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トランプ再選のシナリオ
 「アメリカ通」と称する大手メディア特派員,大学教授,シンクタンクの人々は,米国民主党的プロパガンダの受け売りに勤しむ.ニューヨークタイムズやワシントンポストを読んで記事を書き,CNNが「かくかく報じた」等と,さも正統な分析のように情報を流す
 しかし,リベラル・メディアは既にアメリカ人に愛想をつかされており,彼らの分析は根本的に間違っているのだ
 在ワシントン日本大使館員も,2016年に「ヒラリー当確」と満腔の自信を持って「予測」し,トランプ陣営と一切のコネクションを持とうとしなかった
 米国民主党の2001年から2020年の荒削りながら大統領府に巣くったリベラル,左派の動向と政治ロビィスト,その政治イベントや綱領,政策等米国民主党の基本骨格の変遷を提示した歴史書は,客観的事実を照らし合わせ,現実を照合すれば,米国民主党の運命は,冷酷なひびきを伴うが「崩壊の危機」に直面していると指摘する
 米国民主党は,「フェミニスト,グローバリスト,社会主義者,弱者利権政治家らに乗っ取られた極左政党」に成り下がった.若き極左は,弱者至上思想を強要する原理主義者となって,不寛容に妥協を排し,民意からかけ離れた方向に突き進んでいる
 2020年大統領選挙は,トランプ再選確実の様相を呈し,「米国民主党がどんな負け方をするのか」が最大の関心事になりつつある
 ブッシュ・ジュニア,ビル・クリントン,ドナルド・トランプという三人の大統領は,実は同じ1946年生まれであり,共通する戦後体験が基底になるものの,三人は出自もバックグランドも異なるために,それぞれが戦後の認識に巨大な乖離がある
 大統領になった順番は,ビル・クリントン(1993-2001),ブッシュ・ジュニア(2001-2009),そしてドナルド・トランプ(2017-)
 三人とも第二次大戦後の1946年生まれだが,生年月日の順番は逆になり,トランプが6月14日,ブッシュが7月6日,そしてクリントンが8月19日だ
 アメリカ・アズ・ナンバーワンの時代は,気づかぬうちに終わっていた
 第一に,単独での軍事行動をとる事は珍しくなった
 第二に,ドル基軸体制は,その性格を変質させている.ブレトンウッズ体制の基軸だったドル決済は金本位制の下でこそ信任篤かったけれども,ニクソン・ショック後は英国ポンドに加えて,ユーロ,円という多国籍通貨がIMFのSDRに加わり,2016年からは人民元も加わった.となるとドルが基軸通貨を継続している所以はペトロダラーに変質しているからだ
 第三に,国家の在り様が変わり,帝国とネイションステート(国民国家)という色分けがなされるようになったのが戦後政治だ.アメリカは多文化国家となってナショナルな要素を希釈化してしまった
 第四に,進歩史観が崩れ去り,左翼全体主義が人類の理想とされた時代は,ソ連の崩壊で轟音たてて崩壊した.にもかかわらず米国民主党の思想的立脚点は進歩史観だ
 第五に,保護主義からブロック経済へと進んできた貿易体制は,世界の国境を取り除くグローバリズムに導かれて拡大してきたが,BREXIT英国離脱でEU破綻の兆候が出て来,WTO世界貿易機構が中国の傍若無人な貿易マナー破りによって機能不全に陥る事によって,急激に衰退し始めた.20世紀から21世紀にかけて,保護貿易主義的な経済ナショナリズムが台頭してきたのだ
 共和党の看板を掲げるブッシュ・ジュニア政権も,政策は米国民主党と変わりなかった.クリントン,ブッシュ・ジュニア,オバマの三代政権を支配したのはネオコン(ディープステーツ)だった
 そこにディープステーツを敵視するトランプ大統領が登場した
 大統領選挙に於ける不可欠要素は,E(選挙民の熱狂),M(資金),M(選挙民への適確なメッセージ)だ
 トランプが立候補表明するまでの米国の言論空間といえば,「報道の自由」「表現の自由」は希薄だった
 なぜならメディアの主流が左翼であり,保守の主張を黙殺するか,激烈に批判した.他者の主張を受け付けず,排撃するのが米国民主党リベラル派と,それを擁護するリベラルメディアの特質であり,彼らはトランプを「反知性」とレッテル張りしたが,実は米国民主党こそが「反知性」だった
 アファーマティブ・アクション(黒人・ヒスパニック雇用割合達成義務付け等のマイノリティ優遇策)やポリティカル・コレクトネス(差別用語禁止)を掲げて,弱者は強者に変貌した.ウォールストリートジャーナルのような保守といわれるメディアでさえ,トランプ支持公言を憚らせる空気を蔓延させた
 しかし,ツィッター,ユーチューブ,ウェブサイト,ネットテレビ局開局等により,米国民主党的「反知性」に対する疑問が,言論空間で次第に大きくなっていった
 CNNの視聴者は75万人に激減し,フォックスニュースは250万人に増加した.これを日本に当てはめると桜チャンネル,林原チャンネル,言論テレビ等のミニ放送局が,NHKを視聴率で凌いだという事
 クリントン時代から推進されていたインターネット革命は,オバマ政権でSNSによる言論空間として実を結んだ.米国民主党は,この間,穏健派,保守派,中間派がおおきく後退し,左派に乗っ取られていた.しかも左派を操ったネオコンの一派がオバマ政権に雪崩れ込んだ
 米国民主党は,ターゲットとした弱者層に「失われた」権利を回復しなくてはならないと訴えた.弱者である事を意識させる事は難しくない.殆どのケースで,外見だけで弱者に所属していると自認できた.所属するグループ(黒人,移民,少数民族,女性等)を見渡せば,容易にわかった.この思想とも言えない権力を掴むための主張が,アイデンティティ・リベラリズム(IL)だ
 米国民主党は自分で自分の行動,主張に制約をかけて,とどのつまりは身動きが取れず,過激な左翼や社会主義者が党の中軸を揺らしたばかりか,主導権を握るまでになった
 'YES WE CAN' と呪文のように唱えてヒラリーを退けてオバマが当選したとき,米国内の黒人やヒスパニックの歓呼の声が鳴り響いた
 ところが,オバマ政治の本質は,弱者ではなく強者に寄り添うものだった.メディアは相変わらず「弱者代表」のオバマには甘い報道を続けていたが,実態は伴っていなかった
 オバマは,外国企業のロビイストだった人物に推されて大統領に上り詰めた政治家だった.当選すると,悪名高きロビィストを大統領首席補佐官に抜擢した
 ヒラリーは,自宅にサーバを移し,機密に属する通信を自分のパソコンから発進し,アラブの春を操り,リビアで大失敗をやらかして失脚したが,メディアは頬被りを続けた.政治献金や寄付と外交をリンクさせて,国務省を「ヒラリー商会」に化かし,政治資金の受け皿に慈善事業財団を設立し,政策を売り歩いて世界をロビィ工作のために行脚した
 アメリカは,間一髪でトランプを選んだが,ヒラリーを選んでいたなら,今頃は中共の天下になっていたかもしれない
 オバマ政権下の黒人失業率(9.5%)はブッシュ時代(7.7%)より上昇し,支持層は米国民主党から離れだした
 雇用改善を重視するトランプは支持層を増やした.黒人の30%,ヒスパニックの50%がトランプを支持するようになった.従来の米国民主党支持層が,米国民主党の候補者や訴えに愛想を尽かし,2020年にはトランプに票を投じる可能性がある
 日本のメディアが伝えるトランプ像は,左派ジャーナリズムの誤謬にみちた報道によって異形に歪められたものである
 2020年は,4年に1度のアメリカ大統領選の年.再選を目指すトランプ大統領だが,ウクライナ疑惑を巡った弾劾裁判が近く議会上院で始まる見通しで,威信は大きく揺らぎかねない事態になっている.そうした逆風の中でもトランプ陣営は大統領選挙に向けて,したたかに攻めの姿勢を見せており,新たなターゲットは,なんとこれまで民主党の盤石な支持層とされてきた若者と黒人だ.いったいどんな戦略なのか.再選キャンペーンの最前線を追った
 トランプ大統領の別荘がある南部フロリダ州で12月,共和党陣営によるイベントが行われた.イベントを主催したのは,全米1000以上の大学に支部を置く共和党系の学生団体.4日間に及ぶイベントでは,トランプ大統領を支持する若者が全米各地から集結し,ライブ会場さながらの派手なパフォーマンスが繰り広げられた
 さらにイベント初日にはウクライナ疑惑の中心人物で,トランプ大統領の顧問弁護士であるジュリアーニ氏が登場.この日は,トランプ大統領が弾劾訴追された翌日で,ジュリアーニ氏は弾劾への怒りをぶちまけた.「私は犯罪捜査の対象とされているが,罪を犯したことは決してない.弾劾は違法で道徳に反しそして憲法に違反する」.この発言に魅了され,ジュリアーニ氏をこぞって取り囲んだ若者たち.「弾劾は民主党の横暴だ」など,弾劾に対する批判的な意見を口にした
 そしてイベント3日目にトランプ大統領が姿を現すと,会場の盛り上がりは最高潮に.拳をあげて「USA」と叫び続ける若者を前に「アメリカは,再び勝利し再び世界で尊敬される.史上最高にだ.間違いない」と訴えるトランプ大統領.イベントに参加した10代の女性支持者からは,「2020年の選挙はトランプが勝つわ」と早くも“勝利宣言”が飛び出した
 フロリダ州のイベントに参加した1人,トランプ大統領を支持する団体に所属する,大学1年生のジョン・リザックさん.ニューヨーク州の大学に通うリザックさんの周りには,リベラルな考え方の学生や教授が多く,これまで自分の居場所を見つけられずにいたという
 去年11月,それを決定づける出来事があった.キャンパス内でトランプ大統領への支持を呼びかけていたところ,リベラル系の学生たちに突如取り囲まれたのだ.銃を所持する権利を呼びかけていたリザックさんたち保守派の学生に対し罵声を浴びせかけ,激しく反発するリベラル系の学生たち.現場は一時騒然となり,まともな対話をすることはできなかったという.「保守派の学生は,皆恐れている.キャンパスで何をされるか分からず,声に出して自分は保守派だと言えなくなってしまうんだ」
 自分の主張を自由に表現できないことを理不尽だと感じたリザックさん.学内で定期的にミーティングを開き,自分と同じように不満や疎外感を抱く学生たちに,ともにトランプ大統領支持の声を上げていこうと訴えている.この日,ミーティングに参加した学生からは「リベラル派は人の話を聞かず僕のことをファシストだと言う」といった意見や「保守的なメッセージをどうやって女性やマイノリティーの人たちに広げていくか考える必要がある」といった意見が出された.リザックさんは,若者の間でトランプ支持が高まることに手応えを感じている.「保守の波は来る.愛国的なアメリカ・ファーストの波が我々の世代を飲み込むことになるだろう」
 さらにトランプ陣営は,若者以外にも支持層を広げようとしている.最近,トランプ支持者の集会で目立つようになった「BLEXIT」の文字.BLACKとEXITを合わせた造語で,イギリスのEU離脱にかけて,これまで民主党の支持層だった黒人に民主党離脱を呼びかけるスローガンとして使われている.2019年11月にジョージア州で開かれたイベントでは,「2020年は黒人社会に変化をもたらす」と訴えたトランプ大統領.前回の大統領選挙で,8割以上がクリントン氏を支持したとされている黒人に向けて 「去年,民主党は不法移民を守るため,政府機関を閉鎖に追いやった.民主党は黒人社会のために闘ったことはない.そんな気もないのだ」 とのメッセージを発信し,民主党の支持基盤を切り崩そうとしているのだ
 トランプ陣営は黒人向けの支援団体まで立ち上げ,草の根の活動を広げている.団体が訴えているのは,トランプ政権下での経済政策の成果.黒人の失業率はトランプ大統領就任時の7.7%から2ポイント以上も下がっているという.黒人の支持者は「トランプ大統領の政策のおかげで,黒人の失業率がかつてないほど改善した.人種は関係ない.アメリカがふたたび偉大になればいいのだ」とトランプ大統領に期待を寄せている
 最新の世論調査では,10代20代の有権者の支持政党は,民主党が40%なのに対して,共和党は24%.若者全体の支持は民主党に向いている.それでもトランプ大統領は接戦州で勝つには若者の票を取り込むことが重要だと考えていて,支持を少しでも広げたい狙いがある.トランプ大統領の支持率は,2018年春以降,40%を割り込むことはなく,いわゆる“岩盤支持層”は底堅さを見せている.今回の大統領選挙では,1980年代から1990年代に生まれた“ミレニアル世代”が,第2次世界大戦後の約20年間に生まれた“ベビーブーマー世代”を上回る.それだけに,若者の争奪戦が,選挙戦の行方を左右するとも言える

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