索引
世界のスパイ防止法
 国連憲章51条では、「自衛権」について記載しています。
第51条〔自衛権〕
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
 自衛権とは、国際法で認められた独立国固有の権利であることが分かります。各国では防諜機関をしっかりと設け、取り締まっています〔アメリカ(CIA・FBI);ロシア(KGB・GRU);イギリス(MI5・MI6)〕。
 さらには、スパイ罪の最高刑には、死刑や無期懲役などが課せられるんです。国家の安全を脅かすのですから、当然ですよね。

日本にスパイ防止法が無い理由
 1985年に自由民主党から立案されるも廃案になった経緯があります。この時の法案は「公務員」の守秘義務を定め、第三者へ漏洩する行為防止を目的としたものでした。既遂行為はもちろん、未遂行為や機密事項の探知・収集、機密書類の紛失などによる漏洩なども罰則の対象に含まれました。最高刑は他国同様に死刑または無期懲役としました。
 しかし、憲法が保障する表現の自由に抵触する!として、マスコミなどから批判の対象とされたのです。当時の野党(日本社会党・公明党・民社党・日本共産党・社会民主連合など)も猛反対。徹底して審議拒否を貫き、国会閉会に伴い廃案になってしまったのです。しかし、アメリカやイギリスなど、いずれもスパイ防止法が制定されていますが、同時に言論の自由も保障されています。ちなみに当時の法案には「法律の適用にあたっては、表現の自由…を侵害してはならない」旨の文言が盛り込まれていたそうです。
 2013年、第2次安倍政権下で「特定秘密保護法」が可決されました(2014年12月10日施行)。この時もいろいろな問題点が指摘され、結局は強行採決となった経緯があります。
特定秘密保護法  : 日本の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものを「特定秘密」として指定し、取扱者の適性評価の実施や漏えいした場合の罰則などを定めた日本の法律
 平たく言えば、「特定秘密の漏洩を防ぐための法律」です。
 主に「特定機密」を取り扱う公務員を処罰の対象としていますが、公務員以外でも「特定秘密」であることを知っていたうえで、不当に、または不正に取得(既遂)、取得しようとした(未遂)の場合にも処罰の対象となります。
 「この時に反対派に回っていた党や政治家、マスメディアは要観察だと思います。
 企業ですら「企業秘密」はあり、社員には「守秘義務」があるんです。企業秘密を守らなければ、企業は存続できず、新技術も新製品すらも出すことができないですよね。
 これと同じ論理で、国であっても国家機密は必ずあるべきで、それを漏洩するようなことがあれば罰せられて当然ではないでしょうか?」もちろん懸念点がないわけではありません。本来であれば国民に開示すべき重要な情報が隠蔽される可能性や、本来は機密でもない情報を機密とすることもできてしまいかねない点は否定できませんが、少なくとも国家機密は存在し、それは全国民に開示すべき情報ではないものがあるのは事実です。こういった国家機密が漏洩されることを防止する法律に対して反対する勢力は、スパイなのか?と疑われてしまっても仕方ないと思います。当時の反対意見も論点がぶっ飛んでズレていたり(事実無根の内容で国民の不安を煽るなど)と、議論の余地もない感じでしたね…
 また、この法律は特定秘密を「保護」することしかできないので、「スパイ行為」自体を取り締まることができる「スパイ防止法」の制定も必要とされています。国家公務員でないとしても、他国の工作員にスパイにされるケースは想定できます。
 2001年の同時多発テロが起きるまで、日本の原発は民間の警備員(もちろん武装なんてありません)が警戒するだけでした。「あの原発ですよ!民間警備って」同時多発テロの後、警備強化となり、原子力関連施設警戒隊が設置されます。こうしてようやく武装した警戒隊が配置されるようになるのです。現状は民間警備ではないので、強行突破でリスクを犯してまで原発を狙ってくることは無いと思いますが、時間をかけて職員につけ込んでくることは大いに考えられます。
 原発職員に限らず、新幹線、飛行機、電力会社、通信会社、なんでもいいんです。ちょっと整備をいじれば、または設定をいじれば大惨事になりかねない、そういったところで働く人は工作員が目をつけてきます。他人事ではまったくないのです。
 ちなみに、こんな事件↓もありましたが、日本では取り締まることができませんでした。海外からは「スパイ王国」と揶揄されるのが現在の日本なのです。
ボガチョンコフ事件  : ロシア連邦の情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報部(GRU)の工作官が、日本の海上自衛隊三佐に対してスパイ活動を行った事件
 スパイ防止法が無いが故に国益が損なわれてるとしても、他人事でしょうか?
 例えば、北朝鮮を巡る今日の情勢の中、アメリカが軍事オプションを取るとします。隣国の日本とは協力を図る必要がありますよね。なので、トランプ大統領は作戦を日本と共有したいはずです。ですが、日本にはスパイ防止法がない!そんなリスクを犯してまで情報開示はできん!となってしまいかねません。日本(または政府内)に北朝鮮の工作員がいた場合、軍事作戦が筒抜けになってしまいますからね。つまり、国と国との信頼関係にまで波及してしまいかねないんですね。
 あらゆる犯罪も事前に規定を決めておかなければ取り締まることはできません。法に書いてない=合法と見なされても仕方ないのです。それが故に「スパイ天国」などと揶揄される始末になっているんです。スパイ防止法が日本に無いのは、的はずれな反対意見を持つマスメディアと特定の政党(政治家)が居るからでしょう。なんなら、その中にスパイが居るからじゃないかとすら思ってしまう…
 安全保障の次なる課題はスパイ防止法の早期制定ではないでしょうか。的はずれな反対意見が出ないことを祈りつつ、国民の意識次第では議論再燃もあり得ると思います。
先ごろ本欄で『内閣情報調査室』(幻冬舎新書)を紹介したが、余りにも評者の基礎知識が欠けているので、関連書をいくつか探してみた。そのなかで、よくまとまっているのではないかと思ったのが、本書『日本の情報機関―知られざる対外インテリジェンスの全貌』 (講談社+α新書)だ。2007年刊だから10年ほど前の本だが、現在につながる日本の情報機関の概況が手際よく紹介されている。
自衛隊に詳しい
著者の黒井文太郎さんは1963年生まれ。『軍事研究』記者を経て本書刊行時は『ワールド・インテリジェンス』編集長。著書に『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作に『生物兵器テロ』『最新!自衛隊「戦略」白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』などがある。
『軍事研究』の記者だったというだけあって、自衛隊には詳しい。本書は10章に分かれているが、トップに出て来るのは「防衛省・自衛隊のインテリジェンス」。中枢になっているのは防衛大臣直轄の「情報本部」。1997年の創設だ。メディアの取材を一切受け付けていないので、実態は秘密のベールに包まれているとしているが、陣容は07年現在の実数で2300名強。日本の情報組織では最大だ。そのうち約1900名が自衛官で、他は事務官。本部長は制服組の将クラス。
要員の半数近くは「電波部+通信所」に属し、ロシア、中国、北朝鮮など周辺国を飛び交う様々な電波のキャッチと分析をしている。このほかにも自衛隊には陸海空自衛隊の幕僚部や独自の専門部隊がある。陸上自衛隊は07年に「中央情報隊」というインテリジェンス分野の統括部隊を新設しているという。全体の組織図や、各セクションの役割についても詳述されている。
主要な情報機関を総覧
本書は続いて、「第2章 北朝鮮弾道ミサイル発射実験で迷走した『情報』」、「第3章 内閣衛星情報センターと情報収集衛星の実力」、「第4章 工作船事件の全『情報ルート』を検証する!」、「第5章 外務省『国際情報統括官組織』の能力とは」、「第6章 知られざる『外事警察』の実像」、「第7章 激震の公安調査庁」、「第8章 合同情報会議と内閣情報調査室」、「第9章 その他の情報機関」、「終章 日本のインテリジェンス能力」という構成。防衛省のほか外務省、警察庁、公安調査庁、内閣情報調査室など主要な情報機関を総覧している。
こうした組織の概要は複雑すぎて、なかなか頭に入らないが、素人読者がホホウと思うのは、著者自身の解説が聞こえてくる部分だ。防衛省・自衛隊のインテリジェンス部門は「自衛隊の世界的な活動にともない、グローバルな情報活動に対応できる情報機能の拡大が模索されている」。陸上自衛隊の小平学校には、独自に語学や情報の分野を教育する機関があることを紹介、「防衛省・自衛隊のインテリジェンス教育の制度はかなり充実している」と書いている。
これはどういうことかと推測するに、要請されれば、世界のどこにでも飛んで行けるように着々とノウハウを蓄積しているということだろう。PKOや、最近では集団的自衛権などで、いつどこに行かされるか分からない自衛隊。様々なシミュレーションをしながら、行かされそうな紛争地の実情や言語をふだんからひそかに研究しているに違いない。周辺国の脅威から日本を守る、という従来の「専守」にとどまらず、世界規模で「プレゼンス」を大きくすることを強いられている自衛隊の役割の変容ぶりが浮かんでくる。
インテリジェンス組織が雨後の筍状態に
日本はしばしば「スパイ天国」などと言われるが、本書で笑ってしまったのは「コラム」で記されている「今や日本は『スパイ組織』大国!?」という一文だ。国内治安は安定しているが、北朝鮮や中国の動きが不安定になり、イスラム過激派のテロ・ゲリラ活動が国際化。対外情報の収集がこれまで以上に重視されるようになった。その結果、諜報的な「インテリジェンス活動」を国内各組織が競って重視するようになったというのだ。
「コラム」によれば、かつて英訳では「リサーチ」にとどまっていた組織名が次々と「インテリジェンス」を付加されたり、改められたりしている。ハイレベルの海外情報を入手するには、どうしても海外のインテリジェンス機関と連携を密にする必要がある。ついてはこちらの組織の名前も「インテリジェンス」でないと国際的には相手にしてもらえない、というわけだ。
その先鞭をつけたのは「内閣情報調査室」。かつては、「キャビネット・インフォメーション&リサーチ・オフィス」というシンクタンクのような名前だったが、「キャビネット・インテリジェンス&リサーチ・オフィス」に変わった。公安調査庁も2000年代に入って「パブリック・セキュリティ・インベスティゲーション・エージェンシー」から「パブリック・セキュリティ・インテリジェンス・エージェンシ-」にこっそり改名。ほかにも外務、防衛、警察の関係組織が軒並み英文の呼称を「インテリジェンス」に。
既述のように「インテリジェンス」は諜報だから、「情報」「調査」という日本語とはギャップがある。日本人が知らない間に、海外から見ると日本に「諜報」セクションが乱立、日本は「スパイ組織大国」になっていたというわけだ。「外国人からすると、今、日本ではインテリジェンス機関が雨後の筍のようにいきなりどんどん誕生しているようにみえるかもしれない」と「コラム」で書いている。
暴露目的ではない
こうして乱立気味の「諜報組織」だが、本書はそれらの関係者が引き起こした失態についても触れている。公安調査庁は本書執筆中の07年6月、元長官が詐欺事件に連座して逮捕された。「同事件は朝鮮総連から億単位の資金を騙し取った事件という構図に収まりつつあるが、公安調査庁はもともと、朝鮮総連を監視対象とする調査機関である」とあきれている。
本書で初めて知ったのだが、99年に日経新聞の元記者が北朝鮮で旅行中に逮捕され、2年以上にわたって拘置された事件については、「その元記者は公安調査庁の協力者だった」と断言している。本書では外務省や自衛隊の"緩み"も報じている。
警視庁については当時すでに、イスラム・テロ対応の要員を増やし、対応を強化していることが書かれている。ところが、本書刊行後の2010年、公安部の国際テロ捜査情報、とりわけイスラム関連情報がネットに大量流出して大問題になったことは記憶に新しい。
アメリカの諜報活動を次々と内部告発したスノーデンは米国国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元局員だった。情報はおひざ元から漏れやすいものだと痛感する。
著者の黒井さんは、本書執筆で石破茂・元防衛庁長官、大森義夫・元内閣情報調査室長ら多数の人のお世話になったと書いている。そのほか、外務省の本流ではなかったような人の名前も挙げているが、著者自身は「日本のインテリジェンス機関の発展・向上を願う立場にあり、本書も決して"暴露"の類を目的としたものではないことは、一読していただければ理解いただけることと思っています」と念を押している。
日本政府の中枢にいた男が「ロシアのスパイ」に身を堕とすまで
「え、なんですか?」モグラは呆然と言った
師走の日曜日のことだった。
内閣情報調査室国際部 のMは手にカバンを下げて、待ち合わせの場所に急いでいた。
京急川崎駅前の商業ビル「ダイス」6階のレストランフロアまでエスカレーターで登り、約束の焼肉店に入ろうとしたときだった。
店まで数メートルのところで、男たちが立ちふさがった。
「ああ、Sさん……」
行く手を阻んだ男たちの中に、顔見知りがいた。Mは反射的に彼の名前を呟いた。
次の瞬間、Mの視界に3冊の警察手帳が飛び込んできた。
警視庁公安部 です」 三人が警察手帳を眼前に抱えていた。
「え、なんですか?」
「君が待ち合わせた男は来ない。話を聞きたいから一緒に来なさい」
顔見知りのSは、以前、内閣情報調査室に出向してきていた元公安警察官だった。
「公安部 外事一課 をなめるんじゃない。我々は君を1年間ずっと見ていたんだ。君のことはすべて知っている。全部喋ってもらうからな」
自国の組織内部にいる敵のスパイのことを「 モグラ 」と呼ぶ。
世界の諜報機関は、敵国に「モグラ」を養成しようと権謀術数を駆使している。また同時に、自国の組織内にいるかもしれない「モグラ」に怯え続けてもきた。
「モグラ」はどの組織にも存在すると言っていいだろう。かつて米国 CIA には オルドリッチ・エイムズ がいたし、英国 MI6 には キム・フィルビー がいた。いずれも旧ソ連KGBが養成した「モグラ」だった。
ロシア、アメリカ、イギリス、中国、そして北朝鮮……。世界の諜報大国は、対象国での「モグラ」の養成に注力している。政府の中枢に「ペネトレイト」(浸透)して、内部情報を獲得、政策をも動かそうとしているのだ。
日本政府にも常に「モグラ」が息を潜めていることを、我々は肝に命じておかねばならない。だが、あまりにも無防備だ。
これから紹介するのは、 GRU ロシア軍参謀本部情報総局 によって籠絡され、「モグラ」になってしまった男による初めての告白である。
「彼ら」との出会い
「私は私立T大学を卒業後、財団法人の世界政治経済調査会に就職しました。内閣情報調査室に移籍して公務員になったのは40歳の頃です。
大学時代に中国語をやっていて、喋ることができたので、国際部の中国班に配属されて、中国情勢に詳しい有識者の方々から情報や意見を集める仕事をしていました。勉強会やセミナーに顔を出して、人脈を開拓していたのです。
対象はマスコミ関係者、大学の教授、大使館にいる外交官などです」
筆者が本を書くために、Mにアプローチしたのは数年前のことだ。ある日中友好団体関係者の紹介で食事をしたMは、物腰低く、穏やかな男だ。
筆者が何かを聞くと、眉尻を下げ、笑顔を浮かべながら、淡々と話した。彼の人生を崩壊させた、あの出来事の真相を明らかにする覚悟を決めているようだった。
Mが2007年に検挙されるまで勤めていたのは内閣情報調査室。ここは首相官邸直属の情報機関で、内閣総理大臣が政策立案するための国内外の情報収集を行うのが任務である。「 日本版CIA 」などと呼ぶ人もいる。
Mが所属する国際部は、中国、朝鮮、ロシアなどと地域別に担当が分かれ、内閣総理大臣に報告するための情報を集めている。Mは 政府中枢の情報マン だったのだ。
Mが「あの男」と出会ったのは、1996年夏、虎ノ門で開かれた中国関連のセミナーだった。セミナーが終わってMが立ち上がったとき、顔見知りのK通信社の外信部記者が声をかけてきた。中国やロシアに精通するベテラン記者だった。
「コーヒーでも飲みに行きましょう。こちら、 ロシア大使館 のリモノフさんです」
リモノフは栗色の髪の毛を七三分けにし、エメラルドグリーンの瞳が印象的だった。渡された名刺には「一等書記官」と書かれていた。
三人で近くのコーヒーショップに行くと、紹介した記者が言った。
「Mさんも情報収集しているのであれば、リモノフさんと知り合いになっておくのがいいですよ」
当時、 内閣情報調査室長 (現内閣情報官)からは「外部の人間と飯を食え」と強く推奨されていた。
同僚と昼食をとるくらいなら、外部の人脈を開拓して、情報をとって来いという、情報マンとしては至極当たり前の指示だったが、中途採用組のMには、毎日の相手探しは苦痛だった。リモノフはまさに渡りに船だ。「こちらも大歓迎ですよ」Mはこう応じた。
日本語もうまく、立ち振る舞いも洗練されている。さすがに外交官だな。Mはこう思った。これが8年間続く、壮大な罠の入り口だった。
「ロシアと中国の関係は深いので、リモノフから中国の情報を聞き出すことができるかもしれない、と思いました。
でも、今思うと、あの出会いは仕組まれていたのです。K通信社のO記者とは別の昼食会で知り合いました。その後、O記者と2回、会ったあと、あの日のセミナーに誘われリモノフを紹介されたのです。
O記者はリモノフの正体を知った上で、私と引き合わせたような気がしてならないのです」(M氏)
およそ1ヵ月後、リモノフからMの携帯に電話がかかってきた。画面には「公衆電話」と表示されていた。
職場の電話でもなく、携帯でもない。奇妙だった。
リモノフは都内のレストランを指定し、「お店の前に立って待っていてください」と言った。
予約しているのなら、店の中で待てばいいのに……。
不思議に思いながら従った。Mが待っていると、リモノフは遅れてやってきて、一緒に店に入った。
「私が店の前で立って待っていると、リモノフは遠くからすっと近づいてくるのです。今思えば、どこかから、私を誰かが尾行していないか、監視している者がいないか、確認したうえで近寄ってきていたのだと思います。
個室ではなく、テーブル席で、会話は雑談ばかりです。どこの部署でどんな仕事をしているのとか、家族の話とか、趣味は何だとか。
食事をしながら軽くお酒を飲んで、だいたい1時間くらいで切り上げました。リモノフはほとんど酒を飲まなかったですね。時間の無駄かなと思うこともあったくらいです。
食事代はリモノフが払いましたが、私が奢ったことも一度ありました」(M氏)
会話の主導権はリモノフが握り、Mが聞きたい中国の話にはならなかった。
一度、話題の種にと、Mは中国共産党大会の人事予想を作成して、リモノフに渡した。
「これはオモシロイ。よくかけていますね。さすがです」
リモノフは目を丸くしてこう言った。
「遊び半分で書いた者で、誰でも書けるような人事予想です。でも外交官から褒められると少し嬉しくもなりました」(M氏)
やがてリモノフの任期が来て、モスクワに帰任することが決まった。
「後任を紹介させてほしい」
虎ノ門のレストランに連れてきたのが、グリベンコ一等書記官だった。肌が浅黒く、ひげの濃い大柄の男だった。
「Mさんはすごく能力の高い人なんです。中国共産党の人事をすべて言い当ててしまうのですから」
リモノフはグリベンコにこう言った。
「グリベンコは物腰が柔らかく、ジェントルマンという感じでした。日本語も上手で、会話に不自由は全くない。見識も豊かで、有能な外交官なんだろうなあ、という印象でした」(M氏)
グリベンコと食事をするようになった。食事が終わるとグリベンコは、「次はここで」と店のパンフレットを渡しながら、次に会う日時を指定した。
付き合い方に微妙な変化が現れた。グリベンコが手土産を持ってくるようになったのだ。最初はハンカチセットをもらった。バーバリーの3枚セットのものだった。
何度か会った時、グリベンコは小さなカードのようなものを差し出しながらこういった。
「これ、余ってるのでどうぞ。プレゼントします」
高速道路の
ハイウェイカード だった。1万円分のものだ。
「頂いておきます」
こういって、鞄にしまった。
「袋にも入っていない、裸のままのカードでした。私は車には乗らないし、もらってもしょうがないと思っていましたので、ありがとう、とは言わなかった。相手が気分を害しても悪いと思ったから受け取っただけなのです。
とくに抵抗はなかったです。私自身も仕事で意見交換した相手をご馳走したり、お土産を渡したりすることがありましたので。当然の成り行きかな、と思ったのです」(M氏)
次の食事で、グリべンコは何も持ってこなかった。
「今回はカードを持ってくることができませんでした。私の努力が足りませんでした。もう少し頑張れば、カードを持って来ることができます」
恩着せがましい言葉だった。
Mが嬉しそうな顔をしなかったからだろう。プレゼントが変化した。
食事後、グリベンコからデパートの紙袋を渡された。家に帰って開けてみると、紅茶のティーバッグのセットだった。
つまらない物をくれるものだな。こう思いながら箱を開け、中身を全部出した。箱の底に何かがあった。
デパートの
商品券 。1000円の10枚綴り。1万円分だった。
「私はもらったハイウエイカードを、すべて友人にあげていました。商品券も使う予定がないので、親戚にあげてしまいました。
商品券をもらったのは、2~3回ほどでしょうか。しばらくすると、商品券は現金に変わったのです」(M氏)
その日、グリベンコが指定したのは、天王洲アイルの和食店だった。食事が終わると、グリベンコがいつものように紙包みを渡してきた。
「プレゼントです」
いつも通り受け取って、帰宅してから箱を取り出した。箱の下にあった封筒の中身を見て驚愕した。
「封筒の中身は現金、ジャスト5万円が入っていました。この金額はちょっと大きすぎるぞと思いました。
なんの目的もないのにお金をつかませるなんて、これをどう解釈していいのか、どうしていいのかわからなかったのです。
これは何かフィードバックを求めているなとすぐに感じました。それでも、いざ『お前からは有益な話が聞けなかった』と言われた時には、全額突き返してやろう、そうすればいいのだ、と思ってしまいました」(M氏)
やがてその金額は
10万円につり上がった 。一線を超えてしまったMは、もはや後戻りできない状況に追い込まれていた。
ソフトバンク社員が機密漏洩、露スパイの巧みな手口  2020.1.28(火)
通商代表部は隠れ蓑、諜報部員から「喰いモノ」にされる日本
 2019年1月25日、各メディアが一斉に、ロシアのスパイ工作について大々的に報じている。
 警視庁は、日本の通信大手ソフトバンクの社員だった荒木豊容疑者(昨年12月に懲戒解雇)が、社内の情報を持ち出してロシア政府関係者に渡していたとして逮捕した。このロシア政府関係者は、在日ロシア通商代表部の職員と元職員(すでに帰国)の2人だという。
 当局は、ロシア政府にこの2人を出頭させるよう要請したが、まだ日本にいる通商代表部の職員は外交特権を持っているために、これに応じることはないだろう。つまり、事情を聞くことも、罪に問うこともできない。
「通商代表部」職員が関与した事件の数々
 つい先日、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』(講談社+α新書)を出版した筆者の目から見れば、今回の一件は典型的なスパイ工作事案だ。
 今回改めて明らかになったのは、日本はロシアのスパイからも「喰いモノ」にされているという現実だ。では、そもそもロシアの諜報工作とはどういうものなのか。
 在日ロシア通商代表部は、スパイの隠れ蓑になっているケースが少なくない。在日ロシア大使館のホームページによれば、在日ロシア通商代表部は「ロ・日間の貿易経済関連事項やロシアでの駐在事務所開設および合弁会社設立など」に関する情報などを提供する組織で、日本国内でも日ロの経済関係についてのセミナーなどを行っているとされている。彼らの使命は、「国家間の貿易と経済の関係を発展させる」ことだという。
 もちろんロシア通商代表部の関係者がすべてスパイ行為に関与しているわけではない。その一方で、日本では過去にも通商代表部にからんだ数々のスパイ事件が起きているのも事実だ。ある警察庁関係者は、「ロシアの諜報部員は、在日のロシア大使館やロシア通商代表部の職員を装ってスパイ工作を行ってきた」と指摘する。彼ら諜報部員は「日本とロシアの経済交流イベントや企業提携などを介して、ロシア人スパイは協力者を見つけたり、情報収集の活動を行う場合もある」とも言う。
 警察庁の公式サイトには、過去のロシアによる「対日工作」の事例が紹介されている。例えば、ロシア通商代表部員が、レーザー誘導ミサイルや赤外線誘導ミサイルの仕様書を防衛関連会社社長から入手したケース(2002年)や、元ニコン社員からミサイルの制御や誘導に転用できる「VOA素子」を受け取ったケース(2006年)。さらに2005年には、東芝の関連会社の社員が、通商代表部員に半導体関連の情報を提供して書類送検されるという事案もあった。
非常に有能なロシアのスパイ
 こうした活動を続けているロシアのスパイ組織は、世界の情報関係者の間でも、非常に有能な集団だとして知られている。
 CIA(米中央情報局)で防諜部門の幹部として、ロシア人のスパイと対峙していた元スパイは、ロシアのスパイこそ、CIAに次ぐ強力なスパイ活動を行っていると拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』でも語っている。いわく、「ロシアのスパイたちは米国に次いで最もプロフェッショナルな組織だ。スパイ活動をするのに、最も難しい敵でもある。とてつもないプロで、手強い相手だ。民主主義国家に対するインテリジェンス活動で長い歴史を持ち、それを誇りにして今も活動している。ロシアが現在も存在できている理由は、彼らが冷戦時代から現代まで諜報活動をずっと継続してきたことにある」という。
 ロシアにはソ連時代に、悪名高いKGB(ソ連国家保安委員会)という組織が存在した。KGBは共産党の主導で、1954年に内務省から分離して作られた組織。国内で秘密警察のような監視活動を行いながら、国外では諜報・工作活動を行なった。
 現在、ロシアのトップに君臨するウラジーミル・プーチン大統領も元スパイだ。1970年代にKGBのスパイとなり、1985年から90年まで、東ドイツのドレスデンに勤務していた。KGB時代のプーチンは、有能なスパイとして評価が高かったという。彼の政策は、スパイからの情報が基盤になっているとの話もある。プーチンは毎日、仕事を開始して最初にする日課は、諜報機関が毎日まとめているリポートに目を通すことだという。
 ソ連の崩壊に伴い、KGBは廃止されたが、そこから2つの情報機関に分かれた。国内を担当するFSB(ロシア連邦保安局)と、国外を担当するSVR(ロシア対外情報庁)である。SVRは、KGBの対外諜報を担当していた第一総局が元になっている。
 そして今回の事件で取り沙汰されている在日ロシア通商代表部など、世界中に人を送り込み、スパイ活動を行っている。そうした活動はもちろん日本だけにとどまらない。最近のアメリカでも、摘発されるロシア人スパイは少なくない。名前や国籍を偽って外国で活動する「イリーガル」と呼ばれるロシアの非合法スパイも世界中で暗躍している。
相変わらずスパイに無防備な日本
 そこで今回のソフトバンクのケースだが、これも古典的なスパイ工作の手法によるものだ。
 身分を偽ってターゲットに接近し、一緒に飲み食いする機会を増やすなどし、親密さを増してゆく。その上で、ターゲットが所属する組織に関する軽微な情報の提供を要求する。もちろん金銭的な対価も支払ってだ。そうやって少しずつターゲットの倫理観を麻痺させ、徐々に機密に近い情報を引き出していく――。過去にもこうした段階を経て、日本の安全保障や防衛産業に関する情報が、外国人スパイにかすめ取られてきた。今回の元ソフトバンク社員のケースも、ステップの途上にあったものと考えてよい。
 ただ現在、そうした従来のスパイ活動の舞台が移り変わりつつある。サイバー空間における工作が広く行われるようになっているのだ。
 最も分かりやすい例は、つい先日発覚した、三菱電機が中国政府系のハッカー集団のサイバー攻撃を受け、内部情報が盗まれケースだ。社員や退職者、採用応募者といった8000人分に近い個人情報が盗まれたという。同社は、「社内調査の結果、防衛・電力・鉄道などの社会インフラに関する機微な情報、機密性の高い技術情報や取引先に関わる重要な情報は流出していないことを確認済みです」と発表している。
 このケースは中国によるスパイ工作だと見ていいが、現在はどの国のスパイ活動もその多くはサイバー空間に舞台を移している。政府や軍、社会の活動はかなりデジタル化・ネットワーク化され、スマホやパソコンが普及し、経済活動もコンピュータなしでは行えないような時代になっている。そこにスパイが狙いをつけるのも当然だ。
 また最近話を聞いた元FBI(米連邦捜査局)の防諜部門幹部は、「ロシア、中国、イラン、北朝鮮といった国々はサイバー攻撃で使うツールなどの開発で協力し合っている。それぞれが持っているレベルの高い攻撃ツールは共有しないが、それ以外では手を組んでいる」と指摘していた。
 世界の最新スパイ事情、さらにサイバースパイ工作などの詳細は、拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』に譲るが、JBpressでも引き続き、最新情報をお伝えしていきたいと考えている。
 今回のケースでは、ソフトバンクは提供された情報は機密性が低く、通信設備工事の工程管理マニュアルであり、個人や取引先の情報は含まれていないとしている。だが、そこから徐々に同社の通信設備に関する高度な情報がロシア側に流れ続けるようなことになっていたら、そこを入り口に大規模なサイバースパイ工作が行われることになった可能性がある。そうなった場合の被害の大きさが甚大なものになるのは、容易に想像がつくだろう。
 日本は昔から「スパイ天国」と呼ばれるほど、外国のスパイに対して無防備なままだ。その上彼らの活動の舞台は、より捕捉が難しいサイバー空間にシフトしている。日本は一刻も早く、自分たちが世界のスパイたちから「喰い物」にされている現実を直視し、スパイ防止法などについて本格的に対策を議論する必要がある。
 さもないと、現在進行形のスパイ工作に有効な手立ては打てないのである。
もっと知りたい!続けてお読みください
元ソフトバンク社員が情報漏えい ロシアスパイと日本人が出会う場所は?
「ロシアのスパイかもしれないと思っていた」
 警視庁公安部が、不正競争防止法違反の疑いで元ソフトバンク部長・荒木豊(48)容疑者を逮捕したのは1月25日のこと。
「荒木容疑者は、昨年2月、勤務していたソフトバンクの社内サーバーに不正にアクセスし、営業秘密の情報などを取得。記録媒体にコピーした情報を、ロシア通商代表部の外交官に渡したとされています。内偵を進めていた公安部が昨年12月、ソフトバンクへ家宅捜索に入り、荒木容疑者は退職。現在は取り調べに対して、『小遣い稼ぎのためにやった』などと供述しています」(社会部記者)
 ロシア側と荒木容疑者の接点は、昨年2月よりも前からあったという。
表に出るスパイ行為は「氷山の一角」
「荒木容疑者は、もともと貿易関連や経済関係の業務を担うロシア大使館の組織の一つであるロシア通商代表部の職員ら複数名と面識があり、飲食をともにしていた。だが、ロシア側は荒木容疑者に素性を明かしていなかったのです。17年、40代のロシア通商代表部の一人は、帰国し、その後容疑者は、通商代表部幹部で50代の外交官などと交流を重ねてきたようです」(同前)
 荒木容疑者は、通商代表部の幹部らとの飲食のほか、情報提供の見返りとして複数回、現金を受け取ったこともわかっている。
 このようなスパイ行為が日本で表面化するのは稀なケースだが、公安関係者によれば、「表に出てくるような話は氷山の一角だ」と明かす。
スパイを外交官の身分で入国させるのは「常套手段」
 ロシアによる日本でのスパイ活動が大きく取り沙汰されたケースの一つに、2015年に起きた自衛隊幹部による資料提供事件がある。
 陸自の元陸将や、その部下らが、ロシア大使館の元武官である情報機関員に内部資料の『教範』を提供していたことが明るみに出た。
「この事件では、ロシアの『参謀本部情報総局』(GRU)が関与したと言われています。軍の機密情報を主に集める情報機関ですが、企業の情報収集などを行う情報機関『ロシア対外情報局』(SVR)なども水面下で諜報活動を行っている。ロシアに限りませんが、情報機関の人間を外交官の身分で他国に入国させるというのは常套手段」(同前)
スパイと出会うきっかけになる場所
 さらに遡ると、05年にも、東芝子会社の元社員が、社内で扱う軍事転用が可能な半導体関連の情報をロシア側に渡し、見返りに現金を受け取っていたことが発覚。背任容疑で元社員が逮捕されている。
「素性を隠し、イタリア人のコンサルタントを装って、同社社員に近づいていったといいます。こうしたスパイと出会うきっかけになる場所が、展示会やシンポジウム、そしてパーティーなど。2人も、千葉県・幕張で行われたテクノロジー関係の展示会で出会ったといわれています」(同前)
 そして、この元社員の情報漏洩に関わったスパイもまた、通商代表部に所属していたという。
「通商代表部とは、貿易関連や経済関係の業務を担うロシア大使館の組織の一つ。スパイ行為をする者は、こうした公の組織の中に紛れ込んだり、外交官という身分を使って入国し、活動しています。記憶に新しいところでは、2015年、ロシアがニューヨークで経済情報のスパイ活動を行った事件が発覚した際、関わっていた人物は、ロシア系銀行マン、ロシア国連代表部職員、そしてロシア通商代表部の職員として米国内で活動していました」(同前)
 彼らはいずれも、ロシア対外情報局の工作員だといい、2人は米国内で追訴されたものの、1名は、外交特権を使いロシアに帰国してしまった。
「私が見た中で、日本で最も多くのロシアスパイが跋扈していたのは、08年前後のことです」
 そう回想するのは、別の公安関係者だ。
 6年後に控えたロシアのソチ五輪に向けて、多くのロシアスパイが日本で工作活動にあたっていたというのだ。
 東京の下町・江東区。決して交通の便がいいとはいえないこの場所にある「ホテルイースト21東京」に、ロシアと日本の関係者200名以上が集まったのは、08年2月14日のことだ。
「ソチ市の人工島造成プロジェクトを推進するため、『露日経済協議会』(当時・アスラン・アタビエフ理事長)なる団体が主体となった投資セミナーが開催されました」(同前)
 日本からは、国会議員らで組織された「ソチ冬季オリンピック協力委員会」の会長で久間章生・元防衛大臣が参加していた。
「日本側は、建設や機械、商社などの経営者をはじめ、多くの経済人が参加。中には、ブローカーや、怪しい投資家などもいました。いっぽうロシアからは、政府系の経済団体の関係者や、企業関係者などを装ったスパイ活動を行うような人物も紛れ込んでいた。彼らは、セミナーを通じて、政治家をはじめ、日本の投資家たちとのパイプを作っていたと見ています」(同前)
 ここに興味深い資料がある。前出の公安関係者が入手したという同セミナーの案内状の下書き資料だ。ロシア人が作成したそうで、いくつか誤字もあるが、露日経済協議会が、どういう組織なのかが紹介されている。
〈露日経済協議会は、ロシアの有力な政治家、官僚グループの発案でロシア商工会議所の後援のもとに2004年に設立〉
〈議長は、S.V.ステパーシン・ロシア連邦会計検査院総裁です。露日経済協議会発起人会議長は、E.M.プリマコフ・ロシア商工会議所議長です。露日経済協議会発世話人会議には、ロシア国内外で高名な人物が名を連ね、V.I.コージン・ロシア大統領総務部長、R.Z.ハミートフ・ロシア水資源連邦局長、B.S.アリョーシン・アフト・ヴァズ総支配人、そして科学アカデミー正会員、M.V.ロマノーソフ名称モスクワ国立大学総長であるV.A.サドーヴニチイが含まれます〉
スパイ行為はプーチンの私腹を肥やすか
 このセミナーが開かれた年、ロシア国内は経済が低迷しており、資金繰りに苦しむ企業に国が資金援助を行うなどしていた。
「翌09年、プーチン首相が日本に来日しています。訪日の最重要課題は、当然、経済関係の強化でした。そのプーチンに随行してきたのが、露日経済協議会です。彼らの目的は、日本の資金を多くロシアへ投資させること。そして、スパイたちは、この協議会をはじめロシア系団体や企業に紛れ込んで、諜報活動を行うのです。日本国内の政治や経済の動向を探ったり、日本企業の技術などを入手する活動をしていると見られていました。
 ソチ五輪では、一部の勢力から、『ソチ五輪はプーチンの私的プロジェクトだ』と批判されていたように、プーチン大統領と近い企業ばかりが富を得た。つまり、五輪はプーチン大統領の政治闘争の一つであり、当時、その延長線上に、スパイ行為があったと考えていい」(同前)
 ソフトバンクの漏洩事件を巡っては、警視庁が、通商代表部幹部の男と、既に帰国した代表部職員の出頭を要請している。
「陸自の漏洩のときも、出頭要請をしたものの、ロシア側は応じませんでしたから、今回も要請に応じるとは考え難い」(前出・記者)
 今回のスパイ事件が日本で大きく報じられると、在日ロシア大使館は1月25日、フェイスブック上で、日本は「スパイマニア」としたうえで、遺憾の意を表明。しかし、前出・公安関係者によれば、「こうした行為は今も日本のどこかで行われているはずだ」と指摘するのだ。

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