 ここで当サイトが政治資金の謎としているのは、以下の点である。
 ①小西ひろゆき後援会から2019年から2021年にかけて3年間で69万円余が麻布食品に支払われており、それが本当にアスクルに所定の金額が入金されたのか。
 これに尽きる。麻布食品の武川清志取締役と同姓同名の人物が3年間で60万円、河野太郎事務所に寄付をしていることとの関わりについては「荒唐無稽」とし、さらに「あくまでも可能性の話に過ぎないが、以下のような資金の流れを考えることができる。あくまでも考え得るということであるので、ご注意いただきたい。」と書いているのであるから、そういう考え方をすることもできるだけであって、そうだと決めつけているわけではない。
 それはともかく、一方の小西氏の主張を要約すると以下の4点になる。
 (1)麻布食品がアスクルエージェントになったのは、アスクルによる割り当てである。
 (2)麻布食品は昨年8月に廃業している。
 (3)現在は、直接アスクルとやっている。
 (4)他の人も麻布食品をアスクルエージェントにしているのに、なぜ、河野太郎事務所に寄付された60万円を自分だけに結びつけるのか。
■確かに存在した麻布食品
  ビルには麻布食品の文字が…
 ここで問題にしたいのは(2)である。
 (2)麻布食品は昨年8月に廃業している。
 →当サイトが問題としているのは2019年~2021年のアスクル文具にかかる資金の流れであり、2022年にアスクルエージェントの麻布食品が廃業したことは関係がない。
 このように2022年の廃業はこちらの主張とは全く関係のない事実であり、反論になっていないのはお分かりいただけるであろう。
 ただし、小西氏が「廃業」と言っている事実は非常に興味深い。なぜなら、この点は筆者も全く知らなかったし、予想もしていなかったからである。なぜ、知らず・予想もできなかったか。それは筆者は今回の 連載(1) が公開された当日3月23日、麻布食品に直接取材を試みているからである。
  順を追って話そう。この問題の取材を始めた当初、麻布食品の連絡先は不明であった。HPはなく、分かっているのは登記上の本社のみ。2月のある日、(どうせ幽霊会社、事務所などあるはずない)と思って訪れると、ビルの入口の入居会社一覧にはしっかりと「麻布食品㈱」の文字が入っている。
 (それなら直接、取材しよう)と思い、受付に座る初老の男性に聞いた。
松田 :麻布食品に行きたいのですが。
男性 :ああ、ここの裏に回って入ってくれる?
松田 :裏手ですか?
男性 :そう、ぐるっと回ったらドアが開いているから。恵比寿興業の中にあるよ。
 受付の裏に回ると確かに扉が開いており、壁には小さく「恵比寿興業」の表札がかかっているが、麻布食品はない。下手に入って「取材させてください」と言えば、アポイントメントもないだけに後々建造物侵入罪などと言われたら面倒と思って、その日は引き上げた。
 麻布食品の入っているビルには日本端子㈱(代表取締役・河野二郎)、恵比寿興業㈱(代表取締役・河野洋平、同・河野二郎)が入居している。恵比寿興業は那須野牧場を経営する競走馬関連の会社で、河野太郎事務所に3年間で60万円を寄付した人物と同名の武川清志氏も取締役に名を連ねている。そして地方競馬のジョッキークラブとも呼ぶべき地方競馬全国協会、あるいはラジオ日本など、河野太郎・二郎両氏の祖父の河野一郎氏が創設に尽力した企業や団体も入居。いわば「河野城」とも言うべき存在のビルである。
■麻布食品に電話
 幽霊会社と思っていただけに、実際に麻布食品が存在していることは衝撃であった。そして3月初旬から中旬にかけて、行政文書開示請求が認められ、麻布食品が発行したと思われる領収証が手に入ると、初めて同社の電話番号とファックス番号を知ることができた。
 そこで試しにファックス番号にかけてみるとファックスの反応音が響いた。さらに電話をかけると「はい、麻布食品でございます」と女性の声。すぐに「間違えました、失礼しました」と言って切ったが、その時点で麻布食品の存在は確認できた。
 半信半疑のまま取材を進め、その中で「やっぱり政治資金に謎がある」という確信めいたものを掴めたため、記事を出す1日前の3月22日、小西ひろゆき後援会と麻布食品に取材をした。なぜ、そんなに遅い時期なのかと思う人がいるかもしれないが、こうした問題の時は、核心の人物・団体に取材をするのは最後の最後である。周辺取材を重ね、ある程度の証拠を掴んでから疑問をぶつけないと、途中で取材をしていることを悟られ、証拠を蔵匿するなどの動きをされる可能性を考えるためである。
  連載(2) で示したように、小西ひろゆき後援会には電話をして質問事項を受け取っていただき、回答期限を3月24日に設定。そして、問題の麻布食品に電話をかけると若い女性が電話に出た。以下、やりとりを抜粋する。
女性 :はい、麻布食品でございます。
松田 :お忙しいところ、恐れ入ります。実は御社に取材と申しますか、いくつか質問したいことがございまして、それでお電話させていただいたんですよ。
女性 :どのような経緯で?
松田 :経緯? 経緯はですね、小西洋之さんという方ご存知ないですかね。立憲民主党の小西洋之さんですね。小西さんの政治資金収支報告書を調べていましたら、御社のお名前が出てきたんですね。その件についておうかがいしたいと思ったということでございます。
女性 :すみません、私、受付のもので本日、皆不在にしておりまして、改めてご連絡するように申し伝えるようにします。
松田 :武川取締役はいらっしゃいませんか。
女性 :すいません、私の方、分かりませんが、すみません。
松田 :それでは午後にもまた電話させていただきます。すみませんが、お名前を頂戴できませんか?
女性 :私、○▲■△と申します。
 質問事項だけでも送付しようとしたが、相手が頑なに拒否するため、こちらの電話番号を伝えて後ほど電話をもらうことになった。念の為、同日午後5時前に電話したが誰も出なかった。記事を公開する直前の3月23日午前9時過ぎに電話をかけた。
女性 もしもし~。
松田 :麻布食品さんでいらっしゃいますか?
女性 :あ、そうです。
松田 :昨日、お電話させていただきました松田隆と申します。実は取材の件なんですけども。
女性 :そういうのは受けておりませんので、すみません。失礼いたします。
松田 :もしもし?
女性 :はい?
松田 :○▲■△さんでいらっしゃいます?
 …電話が切れる。この23日の女性の電話対応、特に冒頭の「もしもし〜。」は示唆に富むものであるから、是非とも覚えておいてほしい。
 質問状も受け取らない、後日連絡すると言っても連絡はない、改めて取材を申し込めば電話を切られる。小西氏は、麻布食品がアスクルエージェントになったのは「アスクルによる割り当てである。」と言っているのであるから、何もコソコソする必要はない。アスクルエージェントとしての仕事をして、文具の費用の債権回収をしたと言えばいいだけの話である。それが、話の途中で電話を切るという常識からかけ離れた行為に出ており、不可解であるのは誰しもが思うところ。
 小西氏の事業が終了した、廃業などの言葉が会社法上の解散なのか破産なのか、よく分からないが、会社が存在しているのは間違いない。念の為3月24日に会社登記をとったが、抹消登記はされておらず、登記上も存続している。
■小西氏は誰から廃業を聞いたのか
 そもそも小西氏は、いつ、誰から「廃業」について聞いたのかを考えていただきたい。昨年8月の時点で小西氏サイドが「廃業します」と伝えられていたとしたら、麻布食品はその後も存続しているから、小西氏は騙されたことになる。また、今回の当サイトの報道を受け、小西氏サイドが麻布食品に架電して聞いたとしたら「ウチは去年の8月に廃業しました」と答えたことになる。死者が「私は7か月前に死にました」と言っているようなもの。このように、両者がまともな商取引をしていた場合には、どうにも説明がつかない事態となる。
 予想できる場合としては、以下がある。全くの想像であるので参考までに読んでいただきたい。3月22日に筆者が架電した際には電話口で「はい、麻布食品です」と名乗っていたものが、翌23日にはおそらく同じ女性(声は非常に似ていた)が電話口に出たのに「麻布食品です」と名乗らず、「もしもし〜。」とだけ言ったことは注目に値する。当サイトの22日の架電により、麻布食品は近々、この問題について記事にされると悟り、その存在が明らかにされることに不都合が生じると考えたのではないか。
 そして翌23日の当サイトの報道を受け、小西氏サイドが慌てて連絡をする。小西氏サイドはこちらの質問を無警戒に受け取り、質問内容も69万円で何を買ったのですか? という他愛のないものであり、おそらく本人のもとに届いていなかったのではないかと想像する。
 最後に領収証を発行したのが昨年7月か8月であることから、「8月に廃業したことにしよう」ということで意見が一致。麻布食品側は取材されることはなくなり、小西氏サイドは麻布食品が廃業した後もアスクルと取引を続ける形を装うことで、不明朗な資金の流れとは無関係であると主張できるため都合がいい。2019年から2021年までの資金の流れに疑問を呈した報道に、2022年8月に廃業した事実を指摘しても、その後に通常のアスクルとの取引があるから言われるようなおかしな資金の流れはないという説明になる。そのように考えれば、この筋の悪い反論の理由も見えてくる。
 23日午後2時30分過ぎに小西氏が当サイトに架電。後から何を言われても「アスクルとは普通の取引をしていますから」と言い訳できるのであるから、筆者の家族のことを持ち出してまで記事を削除させる。削除させれば「こちらが法的措置を持ち出したら、慌てて削除した。捏造記事であることを自ら認めたものだ」と言える。
 計算外だったのは、2月から3月にかけて当サイトが既に取材に入っており、幽霊は生きていた事実を掴んでいたことではないか。小西氏も麻布食品も、記者は本丸攻撃の前に相手の堀を埋めることを知らなかったのであろう。
 なお、日本端子㈱に対して河野二郎社長の取材を申し込み、代表取締役を務める麻布食品について聞こうとしたが「今は一切の取材を受けていない。特に他社のことであれば、我々が対応することはない」とのことであった。
■どれも有効な反論にならず
  麻布食品が入ったビル
 残りの(1)、(3)、(4)を簡単に見ていこう。
 (1)麻布食品がアスクルエージェントになったのは、アスクルによる割り当てである。
 →アスクルのアスクルエージェント決定方法の1つ。本件では本当にアスクルエージェントになったのか、なっていたとして正常な資金の流れがあったのかが問われており、それらの疑問には全く関係がない。
 (3)現在は、直接アスクルとやっている。
 →アスクルエージェントが廃業したとしても、アスクル(株)に注文し、アスクル(株)から配送される方式は変わらない。それをアスクルエージェント(麻布食品)から商品が届いていたかのように認識していたことで、本当にアスクルから文具を買っていたのか疑問視されており、その点に何も答えていない。なお、アスクル(株)によると、「アスクル㈱がお客様と直接取引をすることはございます。一定の許認可品の販売や、エージェント変更等に伴う場合などアスクル㈱がエージェントの役割を担うことがございます。」(同社コーポレート本部 コーポレートコミュニケーション)とのことであるが、①の疑問点とは何ら関係がない。
 (4)他の人も麻布食品をアスクルエージェントにしているのに、なぜ、河野太郎事務所に寄付された60万円を自分だけに結びつけるのか。
 →荒唐無稽な話であり、その可能性を論じただけであることは前述の通り。仮に他の国会議員がアスクルを利用していたとしても、それによって小西氏の潔白が証明されるわけではない。確かに立憲民主党の中にも麻布食品を利用している議員は存在するが、小西氏のように大量の注文はしていない。小西氏は全ての商品明細と残っている現物を出せば潔白を証明したと言えるかもしれないが、それがなされない以上、他者の動向は小西氏の疑問解消とは関係ない。
■なぜ抹消登記をしない
 このように小西氏の反論はおよそ反論として効力を発揮していないのはお分かりいただけると思う。
 そして、小西氏が麻布食品が廃業したと公表したことは、麻布食品との打ち合わせの中で決められたものと思われ、小西氏と麻布食品の正常な取引がなかったのではないかと推測させる要因となり得る。そのように考えれば、ここまで表に出てきた一連の動きはおおよそ説明がつく。
 あくまでも筆者の勝手な想像に過ぎないが。
 小西洋之氏の政治資金の謎について、当事者以外に真実を知るのはアスクル㈱である。アスクルが知り得る事実を明らかにすれば、この問題は一気に解決する。しかし、そこには守秘義務の壁が存在する。果たして今回の事案にアスクルはどこまで関与しているのかを考察した。
■アスクルの関与の有無
  アスクルエージェントの麻布食品に支払った金額は、最終的にはアスクルに入るシステムになっている。もし、小西氏が麻布食品に支払った69万円余が実際にアスクルに入金されていなかったら(当然、マージンは抜いたものではあると思われるが)、政治資金収支報告書の虚偽記載で、3年以下の禁錮または50万円以下の罰金が科されると思われる。
 取材を続ける中、アスクルがこの事案にどう関わっているかを知るのは困難であったが、こちらが問題とした金額が3年間で69万円程度だけに、その程度の金額でアスクルが積極的に資金を流用するスキームを作り出しているとは考えにくい。
 とはいえ、麻布食品は総理候補の河野太郎氏の実弟が代表取締役であり、また、河野太郎事務所はアスクル文具のヘビーユーザーであって2年間で184万2038円をアスクルエージェント(地元の企業)に支払っている。そうした状況から、アスクルのシステムを利用する資金の不正な流れがあったとして、それを黙認することで合意しているのではという疑いも正直、持っていた。
 取材しないことには真相に迫れない。小西氏に政治資金の謎があったとしても、アスクルが関わっている可能性は低いと見て、小西氏と麻布食品より先にアスクルを取材することとした。
■代理店に麻布食品は入っていますか?
 まず、アスクルに電話で問い合わせたが、メールの指定があったので、その後はすべてメールでのやり取りとなった。いただいた回答は記事内で公開を前提としているので、ここで示す。
⭐︎3月16日(木)松田→アスクル㈱コーポレート本部 コーポレートコミュニケーション(以下、アスクル)
【質問】御社の代理店、エージェントに「麻布食品(株)」が入っていますでしょうか。イエスかノーか、はっきりとお示しいただければと思います。(質問以上)
 アスクルエージェントは、2022年5月時点で全国で1163社(アスクルの回答から)登録されているそうで、代理店によってはHPで大きくアスクルエージェントとなっていると宣伝している企業もある。ただし、その一覧は公開されておらず、1163社全てを知ることは、アスクル社外の人間にはできない。これに対して、週明けに回答があった。
★3月20日(月)アスクル→松田
【回答】社内で検討させていただきましたが、本件に限らず個別の企業との取引有無について当社から開示することは難しく、ご回答差し上げることができません。(回答以上)
 ある程度予想はされた回答ではある。アスクルはアスクルエージェントと代理店契約を締結しているが、そうした商取引には通常、守秘義務が定められている。
 そのため、この回答から、おそらく麻布食品はアスクルエージェントなのであろうと考えられた。なぜなら、メールに添付した政治資金収支報告書にはアスクルの社名が書かれており、もし、麻布食品がアスクルエージェントでなかったとすれば、契約関係にない第三者が勝手にアスクルの名前を使用していることになり、企業としては契約関係がない相手に対して守秘義務など存在しないため「ウチは無関係」とすることを妨げる法的根拠はないからである。
 全く取引関係のない場合でも、その会社とは「関係がない」とすら言えないのはおかしな話で、その原則でいけば、取引のない暴力団のフロント企業との関係を問われた場合でも「取引有無」について開示は難しく、と答えることになりかねない。
 麻布食品はHPもなく、アスクルエージェントであることを外部に明らかにしていないことを考えれば、取引の有無にも守秘義務が及ぶとアスクルが判断するのは自然な流れである。
 念の為、その点を確認すべく、さらにメールで問い合わせた。
■なぜ「取引がない」と言えない?
⭐︎3月20日(月)松田→アスクル
【質問】個別企業との取引の有無を開示できないということですが、「有」の場合は、それは御社の取引の守秘義務に含まれるからいいでしょう。しかし、「無」の場合、答えられないというのは理解できません。
 少なくとも取引のない企業が、御社と取引があると称して政府への提出書類(政治資金収支報告書)で示している場合、それは虚偽の内容であるわけです。それは全く関係のない御社にとっては迷惑な話であり、「当社は全く関わりがない」ということは問題ないと思いますが、いかがでしょうか。取引の守秘義務について、社会的責任の範囲を考慮してご回答をいただきたいと思います。
 「取引が無い」について、イエスと答えることは何ら問題はないのではないでしょうか。もう一度うかがいますが「麻布食品は御社の代理店、エージェントになったことはない」というステートメントについて、「イエス」ですか。それとも、答えられません、ですか。そこを確認の意味でご回答いただきたく、お願い申し上げます。(質問以上)
★3月20日(月)アスクル→松田
【回答】繰り返しのご回答となり恐縮ですが「有無」も含めて、個別の企業との取引についてご回答することはいたしかねます。(回答以上)
 取引がないなら「ない」とはっきり言えるはず、だから言ってくれ、というのに対して答えられないのであるから、取引があると言っているに等しい。
 また、麻布食品は法人の目的に「文房具、事務用機器、家具、日用雑貨品、食料品等の販売」「前各号に附帯する一切の業務」とあり、この部分の登記は2009年(平成17)に変更(追加)されている。目的を加え、登記を経由したのであるから、その業務を行わない理由はない。実際に他の国会議員も麻布食品を代理店としていると思われる者もいる。そうした状況を考えると、アスクルと麻布食品の間には代理店契約が存在したと解釈すべきと、自分の中で一定の結論に至った。
■失礼な質問を投げかけ
 両者に契約関係がある前提であれば、次の問題は、仮に不正な取引を行なっていることを知っていても黙認する取り決めがあったのかどうか、という点である。ここについてはストレートに聞いた。
⭐︎3月20日(月)松田→アスクル
【質問】(1)麻布食品がアスクルの代理店と称して領収証を発行し、それを野党の政治家(立憲民主党の小西洋之代議士)の政治資金収支報告書(令和1~3年)に記載がなされていることを、御社は把握されていましたか。
 (2)麻布食品がアスクルの代理店と称して上記の小西代議士の資金団体に対して領収証を発行し、それを政治資金収支報告書に記載するので、ご承知おきください、と麻布食品に関係する者から依頼を受けたことはありますか。(質問以上)
 この直接的な質問には以下のように回答があった。
★3月22日(水)アスクル→松田
【回答】(1)本件に限らず、個別のお客様が、アスクルのご利用についてどのような対外的な報告をされているかについて当社として確認することはいたしておりません。
 (2)アスクルのご利用に関する対外的な報告書への記載についてアスクルに確認をいただくことはございません。(回答以上)
 もちろん、「黙認していました」などと言うはずもないが、実際、1000社以上と代理店契約を締結する中、それらの対外的報告を全てチェックするなど不可能。考えてみれば失礼な質問にも丁寧に答えており、企業によっては「反社会的な行為を行なっていることを前提にしたかのような質問には答える必要がない」などと、それ以上のやり取りを拒否するところもあると思われる。アスクルがそのようにしないのは「これ以上答えない」とすることが、多くの人に「何か言えないことがあるのだろう」と思われるリスクを考えたからかもしれない。
 アスクルの会社登記をとり、役員による関係する政治家への寄付などの実績がないかも調べたが、該当する例は見当たらなかった。
 以上の客観的状況を踏まえれば、もし、筆者の言うような政治資金に謎の動きがあった場合でも、アスクル㈱は関与していないと考えるのが通常の思考であろう。記事公開後も取材に応じて可能な限りオープンな姿勢を保っており、途中経過とはいえ、筆者が推測する状況があったとしてもアスクルの関与の可能性は低いという結論に達した。
■頭を痛めている?アスクル㈱
 以上のように考えると、アスクルにとっては、今回の問題はいきなり降りかかってきた厄災のようなもので、同社もどう答えていいか、頭を抱えたことであろう。筆者(松田)の推測では、その時点でのアスクルの立場は以下のようなもの。
 ①麻布食品は代理店契約を結び、アスクルエージェントとなった。
 ②一部では麻布食品と顧客との取引実態はあった。
 ③ただし、小西氏の政治資金収支報告書記載の取引は存在しない。
 以上は、あくまでも推測であるが、その場合、①、②で守秘義務が発生しているため、③の事実を把握できた場合、個別に事情を聞き、場合によっては不明朗な取引の存在を理由に代理店契約を打ち切ることはあるのかもしれないが、取材に答えることはできない。
 同様に、アスクル文具を1つでも購入したことがある顧客(小西ひろゆき後援会)との契約内容を明らかにすることにも通ずる。Web上での顧客との契約については「 アスクルご利用規約 」が適用され、その中には守秘義務は定められていないものの、契約内容、履行状況を勝手に公開することは信義則(民法1条2項)に反するおそれがあり、取材に応じて公開することは控えた方がいいという結論に達するであろう。
 麻布食品が法人の目的に文具の販売等を加え、アスクルエージェントになったことにより、私的契約で相手を縛れる結果となり、アスクル側が口を塞がれる結果となったと言うこともできる。
 このように現時点では、政治資金の謎の動きが認められる場合でも、アスクルは自社のシステムを利用された上に、私契約で守秘義務に縛られている状況と解釈するのが妥当という判断(推測)をしている。そう考えると、今回の件で最も頭を痛めているのは、実はアスクル㈱なのかもしれない。
 小西洋之氏が当連載の筆者(松田隆)に対して28日に刑事告訴をしたようである。この告訴、あるいは今後予想される民事での損害賠償請求等がどのような形で行われるのか、焦点の明細書の開示を命じられたら小西氏が不利ではないのかという考えを持つ方もいるであろう。そこで今回は訴訟への考えをお届けする。また、27日と28日に筆者の周囲で起きたことを紹介、事件を考えるヒントとしていただきたいと思う。なお、告訴がなされたと思われる以上、今後は発言も慎重にならざるを得ないため、当連載は一応、今回で閉じることにする。
■小西氏が刑事告訴とツイート
 小西氏は28日に以下のツイートをした。
 発信元に対して本日に刑事告訴をします。
 極めて悪質なので民事よりも刑事手続きを先行させます。(以下略)
 (3月28日午前9時5分 投稿
 引用しているツイートから、「発信元」が当サイトを指しているのは明らか。これまでの主張からすれば、名誉毀損(刑法230条1項)での告訴と思われる。こうした文章では断定できる材料がなければ断定を避け、あくまでも推測、あるいはこういう考えが成り立つと書くべきで、それが対象者・団体への名誉を毀損しない方法である。新聞社出身である筆者にすれば、当然、そのことは頭に入っており当初から小西氏の言っていた告訴については(無理筋だよなぁ)というのは感じていた。
 この先、民事での提訴があったとして、その場合は被告となる筆者は当然、商品明細書の開示を求めることになる。小西氏が本当に持っていればいいが、もし、持っていなかったらどうするのか。そのように考えて民事の提訴も微妙と考えていた。
 しかし、どうやら、小西氏は筆者のツイッターについて問題にしているようである。以下は第一報を出した時の筆者のツイートである。
 小西洋之氏の政治資金の謎を連載で追います。同氏の政治資金収支報告書には不可解な支出があります。実体のない会社に3年間で69万円の支出。(以下略)
 (2023年3月23日午前9時56分 投稿
 特に問題なのは、「実体のない会社に3年間で69万円の支出」の部分。これは本文をご覧になった方は分かるであろうが、「実体の分からない会社」の誤りである。「幽霊会社と思っていただけに、実際に麻布食品が存在していることは衝撃であった。」(連載(3) 幽霊は生きている )と書いていることなどからも明らか。
 この部分が問題であるなら、言ってくれればすぐにツイートは削除し、ツイートの文言に間違いがあったとお詫びしたと思うが、23日の小西氏からの架電では記事の削除は求められたもののツイートの削除は一言もなく、今に至るもない。正直、筆者がこの点に気付いたのは、かなり後になってから。仮に小西氏がこの部分が名誉毀損であると言うのであれば、それはそれでミスを認めるが、自分としては「実体の分からない会社」と書いたつもりであり同罪の故意「事実の摘示行為が人の社会的評価を低下させうることの認識」が不存在で、不可罰とされるように思う。正直、無理筋に見える。
■問題は民事の「過失」
 問題は民事である。このツイートが不法行為(民法709条)ということであれば、筆者の過失が認められる可能性があり、不法行為が成立するかもしれない。そして、注目していただきたいのは、これが民事で争われた場合、被告となる筆者から、小西氏に対して商品明細書の開示を求めることはできない点である。
 麻布食品は実体のある会社であったことは本文でも認めているため、小西氏と麻布食品の資金の流れが本当にあったのかどうかを証明するための商品明細書は審理には必要とされない。小西氏が商品明細書を持っていようがいまいが、ツイートだけを訴訟の対象なら開示を求められることはない。そうすると、小西氏がツイートを問題にするか、本文を含めてくるかによって商品明細書を保持しているか否かが想像がつく、という仕組みになっている。
 こちらとしては、商品明細書の開示を求めるような法廷戦略を立てることになるとは思うが、あまり訴訟の前に手の内をさらすようなことはしたくないので、このあたりにしておく。
■アスクルに情報開示請求
 実は27日から28日未明にかけて筆者の周囲は激動の状況であった。28日午前9時過ぎに小西氏が筆者を刑事告訴するとツイートしたことは後になって知ったが、注目したいのはツイートそのものではなく、ツイートされた時間である。一般の方は(たまたまでしょ)としか思えないかもしれないが、筆者から見れば、刑事告訴をすると小西氏が公表するのは、このタイミング、28日午前の早い段階しかない。その時間にツイートしたということで、一定の推理が働くことになる。
 以下は筆者の勝手な推測であることは断っておく。そのつもりで読んでいただきたい。
 3月27日、筆者はアスクル株式会社に小西氏の個人情報の開示を求めた。アスクルとの取引の実績を入手できれば、麻布食品への支出が適正なものであるかが判明するからである。一定の条件にあれば開示されることもあるが、まずは期待できない。ところがアスクルは「今日中に結論が出ないので、明日28日に回答する」と言ってきた。ひょっとすると開示されるのではないか、という期待を抱かせる言い方であった。結果的に開示はされなかったのだが、非開示の決定が伝えられたのが28日正午過ぎ。小西氏のツイートはそれより3時間前の午前9時5分。この時系列をよく覚えておいてほしい。
 もし、28日に開示が決定された場合、情報はメールで送られるそうなので、筆者はすぐに手にできる。そこで、もし、「アスクルが情報開示しました。小西氏は麻布食品が出した領収証に対応した明細書を持っていません」と発表したらどうか。小西氏としては、それより前に「今日、刑事告訴する」と明らかにしておき、もし、告訴が受理されたら「明細書を持っていないとか松田は言っているが、告訴されたくないからだろう。予定通り告訴した。明細書どうこうは関係なく、名誉毀損が成立するから告訴は受理された」と発表できる。もちろん、告訴はツイートの部分であるから、明細書の有無に関係なく告訴できるという仕組みである。
 この仮説を見て笑う人がいるかもしれない。「小西氏が、松田がアスクルに開示請求し28日に回答が得られることを知っているわけがない」と思うであろう。
 アスクルに情報開示請求をして28日に回答がくることを、筆者は周囲の数人に伝えていた。1人を除き「与党」と思っていただきたい。唯一の野党、仮にA子さんとしておくが、彼女は小西氏サイドと関係があり、SNSで筆者を攻撃している人物である。
■”野党”と接するリスク
 A子さんとは以前、ちょっとした接点があったが、その後は没交渉。今回の報道後、ツイッター等で筆者を攻撃し、さらに何年かぶりにDMを送ってきて「アクセスやいいねのために」やっているのではないか、などと言ってきたので「そちらも信じる道をお進みください」と、厳しめの表現で返信した。
 少し言いすぎたかなというのもあって、27日深夜に(そちらの考えもいいんじゃないですか)とDMを出し、何度かやり取りをしているうちに電話で話そうということになった。A子さんは小西事務所を取材し、小西氏本人とも電話で1時間程度、話をしたそうで、小西氏サイドの言い分を筆者に繰り返した。
 その中で筆者がアスクルに開示請求をして、もし、小西氏の言う通りの明細書が出てくるようであれば、これは完全な誤報であるから、お詫び文を出して記事を削除するしかない。その上で、自分自身のけじめとしてサイトを閉じて、ライターを引退する覚悟であると伝えた。もし、開示請求が通らなかったら小西事務所に連絡して明細を見せていただき、確認できたなら同じようにしようと思うと、こちらは半ば冗談で伝えた。
 これが小西氏サイドに伝わったかどうかは分からない。そして、翌朝午前9時5分には小西氏が刑事告訴を先行させるとツイート。もし、明細書を持っているなら、筆者は謝罪文を書く、記事を削除すると言っているのであるから、それを待って「アスクルが事実を公開してくれて、捏造記事がバレたので、松田が謝罪した」と事後に勝利宣言を出した方がいい。なぜなら「刑事告訴して、ライターを追い詰めた」と批判されることがなくなるからである。午前9時5分のツイートを知った時の筆者の感想は(ああ、やっぱりな)というものであったのはご理解いただけると思う。以上、すべて筆者の勝手な推測である。
 正午過ぎにアスクルから開示はできないとの回答があり、午後4時過ぎにA子さんと連絡を取った。開示はされなかったという結果を伝えると、いきなり「小西事務所に連絡しましたか?」と聞いてきた。「いえ、していません」と答えると、声のトーンが下がり、不機嫌になったように感じられた。
 その後、電話で話したが、筆者がライター業をやめると期待していたのか、前日とはうってかわって厳しい口調であった。「松田さんは記事を書くときにアスクルを知っていましたか? アスクルを使ったことがありましたか?」と聞いてくるなど、情報収集をしたいのかと思われる部分もあった。
 さらになぜか英語を交えて罵倒し、「まず自分が反省しなさい。そこからです。そしたら私にそんな大きな口はきけないはずですよ。…くだらない人間ですね。…」などとまくしたてて電話を一方的に切った。
■番組出演を辞退
 A子さんがどのような形で小西氏サイドと関わっているのかは分からないが、微妙な時期に「野党」と接触することは様々なリスクが伴うことは感じさせられた。
 こうして、筆者の周囲では油断のならない状況が続いている。そのような時にメディアに出てあれこれ話すのは攻撃材料を自分から提供するに等しい。そのため、出演を予定していた番組には無理を言って欠席とさせていただいた。今回の連載もいったん締めさせていただくのがいいという判断をした。
 しかし、今後も麻布食品を中心とした問題は取材を続け、真相に迫れればと思っている。真実追求に終わりはない。
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