「帰化すればいい」という傲慢
「
週刊SPA!12月15日号にコメント
」の一部引用
外国人参政権を考える上で,在日韓国・朝鮮人とそれ以外を分ける必要があります.在日韓国・朝鮮人以外の永住外国人は,'90年の入国管理法改正(永住権のない外国人を柔軟に受け入れることを目的として「定住者」という新しい在留資格を創設するなどした.これで日系外国人の在留が激増)大量に入国した日系人が中心です
在日韓国・朝鮮人については国籍取得が容易なので,参政権を求めるのであれば国籍を変えていただきたい.帰化をすればエスニック・アイデンティティに瑕がつくとの反論もありますが,国籍とエスニック・アイデンティティを分けて考えるのが国際標準なのです
特別永住者の方々が最初は2世までという約束で基本的には国籍を取っていないのに日本人に準じる権利を様々に与えられというのは,ご存知のように在日の方々の多くが強制連行で連れてこられたという左翼が噴き上げた神話が背景にあるんです.在日のなかで強制連行されてきた方というのはごく一部で,大半は一旗上げにやってきた人達なんですよ.ただ,区別がつかないから,あるいは戦争に負けて罪の意識というか原罪感覚というのがあったのでしょうか,まぁ,色んな人が混ざっちゃっているけど,しょうがないということで分かってやっている感じで特別永住の方々に対する特権の付与をやってきたわけです.僕に言わせると,あえてそれをやっているという感覚が段々薄れてきてしまっていることも問題だし,1世,2世とは違ってエスニックリソースを頼らず,日本人のネットワークをそれなりに頼っている人間が増えたのに,まだ4世,5世にも特権を与えるのが続いているのはおかしいし
1. 歴史問題を矮小化する傲慢
宮台氏は「在日のなかで強制連行されてきた方というのはごく一部で,大半は一旗上げにやってきた人達なんですよ」という
なるほど,それは《ウソ》とは言い切れない.いわゆる強制連行で日本に渡ってきた在日一世の男性は2割程度だと推定されている.逆に言えば,8割は出稼ぎだ.したがって,ミクロな次元では「一旗上げに」海を渡ったケースも当然多かったろう
だが,日本が朝鮮半島を
植民地支配
した36年の間に,朝鮮半島からは膨大な人口が半島外に流出した.植民地支配のプロセスで,伝統的な社会秩序と経済基盤が崩壊したためである
2. マイノリティの生き方を決め付ける傲慢
ぼくはかつて「
在日コリアンに地方参政権の門戸を開くかどうかというのは《日本人の問題》
だ」と書いた
議論のうえで,やはり外国人には意思決定に参加させられないというのなら,(参政権が認められないことではなく隣人として受け入れられなかったことが)たいへん残念ではあるが,一つの結論として重く受け止めよう
だが「参政権を求めるのであれば国籍を変えていただきたい」などと,参政権がほしければ頭を下げて仲間入りを請えといわんばかりの一方的な放言を,けっして認めることはできない
なお,私が日本の国籍を取得しないのは「帰化をすればエスニック・アイデンティティに瑕がつく」からではないことを申し添えておく
3. 「国際標準」を語る愚かさ
宮台氏は「国籍とエスニック・アイデンティティを分けて考えるのが国際標準」であるという
確かに,国籍とエスニック・アイデンティティが独立しているケースは少なくない.出生地主義の国籍法を持っている国では概してそういう傾向がある.だが,国籍が移民のエスニック・アイデンティティに重要な役割を果たしているケースも少なくはない.「世界標準」などと乱暴に一般化できるようなものではない
4. 簡単ならやってみるがいい
宮台氏は「在日韓国・朝鮮人については国籍取得が容易」だというが,一度,日本の国籍を離脱した上で,再度,日本国籍を取得してみなさい
ぼくには日本国籍を取得した在日コリアンの知人もいるが,「容易だ」などという人にはお目にかかったことがない